艦娘の咆哮-WarshipGirlsCommandar-   作:渡り烏

16 / 32
遅ればせながら次話投稿でございます。
ちょっと久しぶりにWSG2で建造しておりました。


日誌十一頁目 報酬

 

 

 

 

「……敵超兵器の殲滅を確認。

 少々手間取りましたが、作戦成功です……?」

 

 尾張がそう呟くと、周りの静寂に今気が付いたかのように見回す。

 周りからの視線は何時か感じたそれ、自らを奇異と畏怖の意味を含めた物であった。

 特に戦艦と、先程合流した空母組にそれが顕著である。

 

(当然か……まあ、そう見られるのは慣れているから別に良いけれど)

 

 そう思案しながら尾張は立ち上がる。

 艤装内の応急対応妖精に指示を出し、修理可能な範囲での修復作業に当たらせ、この程度の傷はもう慣れていると言わんばかりに、両足で海面を踏みしめた。

 

(私と超兵器はこの世界ではイレギュラーだ。

 ここに私の居場所は……ない)

 

 僅かな時間であっても、自らの準姉妹艦である大和と武蔵と共に海を駆けれたのは、尾張にとってささやかな幸福であったが、その代償がこれである。

 だからこそ、尾張はその場を離れようとしたその時だった。

 

「フム、煤塗レノ勝者ト言ウベキカ。

 ナカナカドウシテ、味ワイ深イモノダナ」

 

 不意にその声が聞こえてきた。

 尾張はその声がした方へ向くとそこにはあのヲ級と、巨大な艤装に身を委ねた人型の深海棲艦の姿があるのを確認した。

 

「貴女は……こちらの呼称では空母棲姫でしたか」

 

「ソレガ正解カハ我ハ知ラヌガ……マア好キニ呼ブガ良イ。

 我等モソチラノ通信ヲ解読シテ、真似シテ呼ビ合ッテイル事モアルカラナ。

 アトハソコカラ推測シテ、コチラデ勝手ニ呼ビ名ヲ決メテイル」

 

「な!」

 

 こちらの通信を解読されているという事実を知り、長門を初めとした尾張以外の艦娘達に戦慄が走る。

 

「マアソノヨウナ瑣末事ハドウデモ良イ。

 尾張ト言ッタナ?」

 

「そうですが」

 

「我等ノ元ヘ来ナイカ?」

 

『『『……』』』

 

 その言葉にこの海域に居た全員が息を呑む。

 だが、尾張はそれを打ち払うかのようにこう言い放った。

 

「お断りします」

 

「ホウ?周リカラ、コノ様ナ視線ヲ向ケラレテモカ?」

 

 空母棲姫の言葉に一部の艦娘が、僅かに肩を動かす。

 

「関係ないですし、この様な視線など幾らでも向けられていました」

 

 だから問題はない、それがどうしたと、尾張は視線にそのような意味を含めて相手に返す。

 余りにも哀しい発言にそのような視線を向けていた艦娘達が、申し訳なさそうな表情をするなかで、沖ノ島へ探索に出ていた艦娘から通信が入った。

 すでに超兵器ノイズの濃度は薄まっており、艦娘達の通信機でも通信を飛ばせるようになった為だ。

 

『こちら大湊の磯風だ。

 沖ノ島の暗礁地帯で鹿屋の遠征部隊を発見した。

 全員無事だ』

 

 磯風の報にその場にいた艦娘達が安堵の息を吐きたいが、生憎と目の前の動向に集中していてそれどころではなかった。

 

「フム、ドウヤラ、ソチラハ間ニ合ッタヨウダナ」

 

「そちらも、そのヲ級は助かっているではないですか。

 単純な戦力としては、トントンな結果だと思いますが」

 

「イヤ、アノヨウナ脅威ニ対シテ全員生存ト言ウノハ評価デキル。

 コチラモ、腰ヲ据エテ対策ヲ行ッタ方ガイイナ。

 ……勿論、オ前ノ事モ含メテダガ」

 

「……」

 

 双方にらみ合う中、ヲ級が空母棲姫に何かしら伝えるそぶりをする。

 

「ン?アア、デハソロソロ、ココラデオ開キトシヨウ。

 コレヲ連絡員トシテ派遣スル故ニ、私ト交信シタイ場合ハコヤツニ言ッテクレ。

 ……ソレト西太平洋海域ノ、私ヲ含ム空母水鬼直轄ノ艦隊ハ、シバラク活動ヲ抑エル事ニシタ」

 

