朝を迎えて小町は八幡に呼びかける。
久々の再開で今後どうなるのかな?
うっすらと霧が晴れるように前が見えると
そこは誰もいない我が家のリビングで
あたしはポツンと立っていた。
猫のカマクラがソファーの上で気持ち
良さそうに眠っている。
「久しぶりだよ~カー君!」
あれれ?カー君を抱き寄せて頭を撫でようと
しても触れない…そうだよユキちゃんが言ってた、
物には触れられないのか。
カー君何だかキョロキョロしてる、
あたしが分かるのかな?
「小町ちゃんですよ~、カー君、よ~し、よ~し!
カー君、よ~し、よし!」って、やっぱ触れない。
カー君、ごめん。小町がもっと可愛いがって
いればよかった。」
ところで皆んなどうしたのかな?
誰もいないみたい……
何処にいったんだろうね?
冷蔵庫にある麦茶でもと……って、
取れないし飲めないし!
「あ~どうすんのよ?誰か教えてよ!
そうだよ、ユキちゃんなら。」
「ユキちゃん!聞こえる?聞こえたら
返事して!お願い!」
「なに?小町ちゃん?」
「ユキちゃん何処にいるの?」
「すぐ後ろにいるよ。」
「えっ…?」
振り向くとおすわりをしている
ユキちゃんがいた。
「びっくりしたよ、ユキちゃんいたの?」
「呼んでくれたら会いに行くって言ったよ。
それにしても久しぶりのお家だな…懐かしいな、でも新しい後輩が
いるからうろつく事はあまり出来ないけど。」
「ユキちゃん、速過ぎでしょ?」「そう?」
「でもありがとね。」「どうしたの?」
「あのね、あたしって何か食べられるの?」
「霊体はお腹が空かないし何も食べなくても大丈夫だよ。」
「いやいや、食べられ物があるの?」「無いよ。」
「やっぱり、ダメか。」「何故気にするの?」
「だって直ぐこの前までご飯食べてたしジュースとか飲みたいし。」
「そうそう、お水も飲めないの?」
「お水だけはお供えの物を味わうことが出来るよ。」
「えっ!ラッキ~!飲みたかったんだぁ~!」
「飲み込んだりは出来ないけど味わう事が出来るよ。」
「味わうだけ?」「そう味わうだけ、お供えの物だけね。」
「う~、でもいいや!お水飲みたかったんだもん!」
「お兄ちゃんに言ってお供えしてもらう様、た~のもっと。」
「あのね、小町ちゃん当分毎日お供えはしてくれると思うから
余り言わないほうがいいと思うけど。」
「なんで?だって、言わないと分かんないしお水飲みたいもん!」
「それ位いいかな・・・小町ちゃんは霊体になって日が浅いから
仕方ないもんね、次期なれるよ。あと、お供え物が水ばかりも
嫌でしょ?」
「あ~そうだね、気を付けるよ。」
「着替えとかは出来るの?塾の帰りでセーラー服を
着替えたいんだけど。」
「残念だけど出来無いし置いてある服も替えれ無いんだ。」
「着たきりスズメなの?そんなの絶対嫌だよ!」
「死んだ時、着ている服がその人の服装になっちゃうんだ。
小町ちゃんの場合まだ霊体だからお母さんが出棺の時に棺桶に
小町ちゃんのお気に入りの服を持たせてくれていたら、その服が
小町ちゃんの部屋に浮かび上がっているからそれを着る事は
出来るよ。だけど、汚れる事がないから着替える必要はないよ。」
「あのね、女の子なんだから着替えないと。お母さん、あれ
入れといてくれたかなぁ〜?」
「やれやれ…」
「誰も居ないと退屈だよね~、誰か帰って来ないかな~。」
「本当に呑気だね、小町ちゃんは。」
「だってさ、一辺に色んな事あって少しゆっくり
したいしさ、お兄ちゃん達にも会いたいし。」
「旅行に行って帰って来た感じで皆んなに会いたい気持ちは分かるけど、
いきなり顔出すとお兄ちゃん死ぬ程腰抜かすから気を付けてね。」
「あ〜そっか、そうだった。小町死んでたんだ…。」
「結構気を使わなきゃあいけないね。」
「そうだね、多分葬儀場で初七日をやってから
引き上げて来ると思うからもう少し待つ事に
なるんじゃないの?」
「ユキちゃん、詳しいね?」
「大分とこっちの世界にいるからさ。小町ちゃん、
さっき、ゆっくりしたいって言ってたけどこれから
ずっと暇になるしずっとゆっくり出来ると思うよう。」
「そうなんだ、じゃあ〜お兄ちゃんがいない時は漫画でも
読んで暇潰そう、うん。」
「ノンノン、自分で漫画読めないよ。」
「あ……面倒くさ〜、分かったよ、お兄ちゃんが
読んでるの横から読むよ。」
「そうだね、あとテレビをなるべく付けてもらうよう
してもらえば良いかもね。」
「お〜サンキュだよ!ユキちゃん!」
ユキちゃんの頭を撫でようとしたけどヤッパリ
ダメだった。
「それにしても、何とかならないの?ちょっと位物を
触れないの?」
「それについては、追い追い教えてあげるよ。」
「なになに?まだ秘密があんの?ねえ、教えてよ。」
「小町ちゃんが慣れてからじゃないとね、順番があるの。」
「うぇ〜ここにも順番があったのか〜早く来ないかな順番。」
「そんなに焦らなくても直ぐに来るから待ってればいいよ。」
「そっか…。」
「じゃあ、取り敢えず皆んなを待つ事にしようっと。」
・・・・・・・
「カチャ」っと玄関の方から鍵を開ける音がした。
お母さん達が帰って来た。
皆んな疲れた顔付きで全く元気が無い…
そりゃそうか、あたしがいなくなったからだよね…
ゴメンね…皆んなを悲しませて。
取り敢えず自分の部屋に戻る事にした。
さっき言ってたあたしのお気に入りの洋服が数着浮かんでた、
お母さん…ありがとう。ワガママ言って買って貰ったワンピースとか
スカートとかカーデとかありがたいよ、ほんと。
お兄ちゃんに見つからない様リビングを覗いて見た。
皆んながソファーに黙って座ってた。
「母さん、俺まだ小町が死んだなんて信じられないよ!
