艦娘の咆哮-WarshipGirlsCommandar-   作:渡り烏

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作者としては、好物は後に取っておく主義です。



副題の話数を書くのを忘れてました……orz


日誌八頁目 旋風に立ち向かう者達

 

 藤沢基地の大会議室は喧騒に包まれていた。

 この大会議室はその基地に所属する艦娘全てを収容でき、壇上には提督用の席と大モニターが完備されており、大きな作戦などで他鎮守府や基地との同時中継が可能となっている。

 このシステムが出来たのは横須賀鎮守府が、E海域と呼ばれる海域で最も近い場所、深海棲艦の前線泊地攻略作戦が終わり、その約1ヵ月後に新設された泊地攻略と同時に呉、佐世保、舞鶴で鎮守府が開設され、再びE海域の攻略あるいは打開に向け、4つの鎮守府が連携して作戦立案が出来るように設けられたものだ。

 

『では特異性深海棲艦……超兵器ヴィルベルヴィントに対する、作戦会議を始めたいと思うが……その前に、藤沢基地に新しく配属した艦娘の紹介に入りたい』

 

 横須賀鎮守府の提督であり、元帥の階級を持つ北条提督がそう発言する。

 顔は細く感じられるが体格はがっしりしており、好青年といっても差し支えの無い人物である。

 

『では尾張君、紹介を』

 

「はい!

 ウィルキア王国近衛軍所属の近代改修型実験戦艦、尾張と申します!

 聞きなれない所属や経緯に関しましては、皆様のお手元の資料に記載されている通りです」

 

 尾張の制服として、注文通りに出来上がったウィルキア近衛軍の制服に袖を通した尾張が、この会議室と画面の向こうに居る全艦娘達に自己紹介をする。

 

『うん、君の事は筑波提督から聞き及んでいる。

 俄かには信じがたいが、それ以上の事態が進行している事もあり、詳しい説明は後にしたい。

 では、まずは鹿屋基地の北郷提督から説明を』

 

 北条の紹介で、角刈りに強面と言う風貌の壮年の男性が、画面上で立ち上がった。

 その顔色は悪く、目の下にクマができており、かなり疲労が溜まっているのが分かる。

 

『んん……、ご紹介に預かった北郷だ……と言っても、殆ど変わらない面子ではあるが、藤沢の新入りとは初対面だったな。

 随分な力を持っていると聞く、頼りにさせてもらうぞ』

 

「はい、私の持てる力全てを使って尽力させていただきます」

 

 尾張の口上に北郷は「うむ」とだけ応え、少し血色が悪かった強面の顔に少し血の気が戻った。

 

『状況だが南方への遠征中、定期通信中にノイズが走った後消息が途絶えた。

 場所は沖ノ島沖、そこまでしか分からない……その後ノイズの濃度が濃くなって途絶えてしまったのだ……。

 尾張君、何か心当たりはあるかね?』

 

「ノイズは様々ありますし、普通なら深海棲艦によるものと思ってしまいますが、今回は空母ヲ級の証言もあり、超兵器機関から発せられるノイズのものと断言します。

 超兵器はその特性上、超兵器機関と呼ばれるものを機関にし、その機関から発せられるノイズも様々です。

 北郷提督、ノイズの波形はありますか?」

 

『ああ、今転送する……送ったぞ』

 

 この辺りは予め筑波と北郷が打ち合わせをして、資料を用意していたのでノイズのデータは直ぐに届いた。

 

「頂きました……波形はヴィルベルヴィントのそれと酷似、ですが少し波形が変わっていますね……同系艦か、或いは改良型と思われますが、もしかしたらこちらの規格に合わせている可能性もあります」

 

『つまり、深海棲艦化していると?』

 

「あれは超兵器という一つの生態系で成り立っています。

 深海棲艦か艦娘か、それに当て嵌めるのは無理です。

 幸い、私は艦娘として二度目を漕ぎ出せました。

 深海棲艦と艦娘が陰と陽なら、私と超兵器もその関係にあります」

 