「直轄?貴女方の総体ではなく?」

 

「中ニハソウデハナイ奴ガ居ルト言ウ事ダ。頭ガ痛イ話デハアルガナ。

 詳細ハソイツカラ聞ケ、デハ、サラバダ」

 

 空母棲姫はそう言い残し、海に沈むように引いていった。

 その取り巻きもヲ級残して引いていき、溶鉱炉に火がくべられる一歩手前で収まったのを、その場にいた全員が感じ取っていた。

 

『……こうも無視されると私も悲しいのだが』

 

 その静寂の中、磯風の通信だけが響いた。

 その後磯風の機嫌を取るのに小一時間かかったとだけ記そう。

 

 

 

「つまり、今回の一件で深海側も事態の深刻さを認識したと?」

 

『はい、それと被害報告ですが……』

 

 あれから暫く経って横須賀の執務室に、北条提督と大和との通信機を介しての会話が行われていた。

 今回の作戦での被害は次の通りである。

 大破

 藤沢基地:大和、武蔵、尾張

 ショートランド泊地:伊勢、妙高、那智

 ブイン基地:長門、陸奥、摩耶、鳥海

 

 中破

 ショートランド泊地:長良、那珂、陽炎、雪風

 ブイン基地:川内、暁、雷

 鹿屋基地:球磨、神通、白露、村雨、涼風、五月雨

 

『小破など細かい損傷を負った娘達は省いています。

 ……あの状況下で、鹿屋基地の艦娘達が、全員無事だったのが奇跡だと思えるのですが、尾張からの推測では、恐らく獲物を引き寄せる為の、餌のつもりだったのだろうと言っています』

 

「うむ、私も同じ意見だ。

 古今東西、より相手に被害を与える為には、程よく傷付いた餌に隙のある包囲を敷き、そこへ救援に駆けつけた部隊を伏兵で大打撃を与える手法があるが……。

 奴はその伏兵を自らの機動性で補った」

 

 まさにこの一戦で一騎当千の戦闘力を……超兵器と艦娘との戦力差を、まざまざと見せ付けた事件だった。

 そして同時に、尾張と言う艦娘の存在の異常性も、浮き彫りとなる形となっていた。

 

「尾張君は……彼女はたった一人で、あの超兵器の攻撃を受け止めたのだったな」

 

『はい、詳しい機構は不明ですが、電磁波による防御壁でレーザーを逸らし、或いは無効化していました。

 実体弾に対しても、その装甲で弾き返すか貫通を許さなかったほどです』

 

「なるほど……」

(つまり正真正銘、我々側の超兵器ということか)

 

 ――深海棲艦と艦娘が陰と陽なら、私と超兵器もその関係にあります――

 

 改めてあの時尾張が言った言葉の意味を噛み締め、そしてその脳髄の中でこれから起こりえる事象を予測する。

 手元の資料を捲くり、そこに書かれている全ての超兵器のスペック、対抗手段、最適な攻撃位置、それら全てを網羅した対超兵器用の攻略本の様なもの。

 下手をすれば大半の物が役に立たないかもしれないと言う、ある種の理不尽と超兵器の特異性に恐怖心を抱く。

 

(いや、今の状況で最も苦しいのは尾張君の筈だ。

 今回の戦闘で、彼女は自らの戦闘行動によって、その特異性を他の艦娘達に見せてしまった。

 ……彼女にとっては辛い戦いになるな)

 

 ブインとショートランドの連合艦隊二つを持ってしても、僅かな時間しか対応できなかった相手に単艦で挑み、駆けつけるまで持ちこたえた上に止めを刺した。

 既に兵器体系として独立した力を見せ付けた尾張に、既存の艦娘達がどういう反応を示すのかは火を見るより明らかだが……。

 

『それと……尾張の事なのですが、筑波提督の大和と武蔵を中心とした私達大和型の艦娘で、あの娘を精神的にサポートする事にしました』

 

「うむ……」

 

 次に出てきた大和の言葉で、それは杞憂だと言う事を北条は認識した。

 大和型とて建造された当時にしてみれば、とんでもない性能を持った戦艦だった事もあり、その存在に畏怖や尊敬の眼差しを向けるものも、少なくない事は想像に難くない。

 尾張自身も経験したと言っているが、それが同じ元船であった艦娘から向けられるのとでは、疎外感に雲泥の差が出るのは間違いがなかった。

 その点で言えば、自らが指揮する大和の提案は良い助言となった。

 

