「…漸く来やがったか!空気を読めねえ奴だ!」
ドローカードに目を向けると、遊良はそう呟いた。恐らくエースカードを引いたのだろう。
「永続罠発動!《強化蘇生》!
こいつで、俺の墓地に存在するレベル4以下のモンスターを特殊召喚する!
もう一度働いてもらうぜ!《ダーク・リゾネーター》!」
地面に描かれた魔法陣より、赤い光に包まれた悪魔の調律師が再び現れる
「更に俺は《バイス・バーサーカー》を召喚だ!」
続いて 遊良が召喚したモンスターは全身を紫色の波動で満たした巨大な悪魔だった。
明らかに ただ者ではなさそうな威圧とその表情。
正に“邪悪なる狂戦士”と言えよう。
「そのモンスターは…!」
召喚したモンスターを前に葵は驚きの表情を見せる。
どうやら、彼女はこのモンスターの効果を知っているようだ
「《強化蘇生》の効果はまだあるぜ!
この効果で蘇生したモンスターの攻撃力と守備力。そしてレベルをそれぞれアップさせる!」
「まさか、そのモンスターでシンクロ召喚を行う気…!?」
「あ…?それ以外何があるってんだ?」
自分のターンを突如中断され、遊良は不機嫌そうに そう言い返す。
すると、葵は嘲笑に似た声でバイス・バーサーカーを指差した。
「自分のモンスター効果を見直してみる事ね!
《バイス・バーサーカー》はシンクロ素材となった時、そのモンスターの攻撃力を2000上げる。
その代わりに コントローラーの2000のダメージを与える強制効果持っているわ。
ライフポイントが2000を下回っている あなたが今シンクロ召喚をしようものなら、
2000ダメージを受けあなたの敗北は確定するのよ?」
「…俺の負けが確定だと?舐めんじゃねえ!俺はレベル4《バイス・バーサーカー》に、
レベル4となった《ダーク・リゾネーター》をチューニング!」
再び音叉を打ち付けると、ダーク・リゾネーターは先ほどよりも大きな光輪に変化する。
「漆黒の炎と紅蓮の帳よ!孤高の翼に宿りて深淵を貫け!
シンクロ召喚!深き闇夜を舞い踊る、翼竜の王!《ブラックフェザー・ドラゴン》!」
周囲が黒雲に包まれ、そこから漆黒の影が現れた。
闇から溶け出したような体を包む、羽毛の外殻。圧倒的な威圧感。
全てを飲み込むような力を纏い、その竜は孤高の王者として君臨する。
遊良のエースモンスター。それは鶏にも似た巨大なドラゴンだった。
「ふん。折角忠告してあげたというのに。
敵わないからといって、自ら敗北を選ぶなんて…。所詮あなたの人生はその程度だったのね」
強力なオーラを放つドラゴンを前に葵は物おじせずにそう言い放つ。
恐らく、勝利を確信している事による余裕なのだろう。
「さあ そのモンスターと。そして、その信念と共に消えなさい!
《バイス・バーサーカー》の効果!シンクロ素材となった時、
そのモンスターのコントローラーに2000ポイントのダメージを与える!これで終わりよ!」
その叫びと同時に 遊良の墓地から黒い雷が発生すると、雷は遊良に向かって襲いかかってきた。
だが、当の遊良は いつものようにニヤリと笑うと
「この瞬間!《ブラックフェザー・ドラゴン》の効果発動!“ダーク・テイク・オーバー”!」
高らかに叫び宣言した。自分のエースモンスターの効果の発動を。
次の瞬間、雷は光の霧に変化すると ブラックフェザー・ドラゴンの翼の付け根にある宝石の中に消えていった。
「な!?ダメージが消えた…。違う…、吸収された…?」
このダメージで勝利できると信じ込んでいたのだろう。葵は今まで以上の動揺を見せていた。
「ブラックフェザー・ドラゴンは俺に対する効果ダメージが発生した時、
『黒羽カウンター』を1つ乗せる事で、そのダメージを無効化する事ができる!
