今回急いで書いたのでちょっと変に感じるところがあるかもしれません
色とりどりの車が立ち並ぶ道路。
何事もない平穏な日常ならば家族連れやカップルらが各々の目的を持って走行しているであろう車内には誰もいない。どの車も全て、誰1人として
何故ならそこでは4者による、日常に相応しくない激戦の場と化しているからだ。
『アガァァァァ』
その中の1人いや1体であるエアウィグサーヴァントが清純な空気を汚すような不気味極まりない奇声を発し、地べたを這いつくばっていた。
言語を話すだけの知能は欠落しているのか罵声を浴びせることはせず、自らを苦しめている者の全容を青い碧眼が映していた。
その者はゆっくりと時間をかけて歩を進め、それは余裕綽々な様がくっきりと表れている。
「あの忌々しい虫けらにお礼をしたいところだがお前を野放しにしておくのもそれはそれで面倒だ。害虫駆除はあいつに任せておくか」
溜め息交じりにそう呟いたのはガルル否次狼の変身するイクサ。
拳を交えて今に至るまでの間エアウィグサーヴァントは一撃といえる一撃を決められず、なすがままに蹂躙されているのだ。
「主は強くともお前はてんで大したことないな」
エアウィグサーヴァントの弾力のある柔らかな腹に拳をぶちまけながらイクサが言う。
そもそもの話エアウィグサーヴァントはイクサに変身する以前のガルルにすら勝てなかった。
それがイクサへの変身によってますます戦闘力が向上した彼を仕留められるはずもない。
-圧倒的な実力差の違い
大抵の人間ならそれを感覚的に悟った瞬間逃げ出してしまうはすだ
しかしそれを前にしてもなおエアウィグサーヴァントが戦闘を続行するのは自分を生み出した主への忠誠からか、それに気付けない程知能が低いか…そのどちらがは誰も理解できはしないだろう
『ギィ、ギィガアァァァ!!』
「これだけやられても向かってくる威勢だけは認めてやる。まあ言っても分からんだろうが」
幾多の車体を切り伏せた持ち前の刃状の掲げ振りかざすエアウィグサーヴァント。
だがイクサは容易く最低限の動作のみで回避。鋭利な両刃は分厚い白い装甲を掠めるのみに終わる。
そして完全にかわしたと頭が把握するよりも数秒早くイクサは裏拳で顔面を横殴りにし、よろめいたところへ軽い助走を加えて右足をピシッと伸ばした形での飛び蹴りを決めた。
「いつまでも
飛び蹴りが決定打となったのかゆらゆらとふらついているエアウィグサーヴァントにイクサは死刑宣告を下す。
そしてベルトの両側にセットしている銀色の電子キーを差し込む。
〈イクサナックルライズアップ〉
「ずおりゃあああああ!」
電子音声と共に気迫に満ちた甲高い声を上げイクサの全エネルギーを込めたナックル型武器-イクサナックルを用いた必殺技『ブロウクン・ファング』がエアウィグサーヴァントを捉え、見事粉砕してみせた。
『ガアァァァァァ!』
「ふん…さて、あっちはどうなってるか」
巻き起こる爆発を背にイクサは今も行われているであろうもうひとつの戦いに目を配れば、あちらも戦局が一変していた。
「せぇあ!」
たぎる闘志を込めた下から刈り取らんと襲来する凶刃を白爪で堪えるはシャイン・ユーレニルソウル。
だが片方の腕のみで止められる程甘くはないのか、振り切られた拍子に飛ばされるも虚空で一度宙返りをし、大事にならずに済む。
「どうした、どんどんかかってこいよ!お礼を返してくれんじゃなかったけか?」
「…心配しなくてもこれからたっぷりしてあげるよ。けど、ちゃんとついてこれるかな」
軽く一呼吸し体のリズムを整え前へ一歩踏み出す。
そのかすかな動作にディムは大剣を持ち直し身構える。
-くるか!
