艦娘の咆哮-WarshipGirlsCommandar-   作:渡り烏

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今年初めての投稿なので初投稿です。
すみませんごめんなさいだから魚雷構えないで!


日誌二十六頁目 ステビア海の死闘

 

 

 

 

 宗谷海峡での戦闘が始まると同時刻、アンズ環礁を越えステビア海に到達した大鳳の鋼・装備であるジェット艦載機達を出迎えたのは、ミサイルアラートのアラーム音だった。

 一体どれほどのイルミネーターを積めばこうなるのか分からないほど、濃密な対空ミサイルの槍衾が形成されている。

 先頭を飛ぶメビウス1は翼を振って散開を合図し、自らはミサイルの雨の中にそのまま突っ込んでゆく。

 指揮官先頭など近代戦術的にはタブーとされる行いの裏には、指揮官を失っても独自の判断で戦闘を行える部下達への信頼の証でもあり、さらにはメビウス1がこの中でも抜きん出て高機動戦闘が上手いパイロットだと言う、裏打ちされた実力からだ。

 他の機体が回避運動をする中で、メビウス1はヨー機動を交えながらバレルロールを2回行った後急降下、ECMとチャフをばら撒きつつミサイルを起点にして円を描くように引き起こす。

 ミサイルはメビウス1の機動に付いて行けず、僅か後方を通り抜けてそのまま海面に墜落するか、僅かに捕えた近接信管が炸裂し破片が機体を貫かない程度に機体を叩く。

 

「っく、あの機体が邪魔だ。

第1から第2戦闘機中隊、あのF-22に攻撃を集中しろ!」

 

 ムスペルヘイムは自らのミサイルが回避されたのを確認し、忌々しげな口調で隷下の航空機隊にそう下命した。

 その巨大な戦艦部分と同等の大きさを持った航空母艦を、2隻艦首部分で接続しているムスペルヘイムは、その奇天烈な構造故に無尽蔵と言える航空機を内包している。

 だがその自慢の艦載機数も彼のF-22の編隊相手にその総数の6割まで減らされ、そしてまた一息に2機の戦闘機があのF-22に撃墜された。

 搭載兵装数を無視しているかのような攻撃だが、あの機体に搭載されている武装では自分に痛撃を負わせる火力が無いとも思っていた。

 

(所詮は航空機、超兵器たる我に傷など付けれる筈もあるまい)

 

 彼の機体の他にも爆弾や対艦ミサイルで武装した航空機が居たが、左舷の対空艤装群を粗方潰した程度で引き返していった。

 今ここにいるのは打撃力が非力な爆装した戦闘機のみ、しかもステルス機で通常の戦闘機よりも搭載する爆弾の数は少ないと思っていたその時、急にあのF-22が急上昇すると共にこちらから距離を離し始め、僚機達もそれに続いた。

 

「ふん、臆したか」

 

 鼻で嗤いながらムスペルヘイムはF-22の編隊を見上げる。

 念のためレーダーにも注視し、相変わらずすごい勢いで上昇を続けていたが、やがて限界高度まで到達したのか失速しないように旋回を始めているようだ。

 

「ふん、他愛も無い」

 

 そこでムスペルヘイムはレーダーから目を離し被害状況を確認する。

 先ほど確認したとおり左舷の対空砲群はほぼ全滅、幸い機銃程度なら直ぐにでも修復できる。

 問題は高角砲群でこれが殆どやられているため、一度軍港に寄って直すしかない。

 そして肝心の空母部分との接続索だが、これも対して被害は出ていない。

 

「さて……どうするか」

 

 こちらの航空隊はあのF-22部隊による奮戦で壊滅状態だ。

 もはや航空戦力で対する2隻を屠るのは難しいと言わざるを得ない。

 

「ならばこちらから出向くまで」

 

 自らの砲撃で沈めようと機関出力を上げ増速させる。

 だがムスペルヘイムは一旦去った敵の航空隊を確認しようと、対空レーダーに注視し信じ難い物が目に入る。

 それは先ほどまで遠方に行ったと思っていたF-22の部隊が、急速に接近している反応で、その位置は既にムスペルヘイムの直上付近であった。

 

「なんだと!」

 

 上方に顔を向けるムスペルヘイム、だが既にF-22の編隊は機体を反転させ効果を開始し始めたところだ。

 

「対空迎撃!」

 

