艦娘の咆哮-WarshipGirlsCommandar- 作:渡り烏
雪山に遭難したり、EOマップの攻略したりしていました。
今回から暫くの間は2015春イベを題材にやっていこうかと思います。
まあイベントであそこまで行ったんだからあいつを出さない事にはねぇ?
横須賀基地襲撃事件から数週間後、本土にある鎮守府はあわただしくなり、それはこの藤沢基地も例外ではなかった。
予てより予定されていた大規模作戦、その準備をしているからだ。
「では、予てより計画していたカレー洋制圧作戦、第十一号作戦の説明を行いたいと思います」
筑波はこの会議室に居る、主要な艦娘全てに向かってそう切り出した。
「まず概要としては偵察作戦であるカレー洋哨戒作戦、制海権確保の為のカレー洋リランカ島沖での艦隊戦、敵補給路分断作戦のベーグル湾通商破壊戦、最後にリランカ島確保の為のリランカ島攻略作戦、この4段階が第十一号作戦の主作戦となるわ」
ホワイトボードに張られた地図に矢印と用紙、そして写真を組み合わせて作戦を説明する。
「今回の作戦はイタリア海軍と共同で行う事となるわ。
政府と大本営はこの作戦でイタリアとの直接連絡路を確保したいみたいだし。
だから、こちらの作戦が早めに終わったらそちらの支援に行くように、命令があるかもしれないから皆にもそう伝えておいて。
皆には出来れば地中海まで行くつもりで頑張って貰うわ」
「ふっ、それに応えれない私達ではない。
なあ大和?」
「ええ、やるからには、大西洋にだって行って見せます」
「ふふふ、心強いわ。
あ、あとこれは大本営からの通達で、先の横須賀基地襲撃で生き残った『かが』と『ブルー・リッジ』を前線指揮所兼、艦娘の休息・補給所として、スキズブラズニルを前線修理施設として作戦海域手前に配置、私達提督も本土の北条提督と毛利提督以外は護衛艦『かが』で指揮する事になる。
だから、消費物資は可能な限りかがに集積して、載せ切れなかった分は最寄のブルネイ鎮守府に集積する事になるけど、今回も厳しい戦いになるのは間違いないし、超兵器が出てくるかもしれないから少しの油断も出来ない」
この二つの艦艇は横須賀自衛隊・在日米海軍基地襲撃の際に、機器の不具合でドックに入っていた為難を逃れていた。
「それは仕方ないと思います。
ですが、今回は鋼兵装を作戦海域まで持って行くのでしょう?」
加賀の問いに筑波は頷く。
「吹雪、大鳳の鋼兵装も『かが』に乗せる予定よ。
そして尾張と利根は本土に残って、仮に超兵器が本土に襲撃してきた時に備えて待機。
まあ、先のG掃討戦も横須賀だけじゃなく、ここや佐世保でもやってかなりの数を狩ったし……っと」
筑波はそう言いながら机に置かれた封筒の封を切り、中にあった書類を取り出す。
「あのGの事だけれど、研究班とスキズブラズニルの分析で面白いことが分かったわ」
そう言いながらホワイトボードにそれらを貼り付けていく。
「武装はミサイル以外は、平均的な巡洋戦艦と同程度の装備しかなかったこと、そして過度なくらいの遮蔽技術とあの触覚の構造から、あいつらはどうも偵察役みたいなものらしいのよ。
通信範囲は電離層も利用して、地球半周分くらいの通信能力を持っている事も判明したわ。
中継役も含めれば送信先の特定は不可能だけれど、少なくとも超兵器側が本腰を入れて、こちらの戦力を探りに来てる事は分かったわ」
「「「「……」」」」
筑波の台詞に会議室に居た艦娘達は沈黙する。
深海棲艦とはまったく違う戦術と戦略に、凝り固まった大本営も身構えるほどであった。
なによりも、日本の玄関口に入り込まれたというのは衝撃的で、哨戒コースの見直しは急務なのだが、その対象が補足し難いと言うのが頭を悩ませている。
「一応対抗処置として、レーダー照射を多数箇所に設置した受信アンテナで受信、目標を捕らえる方式を取るわ。
これは実際のステルス機を相手に実験して実証された対ステルス技術ね。
設置と調整にかなりのコストと時間が要るけれど、やって損は無いわ」
「バイスタティックレーダーですか、確かにそれなら可能性はありますね」
ステルス機は完全にレーダーを吸収したり、反射したレーダー波がそのまま消えるわけではない。
反射されたり減衰したレーダー波を複数の鋭敏な受信アンテナで捉え、それらのデータを統合して位置を割り出すのが特徴で、当初は技術・練度的問題で難しかったが、原子時計やハイテク技術の応用で信頼できる精度まで持ってこれている。
それらの知識もこの場に参加していた尾張を含む、全ての艦娘は知っていた。
