仮面ライダーシャイン~輝ける戦士~   作:光陽03

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前々からやりたいと思っていたオリジナルライダー小説です。
ではさっそくどうぞ!


Beginning Story Of Shine
第1話 輝きの名を持ちし戦士


「急げ!速く逃げるんだ!」

 

「女子供を優先するんだ!」

 

 

どこにあるかも知れない場所。

そこにあったのはあらゆる種類の悲鳴と怒号、そして奇怪な生物の叫び声。

そんな危機的状況の中、息を潜めていた1組の男女がいた。

 

 

 

「このままでは我々は滅びてしまう。君だけは下の世界に逃げるんだ」

 

「そんな!皆を見捨てて(わたくし)だけ背を向けて逃げるなんて」

 

「誰もいなくなってしまったらそれこそ闇の支配する世界になってしまう。ここも下の世界も、全て」

 

「ですが--」

 

 

刹那、爆発が起こり壁が崩れ落ちる。

土煙から僅かに見える影の姿を捉えた彼らは焦りを覚えた。

段々近付いて来る影に畏怖していた女性を、隣にいた男性が叱咤する。

 

「時間がない。さあ、速く!……必ず」

 

 

--光を探すのだ

その言葉を女性の耳が認識した瞬間。

場は気高い爆発に埋めつくされた。

 

 

 

 

 

--------

 

 

 

 

 

【風心館】

 

木製の看板にその文字が書かれている2階建ての旅館があった。

海から数キロメートル離れた地点にあり、都会にも車で10分程で行けるため季節を問わず遠方からの宿泊客が来る。

とはいえ場所柄最も忙しくなるのは夏ごろで、しかも今は6月。

なのであまり客は来ないのだが、だからといって仕事がないわけではない。

現に今も家族連れの客が来ており、対応に追われている男が1人。

 

 

「ようこそいらっしゃいました。部屋の鍵はこちらになります」

 

 

黒髪に青空に似通っているスカイブルーの瞳の青年。

名前は涙奏(るいそう)キラ。

19才で3年前からここで働き仕事にも熱心に打ち込んでいるからか、常連客からの信頼も強い。

同じく従業員からも信頼されているのだが、ある問題があった。

……ここは、彼を含めて従業員がたった3人しかいない

女将と料理人に接客係と辛うじて経営できている現状なのだ。

それで経営破綻しないのは彼らの頑張りもあるだろうが、何より旅館が客に愛されているからというのが大きい。

実際雑誌にも1度特集記事を掲載されたことがあり、その時の女将 大原 ツボネの嬉しそうな表情をキラは覚えている。

けれども客は増えても働き手が増えることはなかった。

 

 

(またあの厳しい夏が来るのかぁ)

 

 

キラは玄関掃除をしながら思い出す。

海に近いので遠方からの利用する客が後を断たず、連日8つある部屋が全て埋まる事態が続いた。

真夏の暑さに加え筋肉痛が続く毎日。

さすがに死ぬんじゃないか、と思ってもおかしくなかった。

まさに地獄のような日々の到来を恐ろしく感じながらも、反面働いていると実感できる喜びもあるのでまんざらでもないため、待ち遠しい部分もあった。

すると長い茶髪の女性……女将の大原 ツボネがこちらにやって来るのが見え、箒を動かすのを一端止める。

 

 

「キラくんちょっとお使い頼んでもいい?」

 

「分かりました、この紙に書いてあるものを買えばいいんですか?」

 

「ええお願いね」

 

「了解です。じゃあ行ってきます」

 

 

お茶目っけたっぷりに敬礼をし、バイクにエンジンをかけ跨がる。

無事に動くのを確認すると、都心目掛けて走り出す。

それを見届けたツボネに、海の方向から慌ただしく駆け寄ってくる声がした。

 

 

「大変だ大変だ大変だツボネさん!」

 

「どうしたんですかアキヒロさん?」

 

 