『つまり陰の超兵器と陽の尾張、と言った所か……』

 

『佐世保の鍋島だが、先程尾張君から提案された偵察隊から報告が入った。

 超兵器は沖ノ島沖で深海棲艦を食べており、付近の暗礁に北郷君の水雷戦隊全員の無事が確認された』

 

 尾張と大友の問答に割って入った、髭を生やした鍋島の報告に各方面のざわつきが大きくなる。

 

『そ、それは本当かね!?』

 

『はい、どうやら、誘っているようです』

 

「鍋島提督、画像などはありませんか?」

 

『残念ながら簡略図だけしかないが……それでも良いか?』

 

「お願いします」

 

 筑波の返事に鍋島は即座に画像データを送る。

 本当に特徴を捉えただけだがその姿は人型をしており、髪は銀髪、艤装はサーフボード状の基部に主砲と高速推進機関用のジェットエンジン、そして排気煙突や魚雷発射管などが各部に配置されていた。

 

『目測した限りだと、ヴィルベルヴィントは38.1cm砲を装備、砲身長は65口径に及ぶと思われる。

 これだけでも化け物だが、問題なのは出した偵察機が墳進弾によって撃墜された事だが、どうも誘導型だったらしい』

 

「……私が知っているものより強化されていますね。

 恐らく私に倒された記憶もあって、その対策の為に火力を強化したのでしょう」

 

『航空攻撃も同時に行ったが、何か蜂の巣状の物が展開されて攻撃が阻まれたと言う事だ。

 これに関しては?』

 

「恐らく防御重力場でしょう。

 どれ程の物かは分かりませんが、最低の物でも駆逐艦の主砲程度なら無力化されるはずです」

 

 尾張の口答にその場にざわめきが走る。

 予め聞かされたスペックは元よりそうだが、その火力が強化された上に防御力まで上がっているのだ。

 だがそのざわめきの中、尾張は説明を続ける。

 

「ですが、防御重力場も無敵ではありません。

 魚雷や大口径主砲の攻撃に晒され続ければ、発生装置に負荷がかかって緊急停止するはずです」

 

『なるほど、ではどうする?』

 

「まずは防御重力場を機能不全にさせた後、煙突に対して集中砲火を浴びせて損傷させ速力を下げます。

 その後重雷装艦や戦艦の砲雷撃、そして空母航空隊による火力集中で撃破するのが順当でしょう」

 

『ふむ……だがそれでも、深海棲艦との戦闘も含めると数日がかりになりそうだな……』

 

「はい、そこで私の方から提案が有ります」

 

 そこで筑波から声が上がった。

 

『ほう……』

 

「先日鹵獲したヲ級を尾張と共に行動させようかと愚考します」

 

『……は?』

 

 筑波の言葉に各鎮守府の提督や艦娘達が絶句する。

 当然だ、筑波が言っている事はつまり、深海棲艦であるヲ級と共闘すると言う事だ。

 

「一見不可能だと思えますが、あのヲ級の怯え具合からして尋常ではない事態になっていると予想され、先程の提案を呑む可能性はあります。

 しかもこの事態を他の深海棲艦に伝えようとした節もあり、彼女をメッセンジャー兼案内役にし、深海棲艦の上位種と接触して更なる共闘体勢を気付こうかと思っています。

 勿論、可能な限りではあり、中には拒絶する固体も居るでしょう」

 

『いやいやいや、ちょっと待ってください』

 

 その時声を上げたのは舞鶴鎮守府の朝倉提督だった。

 鎮守府全体で3人しか居ない女性提督で、深海棲艦からの復興で頭角を現し始めた朝倉インダストリーの令嬢でもある。

 

『確かに報告書は読みましたが、それでも一緒に行動させるのは危険です!

