艦娘の咆哮-WarshipGirlsCommandar-   作:渡り烏

7 / 32
朝霜が出ない(憤怒

諦めて通常海域か建造で実装するのを待つ事にしました。

あと今回はGWS2/WSG2Pのネタバレが含まれています。

2015/04/06
筑波の台詞を一部変更しました。


日誌二頁目 尾張の軌跡

「失礼するわね」

 

 一先ず尾張の詳しい経歴などを聞くのは置いておき、長門や伊勢が尾張と談話していると、引き戸が開く音と一緒にそんな声が聞こえてくる。

 尾張もそちらに視線を向けると、そこには見目麗しい女性の姿があり、そしてその後ろには……。

 

「あ、貴女が大和と武蔵……お姉ちゃんで良いのかな?」

 

「え、ええ、私が貴女の前級、大和型戦艦の一番艦の大和よ」

 

「ふふ、同じく、二番艦の武蔵だ。

 ふふ、大和、妹分が出来たとは言え少し緊張しすぎだ」

 

 一瞬申し訳なさそうな顔をし、その後行き成り姉呼ばわりされ、狼狽しながらそう答える大和に筑波と武蔵は微笑む。

 そして再び顔を引き締めて尾張に正対した。

 

「私がこの鎮守府を統率している筑波美由紀です。

 階級はこの身に余るけれど、一応少将の位を受けているわ」

 

「あ、失礼しました!

 私、近代改修型実験戦艦の尾張と申します!

 最後の所属はウィルキア王国亡命政府の、近衛軍に所属していました!」

 

「ウィルキア王国……、それってどの辺りなのかしら?」

 

「えっと、シベリア東部のウラジオストックから、カムチャツカ半島の東側の沿岸にある小さな王国です。

 先祖は遠くアイスランドから、アジア大陸を横断してきたデーン系部族「ヴィルク族」で、そこで王国を築いたそうです。

 でもその後、周辺の国々からの侵略を受けて近代まで支配されてましたけれど、クリミア戦争でロシア帝国の後背を付く形で独立戦争を仕掛けて、そのまま勝利して独立したんです」

 

「へ~、結構血気盛んな人々なのね。

 フィンランドとかあっちの人みたい」

 

「あ、フィンランドの人達もすごいですよね!

 やっぱりあの辺りの血も混じってるのかなぁ……。

 あ、その後も再併合を目論んでロシア帝国と戦争になったんですけれど、その時日本と同盟を組んで撃退したんです。

 その後に発生した欧州大戦で、ドイツまで現地派兵してドイツの支援をしました。

 その後からはウィルキアと日本、そしてイギリスとドイツは同盟関係を組んで仲良くしたんです。

 戦後、ウィルキアは産業の重工業化に着手して、海軍の増強に力を入れて海軍国家として目覚しい成長を遂げました……でも」

 

 そこで尾張の言葉が途切れる。

 

「ある日、ウィルキアの国防軍でクーデターが起きたって情報が流れた。

 ウィルキアの国防軍大将と、国防会議議長を兼任していたヴァイセンベルガーって人が、近衛軍と国防軍との演習中に、実弾で近衛軍の船を沈めたって……。

 私の建造を終えて酒盛りをしていた船大工さんや、軍人の人も混乱してて、その後直ぐだったの、ウィルキアの国王派が日本の横須賀で拘留されたって」

 

 その台詞を聞いて尾張以外の全員が息を飲む。

 つまりそれは……。

 

「日本海軍中将の君塚って人が、ヴァイセンベルガーに協力していたの。

 目的は国王陛下の引渡しの見返りに、日本のウィルキア帝国内での立場確立と、自らの権威を取得すること」

 

「そんな……」

 

「なんと言うことを……」

 

 違う世界の日本とは言え、前まで同盟国であった国の主を平然と引き渡すなど、国際社会では断じて許されない愚考だ。

 尾張の独白を聞いて筑波と長門は閉口する。

 

「幸い、筑波大尉と天城大佐が共謀して、ウィルキア王家や近衛の人達は逃がされて、最後に救出されたのが、私の艦長になるシュルツ少佐だったんです」

 

「と言うことは……」

 

