今年度中にもう一本上げていきたいと考えています。
それではどうぞ!
その時だけだろう風が止んだのは。汗が滴るとき、溶けたアイスが落ちるとき、ボールを投げたとき、弓を射つとき、その全てが一瞬重なった音が響いたとき、二人が動いた。
拳と拳がぶつかり合い、二人を中心に衝撃波が発生し雑草がなくなりそこだけが荒れ地に変わった。
少し拮抗し先に攻撃したのは秋二。ぶつかりあった衝撃を足へ流し腹へ横蹴りをした。それを弾く那流、すかさずぶつかっている拳を開き、秋二の拳を握るとそのまま上へ投げ飛ばした。しゃがんで足に力を入れて跳んだ。
跳んできた那琉を迎えるため、その場で一回転し飛んできた野球ボールを足場にし、月兎で一気に加速した。落下しながらその場で回転し、竜巻で迎え撃つ。
那琉は垂直蹴りでぶつかり合った。
落下のほうが打ち勝つはずが拮抗ところが押し返している。押し返していることがわかると、回転をやめて那流の手首を握りしめ投げ飛ばし地面にぶつかった。
地面に着地すると手腕を肥大化させる技、熊手で追い打ちを掛けようとした。しかし、砂煙から赤炎が噴き出て秋二の腹にぶつかると炎は中を貫通し背中から噴き出ていた。吹っ飛ばされ木にぶつかって止まった。
砂煙が晴れると足を燃やしている那琉が現れる。
「相変わらず不意打ちには弱いな」
「そ、それを、不意打ちで、片付けるのはどうかと思いますよッ!」
足に力を込め、人とは思えないスピードで那琉へと迫る。
対する那琉も全身に稲光を走らせながら、接近する。
すれ違いざまに拳撃、蹴撃に殴打、ときには手刀から放たれる斬撃波に足刀、鞭打が入ってくる。目潰しや金的、陣中の他脆い骨といった急所も的確に。
そのあまりにも早い応酬に目では負えない。
先に勝負を仕掛けたのは……秋二。
地面に四つん這いになり、力士の四股踏みのような力強い体制に入ると、動かなくなった。その姿を見て、明らかにカウンターか突進の2つだと絞った。だとしたら、那琉は多方面からの高速攻撃で仕掛ける。
動こうとした時、それは突然襲ってきた。何もわからずただただ空を飛んでいた。そして遅れてくる痛みに耐えながら秋二の方を振り向いた。そこには蒸気を発しながら地面を抉ってできた二列の線、まるで線路みたいだ。その先に移動した秋二が先程と同じ姿勢でいたのだ。
「っち!」
那琉は空中で無理やり体勢を変えて着地した。
目の前に秋二が拳を構えて腹を殴ってきた。さらに足を踏み込んで強い一撃をもう一回撃った。さらに打ち込んできた。秋二はここを勝負どころと見たのか何回、何十回と殴りこんできた。ガトリングガンのように。
防ぐこと間に合わない那琉。あえて受けざる終えない状況。
止めの一撃を決めるため、白掌を撃ち込んで吹っ飛ばした。構えないで月兎で跳んで、握りこんだ右手で殴ろうとした。その際、赤く光りだしていた。だが気付いているのは那琉のみ。防ぐか避けるか考える暇も与えない距離まで迫っていた。
バキュンっと、ゴムが当たった音が聞こえた。那琉がやったのは受け止めることだった。そのまま自分の方に引き寄せて、前と後ろに手刀を撃ち込んで決着を着けた。
「あ、危なかったか!?まさかここまで成長していたのか」
受け止めた手を見ると夥しい出血をしていた。軽く止血して、気絶している秋二の手当てをし木陰に運んで休ませた。
時間にして一時間は経った頃に目を覚ました。
「負けたんですね」
「結構危ない場面があったけど、な」
スポーツドリンクを投げ渡された。キャップを開けて一口飲む。冷たい液体が喉が潤っているのがわかる。
立ち上がると、秋二の目の前に拳が突き出されていた。
「秋二、海外渡航の準備をしておけ。今からお前の技術の改良を行う」
「へ?」
「お前が見せたこの技、お前自身は気付いていないけど、こいつの習得を行ってもらう」
「ちなみにどこへ?」
「ヒマラヤ山脈の秘境地とだけ言っておこう」
とんでもないことをしゃべりだした。当然断る…、
「わかりました!」
ことはなく、この師にして、弟子である。
早速学校側に海外渡航目的を話して、知り合いに連絡を取り、明日から出発準備を整えた。
怒涛の一日が終わる頃、那琉のスマホから電話が掛かってきた。その相手は“生徒会長”と書かれていた。
「久しぶりだな会長」
『ええ、久しぶり那琉くん。さっそくだけど貴方に依頼したいことあるのだけど』
「ワリィが三週間ぐらい用事があってな、受けることができない」
『あらそうなの。まあいいわ、それよりもだんだんだけど奴らの情報が増えて来たわ』
「本当か!」
『ええ、あちらが動くにはまだまだ先だけど、先手の一つは打ちたいのよ』
「そのための戦力、といったところか?」
『ええ、私たちの方でも裏から動くわ。そちらも気をつけて』
「ああわかっている。おやすみ」
『お休みなさい』
スマホを切って眠りについた。
眠っている中、一人の少年が夢から出て来た。那琉や生徒会長たちの中では死んだとか思ってはいない。那琉は卒業と同時に彼を探すために世界各国を旅した。紛争地域で人質なりかけたり、裏オークションで売られかけたり、時には孤島の原住民の生贄にされかけたこともあった。それでも手掛かりは見つけられなかった。
そして、朝。リュックを背負い家を出た。
「行くか」
「はい師匠!」
夢に友が出たからにはまた会えるだろうと考えていた。
彼が守ったこの世界を今度は俺たちが守る。そう誓って。