その人物は豊本 アキヒロという30代の黒渕メガネを掛けた男性で、風心館の料理長を努めている。

料理の腕は確かなのだが、言動が大げさ過ぎる面もあるのがツボネの悩みの種。

前列を1つ挙げよう。

厨房にゴキブリが出没し、調理をしていたアキヒロはそれを発見。

酷く錯乱状態に陥りながらも、彼はどうにかゴキブリを退治に成功したのだが。

手段が手段で、包丁片手にガスバーナーで焼き殺すという大分過激すぎる方法を取ってしまったのだ。

なおゴキブリが黒焦げになっても混乱していて、怯えた彼にキラがバケツ一杯の冷水を掛けることによりことなきを得たという逸話がある。

だがあくまでもこれは数多ある中の1つにすぎず、全てを挙げるのはきりがない。

またゴキブリでも出たのだろうかとも思ったが、どうやら今回は様子が違う。

とりあえず話を聞くべきだと、ツボネが彼を落ち着かせ話を聞く。

 

 

「大変だ大変だ大変だ大変だ!」

 

「落ち着いてアキヒロさん。何があったの?」

 

「そうなんですよ実は--」

 

 

 

 

 

--------

 

 

 

 

「おらおらおらおら!大人しく金をバッグに詰めろ!」

 

「早くしねえとてめえら全員ぶっ殺すぞ!!」

 

 

同時刻、街の銀行を覆面をした男二人が襲撃していた。

いわゆる銀行強盗で手には銃が握られていて、銃口を天井に向け発泡。

プラモデルなどではなく本物だと証明し、従業員と利用客の恐怖心を煽る。

そんな中強盗たちを利用客に混じって、平然と見ている者がいた。

 

 

(はあ、めんどくせえ)

 

 

欠伸をしながら彼は緑色の宝石を懐から取り出すと、表面に二人組の強盗を映し出される。

キラリと綺麗に…だが怪しく輝き銀行内が緑色の光に包まれ、それが晴れた時には--

 

 

『ヴァァァ』

 

『ムゥン』

 

 

蜘蛛とカメレオンを模した怪物が、強盗たちの背後に現れていた。

無論それらを見た強盗たちは目に驚きを表し呆然とし、客もまたさっきまでとは別の恐怖心に駆られていた。

そんなことは2体の怪物にはどうでもいいことだ。

蜘蛛の怪物は利用客に、カメレオンの怪物は奥で怯えている銀行員にゆっくりと進む。

 

 

「に、逃げろおおおお!!」

 

 

誰かが叫んで5秒とたたない間に強盗も銀行員も利用客も、全てが我先にと走り出していた。

ただ1人だけは欠伸をかきながら、空いていた窓から外に出ると騒ぎの場を後にした。

 

 

 

 

 

「なんだ…あれ…」

 

 

決して起こり得ないであろう光景に、キラは驚愕するしかなかった。

無理もない

人間と同じくらいの大きさの蜘蛛が人間を襲っているとなれば、誰だって驚くもの。

さらに喫茶店の窓ガラスは破壊され車も横転しており、蜘蛛の怪物の吐く糸で繭のように包み込まれた人間もいた。

まさに、地獄絵図…その言葉が相応しい有り様となっていた。

--逃げなければ

キラが来た道を逆走しようと、バイクを転身させかけた時だった

 

 

「怖いよ…ぐずっ……ひっく……」

 

 

横転している車の影に隠れていた男の子が、視界の端に映ったのは。

この騒ぎで親とはぐれてしまったのだろうか。

いや今問題なのはそこではない。

最悪にも、蜘蛛の怪物が男の子の存在に気付いてしまったのだ。

邪魔な車を蹴り飛ばし無防備な背中を爪で裂こうとした時、横殴りの衝撃が蜘蛛の怪物に走った。

 

 

「--うおおおおお!」

 

『ギィィィ』

 

 

原因はバイクを猛スピードで走らせたキラ。

蜘蛛の怪物が押し返そうと両手で車体を掴むも、逆に押されしまう。

しばらくそのまま状態を維持し街から離されていく。

山に繋がる道路まで追いやられたところで威嚇として放った糸が、ヘルメットのバイザー部分を覆ってしまった。

反射的に手を放してしまい、キラはバイクから転倒する。

くそ、と舌打ちしながら使い物にならなくなったヘルメットを投げ捨て、蜘蛛の怪物を見る。

邪魔をされたのが気にくわなかったのか、怒りを露にしているのがよく分かった。

 

 

「これはちょっと…ヤバいかも」

 

 