「はい、元々シュルツ艦長達が乗っていた重巡はもう廃艦寸前の状態で、横須賀で完成後係留されていた私が彼らの乗艦になったんです。

 そこからは筑波大尉と共に脱出しようとしたんですが、途中で機関で火災が発生してしまって……巡航以上の速度が出なくなったときに、大和型戦艦を含む打撃部隊が現れたんです」

 

「「!!」」

 

 尾張の言葉に大和と武蔵は目を見開く。

 

「損傷を受け火災の消化も間に合わない。

 もう直ぐ済射が来ると思ったその時、筑波大尉が囮を買って出てくれたんです。

 大尉が乗っていた駆逐艦は突撃して、その後体当たりを行ったんですが撃沈されてしまって……、それでも出来た隙を使って、シュルツ艦長達と私は逃げ出せれました」

 

 そこまで言って尾張は筑波に顔を向けた。

 

「そう言えば、筑波大将も同じ苗字でしたね。

 ご祖父か曽祖父のお名前を伺っても?」

 

「え?えっと確か曽祖父が貴繁……だったかな?」

 

「お写真などは?」

 

「今は手元に無いなぁ……。

 そう言うのは全部実家にあるから」

 

「そうですか、でも、ふふ」

 

 そこで尾張は可笑しそうに笑う。

 

「私の艦長の恩師もですね、貴繁って言うんですよ?」

 

「え、同姓同名!?漢字も……こうかしら?」

 

「はい!でも最後はやっぱり写真を見ないと分かりませんね」

 

「う~ん、後で実家に電話してこっちに送って貰うように頼んでみるわ。

 それにしても貴女、実はここが違う世界だって言うの自覚してるでしょ?」

 

「あはは~」

 

 筑波がそう指摘すると、尾張は笑う。

 

「だって、長門さんにスキズブラズニルの事を聞いても、北欧神話の方しか知らないって答えましたから。

 それに私、前は幽霊みたいな存在だったんですよ?」

 

「え、ゆ、幽霊?」

 

 尾張の台詞に筑波は青褪めながら一歩下がってしまう。

 どうやらこの手の話は苦手らしい。

 

「と言っても実際は私の自我部分と言えるシステムが、ちょっと特殊すぎたんですよね。

 あっと、ちょっと話がずれちゃいましたね。

 それで、やっとの思いでハワイまで逃げたんですけれど、そこでの生活も長くは続きませんでした……」

 

「もしかして、さっき言っていたクーデター軍が?」

 

 陸奥の言葉に尾張は黙って頷く。

 

「ハワイに逃げ込んで本当に直ぐでした。

 ヴァイセンベルガーが全世界に向けて、ウィルキア帝国の樹立の声明を発表したんです。

 それだけならまだ良かったんですけれど、その後がまた問題でした。

 偽善に糊塗された列強のエゴ、その連鎖に呪縛されるこの世界、それらを我等が一変させる。我が国の傘下に下るか、滅亡の道を歩むか、全世界に提示する……と」

 

「なんとも大言壮語な宣言だな」

 

 尾張が言ったヴァイセンベルガーの文句を聞いた長門は、思った事をそのまま口に出す。

 

「最初は、それを聞いた人は誰も信じませんでした。

 でも彼はこう続けたんです。

 我々にはそれを成す括弧たる力がある。諸君らは近々それを目の当たりにするだろう。諸君らの頭上にその力が振り下ろされる前に、賢明な判断が出来る事を切に願う……と。

 これを聞いてウィルキア近衛軍の人達中に、特にシュルツ艦長やガルトナー司令には疑問が沸いたんです。

 あの狡猾で冷静で知られていたヴァイセンベルガーが、何の根拠も無くこんな妄言を吐くわけが無いと……、そして、その『力』は直ぐに現れたんです」

 

 そこまで言うと、尾張は筑波に顔を向ける。

 

「ここから先は実際に映像で見てもらったほうが早いと思います。

 すみませんが、私をもう一つの私の元に連れて行っていただけませんか?」

 

「え、それは……」

 

 この台詞に筑波は悩む。

 彼女の艤装はボロボロの状態とは言え、一旦艤装を装着した艦娘は人間の手では手に負えない存在だ。

 それ故に、鎮守府内では緊急の場合意外は艤装を外すと言う項目がある。

 

「大丈夫です。

 私はそんな無茶な事はしませんから」

 

 筑波の顔色を見て、尾張は微笑みながら言った。

 まるで何もかもお見通しだと言わんばかりの台詞だったが、不思議とその言葉を信じてしまうような説得力があった。

 

「……分かったわ。長門、彼女をドックまでお願い」

 

「提督、良いのか?

