では、どうぞ!
Side織斑秋二
シルバリオン・ゴスペルの暴走事件や海底巨人出現といった前年より濃い臨海学校が終わり、待ちに待った夏休みが始まった。
色々とあったが、とりあえず全員帰還となった。
作戦に参加した人たちはIS学園帰宅後精密な検査をして異常が見当たらなかったが、俺と篠ノ乃は処罰をもらった。俺重傷患者であるのに検査を受けずに無断出撃に対すること。
篠ノ乃に関しては木刀による暴力行為、臨海学校での暴走事件の命令違反及び無断出撃、その他盗難や脅迫など言った犯罪行為。普通なら退学ものだが、政府関係者が束さんの怒りを買うことに恐れて退学は取り消された。その代わり、多くの処罰を言い渡された。
因みにその処罰は夏休みまるごと使うって話だ。
俺も反省が終わり、新聞部の新聞を作って来月号に掲載する予定。
そして、この期間を利用して錬武法の更なる強化と新技の完成を目指す。
とりあえず、家に帰ることにした。修行するための道具を準備するためだ。
自宅に着くと玄関に大人の男が立っていた。俺は警戒しながら近づくと、いきなり殴りかかってきた。俺は受け流して腹部へエルボーを喰らわせた。男は俺の肘を掴んだ。それに対いして、足を踏んでって!?効いていないのか!?無理やり脱出した。
「ふっ、強くなったようだな秋二」
「いきなり仕掛けてくるとか酷いですよ師匠」
俺に攻撃してきた人は師匠の獅子王那琉。俺が知っている中で千冬姉さん以外だとこの人が人類最強だと思う。
ガトリング砲の嵐を避けるし、レーザービームを弾くし、大砲に至っては爆発させずに受け止めるとか。ISに至ってはパンチの衝撃だけで吹っ飛ばして止めることができる。
人間を止めていると言うと寂しそうな顔をして、そう思うかって、言ってくる。言った後はメニューが増える。
「連絡とかしていないのですが?」
「なに、今回の事人伝だが聞いている。どうせ、山籠もりか無人島に籠るだろうと思ったからな」
「そうっすね。外は熱いから中に入りませんか?」
「世話になるな」
俺と師匠は家に入り、買っておいたお菓子と麦茶を出した。
「俺と会って三年は過ぎたか」
「いえ、二年半ぐらいですよ」
「そうだっけ?」
相変わらず元気そうだ。こんな感じだったよな師匠との出会いわ。
まだ熱い、夏休みの時だった。
~回想~
当時、荒れていた時期だった。遅かったけど、大切な人だと思える人を亡くした。
それと同時に一夏を蔑ろにして行方不明の件、千冬姉さんとの劣等感、憑依転生までして主人公になろうとした嫌悪感が出て来た。
後悔先に立たず。その言葉が俺の頭の中を駆け巡っていた。
ストレス発散のため、表では優等生を演じ、裏では不良をしていた。そんな生活に板挟みをしている時に出会ったのが師匠だった。
師匠は今と同じように、軽い感じで話しかけてきた。
『どうしたチュー坊がこんなとこで』
当時の俺は何も答えず、殴りに行った。行ったんだ。そしたら、空を飛んでいた。俺の目には雲一つない青空が広がっていた。そのまま、受け身を取れずに地面と接吻し気絶した。
目が覚めると公園のベンチだった。
『目が覚めたか?』
スポーツドリンクを飲んでいる師匠がいた。起き上がると買ってきていたもう一本のスポーツドリンクを渡してきた。少し飲む。冷たい液体が喉を通っていくのを感じ一息できた。
少し時間が経ってから師匠が聞いてきた。どうしてそんなことをしていたのかのと。俺は己自身の悩みを打ち明けた。
俺がしでかしたことの数々。
一夏に対するいじめ。
先輩に対する思い。
自分の出生。
そのすべてをかき混ぜたストレス。
それを話し終えると師匠は俺をアッパーをしてきた。本日二回目の飛翔は師匠の受け止めで夢へは飛び立たなかった。
『馬鹿野郎が!お前はどうされたい?謝りたいのか、許されたいのか、それとも罰してほしいのか?
俺が言ってやる。お前は後悔している。後悔しているからこそ、なんとか逃れたい。だけどな、人は逃げることはできない。だからこそ、逃げるのを諦めろ』
『諦めろ?諦めたって一生変わらない!だったら、死にたい!』
『死ぬとかいうな!死で救われるなら、お前が虐めた人や思い人は戻ってくるのか?戻ってこないだろ!なら、一生後悔していろ!その後悔がお前を死なせない枷になる。その枷は償っても永遠に外れない枷だ。お前はどうしたい?』
『……俺は、……俺は、……俺は!強くなりたい!あんたよりも千冬姉さんよりも俺の心よりも負けない、諦めない、強い力と心が欲しい!』
『俺は宣言する!俺は俺が無くしたもの全てを背負って生き抜く!絶対に後悔はしない!もう二度と失わせはしない!』
師匠は俺のその言葉を聞いて安心したのか去ろうとしていた。
そんな師匠に俺は修行をつけてくれと頼み込んだ。二つ返事で了承してくれた。そして、師匠との修行は高校に入るまで続いた。
~回想終了~
これが師匠との最初の出会い。そして、場所を移動して雑木林に来ていた。
「そんじゃ、ひっさしぶりの組み手をしてみますか」
「お願いします」
一定の距離から離れて構えた。拳を突き出したどっしりと足を開いた構えた大地の構えをし、師匠は自然体でまるで少し出かけてくるような感じだ。
風が吹く中、何かが落ちてくる音で俺は動き出した。