今でも其処にいる様な感じがして仕方がないんだ!」
「八幡もなの?私もだよ、あの子がヒヨッコリ帰って
くるんじゃないかって。」
わわっ!お兄ちゃん、流石鋭い!てか、お母さんも?
「あたし帰って…きっ!」
「待って、小町ちゃん!皆んなが落ち着いて
お兄ちゃんが自分の部屋に戻ってから会いに行こうよ。」
「……うん、分かったよ。」
「ごめんね、皆んな。」
・・・・・・・
「ユキちゃん、そろそろいいかな?」
「寝静まってるからね、本当は明日くらいの方が
良いと思うんだけど。」
「同じだよ!だって、一年ってカウントダウン始まってるんだよね?」
「うん、始まっる。」
「だったら、直ぐにでも行かなきゃあ!」
「そう焦らないの!相手の気持ちの整理もあるんだから
向こうが混乱するよ!」
「う〜っ!会いたいよお兄ちゃん…でもユキちゃんの言う事
聞いて明日にするよ…。」
「うん!それでいいよ、落ち着いてね。」
「ところでユキちゃん、寝る事は出来るの?」
「それは大丈夫だよ!小町ちゃんの部屋で
ゆっくり休むといいよ!」
「あのね、お願いがあるのだけれど。」
「なに?ユキちゃん。」
「あたしも一緒に寝ていいかな?」
「わぁ〜!いいよ!久しぶりユキちゃんと一緒に寝れるね。」
「お休み〜ユキちゃん…。」
・・・・・・・
朝を迎えた、日差しが眩しく久しぶりによく
眠れた気がした。横にいるユキちゃんも
まだスヤスヤと寝ていた。
皆んなどうしてるかな?
ちょっと覗いてみようと、動いてみたら
ユキちゃんが起きだした。
ユキちゃんは顔を洗いながら言った。
「小町ちゃん、ありがとう。おかげで
ゆっくりと眠る事ができたよ。」
お母さんが遅い朝の支度をしだしたみたい。
お兄ちゃんは中々と寝付けなかったのか
まだ休んでるみたい。
じゃあ、起こしに行こうかなユキちゃん?
「うん、いいよ。」
いよいよお兄ちゃんへの呼び掛けですが…
うわ~なんかどんよりとしちゃって、嫌だな~
そりゃさ、小町いなくなっちゃって辛いの小町も
同じなんだし、元気出して行こうよ!
いくよ~!元気に声掛けちゃうよ。
「お……ちゃん、ね…あた……だよ、お……ち……。」
はれ?だめだ、聞こえないみたいだ。
「もっと、お兄ちゃんに声が届けと
思いを込めてね。段々お兄ちゃんに聞こえる様になるよ。」
「分かった、頑張るよ。」
「お…いちゃ…、こ……はここ…す…。」
ダメだ、聞いてくれないや。もう一回!
「おにい……、ここ……よ!」
あっ!下向いてたけどキョロキョロしだした。
もう一回頑張れ!
「お兄ちゃん!小町はこ……よ!」
「小町なのか……?」
「そうだよ、小町はお兄ちゃんの近くにいるよ。」
「小町!!」
「会いたかったよ、お兄ちゃん!」
「小町!!何処にいるんだよ?小町!!」
あれ?何でお兄ちゃん小町が見えないの?
「ユキちゃん、お兄ちゃん小町の事見えないみたい。」
「まだ、小町ちゃんの霊体が不安定になっているから
見え辛いかもね。じき見える様になるから心配いらないよ。
お兄ちゃんには小町ちゃんが白くボヤけてしか見えないけど。」
「え〜ハッキリクッキリ元気一杯の小町を見てもらいたいのに
残念だよ!」
「残念だね、でも小町ちゃんの声掛けが強い程、
ハッキリ見えるから頑張って!」
「うん!大丈夫だよ!」
「お兄ちゃん、驚かせてごめんなさいです…
まだお兄ちゃんに小町が見えないかもだけど
小町はお兄ちゃんの側にいるから安心して。」
「小町……ううっ。お前、生きていたのか?」
「違うのお兄ちゃん、小町は死んじゃったのは
間違いないよ。だけどね、霊体でまだ、
お兄ちゃんの側にいる事が出来るんだ。」
「霊体でも何でもいい!お前が側にいてくれたら
それでお兄ちゃん幸せだ!」
「お~っと、お兄ちゃん今の小町的に
ポイント高い!」
「久しぶりにそのフレーズ聞いたぞ!
やっぱ小町お前は最高だぜ!」
「うわぁ~そのシスコン、益々酷くなってる。」
これからが大変だよ、全く、ね、ユキちゃん?
to be continued