逃げようにもバイクは蜘蛛の怪物の後方…それもかなり遠くに転がっていて取りに行くのは難しい。

こうなれば相手の攻撃を回避してすぐにバイクにたどり着かなければならない。

しかしキラが考えている間も蜘蛛の怪物は目の前に来ていた。

無謀だと自覚しつつもキラは殴り掛かるが、やはり容易く受け止められ……

もう片方の腕が胸を貫いていた。

 

 

「がっ…はっ……!?」

 

 

心臓を貫通した。

その事実を脳が認識する前に、焼けつくような痛みが体を襲い意識が遠退いていく。

 

 

(たぶん……死ぬんだな……)

 

力なく崩れ落ちた体に空けられた傷口から、大量の血が流れ落ちているにも関わらず、他人事のように思えてくる。

だんだん目の光が消えていき、キラの視界には何も見えなくなっていた。

蜘蛛の怪物は彼の最期を確認すると、興味をなくしたのかゴミを払うように体を蹴り飛ばし再び街へ向かう。

 

 

 

--------

 

 

 

薄暗い闇の中に彼の意識は目覚めた。

 

 

「う、ん……どこだ…ここ」

 

 

右も左も上も下も、全てが白一色の不可思議な空間。

ふとキラは思う

死後の世界はこうまで何もない世界なのだろうかと

せめて天国か地獄からのお迎え、あるいはどちらかに通じる階段のようなものがあってもいいはずなのだが、綺麗に何一つない空間ときた。

 

 

「はあ、結局頼まれたお使いもできなかったな。お迎えも来ないし」

 

 

そう言って肩を沈めるキラ。

数秒後、何ら変わらなかった空間に変化が訪れた。

 

 

『聞こえますか?資格を持つ者よ』

 

「へ?」

 

 

 

何もなく自分を除いて誰もいないはずの空間に、突然聞き覚えのない声が響いたのだ。

驚きで鼓動が早くなった胸を片手で抑えながらキラは声の主を探すが、やはり誰もいない。

かといって聞き間違いではないことは、すぐさま証明された。

 

 

『この世界を闇の者たちが支配しようとしています。(わたくし)と他の者たちは彼らに敗北してしまい、対抗できるのはあなたしかおりません』

 

「いやいやちょっと待ってください!話が突拍子すぎて何がなんだが…そもそも僕は死んでるんですよ。どうやって戦うって言うんですか!?」

 

『心配はいりません。あなたには資格があります』

 

「それはどういう--」

 

 

キラが聞こうとすると、声がラジオのノイズが掛かったように聞こえにくくなる。

 

 

『誠に申し訳ありませんがあまり時間はないようです。あなたに光を与えます。その光で悪を、あの蜘蛛のサーヴァントを倒し、そして7人の仲間と共にどうか世界を…』

 

「7人の…仲間…?」

 

『ええ。ですが彼らはまだ眠っている状態です、だからあなたのその光で……彼らを目覚め……させる……のです』

 

 

そこで声は途絶え黒い空間は音を立てて白い光に包まれた。

 

 

 

--------

 

 

 

 

背後で何かが動く音がし蜘蛛の怪物が違和感を感じ振り返ると、死んでいたはずのキラが立っていた。

穴が空いていた胸は塞がっていて血も止まっているし、服に付いていたはずの血も形すらない。

キラも生き返ったことに戸惑いを隠しきれずにいると、両手に質量を感じ、なんだろうかと見る。

右手には4枚の赤、白、青のメダルと丸型のリーダーに似たものが。

左手にはメダルと同じ大きさの穴が3つ空いているベルトのようなもの。

どれも先程までは影も形もなかったものだ。

だがキラは無言でベルトを腰に巻き、赤と青のメダルを両端に装填しすぐに真ん中に白いメダルを挿入。

メダルをセットした部分をシーソーの右側が上がったような形にし、リーダーを手にそれらを読み込む。

 

 

〈フェニックス!レグルス!アビス!……フェ・ル・ス、フェルス、フェルッス!〉

 

 

メダルのオーラが発生しキラの姿が変わる。

頭は赤い不死鳥フェニックスを、腕は白い獅子レグルス、脚は青い海の深淵を思わせる風貌。

輝きの名を持ちし戦士-シャイン。

その基本形態-フェルスソウルと呼ぶべき存在が降臨した。

 

 

「はあっ!」

 

