なので最初に投稿したのと同じ内容ですので、あらかじめご了承ください。
街にある廃棄工場ではディムが誰かを待っていた。
ただしその様子は不機嫌で、第三者が見ても怒りを露出させているのがわかる。
クモサーヴァントにカメレオンサーヴァント。
せっかく自分が生み出したサーヴァントを立て続けに、シャインによって倒されたからだ。
その上、彼は好きでこの工場にいるわけではない。
黄色のドレスの女性、ミュランの指示でかれこれ20分近くここにいるのだ。
「ったく、あのお方の復活ーとか言っておいてこれかよ」
「聞こえてるわよディム。陰口は本人に聞こえない場所で言うのね」
「はいはい。これからは気を付けますよっと」
悪態を着いた途端に当の本人が来てしまったが、ディムは適当にミュランに返事を返す。
ジト目で彼を見ていたミュランは気分を害さなかったのか、冷静に先の発言に訂正を加えた。
「それと言っておくけど、もちろんあの方の復活は優先事項。けれど時には休むことも大事なのよ」
とてもディムと同じサーヴァントを生み出す怪物の発言とは思えない、人間らしい言葉。
だがこれが彼女、ミュランなのだ。
この素晴らしいリーダーシップがあってこそ、長らく彼らはどうにか関係を保ってこれた。
当初はディムもミュランの人間らしい面に納得がいかなかったが、何度も行動していく内に彼女を受け入れるようになっていた。
そんな彼女に変わらず適当に応対していると、隣に面識のない男がいるのに気付く。
「なんだこいつは?」
「ああ、紹介がまだだったわね。彼は私たちに力を貸してくれる協力者よ」
「よろしく頼む」
社交的とはほど遠い礼儀をする男を、ディムは怪訝そうに見る。
見たところ普通の人間。
自分たちのように人間に擬態している同類ならば気配でわかるし、ミュランが来た時点で感知していた。
そうではないとなると一体何なのか
ディムの考えをミュランは予想していたのか彼に詳しく説明する。
「彼はある組織の一員だった男よ。今は既に組織は壊滅して孤立無援らしいけど」
「ふぅん、そんな奴が何の役にたつんだ?」
「お前たちの言う仮面ライダー…シャインとやらを倒すのを手伝ってやる」
シャインを倒す
それを聞いたディムは男に鋭い敵意を込めた視線を向けた。
「ふざけるな。シャインを倒すのは俺たちの役目だ、お前の力など必要ない」
「ふん、どうだか。現にお前が生み出したサーヴァントとやらは、その仮面ライダーに倒されたと言うではないか」
痛いところを突かれ、ディムは押し黙り下を向く。
そのまま目のみをミュランの方に動かすと、彼女は両手で×を作っていた。
(なるほど)
「今回はミュランと取り引きしてな。シャインとか言う仮面ライダーを倒すのを協力する代わりに俺の要求も飲んでもらうことになった」
「ほう、事情はわかった。が、お前の要求は何だ?それに、さっきから言っている仮面ライダーというのは何なんだ?」
先程からしきりに男の言う、仮面ライダーと言う単語が気になりディムは訊ねる。
男はそんなことも知らないのかと言いたげに手を上げながらも、ディムとついでにミュランにも話す。
「人間たちの間では都市伝説と化しているが……仮面ライダーは怪物でありながら愚かにも人間どもに味方する我々の裏切り者だ」
「裏切り者。つまり元々は味方だったということかしら」
「その解釈は間違っていない。30年前に秘密組織ショッカーがある男を捕らえ、改造手術を行った。手術は順調に進んでいたが、ある問題が起こった」
「問題だと?」
「ある科学者が脳改造手術の寸前で被験体を逃がしたのだ。結果として組織は壊滅し、新たに世界征服を企てた組織デストロン、GOD、ゲドン、ガランダー帝国、ブラックサタン、デルザー軍団、ネオショッカー、ドグマ、ジンドグマ、BADANと、男と新たな仮面ライダーたちにより次々と壊滅させられた」
男の話を聞きながらディムはふと、彼の拳が握り締められていたのに気付く。
恨み骨髄
その表現がぴったり当てはまる程に、男から出ている怒りは凄まじい。
「それからも組織の生き残りはどうにか再起を試みるも、後わずかのところで仮面ライダーどもに感づかれ、潰されていく一方…」
「なるほど。つまり、お前の要求はその仮面ライダーを倒すのに協力しろということか」
「その通りだ。だが、さすがに全ての仮面ライダーを倒すのに協力しろとは言わない。俺を追って日本に来ている仮面ライダー1人だけ倒してくれればいい」
「わかったわかった。とにかく、その仮面ライダーとシャインを倒せばいいんだな」
