艦娘の咆哮-WarshipGirlsCommandar-   作:渡り烏

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筆者「前回の後書きでまだ無事だと言ったな」

泊地水鬼「ソ、ソウダ。ダカラ……」

筆者「あれは嘘だ」

泊地水鬼「ウワアアアアアアアアアア!!」

_人人人人人人人_
> 突然の損傷 <
 ̄YYYYYYY ̄


日誌二十頁目 第十一号作戦③

 

 

 

「現状を説明する」

 

 プロジェクターで格納庫に設置されたスクリーンに、カレー洋の海域図と彼我戦力図を投影しながら鍋島が言う。

 目の前にはこの大規模作戦に参加している全ての艦娘が居り、スクリーンが見えない者にはモニターが用意され、提督達の代表として説明を任された鍋島と朝倉の言葉を聞く。

 

「今現在我々は超兵器による襲撃を受ける危機に瀕しており、先程イタリア海軍のヴィットリオ・ヴェネト級戦艦の艦娘である、リットリオ君を保護している。

 彼女は今ドックで傷を癒している最中であり意識も無いが、スキズブラズニル君が彼女の艤装を修復した際に彼女の正体が判明した」

 

「そして当作戦ではイタリア海軍もステビア海で作戦行動をしていました。

 超兵器の様子からして今は『満腹状態』なのでしょうけれど、……他国の艦娘とは言え犠牲者が出てしまったことは変わりありませんわ……」

 

 鍋島に続いて朝倉が哀しげな表情で言う。

 

「だが、今この場で超兵器に対抗できるのは吹雪君と大鳳君しか居ない。

 だからこそ、このアンズ環礁に存在する泊地水鬼を殲滅し、二人の進撃路を確保するのが最優先事項となる」

 

「勿論二人の力を使ってここをごり押しする事も考えましたわ。

 でも、それだとここを落としたあと不測の事態に陥った場合、このカレー洋の制海権も超兵器に奪われてしまう事になります。

 だからこそ、このアンズ環礁は通常の艦娘戦力のみで切り抜けて頂きたいのです」

 

「では先に今回現れた超兵器について説明する」

 

 スクリーンに超兵器の姿が映し出される。

 短く整えられたブラウンの髪に長身の体躯、服装は過去のドイツ帝国軍の制服、そしてその艤装は巨大で一言で表わすならば玉座である。

 陸棲深海棲艦以上の大きさを誇るそれには、様々な武装と二つの航空甲板が備えられ、その甲板上には航空機が露天駐機されていた。

 

「スキズブラズニル君の言によれば彼女の名はムスペルヘイム、北欧神話に出てくる灼熱の国の名前だな。

 武装は彼女が確認している限りでは主砲は長砲身の43.2cm砲、他はミサイル発射機やバルカン砲なのだそうだが、先程リットリオの艤装の損傷を確認したところ、かなり高出力の光学兵器の使用が確認されている」

 

「破壊痕は艦船サイズに置き直すと約3メートルと少し、そしてこの損傷は艦の反対側まで貫くもので、実質リットリオの艤装は全損に近い状態になっています。

 恐らく、ヴィルベルヴィントと同様に強化型なのでしょう」

 

『『『……』』』

 

 会議室に沈黙が下りる。

 ヴィルベルヴィント……シュトゥルムヴィントよりも、強大な超兵器の出現に百戦錬磨の艦娘とて、怖気が走るほどの脅威が出現したのだ。

 だがそんな誰よりも緊張しているのは吹雪と大鳳の二人である。

 両名とも電磁防壁と言う補助兵装を装備しているが、万が一抜かれた場合その被害は計り知れない。

 装甲に46cm防御を施された大鳳はまだ良い、だが吹雪には対10cm用の防御能力しかないのだ。

 即ち、直撃すれば死も同然。

 

「っ!」

 

 背筋が凍りつくような悪寒を覚え、顔色が青くなるのを自覚できる。

 顔も他が見たら恐ろしいほどに強張っているだろう。

 

「なによりも警戒すべきなのは、この二つの飛行甲板から発艦する航空機の数と種類だ。

 二式大艇等の大型機は勿論、F/A-18などのジェット機も確認されている」

 

「またその大きさから考えて、陸棲深海棲艦と同等の航空戦力を有していると予測されていますわ」

 