そう確信した瞬間だった。ふと何かに切り裂かれる感覚が襲い彼は空中を浮かぶ。
「カッ…な、何だ今のは!?」
何をされたのか……わからないままディムが地面に接触したと同時にシャインは彼の背後に姿を見せる。
「てめえ何しやがった!」
「さあね。それにしてもその口振り、どうやらこの姿のシャインと戦うのは初めてみたいだね」
怒鳴り付けるように問うディムにまるで関係ないと言わんばかりの冷めきった口調で応対するシャイン。
その白々しい態度のせいで苛立ちを増したディムは大剣を振りかぶり頭上から叩き下ろす。
直撃すれば文字通りの真っ二つとなるだけの勢いを伴う大剣
だがシャインは一瞬の怯みもせず僅かに左足を後ろへと下げ待ち構える。
「受け止めようともしないとはもう諦めたか」
「……誰がいつそんなこと言ったけ?」
挑発的な言葉を投げかけるディムにただ一言そう返したシャインは再びディムの視界から完全に姿を消し、目標を見失った大剣は当然道路の破片を撒き散らす。
「また消えやがった。一体どこに!……がああああ!」
辺りを見渡した瞬間、またしてもあらゆる方向からディムは斬撃に襲われ路上に転がり込む。
荒い息を吐きながらもディムは今のでシャインの攻撃方法を見抜いた。
「違う消えたんじゃねえ。これは…高速移動か!」
それならば姿が消えるのも合点いくし『ついてこれるか』というシャインの言葉にも説明がつく。
……だがそれならば当てられる
「厄介な能力だが、ちまちま動き回るだけでこの俺を倒せはしねえよ。反応さえできればこっちのもんだ」
ディムは旋回しながら大剣を円を描くように振り回す。
すると途中で何かを手応えを感じ、シャインが高速の世界から転がり戻ってきた。
それを見たディムはニヤリと口元を歪め得心が行ったと言いたげな表情になる。
高速移動とて言い方を変えれば
透明人間のように物体をすり抜けるわけでもなければ完璧に目視できなくなるというわけでもない。
ディムの言うように反撃の余地はいくらでもある
「もちろんそれだけで倒せるなんて思ってないし、そう易々と反応させはしないよ。なにせ」
「もっと速くなるから」そう付け加えたシャインは更にスピードを上げ、それはディムの反応速度を数段上回っていた。
その証拠に迎撃を行おうと突き出したディムの拳をもろともせず掻い潜り頑固な鎧に膝蹴りを入れた後、アスファルトを蹴り上げ跳躍し背後から切り裂く。
高速の次元を駆け回るシャインにディムは己の思い通りの行動ができずやられる一方となる。
なずがままにされている自分を許せるはずもなく、ディムは喉の奥から叫びをあげる。
「はあ、はあ、ふざけるな。俺はてめえを叩き潰す!2度も…殺されてたまるかぁぁぁぁ!!」
「いいやこれで、決める!」
〈シャイニングチャージ!〉
身を屈め狙いを振り絞り、必殺技の態勢に突入するシャイン。
陽光を受けて煌めく白爪がリーダーを通した3枚のメダルから流れる純白の光で、ますます輝きを強める。
やがてメダルから供給される光が止まると、シャインはとどめを刺すためのスタートをきる。
「おらああああああ!」
ディムも逃げることなく迎え撃たんと大剣に込める力を強くする。
-はなっから逃げるという考えは頭にない
-同じ相手に一度ならず二度までも敗北してたまるか!是が非でも捻り潰す
彼なりの確固たる意志を自らの得意武器に乗せ、高速で直進している敵にそれを噛みつかせる。
「やったか…!」
だが凪ぎ払われた大剣はシャインを斬殺できはしなかった。
大剣が当たるかと思われた一瞬シャインらしき影が飛び立ったのを僅かに垣間見たディムは首だけを上空へとやる。
目に映ったのは丸みを帯びた太陽を背に宙に漂う黒い影。
それはくるりと一回転すると土台などあるはずがない空において足で大気を踏み台にするかのように蹴り、ディムの頂点を取る。
身に迫り来る脅威に抗おうとも、それなりに重量のある大剣を頭上に戻すことはスピードで劣っている限りはもはや後手だ。
「ソイヤァァァァァ!」
「死んでたまるか!俺はまだ、終わるわけにはいかねえんだよおおおおおおお!!」
-ライズモーメント
ユーレニルソウル必殺の一撃がディムに食らいついた瞬間、その場は数秒足らずで甲高い爆発と轟音に包まれた。