「……良い部下を持ったものだ」

 

『提督?』

 

 北条の呟きに大和が怪訝そうな声音で尋ねる。

 

「いや、なんでもない。

 大和君の提案は私が大本営に持っていこう。

 まあ、最低限の監視の意味もこめてと付け加えるがな」

 

『あっ、ありがとうございます!』

 

 その後、細かい調整を話し合ってから通信を切る。

 明後日か明々後日にはブインとショートランドの二人が東京に到着する。

 その為の準備を今からするのだ。

 

「この青天の霹靂に際して、少しでも戦力は温存させたいな……」

 

 超兵器の来襲と言う未曾有の事態に、北条はそう呟く。

 濃霧の中遭難した山中で、山小屋を探すに似たこの状況下において、戦力的な穴を作るのは避けたいと言うのが彼の考えだ。

 

(その為には……)

 

 北条はそのための布石を打つべく、とある場所へと電話を掛けることにした。

 

 

 

「そう言えばアレをしてなかったね。

 まあ今回は例外中の例外だけどさ」

 

「今駆逐艦娘や軽巡艦娘達が探しているけれど、もしかしたら今回は居ないかも知れないわね」

 

「良いもん見っけ~ってこれ何時もの奴かぁ……」

 

 何かを捜索している艦娘達を遠巻きで見ながら、尾張は藤沢の大和に聞く。

 

「あの、皆さんはさっきから何を?」

 

「あれは浮揚作業ね。

 倒した深海凄艦からは、新しい艦娘の艤装に必要な核が取れることがあるのだけれど……。

 今回みたいなケースは想定されてないから、もしかしたら何もえられないかも知れないわね」

 

「つまり部品の回収作業ですか……」

 

 それなら尾張にも経験がある。

 撃沈して直ぐの敵艦から回収した砲塔や電子部品、果ては船体の一部まで回収し、それをスキズブラズニルが解析し、資金を投入して自らの新しい武装として取り込みながら、最後まで戦い抜いてきたのだ。

 その中で自分以外の実験艦も新規建造されたが、彼女達がどうなったのかは尾張が知る術もなく、こうして思い返してもどうしようもないと言う気持ちが浮かんでくる。

 

「見つけましたぁ~!」

 

 綾波が若干間延びした大声を上げ、両手を勢い良く振って周囲の艦娘を呼び、そしてその場から何かを、両手で優しく掬い上げる。

 それは光り輝く多面体だった。

 あれが艦娘の艤装の核となる部分なのだろう。

 

「この大きさは駆逐艦だな」

 

「この感じ……私と同型でしょうか?

 冬月って感じでもないですし」

 

「でもその前に「こちらにもありました!」えぇ……」

 

「複数の核回収だと!?しかもでかいぞ!」

 

 足柄が何か言う前に吹雪が声を上げるのが聞こえ、そこには特大サイズの核を引き上げようとしている吹雪の姿があった。

 その大きさは吹雪の背丈より大きいように見え、重巡や戦艦も動員して何とか引き上げた。

 その後も2つほど艤装核発見の報告があがり、その他には何故か金塊が入った大きな木箱を2つ発見した艦娘もいた。

 

「うーん……艤装核が複数あるのはまだ分かるのだけれど、なぜ金塊があるのかしら?」

 

「それは……」

 

 引き上げに参加した足柄と羽黒の二人が後ろをチラッと見る。

 その視線の先には大破した状態の、藤沢基地が誇るトリプルモンスターの姿があったが、二人が最も興味を引いているのは、その最大戦力であり今回の功労者であり、そして最も警戒している尾張だった。

 二人は意を決したように互いに頷き合って、彼女の元へと向かった。

 

「あの、尾張さんちょっと良いでしょうか?」

 

「はい?なんでしょう?」

 

「さっき金塊が入った木箱が出てきたのだけれど、何か知らないかしら?」

 

 足柄と羽黒の問いに尾張は少し考えるそぶりをする。

 

「うーん、もしかしたら帝国軍時代の名残かもしれませんね。

 出所は兎も角として、占領地域で直ぐに弾薬や燃料以外の物資を補給できるように、金塊を積んでいるという噂はありました。

 そもそも超兵器以外の艦艇にも積んでいましたから、ちょっとそれを猫ば……ゲフン、火事場……ゲフンゲフン、少し落し物として研究費用等に使わせていただきましたが」

 