 説明だけでは実感がわかない。

 だが確実のそれらを有する脅威が目の前にいる。

 そんな現実と非現実を認識し、艦娘達は頭が混乱しそうになる。

 

「……横須賀の吹雪君、出来そうかね?」

 

 鍋島が横須賀の吹雪に声を掛ける。

 この作戦には複数の吹雪が参加しているため、その配慮である。

 

「……正直に言えば怖いです。

 シュトゥルムヴィントの時もそうでしたし、準超兵器級の油虫の時だって自分が負けたらと考えたら、震えが止まりませんでした」

 

 しかも今回はあのシュトゥルムヴィントよりも強いと目されている超兵器だ。

 吹雪が感じている緊張と恐怖心を、彼女を見た他の艦娘達は感じ取っていた。

 

「でも、この超兵器を妥当できる可能性があるのは私と大鳳さんしか居ない。

 どうか皆さん、私と大鳳さんを、あの超兵器の元へ続く道を切り開いてください!

 超兵器は私達で必ず沈めます!」

 

「よく言った!」

 

 吹雪の言葉に同じ鎮守府に所属していた長門が立ち上がり、吹雪の元に歩み寄る。

 

「泊地水鬼の事は我々に任せてもらおう。

 お前はそれまでに、万全の状態で準備をしてくれ」

 

「はい!」

 

 超兵器妥当に向けて日本に所属する艦娘達が団結したのを確認し、鍋島はプロジェクターの映像を閉じる。

 

「では、これより第十一号作戦の拡張作戦を決行する!

 総員、臨戦態勢!」

 

 号令が発され、艦娘達は敬礼を返し、その場は解散となった。

 

 

 

「う……」

 

 目を開けるとそこは見知らぬ天井だった。

 

「ここ……は?」

 

「あら、目が覚めたのね」

 

 彼女……リットリオに応えた声の主を探してそちらに顔を向けると、白衣を着た女性が居た。

 

「貴女は?」

 

「私?私はこの船に同乗させて貰っている艦娘で、スキズブラズニルと言うわ。

 ここは日本の護衛艦『かが』の艦内よ」

 

「スキズ……聞いた事がない名前ですね……それに日本の船……!

 皆は!?他に誰か居ませんでしたか?!」

 

 ほんわかした雰囲気だったリットリオだったが、事態を飲み込んだのか緊迫した表情でスキズブラズニルに問い詰める。

 

「残念ながら私達が作戦海域としていたリランカ島には、貴方しか流れ着いていなかったわ」

 

「そんな、ヴィットリオ姉さん……ローマ、アルフーレド級の皆……うう……」

 

 スキズブラズニルが事実を言うと、リットリオは毛布で顔を覆いながら嗚咽を零す。

 そんなリットリオを彼女は暫く眺め、時間が経ちようやく泣き止んだリットリオの顔には闘気が満ちていた。

 

「ここの提督はどちらに?」

 

「いえ、ここに呼ぶわ。

 ……ああ、鍋島提督?彼女が目を覚ましたわ。

 ……ええ、気力は十分だし、失った血液量も大したことではないから、戦闘に支障はないわね。

 艤装も私のほうで修復しているけれど、艤装練度はリセットされていると見て良いけれど、彼女自身の経験はそのままよ」

 

 そこから鍋島が「少し待ってくれ」と伝え一旦通話を切る。

 それから鍋島が来るまでの間、スキズブラズニルはリットリオから当時の状況、作戦開始当初のイタリア艦隊の編成、超兵器から受けた攻撃の種類を聞きだす。

 

「あの、さっき私の艤装が新品同然だって……」

 

「ええ、そうね。

 艤装の妖精は殆ど消滅していたわ。

 恐らく貴方を守ろうとして身代わりになったのでしょう。

 一応復活はしているけれど、練度が殆ど伴っていない新兵同然の状態よ」

 

「そう……ですか、ありがとう……」

 

 改めて失った物の大きさに胸を打たれつつ、犠牲になった自らの妖精に感謝の言葉を紡ぐ。

 そこへ医務室のドアがノックされた。

 

「入って良いかね?」

 

「どうぞ」

 

「失礼する」

 

 ドアが開くと同時に鍋島が入ってくる。

 

「失礼、日本国防衛省、艦娘大艦隊本部運営課、佐世保鎮守府所属の鍋島と言う。

 此度の僚艦の悲報、こちらとしてもまことに残念でならない」

 

