遊戯王 ~singular   作:空色サイクロン

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開戦

「着いたわ、ここがデュエルアカデミアよ」

 

直通の飛行機から降りると早々に葵は遊良たちに伝えた。

 

「…ここが、あのデュエルアカデミアか」

 

「写真で見た事は何回かあるけど、ボク 実物を見るのは初めてだよ」

 

搭乗口から降りるや否や遊良と麻衣は辺りを見渡しそう呟いた。

 

「あそこにあるのは多分学生寮かな?こうして見ると思った以上に大きい施設なんだね。

遊良くん」

 

「…」

 

遊良から答えは無い。

見ると遊良はアカデミアの校舎を見据えながら一人 何やら物思いに耽っていた。

その表情は何処か険しくも見える。

 

「遊良くん?」

 

「ん? …どうした?麻衣」

 

「大丈夫?何か考え事をしていたみたいだったけど」

 

「あ、ああ、大丈夫だ…。心配掛けたな」

 

「…早々に怒って悪いんだけど、考え事は後にしてくれない?」

 

葵が呆れた声で遊良を叱る。その隣には、いつの間に現れたのだろう。

セキュリティの服を着た、引き締まった体つきの男性が立っていた。

 

「紹介するわ。彼はアカデミアの治安維持局長官、橘さん」

 

「紹介に預かった橘だ。これから宜しく」

 

強靭な体格には不似合いの優しい顔で橘は4人に挨拶の言葉をかけた。

 

「ボクは榛名 麻衣だよ。こちらこそ宜しくよろしく」

 

「不知火 遊良だ。よろしくな、おっさん」

 

「大名寺 剛毅だ。…ふむ。我が名字を呼ぶ事を赦そうではないか」

 

「…葛城 右京。出来る限り、短いつき合いになれると良いですね。

勿論事件の早期解決的な意味で、ですよ?」

 

「ちょっと、後半3人!もっと真面目に挨拶できないわけ!?」

 

そんなこんなで挨拶を終えると、早速橘は事務的に島の現状を報告し始めた。

 

「サイコデュエリストがいたと思われる個所は島の北西部にある山の中。

範囲は直径十数メートルに渡り、木が倒されていました。

このデュエルによりセキュリティ隊員一人が骨折などにより重傷。

本人の証言から対戦相手は融合モンスターを使用していたという事がわかっています」

 

「融合…」

 

その言葉に葵が表情を曇らせる。同じ融合使いとして何か思う事があるのだろう。

 

「今回は君たちにサイコデュエリストをデュエルによって制圧をお願いしたい。

我々は連中の活動拠点の特定と、非デュエリストの拘束を行いますので」

 

「え…?ボクはてっきり支援任務に徹するのかと思ったんだけど…」

 

思いがけない依頼に麻衣は戸惑いの声をあげる。それはそうだろう。

初の任務が、自分たちと同じサイコデュエリストの制圧。

しかも相手がどれ程の実力なのかすらもわからない。

そんな連中を自分たちだけでどうにかするなど正直馬鹿げている。

 

「いえ。今回は現場でデュエルをしてもらう」

 

そう答えたのは、細身の襟高デュエリスト右京だった。

 

「サイコデュエリストはデュエルにおいてはセキュリティさえも圧倒する強力な力を持っているのは、二人共『身を持って』わかっているだろう。

だが奴らもデュエルを伴わない戦闘ではセキュリティ隊員一人でも十分に制圧できる。

それ故、実際に拘束・戦闘の経験を持つセキュリティはあくまで逮捕や後方支援に留まり、連中の十八番であるデュエルは俺たちが請け負うのが理想的だ」

 

「そ、そうなんだ…。少し怖いけど、わかったよ。ボク頑張ってみる…!」

 

自分にそう言い聞かせて自らを鼓舞する麻衣。

しかし、本当はまだ恐ろしいのだろう。その体は小さく震えていた。

 

