トーナメント当日。姉ちゃんの怪我も良くなり、観客席に座れる程度には治ったらしい。モニターから観客席を見ながら思った。
「すごいな……」
三年生、二年生などの高学年や世界のお偉いさん。中でもイギリスが多いのはやっぱり僕目当てだろう。いや自意識過剰とかじゃなくて僕が代表候補生を引き受けたから。それに専用機も自分で作ったんだからそりゃ見にこないわけがない。
「大丈夫、緊張しないで行こう。作戦通りにね」
シャルルさんが気に掛けてくれる。だけど僕は緊張しているわけじゃない。ていうかその辺の連中はどうでもいい。僕は、ボーデヴィッヒさんを倒さなければ悔やんでも悔やみきれない。仇だ。ボコボコにする。最低でも100発はぶち込む。姉ちゃんを傷付けただけの代償は払ってもらう。最悪、ブッ殺……、
「イアン」
肩に手を置かれた。誰かと思えばシャルルさん。
「感傷的にならないで」
「……………はい」
危なかった。殺意が出る所だった。とにかく、落ち着かないと。そう思ってトーナメント表に目を通した。その瞬間、思わず息を呑んだ。
「イアン!」
「………うん」
一回戦目の相手は、篠ノ之、ボーデヴィッヒ。いい機会だ。万全の状態で叩き潰せる。
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そんなわけで、試合会場。フィールドにはイアン、シャルル、ラウラ、箒の四人。
「ねぇ、あの機体どこの?」
「さぁ…ブルーティアーズに似てるけど見たことないよ?」
なんて声がする。それはそうだ。あくまでイアンオリジナルだから。
「ふんっ。あの男を叩き潰す準備運動になればいいがな」
ラウラが言うが、そんな憎まれ口に一々反応しないイアン。
「ビビって声も出ないか」
それにも反応しない。ただカタカタと震えていた。
『それでは、試合を開始してください』
その声と共にラウラの目が見開く。
「怖ければ一瞬で片付けてやろう!」
大口怪レールカノンを初っ端からぶっ放した。それに対してイアンはかわしながら言った。
「武者震いだ」
「なにっ」
スターライトリペアを取り出して狙撃。それをかわすラウラ。
「いきなり頭は狙い過ぎか。シャルルさん!篠ノ之さんをお願いします!」
「分かってるよ!」
言われるがまま、シャルルは箒の方へ。
「ちょこまかとっ!」
ラウラの砲撃。それを軽々かわしてビームを撃つ。
「そんな砲撃、当たるもんか!」
「このっ!」
今度はワイヤーブレード。追い掛けてくるブレードを空中に舞い上がりながらかわし、スターライトからピストルに変える。
「はあっ!」
五本のワイヤーブレードを破壊。
「なにっ!」
そして、インターセプターをぶん投げて残りの一本のワイヤーブレードを壁に突き刺す。
「小癪なぁっ!」
ヤケになって大口怪レールカノンをぶっ放すが、イアンはかわしてスターライトをサーベルモードに切り替えて突っ込む。
「機体が良くても、自分で性能を引き出せなければ!」
かわすラウラ。とりあえず距離を取ろうとしたが、一定距離以上離れられない。
「なんだ!?」
見ると、ワイヤーブレードが壁に固定されているため、動けない。
「そこっ!」
そのままイアンはスターライトリペアをサーベルモードへ切り替え、突っ込んだ。
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ピット。そこでセシリアやら一夏やらは驚いていた。
「すごいな…機体の武器や性能を最大まで引き出している……」
思わず声を漏らす一夏。
「えぇ…あの子があそこまで戦えるなんて……」
「おもしろい戦い方をするな。ボーデヴィッヒの挑発にもまったく乗らずに落ち着いている」
千冬までもが褒めている。
(あれで、13歳か……)
「だが、まだ若いな」
千冬は意味深にそう呟いた。
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「はぁぁぁっっ‼︎‼︎」
突っ込むイアン。だが、
「掛かったな!」
ラウラはAICを発動。動きが止まる。
「勝利を急いだな!これで……!」
「掛かったのはそっちの方だよ」
「なにっ?」
「忘れたんですか?これはタッグ戦ですよ!」
その瞬間、ラウラの後ろからヴェントを乱射するシャルル。それがすべて直撃し、ラウラのシールドエネルギーを削る。ちなみに箒はあそこで停止。
「ぐあっ!」
そして、AICが切れる。
「そこだぁっ!」
大口怪レールカノンの砲口をぶった斬った。
「ぐあぁっ!」
「こいつで、終わりだぁっ!」
イアンがとどめを刺そうとしたその時だった。
Damage Level…………D
Mind Condition………Uplift
Certification…………Clear
《 Valkyrie Trace System 》………boot
「あああああっ‼︎‼︎」
突然、ラウラが身を裂かんばかりの絶叫を発する。と、同時に電撃が放たれ、イアンは吹き飛ばされた。
「うわあっ!」
「イアン!」
すると、シュバルツェア・レーゲンの装甲がドロドロのものになってラウラの全身を包み込んで行く。
「なん、だ……?」
ただ某然とするイアン。そんなイアンにそのなんか、ゲル状かと思ったら形あるなにかが攻撃してきた。
「イアンッ!」
シャルルがガバッと庇った。が、リヴァイヴはやられ、遠くに吹っ飛ぶ。客席には遮断シールドが張られた。
「シャルルさんっ!」
そう叫ぶイアンにさらに攻撃。今度はかわした。
「イアン!そいつには勝てない!逃げて!」
声を張り上げるシャルル。だが、
「シャルルさん逃げて!僕が食い止める間に篠ノ之さんを持って!」
「だめだよ!危険だ!」
が、聞く耳持たない。イアンは一人、相対する。向こうは完全に近距離で来ている。固定していたブレードも無理矢理引き抜いて、イアンに迫る。
「こんのぉっ!」
ブンブン振り回して来る攻撃を回避しながらインターセプターを出して突き刺す。
「これでっ!」
さらに、ゼロ距離からの射撃。爆発し、そこから離れた。
「はぁ、はぁ……どうだ」
油断なく上空を睨む。だが、そこから物凄い早さで居合いが飛んできた。スターライトを犠牲にして回避。
「まだっ!?」
続いて二丁のピストルを抜く。すべて直撃させるも、全部弾かれてまた壊されてしまった。残りはインターセプターのみ。
「クッソ……」
「イアン!逃げて!無理だよそいつに一人は!」
「ダメですよシャルルさん…勝てる勝てないじゃない。ボーデヴィッヒさんはあの中にいるんだ。僕はあの人の事が嫌いだけど、見捨てるわけにはいかない」
「………っ」
(今までの射撃で十分なダメージは与えたはずだ。あと一撃、これでキメる)
そう思いながらイアンはインターセプターを握る。
「っつあぁぁぁぁっっ‼︎‼︎」
吠えながら突っ込んだ。そして、振り下ろされる敵の刃。それをわざと肩で受け止めた。防御が特別薄いイアンの機体は速攻でシールドエネルギーが減っていく。そんな中、イアンは不敵に笑って見せた。
「軽いな。攻撃のための攻撃は…」
そして、強い瞳で睨み付けて言った。
「これが、守るための、攻撃だぁっ!」
そのままインターセプターを左下から右上に叩き斬る。ピシッとヒビが入り、そこからラウラが弱々しい目をイアンに向けている。それと共にパープルティアーズは消えていった。そして、ラウラが崩れるように倒れ込んで来る。イアンは支え切れずに後ろに倒れた。
「そこは支えてあげないと」
シャルルに助けられた。