 

変身を終えたシャインが腕を振りかざす蜘蛛の怪物--否、クモサーヴァントに触れられる前に膝蹴りを腹に入れ、左に1回転しながらの回し蹴りでクモサーヴァントの頭部に叩き込む。

前のめりに倒れたクモサーヴァントはまたしても近接攻撃を決めようとするが、猛々しいレグルスのごとき白き爪で逆に返り討ちにされてしまう。

近距離ではやられる一方だと気付きクモサーヴァントが糸を吐き、動きを止めにかかる。

無数かつ人1人がすり抜けるのがやっとの間隔で放たれたそれを、腕部分から展開された白い爪--レグルスクローで裂いていたが、糸が腕にへばりつき思うように動かせない。

 

 

「--くそっ!」

 

 

好機と見たか、クモサーヴァントが口元に悪魔のような背筋が凍る笑みを浮かべて飛び掛かってくる。

シャインはねばねばした糸に覆われた腕をどうにかベルトに持っていき、手にしていたもう1つの青メダルを真ん中の白メダルと取り替えた。

 

 

〈フェニックス!ポセイドン!アビス!〉

 

 

白かった腕が脚部と同じ青になり、へばりついていた糸が腕部が変化したことにより、跡形もなく消滅。

何もなかった空間から出現した三叉槍がクモサーヴァントの胴を抉るように走り抜け、相手に致命的な一撃を与える。

苦しみ悶えているクモサーヴァントにとどめを刺すべく、シャインは変身に使ったリーダーを再びドライバーにスキャンし、必殺技を放つ。

 

 

『ヴヴゥ』

 

〈シャイニングチャージ!〉

 

 

「はあああああ!」

 

 

槍を水の渦が包み込み、クモサーヴァントを一閃。

シャインの背後で爆発が起こり、クモサーヴァントが存在していた場所に残っていたのは道路が焼け焦げた跡のみ。

ふぅと一息つき、シャインは変身を解除する。

 

 

「なんなんだ…このベルト。それに、7人の仲間って」

 

 

何か不穏めいた物が起こっているのかもしれない……

そう不安を感じながらもキラはバイクの不備を確認し、夕日に体を照らしその場を後にした。

 

 

 

 

 

--------

 

 

 

 

「!バカな、サーヴァントが倒されただと!?一体誰が!」

 

 

とあるビルの屋上で癇癪を起こした子供のように、暴れている男がいた。

ワイルド系な金髪のオールバックで、緑のロングジャケットに黒いジーンズの服装。

つい先ほど怪物が出現した銀行にいた男だ。

今も暴れている彼を、穏やかな波を思わせる可愛らしい声が諭す。

声の持ち主は明るい黄色のドレスを着こなした栗色の長髪をした女性。

美貌と言っても差し支えないぐらいの異性の目を引く顔立ちをしている。

彼女はゆっくりと歩いて彼から少しばかり距離を保ち、彼を落ち着かせた。

 

 

「落ち着いてディム。あなたらしくないわ」

 

「はあはあ、すまねえ。だがサーヴァントを倒す力を持った奴がいるんだぞ、一体どこのどいつが」

 

「いるじゃない。私たちを滅びの一歩手前まで追い込んだ天使(ハエ)たちの光が」

 

 

--天使(ハエ)たちの光

その言葉を聞いた男はやがて目付きを鋭くし、握っていた手すりがベコッと鈍い音をたてて凹ませると、無言で出入口へと歩む。

 

「あいつら、余計なことしやがって!」

 

「どこへ行く気?」

 

「潰しに行くに決まってんだろ!」

 

「だから落ち着きなさい。まだもう1体いるんでしょ?だったらそれに任せればいいじゃない。焦る必要はないわ」

 

「だが--」

 

「今大事なのはあの方の復活よ。間違えないで」

 

 

そう言われてしまえば男は黙り混むしかなくなる。

忌々しげに舌打ちを打つと、男は勢いよく出入口のドアを閉めていた。

女は軽く笑みをこぼし出入口から目を離し、眼下に広がる街並みを見下ろす。

 

 

「あの方が復活すればシャインなど赤子の手を捻るようなもの……そう、焦る必要はないの」

 

 

 

 

--------

 

 

 

 

