艦娘の咆哮-WarshipGirlsCommandar- 作:渡り烏
いや、本当にすみません。
秋イベントの精神疲労が思いのほか酷くて今日までずれ込んでしまいました!
今回はオリジナル名称に挑戦しております。
答えは後書きにて公表しています。
「……東ト西、両方カラ来タカ」
泊地水鬼は唯一破損を免れた対空レーダーで、東と西から航空機の編隊が飛来してくるのを確認した。
比率はレーダーの反応から、西が9に対し東が1といった具合だろう。
(艦娘ノ航空隊カ……。
恐ラク……交戦空域ハコノ環礁上空ニナルナ)
航空兵力が皆無になった今、彼女達が取れる行動は対空警戒を行って可能な限り被害を抑える事のみ、それでもその後の戦闘では成す術無く殲滅されるであろう事は、既に予想出来ているしその覚悟も出来ている。
だが……。
「タダデハ……ヤラレナイ!」
普段はゆったりしている泊地水鬼の目に戦意と熱が篭る。
それは飛べなくなった自分を憂う目ではなく、深海棲艦として、戦士として決意を固めた目だった。
そうこうしている内に両勢力の航空隊が目視で見えるまで接近していた。
「各艦……対空防御準備……私ノ事ハ気ニセズ、個々ニ対応シナサイ」
両艦載機の主目的は相手の艦載機の撃滅にあるだろうが、流れ弾や駄賃としてこちらに仕掛けてこないとも限らない。
陸の上でしか動けない自分はこの島の範囲で応戦するしかないのだ。
そして、両陣営から白煙を放ちながら突き進む矢が見えた。
恐らく空母棲姫が報告したミサイルと言うものだろうと、泊地水鬼は当たりを付ける。
「ダガ……密度ガ西側ノ方ガ濃イ……。
大丈夫ナノカ?」
深海棲艦なのに、艦娘側の心配をするという奇妙な体験を彼女はしたが、今は戦闘に対する高揚状態でそれに気が付いていない。
そして互いのミサイルが交差しようとしたその瞬間、超兵器側の上方で何かが僅かに光った。
それは先行して偵察していたF-22だった。
彼の機体はそのまま一直線に超兵器側の艦載機群に急降下、真上からミサイルの一斉射を敢行し、狙われた機体は回避行動を取ろうとする。
だがここで超兵器側に不幸が起きた。
慌てて回避行動を取った上に、編隊毎に距離が離れていたとは言え密度がこれ以上に無いほど濃い為、回避した機体が後方の機体と衝突するという事態が起こったのだ。
衝突し、破片と爆風が飛び散る。
そしてその破片が周囲の機体を傷つけ更に自己鋳造した加害範囲が拡大し、後続の機体へ襲い掛かる。
それは空に出来上がった地獄絵図だった。
そこへ前方から艦娘側の艦載機が放ったミサイルが突っ込む、最終的に撃墜された機体は全体の2割に届き、他にも多くの機体は傷を負ったりして満身創痍の状態だ。
「スゴイ……」
たった一機の戦闘機の行動で戦局が一気に引っくり返った。
古代の戦場で一人の武将が戦局を変えた事もあるが、その再現が近代化された空での戦いで同じ事が起こったのだ。
急降下の勢いを殺しながら機首を持ち上げ、海面ギリギリのところで運動エネルギーを殺しきったあの機体は、再び加速して泊地水鬼の角の間を通過し味方と合流する。
そこまで見て泊地水鬼は確信した。
あれは相対する相手には等しく死を与える死神の遣いだと、その尾翼に描かれた無限を示す青いリボンは、自らの首に掛けられる絞首台の縄のように見えた。
そして同時に……。
「大きな、翼……」
一瞬だけはっきりとした声で、そう呟いた。
「すごい……」
一方大鳳も、E-2Cからの情報でその戦闘を観測していた。
偵察していたF-22は、暫く発艦した艦載機全てからの攻撃を回避に専念していたが、ジェット戦闘機であるF/A-18とAV-8BJの弾薬が尽きると同時に急上昇し、限界高度ギリギリで飛行を続けていた。