 大体、一緒に行動させる艦娘である尾張さんはどうなんですか!?』

 

 朝倉の言葉にその場に居た全員が尾張に視線を向ける。

 だが当の尾張はきょとんとしていた。

 

「どうもなにも……確かに深海凄艦は人類にとって害悪となる存在です」

 

『そうでしょう!?だった「しかしです」らぁ……』

 

「超兵器に関しては我々艦娘、深海棲艦、そして人間に問わず攻撃を仕掛けるでしょう。

 漁夫の利などという言葉に乗じようとか、そんな甘い考えで理論武装してはダメな相手なんです。

 あれは、間違いなくこの星の知性体にとっての災厄と成りえます」

 

『っ』

 

 朝倉が何か言う前に言葉を差込み、射抜くような目線で言い放つ尾張に、朝倉は息を詰まらせる。

 その瞳の内に灯った闘志は、間違いなく超兵器を己の宿敵と捕らえている証であり、超兵器が出た今となっては、あらゆる手を尽くして撃滅しようと考えている色もあった。

 

「あれは……決して野放しにしてはいけない存在なんです。

 それにあの末端が動いていると言う事は、更に最悪の事態も想定しなければ成りません」

 

『最悪の事態?それにあれが末端だと?』

 

 北条が尾張の言葉に、僅かに驚きの色を含ませながら尋ねる。

 その言葉に尾張は頷く。

 

「究極超兵器フィンブルヴィンテル、恐らくあれも、こちらに来ている筈です」

 

 

 

 その後の会議は概ね予定通りに進められた。

 会議によって各鎮守府は連合艦隊を編成し、超兵器潜伏海域である沖ノ島沖へ向かわせる事となり、主力はやはり最大戦力である尾張を保有する筑波が担当する事になった。

 そもそもが横須賀や佐世保が中心となって根回しをして、対超兵器戦に関してはかなりの実績がある尾張の存在もあったのもあるが、最もな要因は尾張が一部を除いて、艦娘が相対してもギリギリ相手に出来る超兵器の情報を出した為でもある。

 尾張としては全ての情報を出したい所では有ったが、北条提督の意見もありヴィルベルヴィント、ドレッドノートと同系艦であるノーチラス、そしてデュアルクレーターに播磨と言う、『まだ現実的な』超兵器のデータを出すに留めた。

 これは今はヴィルベルヴィントに全力を注がせる為と、艦娘の士気に考慮しての事であり、この作戦が終われば随時解禁する予定である。

 尚、藤沢基地の大型艦の艦娘達は、まさかあの映像に出てきた船が現実で自分達と相対する事になることに、悲壮な気分を絶賛味わっているのだが、筑波は尾張にある提案をした。

 

 

 

「とりあえず、試しに尾張で開発を試すわよ。

 もしかしたら装備で戦力の拡充が出来るかもしれないし」

 

「出来る準備は大事ですからね」

 

 今は尾張と筑波が居るのは工廠の開発装置の前であった。

 一応長門と陸奥も一緒に居り、伊勢と日向はヲ級の所へ行って事情の説明と、説得に入っている頃合いだ。

 ヲ級自身も仲間とは思っていないにしろ、自分達の駒を意味も分からない兵器に蹂躙されるのは、表情はさておき心中穏やかではないだろうと言うのが、戦艦艦娘と空母艦娘、そして筑波の意見の一致である。

 

「さて……とりあえずボーキサイトと鋼材の分量を多めに設定して、これで電子機器のスロット装備が出来るはずだけれど……。

 尾張、この手形に手を置いて頂戴」

 

「え?これにですか?」

 

 開発機械はスパコンのサーバーの様な外見をしており、それにタッチパネル式のモニターと、静脈識別方の生体認証装置の様なものが付いた外観だった。

 

「そう、それで投入資材を決めて、艦娘の手からその艦娘に由来する装備をランダムで作るの。

 ある程度は材料を決めて出したい装備を狙えるけれど、殆ど運任せね」

 

「どういった仕組みなんですかね……」

 

「私もそこまでは……作った科学者達と妖精さん達のみが知る……かな?」

 

 艦娘自体が科学とオカルトの狭間の存在なので、学会では未だに論議の真っ只中だと言う。

 生物種としてもまったくと言っていいほど由来が不明な為、ホモサピエンス属に属するかも怪しいと言う有様であるが、一応遺伝子配列は人間のそれと同一なので、人間の男性との生殖も可能だと言うのだから、余計に議論がこんがらがるのだがどうでもいい話であった。