太陽が沈んだ頃にキラは風心館に戻って来た。

 

「遅かったじゃないキラくん。何かあったの?」

「ええまあ、ちょっと事故に巻き込まれて」

 

 

目を反らして頬をかきながら返事をする。

嘘は言ってないがどうにも後ろめたさがある。

しかし本当のことを言っても、信じてもらえないのも事実。

蜘蛛の化け物に殺され、生き返って出所不明のベルトでそれを倒したなど。言えるはずもない。

幸いにもツボネは言及せず、同情するのみだったので助かった。

肩を並べて廊下を歩いていると、ふとツボネが思い出したように手を打つ。

 

 

「大変だったのね~。そうだ!大変といえばこっちもだったのよ」

 

「何かあったんですか?」

 

「そうなのよ。キラくんにお使い頼んだ後にアキヒロさんが浜辺で見つけたのよ…何だと思う?」

 

「なんでクイズ形式なんですか」

 

 

突っ込みを入れつつもキラは考え、一拍置いて答えを出す。

 

 

「えっと、財宝とか」

 

「キラくん割りと貪欲なのね…幻滅したわ~」

 

「違いますよ!?」

 

「ははは、わかってるわよ。冗談よ冗談」

 

「勘弁してくださいよ。それで正解はなんなんです?」

 

 

自分がからかわれたと実感し、ガクリと項垂れながらキラは正解を問う。

 

 

「なんと、女の子だったの。それもかなり可愛い子」

 

「へえ」

 

「あら?驚かないのね」

 

「…え?ああ、驚き過ぎてなんて言えば言いかわからなくて」

 

 

予想していた反応を大きく裏切られたのか、ツボネは少し機嫌を悪くする。

今日あった出来事が強烈過ぎて今更その程度では驚かなかったキラは、慌てて誤魔化す。

一応それで納得したのかツボネは話を続けた。

 

 

「今からその子のところに行くんだけど、ちょっとね困ったことがあるのよ」

 

「何がですか?」

 

「記憶がないのよ。その子」

 

「…へ?」

 

 

さすがにこれにはキラも驚くしかない。

詳しく聞くと、とりあえず部屋に運んで様子を見ていた時、1度目が覚めたらしい。

だが、名前もどこから来たのかもわからず、どう対処したら良いのかわからずにいたという。

事情を黙って聞いていたキラは、なんとも言えない頭痛を感じていた。

 

 

(どうして今日に限ってこんな非常識なことが続くんだか)

 

 

頭を抱えるキラを横目で見たツボネは、彼から見えないように苦笑していた。

事故に巻き込まれた後に、これを聞けばどうなるか薄々わかっていたからだ。

そうしているといつの間にか、ある部屋の前まで来ていた。

 

 

「ここがその子のいる部屋。寝てると思うからそっと空けてね」

 

 

ツボネからの注意に頷き、キラは扉に手をかけ数センチぐらい空ける。

艶のある黒髪を持っていて、自分と同じ年頃と思われる女の子が横になっていた。

布団の中に入っていて全体は把握できないが、顔は可愛らしいので体つきも悪くはないだろう。

簡潔ではあるもののひとまず、女の子の様子を見たキラは今後の方針をツボネに話す。

 

 

「見たところ怪我もなさそうですし、明日ちょっと聞いてみますよ」

 

「悪いけどお願いね。明日は仕事休んでいいから」

 

「いいんですか?」

 

「いつも頑張ってくれてるからたまには休まないと」

 

「ありがとうございます」

 

 

ツボネに頭を下げキラは自室へと戻り、ふと窓から見える景色に目を向ける。

もう空は黒ずんでいて白く輝く星がいっぱいに、いくつも点在していた。

キラはポケットの中に入れていた4枚のメダルを、無意識に握り締めながら空に浮かぶ深海を見ていた。

ちょっとずつ自分たちの常識が非常識に変わりつつある……そんな不安を抱きながら

 

 

 

 

 




どうでしたでしょうか?
ここからキラの非日常が始まります。
ちなみに次回は書いてて少し抵抗がありました。



次回 仮面ライダーシャイン

「あの、この子に見覚えありますか?」

「--無線飲食を…警察がしていいと思っているのか?」

「ひ、ひい!?来るな!化け物め!」

第2話 『瓦解』

「なんで……」
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