「今回は哨戒として二人一組で島の周りを2時間ほど確認するつもりよ。

仮に怪しい人物がいればデュエルによる拘束。

何か発見したらデュエルディスクについている無線機でお互い連絡を取り合うこと。

それで良いわね?」

 

「…二人一組?俺たち5人だろ?誰か一人余っちまうんじゃねえか?」

 

遊良の質問に、葵は心配いらないわと返した。

 

「私は一人で平気よ。この島の地図は頭に入っているわ。

それに有事の際には無線もある。それに、ここの誰よりも力を使いこなす自信があるわ」

 

…力とは恐らくサイコパワーの事なのだろう。

事実あれから1カ月が過ぎたが、遊良は未だにサイコパワーが発現していない。

麻衣はある程度使いこなせるようになったらしいが、本人はまだ不安定だという。

確かにそう考えると自分の身を守る力を持っている人が単体行動をするべきだ。

不安定な状態で一人行動をして、力が制御不能にでもなったら足手まといどころか周りに被害が及ぶのは眼に見えている。

 

「班長がそう言うのであれば、自分は止めません」

 

「貴様は有事に考えなく物事を口にするような女ではない。好きにするがいい」

 

一方で心配そうな様子も見せずに右京と剛毅は葵にそう言葉をかけた。

恐らく二人は葵とは長い付き合いなのだろう。

 

「ありがとう、二人とも。あと…」

 

葵は遊良たちに向き直る。

 

「…遊良、麻衣ちゃん。さっそく、こんな任務につき合わせちゃってなんだけど。

これから一緒に頑張っていきましょう」

 

「はい!」

 

「誰に言ってんだよ。仮にも1回あんたを倒してんだぞ?問題ねえよ」

 

「…本当に可愛くないわね。まあいいわ。それじゃ、みんな。気を付けて」

 

こうして5人はそれぞれその場を離れると、各々気になる所へと向かって行った。

 

「着いたわ、ここがデュエルアカデミアよ」

 

直通の飛行機から降りると早々に葵は遊良たちに伝えた。

 

「…ここがデュエルアカデミア」

 

「写真で見た事は何回かあるけど、ボク 実物を見るのは初めてだよ」

 

搭乗口から降りるや否や遊良と麻衣は辺りを見渡しそう呟いた。

 

「あそこにあるのは多分学生寮かな?こうして見ると思った以上に大きい施設なんだね」

 

麻衣は始めて見るアカデミアに興奮気味にそう言う。

しかし、遊良から返事は無かった。

見ると遊良はアカデミアの校舎を見据えながら一人 何やら物思いに耽っている。

その表情は何処か険しくも見えた。

 

「遊良くん?」

 

「ん? …どうした?麻衣」

 

「大丈夫?何か考え事をしていたみたいだったけど」

 

「大丈夫だ。心配掛けた」

 

「…早々に怒って悪いんだけど、考え事は後にしてくれない?」

 

葵が呆れた声で遊良を叱る。その隣には、いつの間に現れたのだろう。

セキュリティの服を着た、引き締まった体つきの男性が立っていた。

 

「紹介するわ。彼はアカデミアの治安維持局長官、橘さん」

 

「紹介に預かった橘だ。これから宜しく」

 

強靭な体格には不似合いの優しい顔で橘は4人に挨拶の言葉をかけた。

 

「ボクは榛名 麻衣だよ。こちらこそ宜しくよろしく」

 

「俺は不知火 遊良だ。よろしくな、おっさん」

 

「大名寺 剛毅だ。…ふむ。我が名字を呼ぶ事を赦そうではないか」

 

「…葛城 右京。出来る限り、短いつき合いになれると良いですね。

勿論事件の早期解決的な意味で、ですよ?」

 

「ちょっと、後半3人!もっと真面目に挨拶できないわけ!?」

 