 ともあれ、尾張は手形に掌を置くと開発機械が作動し始める。

 

「おお……」

 

「さて……これで少し立てば装備が出来るんだけれど……って、あららスカだったか」

 

 機械から出てきたのはペンギン(?)と羊(?)の人形が入った木箱だった。

 

「あ、なんだか愛嬌があって可愛いかも」

 

「「「え」」」

 

「え」

 

 尾張の反応に筑波と長門姉妹が声を漏らし、その奇妙な声に尾張も反応する。

 

「え、えっと、とりあえず大本営からは、各装備レシピの最大値を最低でも10回は試せって言っているから、続けて頂戴」

 

「は、はぁ……」

 

 筑波が何とか割って入り、尾張は続けて開発を再開する。

 今回開発する分は大本営から使用した分の資材が支給されるので、心置きなく開発する事ができる。

 今回は砲、航空機、電子機器、砲弾を10回ずつ行う事にし、その結果は……。

 

「砲は50口径41cm三連装砲が2個、65口径51cm連装砲が1個、40mm4連装機銃が3個、75口径10cm高角砲が2個、65口径12.7cm高角砲が1個、スカが3だな」

 

「航空機は晴嵐改が2個、SH-60Jが1個、CH-47が2個、ウォーラスが3個、スカが2ね」

 

「電子機器はSC-2レーダーが2個、32号電探が1個、22号電探が1個、スカが6……ちょっと運が悪かったかな?」

 

「砲弾は三式弾が2個、近接信管弾が3個、一式徹甲弾が2個、スカが3ですね」

 

「なんで米国の装備が出てくるんだ……いや、もう何も言うまい」

 

「尾張の出自とかからしたらある程度予想はしていたけれど、まさかヘリまで出るとはおもはなかったわ……って、尾張にはハリアーがあるんだった」

 

 出来上がった装備のミニチュアの様な装備を各々確かめながら、長門が諦めたようにこめかみを押さえながら呟き、陸奥がそれに応えるが、既に尾張をそう言うものだと捉えている節があった。

 

「試しに対潜兵装もやってみます?」

 

「うーん……じゃあ5回だけやってみましょうか」

 

「了解です」

 

 

 

「それで、この装備が私達に配備されるわけですね」

 

 工廠に呼び出された、第二改装したばかりの吹雪がそう呟く。

 対潜兵装では乱数の神様が調整したのか、マウストラップが2個とM/50対潜ロケット砲が3個出来た。

 これは戦艦である大和達にも乗せれるわけだが、駆逐艦に装備させた方が良いだろうと、吹雪型駆逐艦の4人にマウストラップとM/50が2個ずつ配備される事になった。

 

「本当はASROCを出したかったんですけれどね」

 

「いえ!これだけでも十分過ぎます!」

 

「新しい装備が増えるのは嬉しいです!」

 

「これ以上良い物貰ったら、引き篭もれなくなる……」

 

「やっぱり新しい装備って良いよなぁ!」

 

 吹雪型の4人は、新しく装備に反映された対潜装備に、はしゃぎながら尾張に答える。

 ミニチュアサイズの装備は各々の艤装に吸収され、その装備が各々の艤装に出現していた。

 この辺りも未だに未解明で、既に科学者達が匙を投げている状態である。

 

「残りのM/50は神通に、大型主砲も51cmは武蔵へ渡しましょう。

 41cm三連装は長門姉妹に、ロクマルは日向に持たせて、晴嵐改も利根姉妹に配備させる予定だから……うん、既存の深海棲艦相手なら十分過ぎるわね」

 

「高角砲はどうします?」

 

「う~ん……、やっぱりあの娘に装備させるしかないかな」

 

 筑波がそう唸ると工廠の入り口にまた一人、少々大きい体格の駆逐艦娘の姿があった。

 防空駆逐艦の秋月である。

 

「あ、提督、ここにいらしたのですか」

 

「あ、秋月、ちょうど良かったわ!」

 

「はぁ……、私に何か?ってなんですかそのお化けみたいに長い砲身の10cm砲は!?」

 

「ちょっとこれを装備してみない?