「いえ、何時かはこうなると思っていましたから……それに、ここで立ち止まったりしたら姉さんや妹に顔向けが出来ませんし、どうやら既に私は母港とは既に縁が切れてしまっているようです。

 このまま貴方方と一緒に戦わせてください!」

 

 鍋島に言葉を返したリットリオの顔には、戦艦娘としての覇気が満ちていた。

 

「うむ、良い返事だ。

 そんな君に一つだけ我々にとって共通の約束がある」

 

「え……なんでしょう?」

 

「笑わないで聞いて欲しい」

 

 困惑するリットリオに、真面目な顔で鍋島が彼女と視線を合わせる。

 

「必ず生きてここに帰ってきて欲しい。

 それだけだ」

 

「……ふ、ふふふ」

 

 一瞬呆然としたが、直ぐにリットリオは微笑むように笑い出し、暫く笑うとようやく吹っ切れた表情で鍋島に向き合う。

 

「良いですね。とても良いと思います」

 

 リットリオはそう一言言った後、にっこりと笑った。

 

 

 

 蒼穹の空に一筋の飛行機雲がたなびく。

 だがそれを引いている当の航空機は、ジェット機特有の高バイパス比のエンジン音を響かせ、大出力ターボファンエンジンの咆哮を鳴らしていた。

 その主はF-22、猛禽と言う名を与えられた鋼鉄の荒鷲が、通常の艦娘が使う偵察機では撃墜される大空を飛んでいる。

 これは鋼・装備を装備した大鳳が飛ばした物であり、この一機のみが特別動きが良い上に航続距離もあるので、先んじてムスペルヘイムの偵察役に打って出たのだ。

 ムスペルヘイムの制空権に近付き、その腕の中へと突っ込んでいった。

 

「……」

 

 その母艦である大鳳は当のF-22の連絡を待っている。

 あのリボンの部隊章が入った機体からは、他とは違う何かを感じた。

 だからあの機を偵察役に出したのだ。

 後は信じて待つだけしか出来ない。

 そう考えていると、当のF-22から通信が入った。

 

「っ!敵超兵器を確認!

 超兵器は飛行甲板に多少の損害はあれど、発着艦に問題はなく。

 偵察機に殺到中途の事!」

 

「偵察機を戻せ!」

 

 武蔵の指令に大鳳はそのF-22に帰還命令を出すが、直ぐに困惑した表情を浮かべる。

 

「え……、『当機はこれより阻止行動を開始する。至急増援を派遣されたし』の通信後、途切れました……」

 

「航空機が命令を聞かない!?」

 

「あ、ちょっと、皆慌てないで!

 あーもう!このF-22と言う機体の子達我侭すぎます!

 今から順次発艦させてあげるから待ってて!」

 

 大鳳が艦載機を順次発艦させる様子を、同じ鋼・艤装を装備した吹雪が見ていた。

 

「大鳳さん大変そう……」

 

「吹雪ちゃんの艤装は大丈夫なの?」

 

「あ、大和さん。

 はい、私の艤装はそんなにやんちゃではないですね。

 まだ新型超音速酸素魚雷の扱いには、少し手間取ってますけれど」

 

「雷速が今私が使っている九三式酸素魚雷の2.25倍だったかしら?

 それだけ早い上に射程も長いから確かに癖があるわよね……」

 

 そこで大井が横から会話に参加してくる。

 

「でもさー、魚雷だけじゃなくて吹雪自身の速力も上がってるわけっしょ?

 60ノットで航行する艦娘から吐き出される魚雷って、信管とか安全装置ってどうなってるのさ?

 発射して海面に着いた途端に信管が誤作動しそうで怖いんだけど」

 

「スキズさんが言うには魚雷自体は、外側からの力にはかなり頑丈に作ってあるそうで、安全装置はジャイロによる距離測定で、一定の距離を進まないと信管は作動しないみたいです」

 

「へー、一応そう言う対策はしてあるんだ。

 しかしますます規格外だねぇ……」

 

 そう呟きながら北上はまじまじと吹雪の魚雷発射管を見る。

 傍から見ると生足を眺める変質者にしか見えないが、それに突っ込むものは誰も居らず、むしろ吹雪と大鳳の艤装が気になる艦娘の方が多かったのだ。

 勿論両名の母港の艦娘は詳しい性能を知っているので、彼女達も加えて話す事となったが、状況は徐々に変わっていった。

 