 何故ここまで接近されるまで気付かなかったのか。今はそれを思案する暇もないほどに迎撃の準備を進めるが、彼の編隊はさらに常識外の事をし始める。

 飛んできた速度そのままに、急降下を開始したのだ。

 その意味不明さに、自殺行為とすら取れる行動にムスペルヘイムの思考は固まる。

 それが致命的な隙となった。

 マッハ2以上で急降下するF-22はウェポンベイを開放し、自機が出せる最高速度でGBU-40小型装甲貫通爆弾(SDB)を、全機搭載可能数である8発を放った。

 総計96発のSDBがムスペルヘイムの空母部分と対空陣地に殺到し、その分厚い装甲を自前の貫通能力に放たれた時の速度が重なり、十分過ぎる貫通能力を持っていた。

 タングステンで出来た貫通弾頭が装甲を貫き艤装の奥深くまで潜り込み、作動した遅延信管が約23kgの高性能爆薬を炸裂させ柔らかい内部を蹂躙した。空母部分の艤装は誘爆した弾薬と航空機燃料で甲板を殆ど吹き飛ばし、対空兵装があった艤装中央も対空砲弾などの弾薬の誘爆でその殆どが壊滅した。

 

「かっ……は?!」

 

 余りの被害が激痛と成ってムスペルヘイムに襲い掛かり、意識を失いかける。

 人間で言えば紙飛行機を飛ばす両腕と背中の皮が丸々削がれた様な、人間ならショック死してもおかしくない程の激痛となっているはずだが、それでも気を失わないのは流石は超兵器といったところか。

 

(ば……かな。あれは、この為の助走をつける目的だったと言う事か?)

 

 一瞬薄れた意識の中であの航空隊のしでかした事を考察する。

 確かに機体の運動エネルギーを足せば、その貫通力が上乗せするのは間違いないだろう。だがそれを本当にやろうとし、尚且つ部隊単位でそれをやる馬鹿が本当に居るとは思わなかった。

 

「くっ、くかか」

 

 笑う。

 

「くはははっ」

 

 嗤う。

 

「良いだろう」

 

 一頻り笑ったところでそう宣言し、馬車を引く馬のように前に突き出した二つの空母部分との連結を切り離し、戦艦部分が無用の長物と化した空母部分を押し分け前に出る。

 

「小細工は抜きだ。

真正面から蹂躙する」

 

 その顔に微笑を浮かべ、未だに燃え続ける艤装をそのままにムスペルヘイムが海原を突き進む。

 その様は煉獄の炎を引きつれ進む炎国の名を冠したそのままに、前の世界で自分を屠ったあの戦艦と同等の戦闘力を誇る相手等と合間見える為に。

 ムスペルヘイムが目の前に小さな人影……、レーダーや艦載機のカメラ越しでしか確認できなかった吹雪を捉えたのは、ちょうどそんな時だった。

 

「……ようやくと言った所か。すまないなこのような無様な姿で」

 

「いえ、私達(軍艦)は例え相手が敗残の船でも、降伏しないのならば常に全力で相手をするだけです。

例え貴方が今の姿を無様だと言おうとも、私は貴方をここで必ず倒します。

2対1での戦いに持ち込み、卑怯だと罵られても」

 

 吹雪はそう言い放ちながら武装を構える。

 だがムスペルヘイムは吹雪の言葉を聞き、僅かに目を見開き、そして激情に彩られた瞳に冷静さを戻した。

 

「誰が卑怯などと……これは戦(いくさ)だ。

策を立て、相手の動きを制限し、そして己の全力を相手にぶつける。

例え誰かが貴様を卑怯だと罵ろうとも私がさせない」

 

 ムスペルヘイムが返すと同時に己の艤装を動かす。

 

「それはそうとしてその艤装……貴様は、本当に吹雪型か?」

 

 自らのデータベースにアクセスし、嘗ての同盟国であった大日本帝国海軍の中で、最初期の艦隊型駆逐艦の型名を口にする。

 目の前の存在は姿こそ人型になっているが、背負っている艤装の煙突形状などは吹雪型のそれと同型のものだ。

 

「はい。そして私の艤装を元に尾張さんとスキズブラズニルさんと相談して、この艤装を作っていただきました」

 

「っ、くははは!」

 

 吹雪の言葉にムスペルヘイムは一瞬目を見開き、そして口が裂けんばかりに大きく開いて笑い出す。

 吹雪は突然笑い出したムスペルヘイムに驚き思わず身構える。

 

「ははは!どうりで先ほどの貴様の戦闘、そしてあの艦載機が出鱈目だった訳だ!