そして大鳳から発艦した艦載機がアンズ環礁付近で、超兵器の艦載機との交戦を解した直後待機していた上空から急降下、海面スレスレでやっと引き起こせる速度で急襲し、多数の巻き添えを出しながら数の差を僅かながらにだが、それでも信じられない戦闘能力を発揮した。
そしてついでと言う感覚で、泊地水鬼の状況を伝えてくる。
「どうやら泊地水鬼とその随伴戦力の戦闘能力は皆無となっているみたいです。
殆どが中破や大破艦ばかりで、泊地水鬼も中破状態だそうです」
「むう……やはりあそこも超兵器の攻撃を受けていたか。
だが、先の彩雲での偵察では万全の状態だったのではないのか?」
「恐らく、私達の偵察機のルートを逆算して部隊を送ってきていたのでしょうね。
そしてその途上でアンズ環礁の深海棲艦泊地を見つけた……」
「その攻撃を行ってもなお継戦能力は衰えない……か」
「あの……」
長門と加賀の会話に大鳳が割って入る。
「その超兵器艦載機群なのですが、さきほど発艦してきた機体の約2割を撃破したと報告が……」
「な!」
「それは……凄まじいわね」
長門と加賀の両名が絶句するが、それは仕方が無い事だ。
戦闘開始時、大鳳は長門達にも敵艦載機の総数に関しては説明していた。
全ての航空機かどうかは分からないが、E-2Cのレーダーで捕らえた敵機の数はこちらの約9倍の700機以上、文字通りレーダーが真っ白になるくらいの数で押し寄せてきたのだ。
普通ならこちらの艦載機が全滅するのを覚悟するところだろう。
だがそれはF-22の部隊により140機も撃墜し、他にも破損機が居るのか反転する機体が続出した。
それでも最終的には確認された総数の約7割がいまだ健在ではあるのだが、それでも此処まで数を減らせたのは奇跡としか言い様が無い。
それもこれも、あのイレギュラーが引き起こした事象だ。
「ん?」
そんな時、長門がインド亜大陸の海岸に人影を発見した。
それも一人や二人ではない大勢の、群集と呼べる集団が海岸に集まっていた。
そしてこちらそ警戒しているのか、少しピリピリした雰囲気をかもし出している。
「あれってインドの方々じゃ?」
「そうか、現地の住人達か。
そう言えばインドにはあの当時海軍どころか、インドと言う独立した国が無かったな。
イギリスに統治されずに独自の海軍を持っていれば、この辺りの作戦で共同作戦を実施出来たのだがな……」
「しょうがないですよ。
私達だってまさか人間の姿になって、此処まで来ることになるなんて予想できませんでしたし、それどころか深海凄艦が出現することなんて、思っても見なかったでしょうから」
「それに仮に独立していたとしても、教育などの問題で駆逐艦以上の大型艦の建造は難しいかと思います。
大量に揃えられるのは魚雷艇が精々かと」
「まあその話はそこまでにしよう。
総員、手を振って彼らに敵意が無いことを伝えよう」
長門はそう言うと同時に右腕を上げて大きく横に振った。
隷下の艦娘や他の鎮守府の艦娘達も、長門に倣って手を振る。
するとこちらの意図を感じ取ったのか、群集もこちらに手を振ってきた。
「そう言えばインド海軍って原子力空母を持っていたはずだけれど、どうしたのかしら?」
「1隻はこの戦争が始まる前に退役して、もう一隻は確かインド海軍の軍港に収容されているはずよ。
なんでもこの戦争が終わった後の海上戦力を温存しておきたいとか」
「まだ先が見えないのにお気楽な事だ……と言いたいが、艦娘未保有国なら妥当な判断か」