そんなこんなで挨拶を終えると、早速橘は事務的に島の現状を報告し始めた。

 

「サイコデュエリストがいたと思われる個所は島の北西部にある山の中。

範囲は直径十数メートルに渡り、木が倒されていました。

このデュエルによりセキュリティ隊員一人が骨折などにより重傷。

本人の証言から対戦相手は融合モンスターを使用していたという事がわかっています」

 

「融合…」

 

その言葉に葵が表情を曇らせる。同じ融合使いとして何か思う事があるのだろう。

 

「今回は君たちにサイコデュエリストをデュエルによって制圧をお願いしたい。

我々は連中の活動拠点の特定と、非デュエリストの拘束を行いますので」

 

「え…?ボクはてっきり支援任務に徹するのかと思ったんだけど…」

 

思いがけない依頼に麻衣は戸惑いの声をあげる。それはそうだろう。

初の任務が、自分たちと同じサイコデュエリストの制圧。

しかも相手がどれ程の実力なのかすらもわからない。

そんな連中を自分たちだけでどうにかするなど正直馬鹿げている。

 

「いえ。今回は現場でデュエルをしてもらいます」

 

そう答えたのは、細身の襟高デュエリスト右京だった。

 

「サイコデュエリストはデュエルにおいてはセキュリティさえも圧倒する強力な力を持っているのは、二人共『身を持って』わかっているでしょう。

だが奴らもデュエルを伴わない戦闘ではセキュリティ隊員一人でも十分に制圧できる。

それ故、実際に拘束・戦闘の経験を持つセキュリティはあくまで逮捕や後方支援に留まり、連中の十八番であるデュエルは俺たちが請け負うのが理想的なんです」

 

「そ、そうなんだ…。少し怖いけど、わかったよ。ボク頑張ってみる…!」

 

自分にそう言い聞かせて自らを鼓舞する麻衣。

しかし、本当はまだ恐ろしいのだろう。その体は小さく震えていた。

 

「今回は哨戒として二人一組で島の周りを2時間ほど確認するつもりよ。

仮に怪しい人物がいればデュエルによる拘束。

何か発見したらデュエルディスクについている無線機でお互い連絡を取り合うこと。

それで良いわね?」

 

「…二人一組?俺たち5人だろ?誰か一人余っちまうんじゃねえか?」

 

遊良の質問に、葵は心配いらないわと返した。

 

「私は一人で平気よ。この島の地図は頭に入っているわ。

それに有事の際には無線もある。それに、ここの誰よりも力を使いこなす自信があるわ」

 

…力とは恐らくサイコパワーの事なのだろう。

事実あれから1カ月が過ぎたが、遊良は未だにサイコパワーが発現していない。

麻衣はある程度使いこなせるようになったらしいが、本人はまだ不安定だという。

確かにそう考えると自分の身を守る力を持っている人が単体行動をするべきだ。

不安定な状態で一人行動をして、力が制御不能にでもなったら足手まといどころか周りに被害が及ぶのは眼に見えている。

 

「班長がそう言うのであれば、自分は止めません」

 

「貴様は有事に考えなく物事を口にするような女ではない。好きにするがいい」

 

一方で心配そうな様子も見せずに右京と剛毅は葵にそう言葉をかけた。

恐らく二人は葵とは長い付き合いなのだろう。

 

「ありがとう、二人とも。あと…」

 

葵は遊良たちに向き直る。

 

「…遊良、麻衣ちゃん。さっそく、こんな任務につき合わせちゃってなんだけど。

これから一緒に頑張っていきましょう」

 

「はい!」

 

「誰に言ってんだよ。仮にも1回あんたを倒してんだぞ?問題ねえよ」

 

「…本当に可愛くないわね。まあいいわ。それじゃ、みんな。気を付けて」

 

こうして5人はそれぞれその場を離れると、各々気になる所へと向かって行った。

 

