藍越市の路地裏。そこに一人の男性が切迫つまった顔で走っていた。時折、後ろを向きながら走っていた。
男性の足が止まった。前が行き止まりではない。人が居たのだ。
銀色に近いロングヘアーに何処かのいい所のお嬢様にも見えなくない。
男性は来た道を全力で走った。怯えている顔で。だが、無慈悲にも男性の足が止まった。いや、止まるしかなかった。諦めたわけではない。首から上がなかったからだ。
少女の右手には剣があった。血は着いていない。しかし、数m先に男性の顔があった。
そして、少女は白い翼を出して飛びだった。
「また、無差別殺害事件か?」
俺はバイト終了時に朝刊を見ていた。
「ああ。たっく、嫌な世の中になったな」
「そうですね。お先にあがらせてもらいます」
「お疲れ」
「お疲れさまでした」
急いで家に帰るか。学校の準備をしないとな。
学校に来たら早速、無差別殺人事件が話題になっていた。
「おはよう呉」
「おはよう那琉」
「見たかあれ」
「ああ見たよ」
「これで10件目か」
この事件は俺がこの世界に来る前、およそ半年前に始まった。最初は自殺かと思われていたが、斬り方がどれも同じことから殺人に変更。しかし、殺された人たちには接点はない。
「当分、部活は禁止か」
「あの意味わからない部活?」
「意味わからないって」
「つか、あの部活ってなに?」
「部活っていうか、ただの集まりだよ」
「部活じゃないのかよ」
「気にするな」
放課後。また、逃走劇が始まるのか。もういや。
「見つけたよごーくん」
「げぇ、篠ノ乃!?」
「さぁ、体を頂戴」
「発言!?発言がヤバい!?」
また、徹夜かよ。
「さあ、こっちにおいで」
「もう、イヤー!!」
「ふふ、また買ったちゃ」
帰宅途中の女学生が歩いていた。
「前世では見れなかったノベルを買えてよかった」
言ったとおり、前世の記憶を持っている。
彼女の場合は神様転生じゃなく、輪廻転生で生まれた。
彼女の向かいから少女が歩いてきた。
彼女は気にしないで通りすぎようとしたが、なぜか空を舞っていた。体が軽い。落下してきたと同時に理解した。自分の体には頭がなかったこと。そして、自分の頭はそこにあったこと。
「抹殺完了」
「見つけたぜ。転使」
黒の髪をした赤い目をした男が立っていた。
「目撃者発見。これより記憶の改竄を行う」
「名乗りもしないうちに攻撃すんなし」
「そうですか。しかし、記憶の改竄を行うにあたったって、名乗らなくてもいいと思います」
「まぁまぁ、冥土の土産だと思ってくれればいいと思うけど」
「肯定。神造兵器対転生者抹殺神抹殺用兵器個体名0666転使。それが私の名前」
「なが!?」
「気軽に転使ちゃんと言ってください」
「製作者の顔を見たい」
「私が名乗ったのです。貴方の名前を教えてください。頭の片隅あたりらへんに覚えておくから」
「片隅かよ。まあいい」
「俺は芹沢呉。ちょっと超能力が使える少年だよ」
なぜ呉が転使を見つけられたのかと言うと偶然である。束から逃げている途中に見つけたからである。最初は怪しいとかそうゆうことを考えていたわけじゃなく、己の感がそう告げていた。しかし、感であるため確証がなかった。そこで隠れて現場を見ることにした。自分の超能力の範囲内なら転使の殺す場面を見ることが可能である。そして、確証が持てたのでテレポートを使い転使のところに来たのだ。
「超能力?貴方も転生者なの?」
「転生者?さあな?知りたければ倒してみな」
転使は手から剣を出し、斬りかかってきた。呉は後ろに避けて、勢いよく殴りにいった。転使は剣の腹で殴りを防いだ。
「貴方本当に人?」
「人から少し外れたけどな」
「そう」
「次はこっちだ」
呉は見えない何かで転使を縛り上げた。転使は苦しそうな表情で何かを呟いた。次の瞬間、転使は消えた。