まあ黒羽カウンター1つにつき、攻撃力は700ポイントダウンするがな。
…しかしお前も言っていた 《バイス・バーサーカー》の効果により、
ブラックフェザー・ドラゴンの攻撃力は2000ポイントアップする!」
この手のカードは、他の効果によってダメージが0になったり回復に変換されたりした場合、
効果が適用されないものが多い。
しかし、バイス・バーサーカーはダメージと攻撃力の上昇が同時に処理されるため、
仮にダメージが0になった場合も攻撃力はアップするのだ。
「攻撃力4100!XYZ-ドラゴン・キャノンの攻撃力を越えた!」
敦が興奮気味にそう叫ぶ。しかし麻衣たちは冷静に状況を判断していた。
「でも《XYZ-ドラゴン・キャノン》を倒す事はできても、
まだ葵さんのライフを削りきるには攻撃力は足りないよ…」
確かに、葵のライフは2800。
攻撃力4100のブラックフェザー・ドラゴンで、攻撃力2800のドラゴン・キャノンを攻撃してもダメージは1300ポイント止まり。葵のライフは1500ポイント残る。
「しかも葵班長の事だ。そう簡単にドラゴン・キャノンも破壊させてはくれないだろうな」
そう呟いたのは先ほど葵たちと一緒に出てきた、細身の男性。
その言葉から随分と長く彼女と行動していたのだろう。
「その通りよ!ドラゴン・キャノンも破壊させないわ!罠発動!二枚目の《ゲットライド!》」
意気揚々と葵が発動させたのは、先ほども使った 墓地のユニオンモンスターを装備させる罠。
その効果により 地面から再び《マシンナーズ・ピースキーパー》が出現した。
そして、ドラゴン・キャノンはそのパーツを全身に装着し一回り巨大に変形する。
「これでドラゴン・キャノンはピースキーパーによって破壊耐性を手に入れた!
追撃のモンスターを出して一斉攻撃する予定だったかもしれないけど、あてが外れたわね!
そして、この子が残れば“エクザイズ・パニッシャー”でそのモンスターを破壊できる!
ダメージを無効化してきたのは正直驚いたけど、これであなたの『詰み』よ!」
自分フィールド上には破壊耐性と破壊効果を持った攻撃力2800のモンスター。
そしてライフポイントは2800もある。
一方で遊良のフィールドは攻撃力4100のモンスター1体と意味のなく残り続けている永続罠のみ。
しかも、そのモンスターの攻撃力はエンドフェイズに大幅にダウンする上に耐性もない。
そして遊良は召喚権も既に使っている。
どう考えても葵の優勢だ。しかし
「それはどうだろうな?」
「え…?」
遊良のこの発言から 彼女の自信とその布陣は大きく壊滅する事になる。
「俺は《ブラックフェザー・ドラゴン》のもう一つの効果を発動!
1ターンに1度、このカードに置かれている黒羽カウンターを全て取り除く事で、
その数×700ポイントのダメージを相手プレイヤー及び相手モンスター1体に反射する!」
「何ですって!?」
見るとブラックフェザー・ドラゴンの翼は、いつの間にか大きくその色を変えていた。
鮮やかな黒の中から仄かに光る赤い光は、まるで熱を宿した石炭のようにも見える。
「いけ!ブラックフェザー!“ノクターン・ミラー・ショック”!」
ブラックフェザー・ドラゴンは、遊良の呼び抱えに応えるように空気を吸い込む動作を行うと、螺旋状のブレスを吐き出した。
「きゃっ!」
乗っていたカウンターの数は1つ。
よって700ポイントのダメージが葵とドラゴン・キャノンに襲いかかり、
赤紫色のブレスが直撃した葵は700ライフを失う。
そしてドラゴン・キャノンはショートして全身から煙を出すとグッタリとうなだれ、その攻撃力はダウンした。
それと同時に赤く輝いていたブラックフェザー・ドラゴンの翼は元の黒色に戻っていく。
葵 LP:2800-700=2100
ドラゴン・キャノン ATK:2800-700=2100
「すごい…!葵さんのライフとモンスターの攻撃力を一気に減らしちゃった…!」
「それだけじゃない…!