 今尾張に装備開発をさせたら出てきちゃって」

 

「え、良いのですか?」

 

 尾張の方をチラチラと見ながら秋月はそう聞きかえす。

 

「私にはもうパルスレーザーがありますし、秋月さんが装備してください。

 これからの戦いはもっと激しくなると思いますから、秋月さんの対空火力も増強したほうが良いと思いますし」

 

「尾張からもこう言っているし、遠慮無く貰っちゃいなさい。

 過去の確執は忘れろとは言わないけれど、今は遠慮なく欲しい物はどんどん言って頂戴。

 あ、でも資源と私の財布の中身が許す限りだからね?」

 

 付け加えた筑波の言葉に、その場に居た全員が笑う。

 和気藹々とした空気が流れる中、時の流れは出撃の時間へと容赦なく押し流してゆく。

 

 

 

 藤沢基地連合艦隊の編成は、第一艦隊の旗艦に尾張を据え、随伴戦艦に大和と武蔵、航空巡洋艦の利根と筑摩、そして深海棲艦の正規空母であるヲ級フラグシップを配置。

 第二艦隊には旗艦に軽巡洋艦の神通、駆逐艦の秋月と綾波、重雷装巡洋艦の北上、大井、木曽の三名を配置した。

 航空兵力が若干心許ないがヲ級はかなりの練度を有しており、その艦載機も深海凄艦のものとしては上位の物が積まれている。

 と言うのもこの艦載機、艦娘と人類の間では猫型と称される物であり、空母艦娘が保有する最上位艦載機と同等の性能を有しており、烈風改、友永隊仕様の天山十二型、江草隊仕様の彗星と同じ性能の艦載機を、労せずして手に入れる事が出来たのは行幸であった。

 ともあれ、その連合艦隊は埠頭の近くで出撃準備をしていた。

 

「初めまして……と言っても、先程名前も顔も出しましたけれど、改めて自己紹介を……戦艦尾張と申します。

 こちらに配属になってまだ日が浅いですが今回、そしてこれからも、精一杯任務に励む所存です」

 

「我輩は利根型航空巡洋艦の1番艦の利根じゃ!」

 

「利根型航空巡洋艦の2番艦の筑摩と申します」

 

「我輩達利根型航空巡洋艦の索敵能力、しかと見るが良いぞ!」

 

 第二改装を行った利根と筑摩が先んじて自己紹介をする。

 

「綾波型駆逐艦の1番艦の綾波です。

 非力ではありますけれど、よろしくお願いします!」

 

「秋月型防空駆逐艦の秋月です。

 尾張さんから貰ったこの装備、使いこなせるようにがんばります!」

 

 第二艦隊に組み込まれた駆逐艦二人も、前の二人に習って自己紹介をする。

 

「球磨型軽巡洋艦の3番艦で、重雷装巡洋艦に改装されたハイパー北上様だよ」

 

「同じく4番艦で重雷装巡洋艦の大井です」

 

「右に同じく、球磨型軽巡洋艦の5番艦の木曽だ。

 上二つの姉ちゃん達と同じで、重雷装巡洋艦になってる」

 

 続けて雷撃火力では随一の重雷装巡洋艦の3人が紹介を終えた。

 

「こうして見ると、結構私が知らない改装をした方々が居るんですね……」

 

「まあ我輩達は計画段階ではあったのだがな。

 木曽も重雷装化させる計画もあったのを、何とか妖精達の力で適用させたと言うわけじゃ」

 

「うむむ……そう言われると少し羨ましいですね」

 

「私としてはその……スキズブラズニルだったかな?

