艦娘の咆哮-WarshipGirlsCommandar-   作:渡り烏

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相変わらずのグダグダ感と投稿間隔ですが何とか出来上がりました。


日誌十五頁目 神々の船 後編

 

 

「うーむ……」

 

 一通り聴取を終えて纏め上げる作業の最中、改めて彼女達の出身世界の異常な進行速度には驚かされる。

 

「しかし、平行世界とは言えスキズブラズニルの様な船があったのですから、致し方ないのではないでしょうか?」

 

「超兵器の有る無しでここまで違うものなのか?と疑問を挟むところではあるが。

 実際にそうなっていると彼女達が言うんだ。

 それに、超兵器の活動停止で科学技術の発展スピードもこれより遅くなるだろう」

 

 5人の提督が見ているのはスキズブラズニルが、現在保有している開発可能な武装と、大改修で使えるカスタマイズパーツの一覧であった。

 下は水上機や初期型の動力等の第二次大戦初期の物から、上はジェット戦闘機やら原子炉等の現代技術まで、幅広いバリエーションを誇っており、特に艦載機は日本・アメリカ・イギリス・ドイツと、多岐にわたっている。

 

「しかしイギリスの船体など、どう使えばいいんだ?」

 

「そのことも含めて聞いてみたのですが……」

 

 

 

「はぁ?船体の変更?なにそれ、技術屋の私に対する侮辱かしら?

 大体、その娘の精神に合わない肉体をあげても、使いこなせるか分からないでしょう?

 人間で言ったら全身整形して、そのまま心の病気になるような事は私はやらないわ。

 U-513は艦のままで、艦娘や尾張のようにしっかりした精神が宿っていなかったからああなっているけれど、これからはそうも行かないでしょうし定期的に検診はするわ。

 私がやった事には代わりが無いし、その責任くらいは持つわよ」

 

 

 

「と言われました……」

 

 そのままメソメソと顔を手で覆って泣き出す朝倉、そしてそんな彼女にポンと肩を叩く鍋島。

 どうやらスキズブラズニルには、譲れない所があるらしい。

 

「しかし元の船体そのままで改装など、確かにかなりの技量がいる事をやり遂げるのは大変な事だ。

 拡張して改装するならまだやりようはあるが……」

 

「船体強度の関係も視野に入れないと、友鶴や第四艦隊事件の二の舞になりますからな……ん?船体が用意できるという事は、新しく主砲用の穴を用意した甲板も用意できるわけだから……なるほど、それなら強度の心配は無いわけか……」

 

「しかしそれでも重心という問題が出てくる。

 重兵装はトップヘビーになる要因になるからな」

 

「重量を変えずに改装するというのはどだい無理な話ですわ。

 現状でも似たような事はできますが、砲撃時の衝撃で照準にずれが生じますし、とても実戦に耐えれるものが出来上がるとは……」

 

「だが、試しに誰かを改装に出さねば、既存の艦娘でも出来るかわからないからなぁ……」

 

 その時、応接室のドアがノックされる。

 

「司令官、お茶が入りました」

 

「ああ、吹雪君か。

 入りたまえ」

 

「はい!失礼します!」

 

 北条の許可が出て、この横須賀に所属している吹雪が入室する。

 その手には、最近暑くなって来た事もあってかグラスに氷と冷ました緑茶を淹れていた。

 

「さっきの続きだが、もしかしたら船体の重量を上げて対処しているのかもな。

 機関などは特にそれが顕著になるし、内部の電子機器も取り付けた分だけ重くなる。

 防御力を上げるために対10cmくらいの装甲を付けるのも手だ。

 元々駆逐艦には、それほど装甲が厚いわけではないし、精々当たり所によって、砲弾を逸らすのがやっとだからな」

 

「なるほど……」

 

「確かに、人が多数乗る前提の船なら兎も角、艦娘では個人の装備ですからね。

 幾らでも弄り様はあると思いますが……、それでも船体に見合わない改装はダメでしょうね」

 

「あの……先程からのお話って、スキズさんの事ですよね?」

 

 あーでもないこーでもないと5人が話していると、吹雪が不意に言葉を差し込む。

 

「ああ、彼女の機能が既存艦娘、この世界の艦娘に通じるかが問題になってな。

 下手をすれば艦娘を一人失ってしまうのだから、頭が痛い……」

 

「と言っても艤装だけですし、艤装の練度は新人のままになってしまいますが、再建造と言う手も残っています」

 

「だが艦娘本人にしたら、今まで付き合ってきた大事な戦友だ。

 いっそ募集にするのも已む無しだが……」

 

「……」

 

 提督達の会話に吹雪は盆を胸に抱いて思案する。

 本人達はその艦娘を差し置いて会議をしているが、その大事に思ってくれること事態は吹雪には嬉しく思う……だが。

 

「司令官、スキズさんの改装実験、私が志願します」

 

「「「「「!!」」」」」

 