「しかし、あいつらはセキュリティの厳しいアカデミアで何おっぱじめるつもりだ?」

 

「それを調べるのも我らの責務だ」

 

遊良は剛毅と共に異変があったと言われている、森の奥深くへと進んでいた。

森の中は大小様々な木々に覆われており薄暗い。

遊良はデュエルディスクについているフラッシュライト機能で、足場と正面を確かめつつ慎重に先を急いだ。

 

「ふむ…。そろそろ1時間か。遊良よ、帰路の支度を頭に入れておけ」

 

「あいよ」

 

ここまで進んできたものの、特にめぼしい物は見つけられなかった。

遊良はふと視線を上げる。遥か遠くにアカデミアの校舎が見えた。

 

デュエルアカデミア

世界各国から集められたデュエリスト達が集まる日本最大規模のデュエリスト養成機関。

ここで多くのデュエリストはエキストラデッキからの特殊召喚を学ぶと言われている。

 

エキストラデッキ使いはデュエリストの中で唯一、自らの意思で特殊な力を手にしたデュエリストだ。

かつての世界ではエキストラデッキからの特殊召喚を学ぶ事に対して、特別な制限がかけられる事はなかったらしい。

しかし現在は、デュエルは永久機関の維持のための道具として使用されている。

そのため永久機関に負荷がかからないように3つの召喚法は、政府とWDFの監視の元にそれぞれがほぼ同じ人数になるように調整されているのである。

故に一個人が勝手に召喚法を習得する事ができないように現在は国家資格として習得の方法に制限をかけている。それが現在のデュエル事情なのだ。

 

ちなみに1つの召喚法を会得する事は意外と難しくない。

20年前では各召喚法別に設定された専用カリキュラムを10年間学び、ようやく成功率60%だったものの、今は8000~1万時間程度の専門機関による学習と『覚悟』さえあれば誰でも100%会得できる。

1万時間というと、1日10時間勉強して約3年。受験勉強と同じ位である。

しかし、周りからすると勉強自体は正直どうでもいいらしい。

確かに逆に言えば勉強さえすれば出来るようになるのだ。大したことではないのかもしれない。

問題はもう1つの『覚悟』の方だ。

人智を越えた3つの召喚法を体の細部にまで覚え込ませる事。

それこそがエキストラデッキを使用するのに必要な要因であり最大の代償。

それにはどうするか?

簡単だ。時間をかけて体に召喚法を慣れさせていくしかない。

当然時間はかかる。個人差もあるが…確か、エキストラデッキに各1枚ずつ15種類のモンスターを入れるには最大で15年もかかると聞いた事がある。

13歳でアカデミアに入学したとして、召喚法自体を会得できるのは16歳。

それ故にエキストラデッキを使いこなすプロデュエリストと呼ばれる連中は最年少ランクでも30代になるのだ。

問題はそれだけじゃない。

エキストラデッキを使う召喚方法は、本人は意識せずとも脳を酷使している。

そのため、1人の人間が会得できる召喚法は「融合」「シンクロ」「エクシーズ」のうち1種類のみ。

非常に長い勉強時間と自分の未来を決める召喚法の選択。

それが『覚悟』なのである。

 

…しかし、今言ったのは普通の人間の話。

遊良たちサイコデュエリストは前述の『覚悟』を一切必要としないのだ。

時間もかからなければ、好きな召喚法をいつでもする事ができる。

それが脳の仕組みが他の人間と大きく異なっているからなのか、それともサイコパワーが何か関係しているのかは未だ分からないらしい。

無論、3年間の勉強は当然必要となっている。

それゆえWDFに送られてからは 遊良はシンクロ召喚に関する勉強を欠かさず、僅か17歳という若さでシンクロ召喚を完全にマスターしたのであった。

恐らく麻衣も葵も遊良同様に召喚法を得るために勉強を続けてきたのだろう。

しかし、そのようなサイコデュエリストの特性も社会から反感を買う要因になっていた。

『覚悟がいらないなんて不公平』 『何であんな奴らだけ特別なんだ』

事実 遊良はインターネットでその手の書き込みにより心を痛めた事もある。

 