そうかそうか、あいつらがこの世界に来ているのか!ははは!」

 

 今までムスペルヘイムは惰性でこのステビア海で跋扈していた。

 吹雪や大鳳が来る前に相手にした戦艦水鬼も彼女にとっては、凡百な他の艦艇より少し毛が生えた程度の存在だった。

 だが目の前に居る駆逐艦は違う。

 確かにこちらの航空戦力はあちらの空母にしてやられはしたが、徒党を組むわけでも、策を弄するわけでもなく、持ち前の戦術と力のみで自らの目の前に立っているのだ。

 嘗て相対したあの戦艦のように……。

 

「ならば、超兵器として全力で相手をせねばなるまい」

 

 その言葉と共にムスペルヘイムの船体から黒煙が消え、その玉座が再び顕わになるとそこにあったはずの損傷が無かった。

 どうやら黒煙に紛れて修復を行い、吹雪と会話する事で修復時間を稼いでいたようだ。

 

「この短時間で!?」

 

「『向こう側』のダメージコントロール技術、舐めてくれるなよ!」

 

 ムスペルヘイムの兵装が吹雪に集中する。

 

「っく!」

 

 次に来る猛攻に備え吹雪も機関出力を上げ、予測射線軸から退避したそこへムスペルヘイムの主砲弾が着弾、衝撃波と水柱に揉まれながらも吹雪はムスペルヘイムからの攻撃範囲から離脱する。

 ムスペルヘイムは追撃として吹雪に対し、ミサイルと副砲である30cm噴進砲と40mmバルカン砲群による飽和攻撃を開始した。

 対する吹雪もミサイルに対してはCIWS、そして持ち前の高速機動で副砲の弾幕を回避する。

 

「ふはは!やはり我々の戦いはこうでないとな!」

 

「くうぅ!」

 

 副砲は低速のロケットとは言えど、その口径は旧型の戦艦並みの大きさがあり、バルカン砲も対10cm装甲を持っている吹雪とは言え、油断して連続で受ければ只ではすまない。

 吹雪の耳には立ち上る水飛沫の音と共にバルカン砲の高速徹甲弾が通り過ぎる音が鳴り響く。

 視界は効かないうえに音まで拡散されている状況だが、吹雪は迷うことなく急加速と急後進を繰り返し行い、相手の予測射線から自身をずらしながらムスペルヘイムに接近を試みるが、バルカン砲の制圧射撃で思うように行かなかった。

 

「中々避けるものだ。ならばこれはどうだ!」

 

「きゃあ!?」

 

 ムスペルヘイムの声と共に甲板上に光が集まり、ムスペルヘイムに新たに搭載された光学兵器……βレーザーが放たれるも、吹雪に装備された電磁防壁により弾かれる。

 だが吹雪にとって始めての大規模レーザーによる攻撃でもあり、その威光を見て一瞬怯むには十分であった。

 

「そこだ!」

 

「あっ……が!」

 

 ムスペルヘイムの主砲が吹雪の艤装を抉る。

 幸い過貫通で炸薬の炸裂は免れたが、それでも無視できないダメージが吹雪に入る。煙突が根元から折れ曲がり、排気が困難になってしまう。

 

「まずっ」

 

 吹雪は煙幕を展開し、微速での前進をさせながら応急修理を開始させる。

 尾張が搭載している原子炉ならこのような事をしなくてもいいのだろうが、生憎と吹雪が搭載しているのは駆逐艦用ボイラーなのだ。

 排気が間に合わなければエンジンの出力を落とさざるをえなくなる上、下手をすれば機関部に深刻なダメージを負う原因になりかねない。

 しかも煙幕を炊いているとは言え、あちらはレーダーを搭載している可能性は大いにあり、大まかな位置を特定されて集中砲火を浴びせられれば、今の吹雪に太刀打ちできる目は無い。

 

「それにしても暑いなぁ……」

 

 吹雪は唐突に暑さを感じ、額から流れる汗を拭う。

 表示されるレーダー画面でムスペルヘイムを注視しながら……。

 

 

 

「見つけたぞ」

 

 表示されるレーダーレンジに吹雪の影を捉え、ムスペルヘイムは主砲の砲門をそちらに向ける。

 先ほど吹雪が感じた暑さは、ムスペルヘイムがレーダー波の照射範囲を絞って行った結果に過ぎない。

 

(だがレーダーで捉えれても精確な位置が分からなければ無駄弾になるな……)

 

 先程の弾薬庫誘爆で弾薬が2/3まで減ってしまい、更に修理用の資材も殆ど使ってしまった。

 そしてここで吹雪を打倒しても、後方からあの化物艦載機を放つ空母が居る。

 途中で遭遇するであろうそれら艦載機への対処も含めて、余り無駄な弾薬の消費は抑えたい所だ。

 尤も、現状の弾薬量でも尾張の十数倍の弾薬が残っているのだが……。

 

「各砲座、敵駆逐艦へ指向……フォイエル!」

 

 出来る限り兵装の照準に狂いを出さないように照準を絞る為に速度を落とし、吹雪の精確な場所と距離を測るため電算機が貪欲に電力を消費し、照準に全メモリの8割を使って位置の割り出しに使い、必殺の弾幕を放つ。

