それではどうぞ!
始まりの町を出て、俺達は<ホルンカの村>という場所に着いていた。何でもキリト曰くここのクエスト報酬にアニールブレードって名前の片手用直剣があるらしい。
余談だがここに来るまでにモンスターを倒しているので俺がLv3、キリトがLv3、シリカがLv2といった具合だ。
イア「んで?そのアニールブレードを貰えるってクエストの内容は?」
隣で歩くキリトに聞く。
キリト「まあ...着いて来れば分かるぜ。」
キリトはなぜか苦い顔をしていた。
シリカ「片手用直剣ってことは...あたしは短剣だから使えないですね。」
シリカは少しばかり残念そうだ。
別に使えないわけではないが、シリカは短剣スキルをメインにしてその他に使えそうなスキルが増えたらスキルスロットを埋めていくという感じにしたようだ。それにしても...
イア(よかった...すっかり落ち着きを取り戻してくれて...)
俺は実のところ心配だった。守るとは誓ったものの俺はβテスターじゃないから知識はない。その上戦闘も初心者だ。たまたま運で抽選スキルが当たっただけで期待されても困る。勢いであんなことを言ったが...一応心の支えとなってくれているようだ。
キリト「着いたぜ。」
キリトの足が1軒の民家の前で止まる。
イア「ん?あぁ。」
少しばかりボ~っとしていたようだ。
とりあえず民家の中に入る。中にいたのは台所に立っている女性のNPCだった。
「ようこそ、旅の剣士様。せっかく来ていただいたのに、今は水しか出せません。申し訳ありません。」
話している最中に隣の部屋からずっと子供が咳き込む音が聞こえてきていた。
女性が話終えると頭の上に「?」が出てきた。どうやらクエスト開始の合図らしい。
キリト「何かお困りですか?」
やはり経験者、手慣れた様子で女性に尋ねる。
「実は私の娘が...」
女性はゆっくりと語り始めた。
~数分後~
要約すると、このクエストの名前は<森の秘薬>というらしい。女性の娘の薬に必要なのが森にいるリトルネペントというモンスターからドロップする胚珠というわけだ。
イア「なんだ、結構簡単そうだな。」
クエストを受けた俺たちは、今は準備のために道具屋にいる。薬草などは買えるだけ買っておく。序盤のクエストだからそんな大した準備は必要ないと思うが、これは普通のゲームではない。自分たちの命、現実の命がかかっているんだ。
キリト「ちなみにな...ネペントには2種類いてな、花つきと実つきがいるんだが...胚珠は花つきからしか落ちないんだ...しかも花つきが出る確率が恐らくほぼ1%。」
イア「おいおい...まじかよ?」
道理で苦い顔をしていたわけだ。
キリト「それでも倒し続けていれば出現率は上がっていくからまだましだ。」
シリカ「でも大変そうですね...頑張りましょう!」
イア「なら...どっちが多く倒すか勝負だな、キリト!」
キリト「上等だ、受けて立つ!」
俺とキリトは友達だがライバルでもあった。昔から勝負ごとに関しては2人とも負けず嫌いだったため、勝敗は五分五分といったところだ。
イア「さてと、そんじゃ行きますか!」
この言葉を皮切りに俺達3人は森の中へ足を踏み入れた。
~数分後~
イア・キリ「「35!!!」
思わず目的も忘れそうになっていた。しかしまだ胚珠も出てないため勝負は続行しなければならない。
シリカ「うぅ...気持ち悪い!」
シリカはこのタイプのモンスターが苦手なのか近づかれると腰が引き気味になるもののきっちりと弱点にスキルを当て、すぐに片づけていた。本当に初心者なんだよな...?
そして...36匹目を片づけた瞬間俺とキリトのLvが5へと上がった。
同じタイミングで後ろの方からガサガサと物音が聞こえる。
?「や、やあ。レベルアップおめでとう。」
そこから出てきたのはモンスターではなく、プレイヤーだった。
キリト「どうも...」
この現実の姿になってから、キリトは軽くコミュ症を再発させていた。重度のコミュ症ではないがキリトは現実世界では人との関わり方が下手だ。
?「もう胚珠は出たのかい?」
イア「全然だ。そっちは今ここに来たのか?」
俺は一応聞いておく。
?「そうだよ。まだ出てないなら...一緒にやらないかい?人数が増えた方が効率がいいだろ?」
その通りだと思いキリトに目で合図する。
イア(どうする?)