(今猫糞(ねこばば)って言おうとしたわよね)

 

(しかもその後火事場泥棒とも言おうとしてました……)

 

 尾張の台詞を聞いて足柄と羽黒は肩を寄せ合い、小声で互いの感想を言い合う。

 改二になって衣装がきっちりとした物になったせいか、その姿は給湯室で噂話をするOLに見えなくも無かったが、その姿を尾張は明後日の方向に向いていたため気が付いていなかった。

 

(嗚呼……、妹分の性格が計りかねてきたわ……)

 

「大和、妹分だからといって諌める時は諌めねばならんぞ?」

 

「な、まだ何も言ってないわよ!?」

 

 そんな彼女達の会話を遠めで見ていた艦娘達が居た。

 鹿屋基地の遠征艦隊の艦娘達である

 

「あまり動かないで下さいね~?」

 

「ク、クマー」

 

「ありがとうございます……」

 

「今回は酷い目にあったぜぃ」

 

「また、あんなのが来るのかなぁ?」

 

「分っかんないなぁー。

 まだ見つかっていないから何とも言えないよね」

 

「自分も今回の超兵器に関しては、あまり詳しい事は聞いていないのであります。

 尾張殿の様子を見ても、今回のことは想定外だったようでありますし、今後も我々の想像を遥かに超える物が出てきても、おかしくはないのであります」

 

「……うん!」

 

 トラックからの後方支援艦隊として応急修理を担当する明石と、物資補給を担当するあきつ丸が鹿屋基地の艦娘達と話し合っていた。

 比較的損傷が少なくすみ、先に応急修理が完了していた五月雨は、何か意を決したように顔を引き締めて、尾張の元へと向かう。

 

「あの、尾張さん!」

 

「はい?」

 

 突然の要救助対象であった艦娘から名を呼ばれ、少々困惑気味に首を傾げる。

 

「あ、あの……今回は助けに来ていただいて、ありがとうごじゃいっ!~~~っ」

 

「あ、あの……大丈夫ですか?」

 

「ひゃ、ひゃい~」

 

 感謝の言葉を述べようとしたようだが、最後に舌を噛んだらしく口元を押さえて目元に涙を浮かべていた。

 尾張が気遣って呼びかけると返事が返ってきたので、そこまで酷い事にはなっていないようだ。

 

(可愛い)(これは可愛いな……)(可愛いわね~)(可愛いなぁ……)

 

 一方その様子を見ていた大和と武蔵、足柄に羽黒は同じ感想を胸に抱いていた。

 

「うう~なんで私こういう時に限って……」

 

「えっと、そんなに気落ちしなくても大丈夫です。

 貴女の感謝の言葉は、今回の出撃で何よりも変えがたい報酬ですから……。

 本当に……助けられて良かった」

 

 そう言って尾張は五月雨の頭を優しく撫ぜ、最初は五月雨はポカンとした表情を見せる。

 優しくその蒼い髪を撫でられる度に尾張の手の温もりを感じ、五月雨は徐々に身体を震わせる。

 それは今まで抑え付けていた恐怖心が、捌け口を見つけた際に起こるのと同じ感情の発露だった。

 

「あ、う、うう……」

 

「碌な装備も無いのに、必ず仲間が来てくれると信じて……本当に辛抱強く耐え、良く戦い抜きました。

 貴女方は、本当に尊敬に値する偉業を成し遂げたのです」

 

「う……ひっく、うあああぁぁぁぁ!!」

 

 その言葉が止めとなったのか、五月雨は尾張に抱きついて泣き出した。

 耐え難い程溜め込んだ恐怖心をその泣き声に載せて吐き出し、ようやく一つの節目が終わった事を、この海域にいる全ての艦娘達が認知したのだった。




さて、ようやく一区切りといったところです。
今回出た艤装核、これはドロップをこういう形に表したものです。
核の大きさで出る艦種が変わるというもので、空母は戦艦の核より少し小さいと言う風に書く予定です。
……さてここからが本題なのですが、鋼鉄世界からも少し呼び込もうかと画策しております。
出来るだけバランスブレイカーにならないようにしようかと思ってますが、皆さんの反応次第で出すものを決めようかと思ってます。

 ▲ページの一番上に飛ぶ
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。