今の艦娘は、尾張やスキズブラズニルなどを除けば、第二次大戦当時に活躍した船や建造途中だった艦船が主流だ。
そしてそれらは必然的に属していた国に出現している。
当時のインドは植民地だったので、独自の海軍を持っていないのだ。
あったとしても魚雷艇ぐらいだろうが、仮にそれらが艦娘化したとしても、魚雷艇を掃討する駆逐艦型の深海棲艦は幾らでも居る。
何はともあれ、そんな艦娘を保有していない国はアフリカからアジア圏ではかなりの数に上り、各国の軍隊は殻に閉じこもるように港で戦力を温存し、状況が改善するまで海賊退治や海上の治安維持に努めるしかない。
「あ、海岸から発光信号が出てます!」
「……あれは欧文ですネー。
えっと……『ニホン ノ カンムスタチ ヘ キカンラ ノ フントウヲ イノル』以上デース!」
金剛が発光信号を解読して皆に伝えると、艦娘達の顔に笑顔がこぼれる。
「ではこちらからも返信だ。
金剛、『ゲキレイ カンシャ スル ウミ ノ マモリ ハ ワレラニ マカサレタシ』以上だ」
「了解デース!」
長門の言葉通りに金剛が返信を送ると、向こうからも『キカンラノ ブジヲ イノル』と返信がきた。
時代が彼女達が船だった時代なら敵同士だったろうが、今は共同で共通の敵と戦うもの同士だ。
「えっと……超兵器の航空隊、5割の撃墜を確認、当方はF-22の11番機が撃墜されたのみです」
『『えぇ……』』
そんな中大鳳が伝えてきた航空戦の情報に、空母組は驚愕を通り越してどん引きを表した声を上げる。
ここまでくると、最早機体性能や妖精さんの腕が良いとかそう言う次元ではない。
もっと恐ろしい何かを垣間見た雰囲気に呑まれそうになる。
「……とりあえず、そろそろ私達も航空機を出した方が良いのではなくて?」
「ああ、露払いは任せたぞ加賀」
「言われなくても、そうするつもりよ。
こちら横須賀艦隊所属の加賀、第一次攻撃隊、発艦します」
「同じく赤城、第一次攻撃隊、発艦!」
「藤沢艦隊所属の大鳳、第一次攻撃隊、発艦!」
「同じく藤沢の加賀、攻撃隊、発艦させるわ」
3人の空母艦娘がいち早く攻撃隊を発艦させる。
それに続くように他の艦隊からも艦載機が上がって行く。
艦載機の内訳は一番搭載枠が大きい場所に艦上戦闘機、2スロットに艦上攻撃機、搭載数が少ない残りの枠は偵察機と、対地上棲深海棲艦に対する攻撃隊で構成されている。
戦闘不能に近い手傷を負った泊地水鬼に対して、過剰戦力なのではないかと思われる数だが、念には念を入れるという古参の提督の意見で徹底的に叩く算段だ。
続く大鳳の航空隊からの報告で、アンズ環礁の護衛艦隊は戦艦は全て中破か大破し、空母は航空兵力を上げて来ないと言う。
「よし、では攻撃隊は戦艦と護衛要塞の殲滅を、それ以外は軟らかい標的ばかりだ。
戦艦、重巡洋艦は弾種を榴弾に変更しろ」
「航空隊は第一次攻撃後は攻撃機に爆装する準備を」
艦隊総旗艦たる横須賀の長門と、航空戦隊旗艦兼副艦である呉の加賀の指示に各艦隊の艦娘はそれぞれ従う。
護衛の駆逐艦や軽巡洋艦達の中には対地ロケットを装備した者も居り、攻撃態勢は万全だと言えよう。
……だが、どんな時でも上手く行かない要素が出現する。
「っ!偵察機より連絡!敵超兵器、ムスペルヘイム東進を開始!」
「なんと言うタイミングだ……」
大鳳からの報告で現場に緊張が立ち込める。
どうやらあちらは痺れを切らしてアンズ環礁に乗り込むつもりのようだ。
「これ以上は悠長に事を構えてはいられんか……。
吹雪、大鳳、お前達はここから北西に進撃して超兵器と相対しろ。
我々はアンズ環礁を片付け次第、損傷艦を下げた後に支援攻撃に入る」
「りょ、了解!」
「了解です!