丁度ストレスが溜まっていたのもあってか、ディムとしては誰が相手でも構わなかった。
--シャインを同類以外が倒さなければ
さっそく出向こうと腕をバキバキと鳴らすディムだが、ミュランからの予想外の一言が飛んでいた。
「あなたはここにいなさい」
「どうしてだミュラン!俺はそろそろ暴れてえんだよ!」
「今回のような団体行動ではあなたよりも私のサーヴァントの方が適役よ。そもそもあなたに団体行動は合わないわ」
またしても正論を突き付けられ顔をしかめるディム。
ミュランの指摘は正論だと頭ではわかっているが、簡単に受け入れられる程彼はできた存在ではない。
そんな彼の性格を知りつくしているミュランは、どうにか言いくるめる。
「お願い。それにあなたも戦う時は自分の好きなように戦いたいでしょ?」
「……わかった」
「ありがとう。さて、シャインとあなたを追って来た仮面ライダーをどうやって倒そうかしら」
「それならば俺に任せろ」
渋々了承したディムを見ながらミュランが策を思案していると、挙手すると同時に声を発したのは男だった。
怒りを露にしていたさっきと打って変わって、不敵な笑みを浮かべている。
その顔を見たミュランは彼に、何か良案があるのだろうと思う。
「何か良い案があるのかしら?」
「とっておきの…な。仮面ライダーの共通にして最大の弱点を突いた最高の策だ」
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「はあ、はあ、はあ、はあ…」
雨に打たれながら朦朧とした足取りでシャインが行き着いたのは、山の中腹部分から流れている川岸。
覚束ない動きで歩いていると、大きく突き出ていた石に躓き転倒してしまう。
起き上がる気力もないのか地べたに寝転がるように、倒れていた。
「どうして…こんなことになってしまったんだろう…」
誰に問い掛けたつもりでもなく、無気力かつ無機質な声色を出す。
この2日間で彼は大きく変わってしまった。
自分を取り巻く環境も…自分自身も
今まで過ごしてきた平穏な日常がガラリと変わってしまったのだ。
だが今のシャインには何も考える気にはなれなかった。
ただ仮面の奥にある虚ろな目で雨に打たれるまま、彼は1秒たりとも動こうとはしないまま、意識が遠退いていった。
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営業を終えた天堂屋の店内では、マユとソウジが兄妹で協力して食器と鍋を洗っていた。
もう店内には天堂一家しかいないため、テレビを付けながらの作業となっている。
テレビのフキダシには、『謎の怪物の襲来!世界の危機の前兆か!?』と表示され、映し出されているのはシャインが街の人たちに石などを投げつけられている映像。
世にも奇妙なニュースにマユは眉を潜め、ソウジに意見を求める。
「お兄ちゃんはどう思う?テレビの」
「どう…とは?」
「テレビが言うような怪物なのかなって」
「そんなことか」
雑巾で台所を吹き終えたソウジは一度テレビを見、その後にマユに笑顔を向けていた。
そして右手で宙を指差す独特な仕草をする。
「おばあちゃんが言っていただろう。世の中には慌てて飲み込んではいけないものが2つある…テレビの言うことと、お正月のお餅だと」
憮然とした態度でソウジは言い放ち、更に言葉を紡ぐ。
「本当は優しい心の持ち主だと俺は思う。少なくともテレビや新聞が言うような怪物には思えない」
「……うん、そうだね。私も多分そんな感じがする」
「--そうか」
言い終えるとソウジはマユにゆっくりと手を伸ばし、頭を優しい動作で撫でていた。
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同じ頃
警視庁で残業をしていたショウイチも、カップ麺を食しながらテレビ画面を食い入るように見ていた。
やはりチャンネルはニュース番組であり、シャインが石を投げつけられている映像が流れている。
(気持ちは分からなくもないが怪物はないだろ、怪物は)
危害を加えられたのならともかく見た限りでは、シャインは抵抗する素振りを見せず耐えていた。
必死で手を出さないように我慢しようとしているのか、拳が掌に食い込むぐらい強く握り締められているのが画面越しでもショウイチにも分かる。
しかし住人の気持ちも理解できなくはないためか、ショウイチは釈然としない思いを抱きながら1人虚しくカップ麺をすすっていた。