ブラックフェザー・ドラゴンの攻撃力を下げていた、黒羽カウンターがなくなった事で、その攻撃力は700ポイント分戻っている!」
ブラックフェザー・ドラゴン ATK:4100+700=4800
この一撃が通れば決着がつく。そして葵のフィールドには伏せカードはない。
「どうやら、ここまでのようね…」
「バトルだ!《ブラックフェザー・ドラゴン》で《XYZ-ドラゴン・キャノン》を攻撃!
吼えろ!“バークアウト・ストーム”!」
ブラックフェザー・ドラゴンは、渾身のブレスと共に両方の翼から巨大な竜巻を放つ。
その爆風と熱を受けたドラゴン・キャノンは轟音と共に破壊された。
「きゃああああっ!!」
LP:2100-2700=0
そしてその衝撃に葵は吹き飛ばされる。
それと同時にデュエルディスクのリンクが切れ、モンスターたちは消滅した。
「葵くん!大丈夫かい!?」
「ええ。大丈夫よ」
デュエルが終わったのを確認するや否や、敦は葵に駆け寄る。
葵はどうやら軽傷のようだ。服の汚れをはたくと遊良に向き直るとバツが悪そうに言った。
「私の負けね。あなたの本気の力、見せてもらったわ」
一方で遊良は、勝利したにもかかわらず不服そうな表情をしていた。
「なあ葵、正直に言っていい。本当は思ってるんだろ?
俺の戦法は相変わらずハイリスク過ぎるってよ」
その言葉に葵は「あら」と、まるで「自覚していたの?」と言いたげな声を上げた。
確かに先ほどの遊良のデュエルは運任せに近い、危険なプレイングであった。
《バイス・バーサーカー》の効果にチェーンされ《ブラックフェザー・ドラゴン》を除去されていれば敗北は確実だったろう。
「ええ その通りよ」
葵のその言葉に遊良は苦い顔をした。
彼にとって、それは自分の生き方に疑問を持たれているようなものだ。
良い顔ができないのは当然だろう。
しかし、葵は更に言葉を続けた。
「でも…。あなたの その戦い方に対する誇りや自信。それはすごく感じられた。
さっきは それを『そんなデュエル』なんて、言ってしまってごめんなさい」
そういうと、葵は遊良に対し深々と頭を下げた。
遊良も「気にすんな」と、いつものニヤリとした表情を浮かべる。
すると外野の方から鮫歯の男性と細身の男性。そして麻衣が戻ってきた。
「格好よかったよ。遊良くん!」
「お世辞言ったって何もねえぞ?麻衣。それと…」
「ふむ。未だに我が名を教えてはいなかったな。
我は大名寺 剛毅(だいみょうじ ごうき)だ。遊良と言ったな?その名、覚えてやろう」
これは鮫歯の男性だ。思った以上に上から目線なのが気になるが、悪い奴ではなさそうだ。
続いて細身かつ顔の下半分を隠していた男性が自己紹介する。
「自分は葛城 右京(かつらぎ うきょう)。…今日は久々に面白いデュエルを見る事ができた」
「ボクは倉木麻衣。これから宜しくお願いします」
これで全員が自己紹介を終えた。敦はホッと息をつくと笑みを浮かべる。
「実は、隣の部屋で遊良くんと麻衣ちゃんの勘下界を用意しておいたんだよ!