「(…俺たちは、アカデミアの連中とは分かりあえる事はねえのか?)」

 

そのような事を考えながら、遊良は一人 物思いに耽っていた。

 

「…遊良、フラッシュライトを切れ」

 

突如名前を呼ばれ、遊良の意識は現実に引き戻される。

声の方を見ると、横に居る剛毅が正面の薄暗い空間を睨みつけていた。

 

「前方に何かいるな。いや『誰か』と言った方がよかろう」

 

「何!?おい、それって!?まさか!」

 

しん と静まりかえっている空間に、遊良の声が響き渡る。

 

「だ、誰だ!?」

 

前方より聞き覚えのない男の声がした。

おそらく、数十メートル先に木が倒されていた場所周辺にそいつはいる。

 

「痴れ者が…。気付かれてしまったではないか」

 

「す、すいません…!だが、だったら急げば良い話でしょう!」

 

剛毅と遊良は共に暗い空間へと飛び込み、足音高く闇の中を駆け抜けた。

遊良は途中でフラッシュライトをつけて行く先を照らしながら一気に駆け込む。

するとこれまでと違い、沢山の木が倒れて妙に拓けている広場のような所に出た。

広場の奥に何か光が見える。恐らくはフラッシュライトか何かの光だろう。

光に近づくと、人影がある事に気が付いた。

白いコートを着た壮年の男で研究者に近い風貌をしていた。

 

「何だ、お前ら!」

 

男は低い声で叫ぶ。その腕にはフラッシュライトが輝くデュエルディスクが付いていた。

 

「俺はWDFから来た、不知火遊良だ!てめえこそ何者だ!

まさか暗い森の中で散歩するのが趣味なんです。とか言うつもりじゃねえだろうな?」

 

遊良はからかうように男を挑発する。一方で剛毅はやれやれと呆れながら口を開いた。

 

「…違うという事を分かっていて言っているのだろうな。貴様」

 

「当然だろ。こいつ、多分クロだぜ」

 

男が後ずさる。どうやら周りに仲間がいないらしい。

 

「ちっ…。こんな事になるんだったら…!あいつと一緒に行動するんだったぜ…」

 

男と遊良たちは同時にデュエルディスクを展開した。

お互い相手を睨みあい、正に一触即発状態になる。

 

『ピピッ!ピピッ!』

 

すると静寂の空間に、突如機械質のアラームが鳴り響いた。

音の出どころは遊良たちのデュエルディスクからだった。

現代 世界中に普及されているデュエルディスクは軽量であり、使いやすく、それでいて安価である。

DVDプレイヤーの再生や冷凍庫の氷製機能に右往左往する主婦ですら起動するだけならできる。

遊良たちのデュエルディスクはWDFで配布された特注であり、通信機能や位置情報の発信などができる高性能な機能を持っていた。

遊良はディスプレイを確認する。そこには『From:Aoi』の文字が点滅して映っていた。

 

「剛毅!葵から緊急連絡だ!」

 

「遊良、先に行け。俺は奴を押さえる」

 

「行かせるかよ!」

 

そうはさせないと、コートの男はデュエルディスクにカードを置いた。

するとソリッドビジョンから現れた、霊体状の腕が遊良に向けて襲いかかってきた。

 

「な、何だと!?」

 

しかし、その腕は遊良に届く直前に大きくバランスを失う。

 

「痴れ者め、俺を無視するとは良い度胸をしているな」

 

そう語る剛毅の隣には、黒いマントを纏った巨大なモンスターが腕を握り潰していた。

男の意識が一瞬、剛毅に向けられる。その一瞬の隙を遊良は見逃さなかった。

 

「(今しかねえ!)」

 

男が剛毅に気を取られた一瞬、遊良はその場から走った。

 

「ちっ、一人逃げやがったか…!まあいい。

さっさとお前を倒して、あいつを追いかけて片づければ、口封じは完了だ!