 ……だからこそだろう、煙幕の中から飛び出してきた。敵駆逐艦にとっての最大の一撃を見落とした。

 

「っな!」

 

 叫びを上げる暇も無く新型超音速酸素魚雷9本がムスペルヘイムを捉える。

 巨大な水柱に見合った爆圧に船体の装甲が歪められ、そこにタングステン製のフレシェット弾が外郭を貫通し、そのまま隔壁を貫く。

 歪められ穴を開けられた外郭が元に戻る衝撃で、開いた穴から亀裂が入りそのままゴッソリと装甲に穴を開けられ、内部構造を露出させた。

 主砲の弾薬庫にも被害が及んだのか、一瞬砲塔が浮かび上がるほどの爆発が起き、その内圧に押されて艤装のあちこちから爆炎が飛び散り、船体を引き裂く。

 内部構造も最早原形を留めていないであろう。

 

「アッ……ガ……ギ……」

 

 超兵器と言う中枢人格を司るムスペルヘイム自身も、その強烈な痛みから一瞬気を失いかけるが、済んでのところで踏みとどまる。

 ムスペルヘイムの艤装は先程とは比べ物にならない損傷を負い、超兵器機関もフレシェット弾と二度に渡る弾薬庫誘爆によりズタズタに引き裂かれ、最早戦闘継続は不可能であると悟った時、青空にキラリと何かが反射する物体が殺到する。

 それは大鳳で1000ポンドJDAMを2基搭載し、超音速巡航で舞い戻ってきた11機のF-22であった。

 

「はは……、超兵器航空戦艦であるこの私の最後はこれか……」

 

 ムスペルヘイムの乾いた笑い声に応えるように、青いリボンのエンブレムを付けたF-22からJDAMが放たれる。

 22基の1000ポンド爆弾を基にした誘導爆弾が、船足が落ちきったムスペルヘイムと言う巨大な的に、狙い過たず命中した。

 

―――ああ……、結局奴に復讐戦を挑めなかったな……―――

 

 最後にその想いだけを胸に、ムスペルヘイムは今度こそステビア海にその巨大な爆煙と爆風を撒き散らし、海底へと没した。

 

 

 

「やった……のかな?」

 

『はい、敵超兵器の撃沈を確認、作戦成功です。

 しかし流石吹雪さんですね!最大の切り札を見事当ててくれたお陰で、こちらも攻撃がし易かったです』

 

「あはは……、それでもこっちはズタボロですけれどね……」

 

 吹雪はそう応えながら自分の艤装を見る。

 最後の弾幕は吹雪の至近を掠めるように放たれ、その大半が外れていたがそれでも吹雪は中破程度の損傷を負った。

 僅差で放ち終えた魚雷発射管は全て吹き飛び、折角修理を終えた煙突も今度は根元から消し飛んでいる。

 咄嗟に身を翻していなかったら、吹雪自身も被弾してもおかしくは無かった。

 

 

 

―吹雪さん、貴女は確かに体躯が小さく防御力が余りありませんが、それに余りある打撃力と速力があります。

 それにあわせて煙幕によって光学的な照準を無効化させ、相手に電子機器に注力させ、反撃の隙を作るのも手でしょう―

 

 

 

(尾張さんの言うとおりに出来た……)

 

 対超兵器戦の師である尾張の助言通り出来た事に、自身の手で超兵器に致命傷を負わせれた事に自信が芽生える。

 

(もう、私はあの時の私じゃない!)

 

 

 

 

 

「そう、分かったわ。

 大鳳と吹雪ちゃんは、そのままアンズ海峡攻略隊と合流して戻ってきて頂戴……あ、ドロップの回収も忘れないでね?

 ……ええ、お疲れ様。帰ったらゆっくり休んでね。それじゃ」

 

「なんとか一段落と言った所だな」

 

司令室に様々な声が響く中、通信を切った筑波に鍋島が声を掛ける。

 

「はい、ですが……」

 

「うむ、まさか本土で二度目の襲撃が来るとわな……」

 

 二人の視線の先には北海道近海の概略図があり、そこに新たに現れた2隻の超兵器と尾張と利根、そして留守番組の死闘を表す表示が示されていた。

 

「うちの娘達、無事だと良いのですが……」

 

 朝倉提督の心配する声が筑波の耳に入る。

 だが……。

 

(大丈夫、尾張と利根、それにうちの留守番組がそう簡単に負けるわけが無い)

 

 淡々と進行する状況に、何も出来ない自分の無力さを筑波は味わっていた。




はい、と言う訳で仕事で忙殺されたり、スランプに陥ったりしましたがなんとか投稿できました!
1年待たせてこれだけ?とか言われてもしょうがないですが、次話は今年中での投稿を目指します。

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