皆さん、御武運を!」
「そちらも」
互いに健闘を願いながら別れる。
吹雪と大鳳の後姿を艦隊の艦娘達は手を振って見送り、2人が水平線の向こうに消えると進軍を再開する。
同時刻 アメリカ アラスカ州 ミントローズ島
吹きすさぶ寒風の中に、大口径主砲の砲声と何かが弾ける音が海上に響き渡る。
「畜生……なんだあれは……」
「大艦巨砲の権化だな……。
今は此処から動かない方が良いだろう。
それにあんな馬鹿みたいな巨砲を食らいたくない」
「だ、大丈夫だよね?こっちに来ないよね?」
さっきから頭の上を擦過する巨弾に、無人島になった島の影で怯えているのは、アメリカ海軍の大型巡洋艦娘であるアラスカとグアム、そして軽巡アトランタに隷下駆逐艦3人の艦隊だった。
彼女達はジュノー基地からアラスカ周辺を哨戒していたのだが、その帰り道にこの戦闘と言う名の虐殺に遭遇したのだ。
「くそ……あれが例の超兵器って奴か、見たことも無い艦影だな。
片方は双胴艦か?兎に角馬鹿でかいし、搭載している砲も16インチを超えている所か、ありゃ下手したら倍の32インチ(約81センチ)以上はあるぞ」
「双胴にして搭載排水量が増得たからこその無茶な装備か……厄介だな。
それでは予備浮力や装甲がどれだけあるか検討が付かない」
「もう片方は普通の船体のようだが、それでも巨大な艤装のせいでどうにも要領を得んな。
あとあの手に持ってる長い物は何だ?」
「2隻の戦闘能力もそうだが、周辺の護衛艦隊も光学兵器やらミサイルやらで武装している。
SF映画でも見ている気分だよ」
「兎に角このノイズじゃジュノーとの通信も取れない……ここの近くはロシアの拠点があるカムチャツカか」
地図を広げて海図を見るアメリカの艦娘達、そこにはオホーツク海における2大拠点である日本の大湊とロシアのウラジオストクが大きく書かれ、その周辺に少し小さめに単冠湾、幌筵、ナホトカ、カムチャツカ、マガダンの艦娘を運用する基地が存在する。
アラスカは一番近いカムチャツカを提案したが、妹であるグアムが代案を出す。
「待て、一番近いのは確かに双だが、あいつらが行きがけの駄賃にあそこを攻撃しない保証が無い。
ここはカムチャツカに一時避難と状況伝達の通信を送った後、パラムシルに行った方が良いだろう。
詳しい事は私達にも知らされていないが、日本は超兵器に対して唯一勝利した国だ。
その艦娘を見物してから本国に帰るのも悪くないと思うが」
「噂のモンスターシップガールか……興味が無いわけではないが、そいつも規格外なんだろうな」
「昔から言うだろ?目には目で、歯には歯で、だ」
「それ同害報復に関する限度の設定であって、無限に報復をしろって言う意味ではないですから―って、あぶなっ!」
駄弁っていると巨大な流れ弾が頭の直ぐ上を擦過、近くの海面に着弾して大量の水を巻き上げ、ただでさえ夏でも寒いと言うのに冷たい海水が彼女達にもろに被った。
「あーもう!兎に角、今は日本の戦力は手薄なんです!
この戦争の後に残るであろう有力な友人候補を助けて、母国の戦後の苦労を少しでも減らしましょうよ!」
「え、日本って手薄なの!?何やってるのさ!」
「南方のカレー洋で大規模作戦をやっているんのよ!
司令からその辺りのこと聞いたでしょ!?」
ギャーギャーわめきながらもアメリカの艦娘達は行動を開始する。
目指すはAL方面最前線の幌筵泊地、艦娘配備的な関係で一時的ながら日本に帰属した千島列島に向け、彼女達はギリギリの燃料で航海を行う。
正解発表!
Q.ミントローズ島
A.セントローレンス島
でした!
ガムの味みたいな島名にしてごめんよ聖ローレンスさん。
でもイベント毎に発表される島名や海峡が、尽く食べ物みたいな名前にした艦これスタッフが元凶なのでそっちに文句を言ってくだち。