キリト(まあ...その通りだし、そうするか。)
これは昔から決めていた俺たちのアイコンタクトだ。誰にも聞かれたくない会話の時に利用する。
キリト「OK、よろしく、俺はキリト。」
イア「イアだ。よろしく。」
シリカ「シリカです。よろしくお願いします。」
コペル「僕はコペル。よろしく、みんな。」
自己紹介も手短に4人となった俺たちはネぺント狩りを再開した。
~数分後~
ようやくすこしづつ花つきが出現し始めた。俺とキリトは未だに勝負が続いている。
イア・キリ「「50!!!」」
50匹目で花つきからなにか落ちたようだ。
イア「あ、胚珠出たわ。」
キリト「え?...今回は俺の負けか。」
よし!勝った!これでやっとペース落とすことが出来るわ。俺がホッとしていると
シリカ「あれ?花つきでもなく、普通のでもないやつがいますよ?」
シリカの視線の先には今まで倒してきたものとは別のネペントがいた。
イア(キリトあれは?)
キリト(あれが実つきだ。あの実は攻撃するなよ?あれが割れたら匂いで大量のネペントが寄ってくる。)
俺は頷いて、近くにいたシリカにそのことを伝える。1人ずつ伝えているのは大声をだすとモンスターが寄ってくるかもしれないという心配からだ。次にコペルに伝えようとして、視線を移すと、
コペル「ごめん...みんな。」
コペルはそう呟いていた。
何のことか分からずに呆然としているとコペルは片手用直剣単発スキル<スラント>を発動し、実つきの実を切りつけていた。
キリト「なっ!?」
イア「おい!?」
シリカ「え!?」
コペルは実を割り、俺達に背中を向けていた。
コペル「本当に...ごめん!!」
そのまま走り出すコペル。
イア(どういうことだ!?伝えるのが遅れたにしても、行動が早すぎる。そもそもコペルがここに来たのは...あいつはβテスターか!)
キリト「まずいぞ!このままじゃ...」
焦るキリト。
シリカ「どう...して?」
シリカは突然のことに頭がついて行っていない。
コペルのカーソルはいつの間にか消えていた。
キリト「隠蔽スキルか...」
キリトはコペルの消えた方向を見て、呟いた後俯く。
キリト「知らなかったんだな、お前。」
その呟きはどこか切なそうだ。
イア「どういうことだ?」
緊急事態のため簡潔に聞く。
キリト「隠蔽スキル、つまりハイディングが効くのは視覚があるモンスターだけだ、ネペントは視覚じゃなく...嗅覚で獲物の位置を割り出す。」
イア「じゃあ...あいつのしていることは?」
キリト「無駄だ。こっちはなんとか乗り切れるかも知れないが...あいつは1人だ。」
話していると、ネペントがうじゃうじゃと近寄ってくる。俺とキリトは怯えているシリカを守るように立ち、武器を構える。
イア「いけそうか?」
キリト「武器の消耗度はギリギリ、正直厳しい。」
イア「だよな~...」
イア(これは格闘術を使うことになるかもな...)
とりあえず俺たちは敵を殲滅すべく、武器を振り続けた。
しばらく経つとコペルの悲鳴が聞こえてきた。どうやら1人でもそれなりに戦っていたらしい。余裕が出てきたため、そちらに視線を向ける。ちょうど武器の消耗度が無くなり武器が壊れるところだった。
イア「っ!キリト!俺の武器を預ける!あとの敵頼めるか!?」
キリト「なんとか...なっ!」
短く会話を交わし、俺はキリトにスモールソードを渡す。そしてコペルの方へ走る。
イア「おらぁ!!!」
今まさにコペルを攻撃しようとしていたネペントを格闘術単発スキル<掌砲>を使い吹き飛ばす。<掌砲>とは助走による勢いと腰の捻りで最大力まで威力を高めた掌底だ。
コペル「っ!?どうして...?」
イア「目の前で死なれると後味悪いんだよ!この野郎!」
コペルは俯く。
イア「生きている以上は...生き続けて、命の重さを知りやがれ!」
俺は説教もそこそこにネペントを狩り続けた。
~数分後~
あれからネペントの群れを全て片づけた俺たちは、<ホルンカの村>へと戻ってきていた。あんだけ多く倒せば胚珠だって手に入る。目的も達成しているので長居は無用というわけだ。
イア「よし!アニールブレードゲットだな!」
キリト「あぁ...にしても疲れたな。」
アニールブレードを装備しながら俺はチラッとシリカとコペルの様子を見る。シリカはなんとか立ち直ってきたのか足取りはしっかりしている。一方コペルは俯いたままだ。
イア「とりあえず、これ。」
俺は胚珠を差し出す。
コペル「え?...どうして?」
イア「これはお前のもんだ。これを持ってる限りお前は今日の事を忘れることは出来ない。この世界で生き続けろ。それがお前の命の重さ、使命だ。」
中々に臭いセリフだが、コペルには聞いたようだ。
コペル「本当に...悪かった...もう2度とこんな真似はしない!」
決意に満ちた瞳をしている。これならもう大丈夫だろうと感じた。その後村で一晩明かし、俺たち3人はコペルと別れ、次の目的地に歩進めた。
現在のLv
イアLv7
キリトLv7
シリカLv5
いかがでしたか?
今回はコペルの生存についてとても悩みましたが...生存させることに決めました。
次回も見てもらえると幸いです!