 大本営からの指示もまだなのだろう?」

 

 長門の台詞に筑波は首を横に振って答える。

 

「今は、彼女の話を優先して聞いた方が良いと思うの。

 なんと言うか、嫌な予感がするから」

 

「嫌な予感……か」

 

 筑波の言葉に長門は少し考えに耽る。

 今まで筑波はこの予感で難局を乗り越えてきた実績がある。

 最たる物はAL/MI作戦の隙を突いた深海棲艦の本土強襲。

 あの時も筑波はその予感で、自身の最大戦力である大和と武蔵、そして翔鶴と瑞鶴を温存していたのが幸を奏して防衛に成功したのだ。

 そして今、尾張を目の前にしてその予感が発動した。

 

「分かった。提督の判断を信じよう」

 

「ありがとう長門、やっぱり付き合いが長いと楽でいいわ」

 

「調子に乗るな」

 

「えへへ」

 

「ふふふ」

 

 そんな二人の様子を見て尾張から笑い声が漏れる。

 

「どうしかしました?」

 

「いえ、まるで艦長とナギさんを見ているみたいで……あ、あれ?」

 

 大和の問いかけに尾張が答えようとするが、その目から涙があふれ出る。

 

「ちょ、ちょっとどうしたのよ!」

 

「あ、あれ?おかしいな……。

 もう、諦めていた筈なのに、なん、で、こんなに……」

 

「尾張!」

 

 涙を流す尾張に大和が駆け寄り、その顔を自らの胸元に抱え込む。

 そこからは、時折嗚咽を鳴らすだけの静かな泣き声をあげる。

 

「貴女の艦長とは会いたい、でもそれが出来ない可能性が高いから……それが辛いのよね?」

 

 大和の声に尾張は泣きながら頷く。

 今の尾張の胸中に占めているのは望郷の念、そしてもっとも自分と関わりあった艦長と会いたいのに、それが叶わない願いと自覚したい自分と、否定したい自分の葛藤だった。

 少なからず自らの艦長だった人々と、再び会いたいと言う艦娘は少なくない。

 中にはその子息や孫に会いに行きたいと願う艦娘達も居るが、今は深海棲艦との戦いが激化する中で、そのような余裕が無いのが今の現状であった。

 だが、尾張にはもうその人物や血の繋がった子息にさえ会える可能性は無く、一時は諦めていたのだが……そんな中で、自らの艦長の恩師と同じ名前の曽祖父を持つ筑波と会って、再びその思いが強くなってしまったのだ。

 

「艦長に会いたい……会いたいよぉ……」

 

 悲痛な声の中に含まれたその思いを察し、その場に居た全員は、尾張が泣き止むまで、黙って見ている事しか出来なかった。

 

 

 

「大変……失礼しました」

 

「いいえ、貴女の思いは分かっているつもりよ」

 

 5分ほどで泣き止んだ尾張は、大和の胸から顔を離して謝罪するが、大和はそれを気にせずに微笑みながら言葉を返す。

 まだ鼻の頭や目元が赤いが、先程まで放っていた寂しさは少し薄れていた。

 もう大丈夫な事を確認してから尾張には車椅子に座ってもらい、一同は入渠ドックへと足を運ぶ。

 

 その間の道中で、尾張は様々な艦娘を目にする。

 木の陰で昼寝をする熊と猫に似た2人の艦娘。

 黒く長いお下げをした淡い黄緑色の服を着た艦娘に、これまた同じ服を着た茶色く長い髪を持った艦娘がべったりと寄り添っていたり。

 寝たり無そうな艦娘を、鉢金を巻いた艦娘が支える傍で、天真爛漫そうなお団子頭の艦娘が何らかのビラを配ったり。

 黒いマントを羽織った艦娘の後ろを、恐らくその艦娘の物らしい同じ服をだぶつかせ、時折服の間から白い生地が見え、水中ゴーグルを頭につけた艦娘が着いて回っていたり。

『間宮と伊良湖』と書かれた看板が付けられた建物、その脇に置かれた野点傘と腰掛の上で、赤と青の袴を穿いた艦娘が茶を飲んでいたり。

 兎に角色々な艦娘を目にした。

 

「結構な規模の基地なんですね。

 でもこんなに一極集中させて大丈夫なんですか?」

 

「ふふ、そう思うでしょ?