何の問題もない!」

 

男がそう言うとデュエルディスクを構える。

 

「…ふん。貴様如きが未来の王となる、この俺を退けるだと?片腹痛いわ!

完膚なきまでに叩きのめした上に、有用な情報を吐くまで縛り上げてくれる!」

 

「王だと?はっ!冗談もほどほどにしやがれ!デュエルだ!

俺は手札から魔法カード、《デビルズ・サンクチュアリ》を発動!」

 

男は魔法カードをデュエルディスクにセットする。

フィールドに魔法陣が現れ、そこから金属のようなモンスターが生成された。

 

「こいつは俺のフィールドにメタルデビル・トークンを特殊召喚するカードだ!

そして俺はこのメタルデビル・トークンをリリースし、《地獄詩人ヘルポエマー》をアドバンス召喚!」

 

男がカードを召喚すると同時に、地面が勢いよく砕ける。

そしてそこから、墓石のような物を背負った醜いモンスターが現れた。

 

《地獄詩人ヘルポエマー》

☆5/闇属性/悪魔族/攻2000/守1400

 

「レベル5で攻撃力2000…。何やら特殊能力を持っているとみて間違いないな」

 

「さあ、どうだろうな!言っておくが、俺の展開はまだ終わらねえぞ!

俺がアドバンス召喚に成功した時、このカードは手札から特殊召喚できる!

来い!《イリュージョン・スナッチ》!」

 

次の瞬間、ヘルポエマーの影から不気味なモンスターが現れた。

体の右半分はヘルポエマーと同じ姿をしているものの左半分は全く別のモンスターである。

 

《イリュージョン・スナッチ》

星7/闇属性/悪魔族/攻2400/守1000

 

「こいつは自身の効果で特殊召喚した時、アドバンス召喚したモンスターと同じ種族・属性・レベルになる効果を持っているが俺のデッキには必要ない。

俺はカードを2枚伏せてターンエンドだ!」

 

(くくく…。今俺が伏せた 《禁じられた聖衣》はモンスターの攻撃力を600ポイント下げる代わりに、効果の対象及び効果破壊から守るカードだ。

そして ヘルポエマーは戦闘破壊され墓地に送られた場合、

相手バトルフェイズ終了時毎に相手の手札を1枚ランダムに捨てさせる効果を持つ。

これで相手の手札をズタズタにしてやるぜ…!

それに、もし厄介なモンスターを出そうとしたものなら、この伏せカードで…)

 

「俺のターン!ドロー!フィールドに存在するモンスターを貴様がより多く従えている時、

このカードは手札から特殊召喚できる!いでよ!《ヴェルズ・マンドラゴ》!」

 

地面から禍々しい紋章が刻まれた植物型のモンスターが這い出てくる。

しかし、その外見はおぞましい雰囲気とは裏腹に可愛らしいマスコットのようでもあった。

 

《ヴェルズ・マンドラゴ》

☆4/闇属性/植物族/攻1550/守1450

 

「更に このカードは我がフィールドのモンスターを手札に戻す事で、このカードは手札から特殊召喚する!いでよ!《A・ジェネクス・バードマン》!

