作戦開始残り五時間。
隕石破壊作戦は順調に進んでいた。作戦の要になる振動波ミサイルの発射を担当する熊野は自分の部屋で集中していた。
「(やることは変わらない。いつもの通り狙い撃ち、変わらない心でいる)」
熊野雄二。彼のことを話すことは今は関係ないだろう。しかし、彼も主要人物の一人である。
有田の場合
「背中を任せられるな」
水樹の場合。
「見習いたいわね。特にこいつに」
畑の場合。
「銃処か武器の扱いならたぶんここでは一番だね。あと余計なお世話だ!」
シュタインの場合。
「そうですね。まだ関わりは少ないのですが、優しいですかね」
神田の場合。
「こいつに関しては……まああれだ。感情を少し出せばいいかな」
紺野の場合。
「いいやつだよ。有田の他に子供たちを任せられる奴はコイツしかいない」
彼に対する印象は好印象である。だが、彼の過去は少し壮絶である。
彼の生まれ故郷は北海道の道北地域に位置する街で学生時代は過ごしていた。母は幼い頃に亡くなっており父は東京で働いていた為、祖父母と暮らしていた。祖父は猟師だったためその近くで動物の解体を見ていた。周りには遊ぶ友達がいなく、自然と興味を持ってしまった。
その興味が彼を銃を使うきっかけになってしまう。
高校生に上がったころ。アルバイト帰りにそれに遭遇した。この時代から怪獣や宇宙人などの目撃や遭遇、討伐などが発生していた。
帰り道は山しかなく、もう春だと言うのに寒かった。自転車で家に向かっている道中、それは出た。
羆である。
羆は北海道に生息する大型の哺乳類。雑食であるが肉食よりでシカやイノシシ、鮭などのほか人すらも食べる。
遭遇してしまった当時の熊野少年。彼は祖父から教わった対処方法を思い出した。だが、羆は襲ってきたのだ。その羆は穴持たずだった。絶体絶命、走るしかなかった。危険な行為なのだが、幸い近くに小屋があった。中に入り込み持っていたスマホで警察と祖父に連絡し助けを求めた。
長いながらも短い戦いが始まった。
入ってすぐに目を着けたのは入り口を塞いだ。それに竈を見つけたので急いで火をおこした。少しでも入られないようにするため。そして壁に立てかかっている銃を見つけた。偶然なのか知らないが玉も見つけた。
行くしかないとか危険なことは考えていなかった。ただ、彼の脳裏には祖父の姿が映った。
腹が減った。安心したわけでもないが、それでも食べないとやっていけないと考えた。
ただ、落ち着いていた。
冷静にならなければいけないと。その時だった。塞いだ入り口が揺れたのは。
すぐさま物音を立てず階段を上った。階段に油を撒き、階段も塞いだ。
その時とうとう現れた。羆はその大きい体を使って入り口を突撃して壊してきた。
ジッと通り過ぎるのを待った。通り過ぎることは難しいだろう。だが、それでも時間を稼ぐにはそれしかなかった。ただ物音を立てず、臭いはできるだけごまかし、助けを求めるしかなかった。
しかし、スマホの音を切るのを忘れていた。
気付いた羆は階段を上ってきた。熊野少年は銃を構えた。バリケード代わりのタンスを壁にギリギリを狙っていた。祖父の教えを思い出した。
「頭を狙うな。狙うなら心臓を狙え」
羆は頭蓋骨は硬く、銃弾すら跳ね返すほど。
やるしかないから。自分の命と法、どちらを守るのか。
羆は撒いた油でスベリ、腹を出していた。構えた銃のスコープで心臓へ三発。外から二発。羆へ命中した。
羆は死んだ。
祖父と警察官に保護され、無事家に変えれた。銃を撃ったことに関してはお叱り無しになった。
熊野少年の心には生物を殺した罪悪感や虚無感もなく興奮も狂気もなかった。
ただ、あったのはあっけない死に方。自然の摂理ぐらい。そう、命の尊さも感じなかった。
無意識。
ただそれだけ。
だからだろう。高校を出てから防衛軍に入り己がしたいことを考えた。
これが熊野雄二のちょっとした過去話。
ピッピッ、ピッピッと作戦に時間前。部屋から出て特別視覚室へ向かった。
「待っていたよ」
座席に座り遮光グラスを着けて発射レバーを握ると遮光グラスには隕石が映りだした。隕石の中心に狙い着け、ギリギリまで引き寄せる。少しでも威力と外さないために。
一秒が長く感じる。手に汗が滲んでくる。汗が落ちるとき、その時が来た。
「今だ!」
発射レバーのボタンを押し、ミサイルを発射した。ミサイルは隕石へと向かい、動き出したドリルが掘り始めた。そして、内部まで行ったミサイルは爆発し、隕石は破壊された。
「作戦は成功したぞ!」
「ふう~」
「ゆっくり休んで『ブゥー、ブゥー!!』何事だ!?」
「博士!大変です!破壊された隕石から怪獣が出現し、地表に降り立ちました!?」
「な、なにぃ!?」
画面にはギリシャのケンタウロスを想わせる姿たが、今まで見た怪獣より凶悪に見える。
『ギャオオオオオン!!』
鳴き声を上げながら、建物を破壊した。