 そっちの方が羨ましいんだけれど」

 

 大和がそう呟く。

 

「でも、あれって艦娘としての姿が思い浮かばないんですよねぇ……。

 明石さんみたいになる可能性も無くはないんですけれど、艤装がどれほどの規模になるか……、と言うか艦娘として生まれるのかすら怪しいのですけれど」

 

「……」

 

 そんな他愛の無い話をしていると、ヲ級が尾張の袖を引っ張った。

 

「あ、すみません。

 支援艦隊の準備がまだらしいので、彼女達が進発したら私達も出撃しますよ」

 

「……(コクッ)」

 

 その意図を察した尾張がそう言うと、ヲ級は頷きながら素直に引き下がる。

 

「なんだか異様な光景だよね。

 昨日まで敵対していたヲ級が、こうして私たちの艦隊に編成されるなんて」

 

「深海棲艦にとっても異常事態ですし、致し方ないと思っているのでしょう。

 尾張さんが言うには、深海棲艦ほど常食に成る者は居ないって話ですし」

 

 彩雲による偵察の結果、ヴィルベルヴィントは途中で狩った深海棲艦を、揶揄なしで食べていると言う情報が入り、その報告を聞いた各々の提督達は戦慄を覚えたと言う。

 それが補給行為なのか、それとも生きる糧としてそうしているのか不明だが、起源を同じとする艦娘にとっても超兵器は恐怖の対象でしかない。

 むしろ様々な感情が入り混じった艦娘は、奴等にとっては極上の餌になる可能性もあるのだ。

 

「すみません。少し準備に手間取りました」

 

「支援艦隊、何時でもいけるわよ」

 

 正規空母の赤城と加賀、そして翔鶴と瑞鶴にその護衛として夕立と吹雪を置いた、航空支援艦隊の面々が到着した。

 

「栄えある歴代一航戦が揃うと、やはり盛観ですね」

 

「そんな……、私達はただ赤城さんと加賀さんの後釜になっただけで、大した事は……」

 

「それに私達は最新機種になっても、技量では先に着任した二人には適わないし、まだまだ修練が必要よ」

 

 大和の声に翔鶴と瑞鶴が応える。

 

「いえ、私達の戦歴と艦生はあのMI作戦で終わっています。

 それ以降の戦訓を持っている二人には、私達も学ぶ所が有ります」

 

「でも、今回は超兵器という初めて相対する相手、だから一旦ここで私達はまたスタート地点に逆戻りよ。

 だから尾張さん、貴女の判断が私達を殺す事にも、活かす事にも繋がる。

 期待しているわ」

 

「う、こっちに飛び火しますか。

 ……艦隊行動はした事がないので不慣れですが、精一杯指揮をさせていただきます。

 っと、なんですか?ヲ級さん」

 

 妙な所から飛び火した事に尾張は一瞬気後れしたが、そこでヲ級が尾張の片に手を置いたのを感じ、彼女にそう聞く。

 

「……」

 

「ああ……貴女にとっては配下を全滅させた仇ですからね。

 全力で勤めさせて頂きますが、貴女も水先案内をしくじらないで下さいよ?」

 

「……(コクリ)」

 

『出撃する皆、もう直ぐ舞鶴の艦隊が到着するから、そろそろ出撃して頂戴!』

 

「了解です。

 ……すー、はぁー……うん」

 

 尾張が言うとヲ級はまた頷くのみで答えると同時に、筑波から通信が入る。

 それに応えて、一旦目を閉じて深呼吸をすると同時に見開いた。

 

「藤沢基地、超兵器撃滅艦隊、抜錨!」

 

 尾張以外の艦娘達にとって、未知の戦いが火蓋を切って落とされた。




さて、今回は他の鎮守府(基地・泊地も含めてこう呼ぶ事にします)の提督達が出てきました。
名前は特に意味はありません。ええ、意味はありませんとも。
歴史上の人物で同じような苗字が出てくることなんてよくある事です。
次回には戦闘シーンを入れたいと思います。
あと劇中にも出てきましたが、尾張の制服はWSG2のナギみたいな感じです。
私自身は艦これ風にデザインできる技量も、絵の才能も有りませんからね。

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