「情報が足りない。今日は撤退するわ」
「逃がすかよ」
見えない何かを転使に向けて投げたが消えた。
次の日。俺は昨晩の出来事を思い出していた。
転使という人物は普段何をしているのか。なぜ、転使は意思を持っているのか。それが気になる。俺は兵器と言う言葉を聞いたとき、疑問に思った。見た目は普通の女の子なのに。
俺はもう一度転使に会いたいと思った。
「よ、朝から眠たそうだな」
「まあな」
「呉、放課後部室に来てくれ。大事な話がある」
「また、あそこに行くのかよ」
「今回は真面目な話だ」
「……わかった」
キンクリ!! 一回言ってみたかった台詞by作者
作者の声が聞こえたが気にしない。気にしない。
やって参りました。カオスな部室に。正直行きたくなかった。でも、那琉が真剣な顔つきだったから来たが。まあいい。逝くか。
「失礼します」
ヒュー。風を切る音が聞こえた。
ドン!!重い何かが体にあたり、学校の外に投げ飛ばされた。
その時、「トラップ解除するの忘れてた!?」と那琉の叫びが聞こえた。
「は!ここは」
「部室だ」
「何時間寝てた?」
「30分くらいだ」
「そうか」
俺が気絶して30分くらい。油断した。
「悪い!トラップの解除をするのを忘れていた」
「いいよ別に」
「そう言ってもらえるとありがたい」
「それで話ってなんだ?」
「ああそうだな」
「まず、自己紹介しないといけないわ」
声がする方に顔を向けた。そこには生徒会長がいた。と同時に理解した。生徒会長も変人だと。
「今、侮辱された気がするのだけど」
エスパーかよ。(人のこと言えないと思うけどな)
「私のことは知っているかと思うけど、改めて言うわ。藍越学園生徒会長のレオ・M・インファントよ。よろしく」
なぜかあいつとかぶる。けど、あいつはいない。
「俺は針山烈。隣にいるのは」
「阿蘇翼だ。よろしく。ちなみに僕と烈、那琉は中学からの付き合いだ」
なぜだ。この二人を見ると懐かしいのは。
「Heyyou。俺の名前はノジーラ・タトプロス。アメリカから来たぜ。趣味はdance」
日本語をペラペラしゃべれるのか。
「そこで筋トレしているのが王鈍樹君」
「ウホウホ」
「彼身長が二メートル越えだから、初めての人にはウホウホとあいさつするの」
驚きを通り越して呆れた。
「んで、部屋の隅にいるのは鎌田刀香。風紀委員だから気を付けろ。拘束違反すると……」
「すると……」
「男女問わず丸刈りにされる」
ヤバイのがいた。
「まだ来ていない人がいるけど、始めるわよ」
「まず、何から話そうかしら」
「会長、まずこの部室のことを話したらいいと思います」
「そうね。そこから話しましょう。この部は学校非公認で、ある能力を持った人たちが集まった部よ」
「それって…」
「見せた方がいいかしら」
回りにいた皆が体に何かを出していた。ある者は背鰭を、ある者は羽を、ある者は爪を。姿が全て人間とは異なる何かになったのだ。
「私たちの姿を見て驚いた?」
「いや、そこまで驚いていないけど」
「私たちはこの姿をミュータントと読んでいるわ。先天的なものや後天的なものまで。発現理由は今だわからないけど」
「要するに俺も同じだというのか?」
「そう。できればあなたもその姿になって」
俺は自分の超能力の他にミュータントと同じ、いやそれ以上の質が悪いものだ。片手だけならいいはず。
段々と俺の右手が黒い岩みたいなものに変わっていった。
「これだけでいいか?全部出すとヤバイから」
回りを見ると皆が汗を出していた。やっぱりな。
「あなた何者?こんな力を見たの初めてよ」
「俺か?そう言えば自己紹介していなかったな。俺の名前は芹沢呉。超能力が使える異世界から来たものさ」