そして、再び手札から《ヴェルズ・マンドラゴ》を特殊召喚する!」

 

《A・ジェネクス・バードマン》

☆3/闇属性/機械族/攻1400/守 400

 

召喚権を使わずに、剛毅のフィールドに一気にモンスターが展開される。

その瞬間に男は叫んだ。

 

「シンクロはさせねえ!罠発動!《グリザイユの牢獄》!」

 

次の瞬間、剛毅のモンスターは黒と白で彩られた牢獄の中に幽閉された。

牢獄の影響なのか、その姿から色が抜け落ちてモノクロ調になっていく。

マンドラゴは牢獄の格子をバンバン叩いて脱出を試みているが、牢屋はビクともしない。

 

「こいつは俺のフィールドに儀式・融合・アドバンス召喚したモンスターのうち、いずれかが存在する時、エンドフェイズまでお互いのシンクロ及びエクシーズモンスターの効果と攻撃、特殊召喚を封じる罠だ!これでお前のシンクロ召喚は封じさせて貰う!」

 

「なるほどな。確かに《A・ジェネクス・バードマン》と《ヴェルズ・マンドラゴ》を素材に用いればレベル7のシンクロ召喚を行う事ができる。その罠はそれを妨害する為に発動したというわけか」

 

「そうだ!これでお前はシンクロ召喚できない!」

 

男は勝ち誇ったようにそう叫ぶ。しかし剛毅は眼を閉じると口を開いた。

 

「…猿知恵だな」

 

「は?」

 

「見せてやろう。これが王のデュエルというものだ!

俺は《A・ジェネクス・バードマン》と《ヴェルズ・マンドラゴ》をリリース!」

 

2体のモンスターが黒い光に変わるとデュエルディスクに吸い込まれていく。

 

「アドバンス召喚!いでよ、《怨邪帝ガイウス》!」

 

召喚宣言と共にディスクから黒い閃光がフィールドを埋め尽くす。

時間にしておよそ3秒だろうか。

光が収まると剛毅の隣には、先ほど現れていた巨大なモンスターが降臨していた。

 

《怨邪帝ガイウス》

☆8/闇属性/悪魔族/攻2800/守1000

 

「お、怨邪帝だと!?」

 

「《怨邪帝ガイウス》のモンスター効果!

アドバンス召喚に成功した時、フィールドのカード1枚を除外し、貴様に1000ダメージを与える!これで貴様のモンスターを除外してくれる!」

 

「くっ…!聖衣はチェーン発動しても破壊耐性しか付けられない…!

しかたねえ、受けてやる…!《地獄詩人ヘルポエマー》と《イリュージョン・スナッチ》、どっちを狙う気だ!?」

 

「ふん!『どっちか』だと?無論両方だ!

我が眷属は闇の力を贄として食らう事で、その真なる力を覚醒させる!

《怨邪帝ガイウス》の更なる効果!このカードのアドバンス召喚に闇属性モンスターを使用した場合、その効果の対象の数を倍にできる!」

 

「な、なんだとっ!?」

 

「ゆけ、ガイウス!“怨邪帝の災配”!」

 

ガイウスの周りから噴き出した瘴気に当てられ、ヘルポエマーとイリュージョン・スナッチは腐って消滅していく。そして男は1000ポイントのダメージと共に吹き飛んだ。

 

「ぎゃああああああっ!」

 

男LP:4000-1000=3000

 

「く…!しかし、ガイウスの攻撃力は2800…!俺のライフを削るにはまだ足りない!」

 

「ふん。確かにこの状況ではな。

…しかし気付かないのか?このフィールドに深い闇の力が充満している事に」

 

剛毅のセリフに男は周囲を見回す。

辺りには暗雲が立ち込め、紫色の雷が周囲の大地に降り注いでいた。

 

「これは…!?」

 

「俺はガイウスの効果適用後に、《ダーク・ゾーン》を発動していた」

 

《ダーク・ゾーン》は、特定の属性・種族・カテゴリのモンスターを強化する能力を持つ、「フィールド魔法」というカードに属しているカード。《ダーク・ゾーン》は闇属性のモンスターの攻撃力を500ポイントアップさせ、代わりに守備力をダウンさせる。

 

「ここで打点強化のフィールド魔法だと!?」

 

ガイウス ATK:2800+500=3300

 

「今さら気づいても仕方あるまい。バトルだ、ガイウスよ!奴に引導をわたせ!」

 