 実はね、ここ以外の場所にも同じ艦娘が居るのよ?」

 

「え、そうなんですか!?」

 

 筑波の言葉に尾張は驚きの声を出す。

 

「でも大丈夫よ?

 ここと他の所の艦娘と区別がつく仕掛けがされているから、間違えて他の鎮守府に行ったりしないの」

 

「えっと、何らかの識別装置が付いてるんですか?」

 

「装置と言うよりは、動物の帰巣本能に近いかもね。

 生まれた鎮守府以外には行かないように~って、頭の中で響くんだ」

 

「へ~」

 

 伊勢の補足に尾張は感嘆の声を上げる。

 

「私達艦娘は付喪神に近い存在でね。

 初めに艤装が完成して、それから提督が呼び出す儀式をすると、受肉された私達艦娘が出てくるのだけど、同じ鎮守府に同じ艦娘は存在しないんだ」

 

「なんだか不便なんだか便利なんだか分からない仕組みですね……。

 あ、でも管理の上では便利なのかな?同じ艦娘が居ると、どの艦娘がやったのか分からなくなりそうですし、戦果確認も簡単そうですね」

 

「うん、逆に、海の上で敵にやられて艤装を捨てなければならなくなった状態や、艤装の破棄、この場合は轟沈と解体って言うんだけれど、普通の女の子としてその後も人間と同じ様に生活できるんだ」

 

「あ、つまり艤装がないと普通の女の子になっちゃうんですね。

 なんだかどこかのアイドルみたいです」

 

「うん、偶像と言う意味では同じかもしれないわね。

 ただ、出撃した艦隊が丸ごとやられると、艤装を破棄した艦娘の救助は出来なくなっちゃうから、誰か一人でも大破した艦娘が出たら直ぐに引き返すようにって、厳命が出ているの」

 

 筑波が言った厳命と言う言葉の中に悲しみが篭っているのを感じ、尾張はきっとその事態が発生して、その提督は引退してしまったのか、精神に異常を来たしたのだろうと推測する。

 

「私の場合どうなるんでしょう……。

 艤装を破棄したらきっと同じものは作れないですし、二度と戦えなくなっちゃうのかな……」

 

「私としては、もう十分に戦った貴女を戦場に出したくは無いんだけれど……。

 大本営に報告してしまったし、近いうちに性能試験に近い形で実戦に出すようにって、指令書が出されると思うわ」

 

「あ、そう言えば提督さんが来るまでに、深海棲艦って言う敵の説明を受けたんですけれど……」

 

「怖気づいちゃったかしら?」

 

 筑波の半ば挑発するような言葉に、尾張は首を横に振る。

 

「たとえ亡霊に近い存在であっても、私は全力で戦うまでです。

 ウィルキア王国近衛軍の代表として、恥ずかしくない戦いをお約束します」

 

「おお、言うねぇ~」

 

「頼もしい妹分が出来て頼もしいよ。

 だが、大本営が来るまでしばらくは軟禁状態になると思う。

 それまでは講義を受けたり、他の艦娘の訓練を見たりするしかないな」

 

「あ~、やっぱり私ってその深海棲艦のスパイみたいに思われてます?」

 

 尾張の言葉に周りの皆は縦に首を振り、それを見た尾張はとほほと言った感じで、頭を垂れるのだった。

 

 

 

「あ、あれが私の……」

 

「そう、貴女の艤装よ。

 ちょっと今はあのままの状態だけど、大本営の判断次第では直ぐに修理を行わせるわ」

 

 筑波の言葉に尾張は不安そうな顔を向ける。

 

「大丈夫、こう見えても私のお父さんが大本営の重鎮なの、だから悪い返事は来ないと思う。大和のお墨付きもあるからね。

 でも、科学研究所に送った血液の結果次第では、その判断も覆されるかもしれない」

 

「提督……安心させるか不安にさせるかどちらかにしてください。

 尾張がどうしたら良いのか困っていますよ」

 

「でもこればっかりはねぇ……。

 でも、そうはならないんじゃないかって思う所もあるんだ」

 

「さっきの提督の予感か?」

 

 大和に答えた筑波の言葉に、武蔵が食い付く。

 

「うん……こういう事があると、決まって大きな事が起きる前触れって言うのは、大体の物語の基本でしょ?」

 

 

 

 

 

 あれはなんだ?