自己紹介も終えた事だし、みんな早く行こう!」
「ボク達のためにですか!?ありがとうございます!」
「いいんだよ。さあ、こっちだよ。着いてきて!」
敦に連れられ麻衣達は続々とオフィスを出ていった。遊良もそれに続こうと足を向けるすると。
「遊良」
何者かに引きとめられた。振り向くと、そこには腕組をした葵が立っていた。
「何だ?」
「あなたのこれまでの人生は、何故 そこまでに大変なものになってしまったの?」
「……さあな。それよりジジイが待ってるぜ?さっさと行くぞ」
遊良は、その質問に答えず そう言い返す。
「…そうね。行きましょう」
サイコデュエリストは、その力ゆえに迫害される事も多い。
葵も何かを察したのだろう。深くは追求せずに頷くと、そのまま遊良と共にオフィスを後にした。
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場所は遠く離れ、とある夜の孤島。そこでは、二人の男がデュエルを行っていた。
「馬鹿な…!こんな事が…!」
片方の男は恐怖の顔で立ちつくしておりライフポイントも風前の灯である。
「…」
一方でもう片方の少年は、無言で男を睨みつけていた。
そのライフは1ポイントも減ってはいない。
男はアカデミアの特待生として今夜アカデミアに向かうはずであった。
アカデミアに向かう船に乗る数十分前、たまたま森の中を散歩していたところ突然現れたこの少年とデュエルをする事になり、その後は一方的に蹂躙され続けてきたというわけだ。
「な、何なんだよ!お前は!何でダメージが実体化して…」
少年は男の質問には答えずデュエルを続ける。
「貴様も俺を解放してくれるデュエリストではなかったな。バトルだ!
レッドアイ…」
少年が従えているモンスターに攻撃宣言を行おうとしたその時。
「は~い♪探しものは見つかったかしら?遊葉ちゃん」
突如、現れた女性の声が少年の攻撃宣言をかき消す。
男が声の方を向くと少年の背後にいつの間にか女性が現れていた。
「青河か。この男も俺を解放してくれるようなデュエリストではなかった」
遊葉(ゆうは)と呼ばれた男は青河(せいが)にそう言い返す。すると青河は意外そうな表情をした。
「あら外れ?おかしいわね。
一応はアカデミアの特待生なんだから、実力的には当たりだと思ったんだけど…」
「だが途中で興味深い話を聞いた。近いうち、アカデミア周辺に新たなデュエリスト達が集まるらしい」
「あら、そうなの?なら、次はアカデミアの周りに行ってみましょうか」
そんな事を話し合っている二人を前に、一人残された男は困惑していた。
『こいつらは一体何を言っているんだ?』
すると少年は「ああ」と男に向き直った。
「そういえばデュエルの途中だったな。悪かった」
遊葉はデュエルディスクを仕舞いながら男に背を向けると、途中だった攻撃宣言を完遂させた。
「やれ。《深紅眼の終焉竜》(レッドアイザー・ダークエンド・ドラゴン)」
麻「第2回、設定紹介コーナーだよ!遊良くん!」
遊「ああ そうだな。てか、このコーナー見てる奴なんているのか?」
麻「この小説自体を見てくれている人がいるか自体が分からないし、大丈夫だよ」
遊「…それもそうだな。そんじゃ、やってくか」
麻「今回はボクだね」
《後書き設定紹介(キャラクター編)》
名前:榛名麻衣(はるな まい)
年齢:16歳
性別:女
見た目:金の長髪にサイドテール。おっぱいは控えめ。そして八重歯
性格:大人しく謙虚だが、自分のデッキには信用を寄せている。
一方歯に衣着せるのが苦手で思った事は構わず口にするなど、意外な一面もある。
趣味:デュエル
特技:散歩
好物:青魚の塩焼き
嫌い:果物以外の酸っぱい物
身長:年齢より低め
体重:年齢より軽め
服装:青のチェックのワンピースにベージュのコート
一人称:ボク
二人称:君