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雑誌社ATASIジャーナルも来週発行される見出しの題材で大きくもめていた。
シャインを怪物として危険性を訴える記事を書こうとする者とそう考えるのは、早計だと咎める者との間で論争が勃発したのだ。
「来週の一面はこの化け物でいく。危険性を伝え、読者に警戒心を持ってもらう必要がある」
「いくらなんでも早すぎる。不確かな情報を読者に伝える訳にはいかないだろ」
「レン。俺が間違っていると言いたいのか?」
「そうじゃない、早すぎると言ってるんだ。下手を打てばいたずらに読者の不安を煽ることになりかねない」
前者が哀蛇イツロウ、後者が羽黒レン。
2人は同期で入社同時から反りが合わず、記事の方向性も大きく違う。
哀蛇イツロウは出世欲が強いせいか、注目を集めるために犯罪事件などを取り上げている。
対象的に羽黒レンは出世には興味がなく、扱う記事も多方面で腕も悪くない。
それを鼻に掛けないからこそ、余計にイツロウの怒りを買うのだろうが。
「俺の言うことは正しい。間違っているのはレン、貴様の方だ」
余りに独善的過ぎるイツロウの言い分にデスクでカメラの点検をしていた、辰巳シンジは訝しげな目をしていた。
彼の知る限りイツロウは、彼の入社当時からそうだ。
どこか自分を美化していて、他者を見下すナルシスト……それがシンジが彼に抱いた第一印象であり、決して彼とは馬が合わないと初対面ながらに思った。
今ではレンが自分を相方のカメラマンとして、選んでくれたことに恩義を感じている程に。
そんなことをシンジが振り返っていると、スマートフォンが振動した。
着信画面を見ると剣立カズマと表示されており、シンジは「はぁ」と溜め息を1つ溢し通話ボタンを押す。
「もしもし、カズマ。どうしたんだ? 」
『シ~ンジ~、疲れた~』
「……そうか、じゃあ帰ってゆっくり休んだらどうだ?じゃあ」
『ちょっと!?ごめんごめん!お願いだから切らないで!?』
あと少しのギリギリのタイミングでシンジの指を制したカズマ。
タイミングの良さに内心でシンジは舌を巻きつつ、用件を聞き出す。
「分かったから。それで用件は?」
『そうだった。ニュースはもう見たか?』
「ああ見たよ。今それで哀蛇さんとレンさんが揉めてる。」
チラリと喧騒の場に視線を移すと未だにイツロウとレンが争っていた。
『あー、あの2人よく喧嘩するよな』
「どっちも間違ってはいないからなおたちが悪い」
シンジはここまでの経緯を一通りカズマに話す。
イツロウとレンの修羅場を思い浮かべるのは難しくなかったのか、カズマが電話の奥で苦笑いをしているのがシンジにも分かる。
『俺はレンさんの方が正しいと思うけどな。見た感じ凶暴そうでもなかったし』
「俺も、彼がただの化け物じゃないって思う。あの時、悲しそうにしていたように俺には見えたから」
カメラマンとしての才が働いたのかシンジもまたニュースの映像から、シャインが抵抗せずにずっと拳を握りしめていたのを見逃さなかった。
シンジはある程度のところで電話を切ると、未だに続いている喧嘩に呆れつつあった。
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「--う、ううん……」
目が覚めると、目の前には木でできた天井があった。
窓からは晴れやかな太陽の光が隙間を通して入り込み、少し目にかかる。
意識がはっきりしないものの、眩しさに手で光を遮ろうとすると、ある大事なことに気付く。
「元に…戻ってる…?」
手が普通の人間と同じ状態に戻っていたのだ。
まさかと腰に目をやると、ベルトがなくなっていた。
更にポセイドン以外のベルトにセットしていたメダルも。
「一体どこに」
「--目が覚めたみたいだね」
自分しかいないと思っていた山小屋に声が響き、心臓をバクバクさせながらも声のした方を見る。
視線のすぐ先には、ある1人の男。
長袖のシャツを肘部分で捲り、逞しい腕が外気に晒されている。
顔は体育会系特有と言うに相応しい爽やかさで、年はおおよそ二十代だろう。
男はひまわりのような、にこやかで明るい笑顔をキラに見せていた。
「怪我はないかい?」
「は、はい……」
この出会いが後のキラに大きな影響を与えることになるのだが……
彼はこの時、まだ知るよしもなかった。
次回は3月中旬になると思います。
楽しみにしてくださる方がいるか分かりませんが、もしいらっしゃれば励みになりますのでどうかよろしくお願いします。