「あと、あと対シュトゥルムヴィント戦と、G殲滅戦で大量に出てきた金塊は、全てスキズブラズニルや技研の開発資金に当てているわ。
勿論、政府の特別増予算枠にも計上されているし、『戦利品』だから不正入手金と言うわけでもないのだけど、これで味を占める連中が出て来るかもしれないわね……。
東京湾襲撃と言う経験をした後だから無いとは思うけれど」
戦争による破滅的経済に一部の人間が幻惑されるのは、歴史的に見ても事実である。
短期的に産出される莫大な利益が写す黄金郷は、経済人なら誰しもが一度は夢見る桃源郷だが、その先にあるのは無益な搾取によって荒廃し尽くし、生き物が住まぬ煉獄の園だ。
むしろ二度の大戦でそうならなかったのが奇跡的だと言えよう。
「さて、話を戻してここから選出する人員を発表するわ」
藤沢基地カレー洋派遣艦隊
第一作戦群:川内、神通、陽炎、不知火、霰、霞
第二作戦群第一艦隊:扶桑、山城、高雄、愛宕、千歳、千代田
第二作戦群第二艦隊:那珂、Z1、Z3、黒潮、雪風、プリンツオイゲン
第二作戦群支援艦隊:伊勢、日向、朝潮、大潮
第三作戦群:伊勢、日向、鈴谷、熊野、翔鶴、瑞鶴
第四作戦群第一艦隊:長門、陸奥、金剛、榛名、隼鷹、飛鷹
第四作戦群第二艦隊:長良、綾波、時雨、最上、三隈、ビスマルク
第四作戦群支援艦隊:榛名、霧島、扶桑、山城、満潮、荒潮
予備戦力兼本部護衛艦娘:
航空母艦:赤城、加賀、蒼龍、飛龍、大鳳
戦艦:大和、武蔵
重巡洋艦:妙高、那智、足柄、羽黒、摩耶、鳥海
軽巡洋艦:大淀、阿賀野、能代、矢矧、酒匂
駆逐艦:白露、村雨、五月雨、涼風
「この中で呼ばれなかった娘は後方支援活動に従事してもらうわ。
勿論超兵器に対する警戒も忘れずにね。
細かい打ち合わせは各艦隊で行うように、では解散!」
「しかしまあ深海側と言うか、空母水鬼もよく私が派遣される事を許可したわね」
「直接的脅威度では貴女は高くありませんからね。
それに半ば渋々と言った感じでしたが」
「あっちはあっちで苦労しているらしいからかしら?
まあこっちとしてはありがたい話だけどね」
「そう言えば、言葉の端々に疲れみたいな兆候がありましたね。
あっちでもやはり派閥争いに似た何かがあるのでしょうか」
深海棲艦の指揮系統は今だに解明されていない。
一応最初の空母棲鬼との接触で水鬼という存在が各海域での司令塔、そして姫・鬼は艦隊指揮官の様な存在だろうと目されているので、その指揮系統について空母水鬼に聞いてみたが、そこまで応える義理は無いと言われてしまった。
「と言うことは、今回の作戦海域であの空母棲姫とは別の個体がいると?」
「そう考えるのが妥当ね。
今までも沈めた筈の空母棲姫や空母水鬼が出ているのもその証拠よ。
きっと別の個体が派遣されたからこそ、今回みたいな交渉が出来たのでしょうし」
各鎮守府の艦娘に細かい仕草の違いなどがあるように、深海棲艦にも同じ駆逐艦イ級でも動作が異なる者が居るのは、以前から確認されていて研究され始めていた所ではあった。
今回の件は代替が効く同種の深海凄艦が居る事を示し、その総数が不明であることが判明したのであり、人類が窮地に立たされている事には変わりがなかった。
「ところで大鳳のF-22とF/A-18の中に、やたらと動きが良いのが2、3機居たけれど……。
二人は何か知らない?」
「そっちは専門外だけれど……尾張は?」
「少なくとも私の記憶の中にはありませんね」
「なんだかF-22は全機青いリボンを、F/A-18Eも悪魔みたいなマークを付けていたんだけれど、貴方達が知らないんだったら仕方がないわね」
三人はその話題に興味をなくし、改めて今後の活動内容を決めていく。
だが作戦終了後、判明する事になるのだが佐世保から次の様な報告が届いたと言う。
報告:F-22(TFW118)を取得しました。
:F/A-18E(Gargoyle隊)を取得しました。
夜の帳が下りた大西洋の北にある小さな島の沿岸。
ここには深海棲艦の根拠地があったのだが、今では深海棲艦の食い散らかされた残骸が漂い、その沿岸部に残された司令部施設らしき建物には明かりが点いていた。
「さて、日本に放った速度狂いとローチの反応がなくなったわけだが、これは我々の脅威が居ると仮定した方が良いだろうな」
「日本か、奴に堕とされた苦々しい記憶が蘇りそうだ」
「あの国の戦艦は有数の実力を持っている。
それに軽巡等の小型艦艇の雷撃能力も侮りがたい。
存外、油断していたところを日本の艦娘にやられたのだろう」
「こっちは自国防衛で手一杯だからな。
お陰で餌の余力がこっちに来て仕方が無いが」
「で、今度は誰が行くよ?