「ムスペルヘイム、攻撃隊の発艦を確認!」

 

 F-22の部隊から送られてきた画像には、枢軸軍機で零戦三二型、雷電一一型、天山、彗星三三型、AV-8BJ、Ta-152、Fw190A-2、Ju87C。

 米英軍機でB-26G、AU1、Fw200C-8、AH-1Z、AH-64D、P-47D、F/A-18、F6F、ボーファイター、ウォーラスとそうそうたる面子が出てきた。

 そして最後に送られてきた画像で大鳳が驚愕する。

 

「二式飛行艇!?」

 

 それは大戦中に最も完成された飛行艇として名高い二式飛行艇であった。

 勿論航空甲板から発進できるような物ではないが、現にそれが飛び立っているのだ。

 大鳳はそれらの情報を今現場に居る艦娘と、後方の司令部に報告する。

 

『そうか……大鳳、君はF-22で出来うる限りの航空機を叩いてくれ、作戦はこのまま進める事にする。

 長門君、君が現場指揮官としてアンズ環礁の深海棲艦を攻撃する指揮を預ける』

 

「了解した。

 これより作戦に移る」

 

「さあ、忙しくなるわよ。

 横須賀の皆、ほかの鎮守府の娘達に負けないように頑張りましょう!」

 

「横須賀の陸奥がああ言っているが、我々は我々の出来る限りの仕事をしよう。

 呉の艦娘ここにありとこの戦場に居る全ての者に知らしめろ!呉艦隊前へ!」

 

 横須賀を筆頭に各鎮守府の艦娘達が突撃を開始する。

 目指すはアンズ環礁、そこは嘗てない三つ巴の鉄火場となるのは、誰の目から見ても明らかであった。

 

 

 

「ク……被害報告ヲ、ソレト、艦娘共ノ動向ハ?」

 

「……駆逐艦ガ58隻、巡洋艦ハ全滅、戦艦モ7割ガ沈ンダ。

 空母ハ私モ含メレバ5隻居ルガ、艦載機ハホボ全滅ダ。

 艦娘達ニ関シテハマダ掴メテイナイガ、恐ラク近イウチニ此処ヘ仕掛ケルダロウナ」

 

「ソウ……ココノ8割ガヤラレタノネ……。

 ヤハリ……空母水鬼ノ忠告ヲ……素直ニ受ケルベキダッタカシラ」

 

 アンズ環礁は黒煙と炎、そして流れ出た燃料でその海を汚していた。

 原因は明白で、先発した彩雲の予測経路を飛んできた超兵器の航空隊、それによる爆撃を受けたのだ。

 お陰でアンズ環礁の深海棲艦は壊滅状態、基地航空隊も損耗が7割と補給が出来ない状況でかなりの痛手を負った。

 もはや前哨基地としての役割はこなせない。

 しかもステビア海の戦艦水鬼との交信も取れない状態だが、辛うじて離脱したこの空母棲姫空の泊地水鬼報告では一気呵成に突入し、光学兵器と実体兵器の済射を幾度となく受けて沈んだという。

 そして相対した超兵器の損害は極軽微、被害らしい被害を与えられていないという。

 

「ドコデ……間違エタノカシラ……。

 私ハ……タダアノ空ニ……戻リタイダケナノニ……」

 

 そこで暫く泊地水鬼は黙り込む。

 そして再び空母棲姫に顔を向けた。

 

「貴女ハ……太平洋ノ空母水鬼ノ元ヘ行キナサイ。

 私ハ……此処カラ動ケナイカラ……」

 

「……分カッタ。

 デハ、最良ノ健闘ヲ」

 

 空母棲姫はそれだけを言うと踵を返し、カレー洋を南下し始める。

 そのままオーストラリアの南側を通り、ニュージーランド辺りで北上して太平洋に渡るコースを取ったのだ。

 途中で他の深海棲艦のテリトリーで補給を受けるだろうが、かなり危険な航海になるだろうということは、双方よく分かっていた。

 だが、やり遂げなければならない。

 この海域における戦いの終焉が迫っていた。




超兵器が近くに居るのに無事で居るわけがなかった。
ええ、超兵器ならこれぐらいやるでしょう。
ただし航空機が倒して欲しい目標を必ず攻撃するわけではない。
恨むならレーザーポインタを乗せなかったムスペルを恨め!
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