 

 その言葉が浮かぶが、それが決定的な力であると同時に、何か嫌な予感が出てくる。

 それは胎動する機械だった。

 見掛けはボロボロでもう動きそうにも無いのだが、そんな状態でも「生きている」と感じるには十分すぎる存在感を出している。

 しばらくそれを見ていたが、連絡を入れた先からは回収するようにと言われた。

 それが危険なものであると予感はしながらも、彼女は仲間を呼び寄せてそれを回収する事にする。

 例えその判断が、決定的な間違いであっても……。

 

 

 

 

 

「じゃあ、えっとあとはこの部分をカットしちゃってね」

 

「まさかUSBケーブルが使えるなんて思わなかったわ」

 

 USBケーブルで繋がれ、壁に掲げられた映写幕に向けられたプロジェクターを見て、筑波は呟く。

 尾張は艤装の中に居る妖精に編集を頼んでおり、

 

「兵器開発速度が1世紀以上違いますからね……。

 ブレイクスルーも結構ありましたし、中には謎の装置とか言う代物もありますよ?」

 

「え、何それ怖い」

 

 などと話しているうちに投影の準備は続く。

 内容は今までの戦歴全てを見せるわけにも行かないので、尾張が体験した物の内、重要な箇所だけを切り張りして編集したものである。

 その間も明石といつの間にか来ていた夕張が、尾張に話を聞こうとしたり、何処からか話を聞きつけた軽巡以上の艦娘達が、野次馬根性で覗きに来ている。

 

「提督、良いのか?」

 

「ん~、別に大本営からは事情を聞けとしか言われていないし、良いんじゃないかな?

 暗黙の了解?なにそれおいしいの?」

 

「いや、提督、流石にそれはまずいんじゃないか?」

 

 何度目かのやり取りでとうとう長門も口を挟む。

 

「まあまあ!後で戦意高揚のための特撮映画とかなんとか言っておくから、感の良い娘は直ぐに嘘だってばれそうだけれどね」

 

「ふむ……まぁ、それが妥当か。

 どの道情報統制を敷いても、何時かは漏れるのが世の常だからな」

 

 見られても軽巡以上の艦娘は、その辺りの事はしっかりしている為、特に問題はないだろうと長門は思ったようだ。

 そうこうしているうちに編集が終わり、とっぷりと日が暮れたところで上映の準備は完了した。

 そして始まったハワイから続く尾張の軌跡。

 

 未知の巨艦の襲撃から再びの逃避行、そして休む間も無く訪れる危機。

 一時は潜水艦に艦長を託し、任務を終えて帰還した艦長を迎え、パナマ運河を通り大西洋へ。

 大西洋に渡っても訪れる未知の敵巨大兵器を打ち倒しながら、友邦たるイギリスへ渡っても一行の苦難は終わらない。

 危機と平穏の連続の中で幾多の海と仲間の屍を越え、遂に凱旋の時を迎える。

 その道のりも険しくはあったが、その頃には尾張と、母港として使っていた工作艦の姿はすっかり変わってしまっていた。

 怒涛の如く押し入る航空機の群れをミサイルが迎撃し、CIWSと対空レーザーが打ち落とし、敵機動部隊に肉薄し12門の巨砲で薙ぎ払う。

 

「あの、尾張、私全然現実味が持てないんだけれど、合成ではないわよね?」

 

 上映の途中で筑波が尾張に尋ねるが、これが自分のありのままの姿だと言わんばかりに首を横に振って否定する。

 そうこうしている内に日本を開放し、艦長達の生まれ故郷であるウィルキアでの戦闘で締めくくられた。

 




急ぎ足過ぎてグダグダ気味、だけどあまり長過ぎず短すぎずでやっているので、鋼鉄世界のストーリーを纏めようとしたらこうなるのは仕方ない。
そしてお気に入り件数が28になっていたり、早速感想が付いたりと嬉しい限りです。
今後ともご期待にこたえられるように頑張って行こうと思います。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。