ドーラの奴はここの防衛……と言うかここから動けないからな」
「ならば私が行こう。
あそこは私にとって庭も同然だ」
そう言いながら立ち上がったのは、黒髪に長身の女性だが、一目で日系と分かる容姿をしている。
そしてその片手にはカバーを掛けているが、恐らくは長物であろう物が握られていた。
「分かった。
では暫定的な指揮官として、貴公が日本へ向かう事を許可する」
「なら私も行っていいか?
遠近両方で攻めた方がやりやすかろう」
「ふむ……分かった。
だが戦力的有利とは言え、シュトルムヴィントの二の舞にはなるな。
それと随伴艦として2個打撃群も付ける、好きに使え」
「「了解」」
指名された日系の超兵器二人は、命じられてから数時間後には、北極圏周りで日本へと向かうコースを取る。
通常の艦艇ではまず取らないコースではあるが、超兵器ならばそれが可能なだけの出力と質量、そして熱量がある。
「しかし、幾ら日本の艦娘が打撃力があると予想できても、あの2種をやれるとは思えないのだが」
「いや、油虫は対処方法さえ確立できれば難しくはない、耐久力も通常の戦艦位だからな。
だがシュトルムヴィントは違う、あいつは超兵器としては速さのみに特化した者だが、耐久・攻撃力も共に戦艦以上で、補助兵装も充実させて非の打ち所が無かった。
考えられる原因は……」
「我々と同種かそれに似た存在が入る」
二人の脳裏にあの戦艦が蘇る。
大和型より少し大きめの船体、超長砲身を備えた大口径の三連装砲塔、船舷に敷き詰められたVLSと対空火器群、そして超兵器には及ばないまでが可能な限り用意された足の速さ。
戦艦尾張と言う二人にとっては同郷の敵となった存在だ。
「我々がここにいる原因が来れたのだ。
確率は低くてもあいつがこの世界に来ている可能性は大いにある」
「ああ、だからこそ今度は負けるわけには行かない」
「「2対1と言う状況に陥れたとしても」」
二人はそう確認すると、春を迎えたグリーンランド脇を抜けていく。
雑談しつつ、脇を固める支援艦隊と共に道中の深海棲艦を蹂躙しながら……。
「グ……」
彼女達が突き進んでいき、残骸が漂う海面の中で影が動く。
それは、日本でレ級と呼称される深海棲艦のエリートだった。
「ヤッテクレタネ……。
コノ私ガココマデヤラレルナンテ……ククク」
苦痛の中吐き出した台詞の後に苦笑が漏れる。
アメリカやイギリスの艦娘達との戦闘で、彼女だけは損傷を負いながらも必ず生き残ってきたが、今回ばかりはこのまま野垂れ死ぬと確信していた。
だがそれ以上に……。
「アア、マッタク、楽しくなってきたじゃないか」
くぐもっていた言葉に正しい旋律が宿る。
そして周りを漂っていた深海棲艦の肉を食らった。
「もっとだ、あいつらに打ち勝てる力を!」
絶対強者を討ち果たす喜び、それを味わう為に今は回りに漂う有象無象を食らう。
カニバリズムめいた光景は、狂気と怨嗟が漂いレ級の身体に変化を起こす。
艤装の修復が始まると同時に僅かずつ膨らみ始め、元から赤いオーラを漂わせていた周囲は消え去り、目に青い光が灯る。
それは単なる強化なのか、それとも進化なのか。
「……なにあれ」
そんな中遠くから眺めているものが居た。
彼女はアメリカ海軍の護衛空母艦娘であるスワニー。
艦載機からの視点で異常があった海域を偵察していたのだが、その最中に先のレ級を見つけたのだ。
(ちょーっとこれはまずいなぁ。
とりあえず写真を撮って、帰還しちゃお)
望遠で写真を一枚撮影し、スワニーは帰還の途に着く。
その写真と状況報告で、深海凄艦が出現してから再びモンロー主義と成っていたアメリカ議会は、大いに荒れ二分する事となるのは彼女自身が一番知っていた。
(何時までも甲羅に引っ込んだ亀をしてても駄目、状況を変えたいならこちらからアクションをしないといけないのよ!)
あのレ級を撮影する前にも、超兵器との戦闘と何処へ向かったかなどの写真や情報も揃っている。
あとは……。
「どうやって上の方に握り潰されずにするかだなぁ」
その辺りを思案しながら、彼女は母港へと帰還した。
どうにもグダグダ感が否めない。
いくら準備回でもこんなので大丈夫なんだろうか……。
編成は私の好みです。
あの時の編成を覚えていないとも言う。