 先の超兵器戦では吹雪もその場に居た。

 尾張と言う艦娘と、シュトゥルムヴィントと言う恐るべき強敵、その死闘をその目に、その脳裏に焼きつかせていた。

 確かに尾張に任せておけば超兵器戦では安心できるだろう。

 だが、それは1体1での話しであり、万が一……あれと同等の性能を持った複数の超兵器との戦いになれば、その限りではない。

 

「これからの戦い、スキズさんの改装によって手に入れた力が必要になります。

 現場を見て、そしてスキズさんと尾張さんを見て、私はより強く感じました」

 

「ふむ……」

 

 吹雪の言葉に北条は目を閉じて思案し始め、そのまましばし黙り込む。

 5人の視線を向けられたまま時は進み、そのまぶたが開かれた。

 

「よし、吹雪君、君に特殊任務を与える」

 

「はい!」

 

「駆逐艦吹雪はスキズブラズニル監修の元、その艤装にできる限りの改装をせよ」

 

「了解しました!」

 

 

 

「と言うわけで、吹雪ちゃんの艤装大改修実験~」

 

「「わ~」」

 

「わ、わ~」

 

 しばらくして、再びスキズブラズニルの艤装の元に戻る。

 ここから先は上位の関係者しか見れないようにしており、夜まで外壁の解体作業をしていた作業員は既に就寝していた。

 そして周囲には口の堅さで信頼の置ける憲兵を配置し、今ここに居るのは5人の提督と尾張達別世界組、そして今回実験台となる吹雪、そして技術や筋として定評がある明石と夕張の姿があった。

 そんな中で明るく言ったスキズブラズニルの音頭に、明石と夕張は元気にその音頭に乗り、吹雪は若干引き気味に乗ったのであった。

 

「ふふふ、さぁてどうやって改装しようかしら」

 

「吹雪さんは何か希望が?」

 

「え、えっと、艦隊の護衛としてできる限りの事をしたいです。

 それこそ、戦艦や空母の護衛を……」

 

「つまり目に見える範囲の者を守りたいわけかしら?

 なかなか欲深くて甘っちょろい希望ね」

 

「うっ……」

 

 吹雪の希望にスキズブラズニルの言葉が鋭く差し込む。

 一旦冷淡な目をしていたスキズブラズニルだが、不意ににこやかな表情へと変わる。

 

「っと、普通の技術屋なら言うでしょうね。

 でも大丈夫!このスキズブラズニルに任せなさい!」

 

 そう言いながらホワイトボードに吹雪の改装案を記した紙を張ってゆく。

 それは予めスキズブラズニルが、吹雪型の船体を元に設計した図面だった。

 

「まず第一案は速度と打撃力を重視した案、主砲はそのままに魚雷と主機、そしてボイラーを改装する案ね。

 これは魚雷を三連装の新型超音速酸素魚雷発射管に換装して、主機を駆逐タービンε2基、ボイラーを駆逐ボイラーε2基に改装した案よ。

 速力は55.7ktほどになるわ」

 

「ふむ、確かに打撃力がありそうだが、その魚雷の威力はどれほどだ?」

 

「うーん、大和型戦艦なら3~4発で沈むくらいの威力は保障するわ」

 

「……十分だな」

 

 あっさりと言ったスキズブラズニルの言葉に、口を挟んだ北条はそれしか言えなかった。

 超音速魚雷は所謂スーパーキャビテーション魚雷であり、シクヴァルがその最たる例として上げられ、水中速力は既存の魚雷を上回っており、しかも炸薬の量と性能は九三式酸素魚雷よりも上だ。

 ちなみに速力の方は既に

 

「それで第二案だけれどこれは対空と対潜、そして速度に主眼を置いた兵装になるわ。

 武装については魚雷発射管はそのままで、主砲を152mm速射砲3基、機銃は35mmCIWS4基を煙突脇に換装、対潜兵装はASROCを2基、前部主砲後部に横並びで換装してあるわ。

 機関は第一案のままよ。

 速力は52.6ktね」

 

「ふむ……吹雪君どちらの案にするかね?」

 

「……」

 

 吹雪はスキズブラズニルが出した二つの案を見比べる。

 片方は対艦特化、もう片方は対空・対潜に優れている。

 そして今の自分はどうか?対艦・対空・対潜の性能、そのどれもが改二としては平均的な性能だ。

 そして改めてその設計者を見てみると、ニコニコとした顔を浮かべている。

 

「あの……スキズさん」

 

「なにかしら?」

 

「その二つを合わせた設計案ってありますか?

 と言うかあるっていう雰囲気が駄々漏れですよ?」

 

「それにスキズ、その設計図は補助兵装を抜いてあるわね?