ガイウスは片手を大地に叩きつける。

するとひび割れた大地から大量の怨霊が、まるで間欠泉のように噴き上がってきた。

 

「そうはいくか…!ガイウスを対象にリバースカード、《禁じられた聖衣》を発動!」

 

魔法カードから放たれる白銀の光がガイウスを覆う。

するとガイウスの鎧は銀色に換装され眩く輝き出した。

 

「我が帝への貢物か…?今際の際と言うのになかなかの心掛けだな」

 

「そんなわけないだろうが!聖衣の効果を受けたモンスターは効果の対象および効果破壊されなくなる代わりに攻撃力が600ポイントダウンする!

これでそいつの攻撃力は2700!まだライフは…」

 

「ぬるい!我が帝に小細工など通用せんわ!手札から《禁じられた聖杯》をチェーン発動!」

フィールドのモンスター1体を対象に、攻撃力を400ポイント上げ効果を無効化する!」

 

「ば、馬鹿な…!!?!」

 

効果にチェーンした事により、聖衣の効果はガイウスに対してまだ適用されていない。

よって対象を取らない効果に邪魔される事なく聖杯の効果を使用する事ができるのである。

 

「まずは聖杯の力で我が帝の攻撃力は400上がり、続いて貴様の聖衣の効果により600下がる。さて結果として攻撃力は現状から200ダウンといった所か」

 

ガイウス ATK:3300+400-600=3100

 

「しかし、残りライフ3000の貴様ならば我が一撃のもとに屠る事も難しくあるまい…。

ゆけ!ガイウスよ!“帝王の深怨”!」

 

ガイウスが再び地面を叩きつける。

噴き上がる怨霊を纏った地面が隆起し、男をそのまま吹き飛ばした。

 

「うぎゃあああああああっ!」

 

男LP:3000-3100=0

 

 

大地を揺るがしかねない衝撃に男は倒れると、そのまま動く事はなかった。

 

「…む、やりすぎてしまったか。これではとても情報を吐くどころではないな」

 

剛毅は男を縛り上げると自身のデュエルディスクの位置情報の発信ボタンを押した。

暫くすればセキュリティがこの男を回収してくれるだろう。

 

「しかし、この程度の連中が本当にセキュリティを倒したのか…?」

 

両手足を縛られ気を失っているこの男を改めて見て、剛毅が抱いた感想はそれだった。

事実セキュリティはデュエルで容疑者を拘束する事も多く、隊員はデュエル面でも優れた人材が大多数を構成している。

当然、エキストラデッキからの特殊召喚を使用する者もいるだろう。

そのようなセキュリティ隊員であれば、持っているサイコパワーも微弱なこの男など容易く制圧する事ができたはず。

 

「…今は考えても仕方あるまい」

 

そう割り切ると、剛毅は遊良の後に続いていった。




葵「第3回、設定紹介コーナーよ。漸く私の紹介をしてくれるのね」
遊「そうだな。だが正直、設定云々はその場の思いつきで書いてるから
本編と矛盾しそうになったら、どんどんリ・コントラクト・ユニバースするからな」
葵「設定スッカスカじゃない!?」
遊「…投稿者の性格が浮き出てるな」

《後書き設定紹介(キャラクター編)》
 名前:杏ヶ崎葵(きょうがさき あおい)
 年齢:18歳
 性別:女
見た目:腰まである黒髪。おっぱいは標準。目つきは鋭く常に高圧的な表情。
 性格:様々なサイコセキュリティの連中に振り回される苦労人。
 厳しい一面もあるが本当は周りを案ずる優しい性格らしい。
 趣味:デュエル、勉強
 特技:計算
 好物:モンブラン、カキグラタン
 嫌い:チーズ
 身長:年齢より高め
 体重:年齢相応
 服装:黒のブレザーに三日月の髪止め
一人称:私
二人称:あなた
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