やがて黒煙も晴れソコに毅然と佇んでいたのはシャインただ1人。
「やったのか?」
「…手応えが浅かった。たぶん逃げられました」
「バカな、あの瞬間にあれをかわすのは奴には無理だ 」
「ええ僕もそう思います。けど、倒せなかったのは間違いないと思います」
「そうか…しかし当面の危機は去ったということか」
ひとまず最悪の事態は避けられた
いくらサーヴァント、それも相当の実力を持つサーヴァントとはいえども、傷が完治するには1日やそこらではすまない。
しばらくの間はまた目の前に現れてくることはないだろう。
「気に食わんがお前に救われたのは事実だ。一応、これでも恩義は感じているつもりだ…お前の都合がいい時でいい、連絡をよこせ。話をしてやる」
「ありがとう、ございます」
1度は対立し合った者たちは変身を解除し手を握り合う。
両者共に思うところは違えど同じように顔に微笑を浮かべていた。
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夕闇が空を支配し始めた頃の廃工場。
そこに負傷した体を引き摺り息も絶え絶えといった様で人間態へと戻ったディムがいた。
「ぐ、……まさか、ここまで追い込まれるとは」
以前力の差を見せつけた相手
余計な介入などなければ確実な勝利を手に入れられたであろう相手だからこそ今度は介入者共々殺してやろうと息巻いての出撃であった。
しかしその成果は散々なものであり、危うく返り討ちにあうところだった。
彼にとっては耐え難い屈辱以外の何物でもない。
「大丈夫?ディム?」
そんな彼を気遣う高いトーンの声が工場内に反響する。
その声の持ち主は積み上げられた箱の陰からゆっくりと体躯を覗かせた。
華奢な体つきを赤いゴシックロリータ調の服が覆い、高い身丈と豊かなプロモーションに反して幼さを感じさせる顔つきをした少女だ。
「ああ、まあな。それより、シャインの攻撃からお前が助けてくれたんだろ。ありがとな、ラナ」
「うん!ディムが無事でよかった!」
「おやおや?威勢良く出ていったと聞いたけどそれにしてはずいぶんとボロボロじゃないか?ディム」
「黙ってろ…リスティヒ」
ラナと呼ばれた少女が野に咲くひまわりのように満面の笑みを見せた後ろから、また別の声がディムを軽蔑するかのような発言をする。
青いタートルネックを羽織り耳にかけた黒渕メガネの存在もあって知性がにじみ出ていた。
「久しぶりの再会なのにつれないねえ、もう少し仲良くしようよ」
「誰がてめえなんかとするか。てか何でお前らがここに」
「彼らは援軍よ」
リスティヒに対しディムが邪険に扱いながらも問いかける、奥からミュランがある人物を伴って彼の問いに答えた。
「援軍だあ?」
「
「ジジイが、それまた面倒な……なあさっきから気になってたんだが、そいつ誰だ。サーヴァントじゃねえな…人間がなんだってここにいやがる」
血相を変えて詰め寄ろうとするディム。
そんな彼をラナが抑えミュランも事情を知らぬのだから仕方ないだろうと納得し、説明をする。
「ヴェルト猊下の推薦よ」
「ふざけんな!言っておくが俺はお断りだぞ」
「駄目だよ!新しい仲間なんだから仲良くしないと!」
「はあ!?こんな奴、俺は認めねえぞ。シャインは俺たちが倒す、こんな人間の力は絶対に借りねえ!」
「では、どうすれば認めてくれるの」
サーヴァント3人の口論の渦に唐突に割って入る渦中の本人。
場に足を踏み入れてから一言も口を開かなかった人間が突然言葉を発したため、ディムは呆気に取られていたがミュランがもたらした提案で直ぐに気を取り直す。
「だったらディムが納得できるような実力を見せるために、何かテストでもしてみたら?実力はヴェルト猊下の折り紙つきだし、あなたもそれなら多少は認めるんじゃないかしら」
「まあそれだったら……よし、試しにシャインと戦ってみろ。俺も付いていく」
「と言うことだけど構わないかしら?」
「問題ない。それで気が晴れるのならば何でも」
「じゃあ決定ね、ディムの傷がある程度癒え次第テストを行いましょう」
闇を払ったのも束の間、また別の闇が世に解き放たれようとしていた。
今回でひとまず一区切りです。
次回からはまた別の話になります