 弄くるなら現状で出来る事をとことんやるっている貴女にしては、少し手ぬるい感じがしたもの」

 

「あらら、ばれちゃあ仕方ないわね。

 尾張なら兎も角、初めて私の改装を受ける娘が見破るのは初めてよ~」

 

 そう言いながらスキズブラズニルは第三案と言うべき設計案を出した。

 それは第一案と第二案を合わせ、補助兵装を加味しつつ、対10cm装甲で防御力を上げた改装案であった。

 速力は65.7kt。

 

「本命はこれだけれど、一気にやると色々齟齬が出るだろうしと思ってあえて出さなかったのよ」

 

「齟齬?」

 

「そう、私の改装は所謂人間で言う全身整形の様なものよ。

 それを行き成り全部やるのは、精神に変調を来たしてしまうと言う危険性があるわ。

 それでもやるのかしら?」

 

「……やります!

 それで皆を守れるなら!」

 

 一瞬逡巡するが、すぐに気を持ち直しスキズブラズニルの問いに応える。

 

「……分かったわ。

 じゃあ貴女の艤装をここにおいてちょうだい」

 

「はい」

 

 吹雪が艤装をドックに置くと、尾張と同様に隔壁が閉じられ駆逐艦吹雪の設計図が出る。

 そしてスキズブラズニルは手馴れた仕草で吹雪の艤装を弄ってゆく。

 

「初期の日本の駆逐艦船体って、余剰重量少ないからやり応えがあったわぁ。

 まあ予め頭の中に叩き込んであったし、私にかかればこの通りよ」

 

 改装作業は直ぐに終わり、隔壁が開くとそこには形が変わった吹雪の艤装があった。

 主砲は丸みを帯びた単装の多角形砲塔になり、魚雷発射管は大型化、そしてマスト横にはCIWSとASROC発射機が設置されていた。

 吹雪は新しく改装された自分の艤装を背負い、違和感の為か少しふらつく。

 

「おっとと、大丈夫?」

 

「は、はい、少し重量とバランスが……でも、なんだか力が以前より漲って来て、これなら単独でも何とか出来そうだって思えてきました!」

 

「まあ、あまり無理はするな。

 今回は既存の艦娘が、スキズブラズニルの改装を受けれるかどうかの実験だったからな。

 今はその結果があれば十分だ」

 

 吹雪の様子に変化は見られなかった為、スキズブラズニルの改装は既存の艦娘にも適応できると分かり、北条はほっと一息吐く。

 今回は念のために初期状態の艤装を用意したので、仮に失敗して失われても惜しくは無い。

 逆に改二艤装と今回の改装で手に入った艤装で、戦術の幅が広がったと感じている。

 

「確かに元の艤装より大分重量が増えたけれど、問題ないはずだわ。

 あとはバランスと速度に貴女が付いていけれるか……、もし無理だったら元に戻して上げるから安心して」

 

「はい!

 でも、必ず使いこなして見せます!」

 

「そう、じゃあ私は先に休ませてもらうわね」

 

 スキズブラズニルは吹雪にそう応えながら背を向ける。

 既に興味がないと言わんばかりの後姿だが、指導を終わりに任せたと言う意思表示だと、尾張はそう感じ取った。

 

「吹雪さん、既に感じているとは思いますが、その艤装は謂わば駆逐艦娘型の超兵器。

 強大な力に貴女の芯が飲み込まれないように、明日からは私自らが指導します」

 

「超兵器……私が……」

 

「超兵器に対抗する為には、あちらと同じ舞台に立たなければなりません。

 ですが特性で言えば我々はまだ船の範疇です。

 燃料に関しては通常の艦娘に比べれば消費は少ないですが、その船体以上の燃料と弾薬は持てません。

 ですから、明日から貴女にはその艤装の効率的な使い方を指導します」

 

「はい!よろしくお願いします!」

 

「さて、ではそろそろ我々も寝るとしようか」

 

 吹雪と尾張の会話に一区切り付いたところで、北条がそう言う。

 

「そうですわね。

 ですが、今日に関しては収穫が多いのも確か、私も帰ったら改装に出す娘を選抜しましょう」

 

「こちらも空母の内一人を出すとしよう。

 まあ予備の艤装はある事だし、そちらを出す予定だが」

 

「私のほうでも巡洋艦を出すとするか。

 さて、明日は朝一で呉に戻らねばな……筑波提督はどうする?」

 

 筑波以外の3人が口々に言った後、毛利が筑波に問う。

 

「私は、尾張がいるだけで十分です。

 これ以上の戦力拡充は、他の鎮守府との足並みが乱れるでしょうし」

 

「そうだな……」

(驕りは無い……か。

 横須賀の後進は安泰だな)

 

 筑波の返事に毛利は内心を隠しつつ、頷きながらそれだけを言う。

 そして頼りになる後進の姿を見て、毛利は誰を出すか思案するのだった。




はい、と言うわけで最初の犠牲者の吹雪さんです。
速度以外は比較的まともです。
私の設計思想って結構固めかもしれませんね、平賀さんを見習いたいです。

さてイベントですが、私は何とかE-7を攻略できました。
風雲、海風、江風は攻略中に出ましたので、あとは瑞穂と朝霜を掘るだけの作業です。
イベント終了まであと約2週間、皆さんも余り無理しない難易度で攻略いたしましょう!

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