「海!見えたぁっ!」
クラスの女子が声を上げた。窓からは確かに海が見える。
「姉ちゃん!海!海!」
「はいはい」
言いながら頭を撫でてくれる姉ちゃん。
「相変わらずイアンは甘えん坊だねー」
前からシャルさんがバカにしたようなことを言ってきた。
「違います。ただお姉ちゃんが好きなだけです」
「シスコン」
「ち、違います!」
なんて言ってると、なんかヤケにソワソワしてらラウラさんが目に入った。
「ラウラさん?どうかしました?」
「ど、どうもしてない!近い!馬鹿者!」
「むぎゅっ!」
顔を押し戻されてしまった。
「箒もどうかしたのか?なんかさっきからソワソワしてるけど」
一夏さんが聞くが、
「な、なんでもない!馬鹿者!」
なんでこのクラスは人のことをバカバカ言うんだろうか……。そんな感じで宿に着いた。ゾロゾロと一年生がバスから降りる。
「それでは、これから三日間お世話になる花月荘だ。全員、従業員の仕事を増やさないように注意しろ」
『よろしくお願いしまーす!』
と、声を揃えて挨拶。
「はい、こちらこそ。一年生は元気があってよろしいですね」
宿の人はそう笑顔で言った。ま、僕は二年生だけどね本来。つまり、僕はここにいる全員の先輩にあたるわけだ。そんなわけあるか。で、部屋へ案内。その時、
「ね、ね、ねー。おりむーとあいあいー」
「あ、本音さん」
「二人の部屋ってどこ〜?一覧に書いてなかったー。遊びに行くから教えて〜」
「や、俺も知らない。廊下にでも寝るんじゃねぇの?」
「えぇっ!?」
「冗談だよイアン」
なんて話してると、織斑先生から声が掛かる。
「織斑、イアン。お前らの部屋はこっちだ。ついてこい」
僕達が連れて行かれた先は教員室。
「最初はお前ら二人部屋のはずだったんだが、就寝時間を無視して押し掛けて来るだろうということになってだな。結果、私と同室になったわけだ」
「で、でも…僕も、ですか……?」
「ふん。お前程度に襲われてされるがままにされるほど私は弱くない」
「お、襲いませんよ!僕だって命は惜しいです!」
「…………どういう意味だ?」
「ご、ごめんなさい!」
危なかった…駄目だこの人は……姉ちゃんの軽く400倍は怖い。
「さて、今日は一日自由時間だ。海にでも行ってこい」
そんなわけで、僕と一夏さんは水着の用意だけして部屋を出た。
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とりあえず着替えるために別館へ向かう途中、篠ノ之さんとバッタリ出会した。凄い形相で僕に「邪魔だ」と言っている気がしたので僕は先に更衣室に行くことにした。数分後、一夏さんがやってくる。
「待っててくれたのか?」
「は、はい…その……一人で、女の子しかいない海に行くのは、ちょっと……」
「はははっ、そっか。ちょっと待っててな」
「は、はい」
着替えてる一夏さんを見ながら、やっぱり高校生はいい身体してるなと思った。割と筋肉あるし、少し羨ましい。僕は今だ身長160cmを越えないから尚更。僕はぺしゃんこの浮き輪を持った。
「さ、行くぞ」
「はい!」
で、海に駆り出す。が、隣にすごい肉体の人がいるとやっぱり自分の体を見せるのはなんとなく恥ずかしい。一応、パーカーを着て行くことにした。
「おいおいイアン。腕掴んでると歩きにくいよ」
「す、すいません……」
「ていうか、浮き輪膨らませないのか?」
「いえ、あの……あははっ」
言えない。膨らませられないなんて言えない。一夏さんが真面目に準備体操してる中、僕は姉ちゃんの姿を探す。
「い、ち、か〜〜〜っ!」
突然、聞き覚えのある声がして、ガバッと飛び付く凰さん。そのまま一夏さんに飛び乗って肩車させる。
「こらこら、お前もちゃんと準備運動しろって。溺れてもしらねぇぞ」
「あたしが溺れたことなんかないわよ。前世は人魚ね、たぶん……って、イアン。その『何言ってんだこいつ?』みたいな顔、やめなさい」
「な、なんでわかるんですかぁ!?」
「ふぅーん。本当にそう思ってたんだ。生意気な!」
今度は僕に襲い掛かって来るので慌てて逃げた。
「待て待て待てー!」
「ご、ごめんなさ…わっ!」
砂浜に足を取られて転びそうになる。そんな僕を支えてくれた(胸で)のは姉ちゃんだ。
「まったく…なにをしてらっしゃいますの?」
「ね、姉ちゃん……あっ、ちょうどよかった!浮き輪、膨らませて!」
「はいはい…いつまでも甘えん坊なんですから…」
で、ぷくぅ〜っと膨らんでいく浮き輪。すると、近くにいた女子生徒に声をかけられる。
「ていうか、なんでイアンくんパーカーきてるの?」
「ふえ?」
「せっかく海に来たんだから脱ぎなよ」
「い、いやでも…は、恥ずかしい、ですし……」
「なに女々しいこと言ってんのよ!」
気が付けば凰さんにフードを引っ張られている。
「脱がしてやる!」
「ち、ちょっと!やめてくださいよ!」
抵抗はしたものの、結局脱がされてしまった。もうお婿に行けない……。
「なによ。別に何もないじゃない…」
「そういう問題じゃないですよ……」
ゲンナリする僕。
「ほらイアン。出来ましたわよ」
「ありがと姉ちゃん!一夏さん、一緒に海に……」
「申し訳ございませんが、一夏さんはわたくしにサンオイルを塗ってくださる約束をしてますの」
「「んなっ!?」」
僕と凰さんが声を漏らす。
「では、お願いします一夏さん」
僕の心境などまるで無視してサンオイル開始。少し困った顔をしながらも一夏さんはサンオイルを手に付ける。大丈夫、一夏さんならやらしいことはしない。我慢だ我慢。
「じゃ、じゃあ、塗るぞ」
「ひゃっ!?い、一夏さん、サンオイルは手で温めてから塗ってくださいな」
「そ、そうか、悪い。なにせこういうことをするのは初めてなんで……すまん」
「そ、そう。初めてなんですの。それでは、し、仕方が無いですわね」
リミットブレイク。限界突破。僕は一夏さんからサンオイルのボトルを奪うと、姉ちゃんの背中の上でドボドボドボっと垂れ流した。
「ひゃあぁっ!?な、なにを……」
「ふんっ。バカ姉」
そのまま僕はスタスタとその場を後にする。
「? なんなんですのあの子は……?」
「今のはセシリアが悪いな」
「そうよ」
なんて声が後ろからする。と、思ったら後ろからだきっと抱きついて来た。
「ほらほら、あんたもいじけてないの!せっかく海に来たんだから遊ぶわよ!」
こういう時の凰さんは好きだ。
「は、はい」
「じゃ、泳ぐわよ!一夏、向こうのブイまで競争ね!負けたら@クルーズで奢り!」
「ま、待てよ!卑怯だぞ!」
そのまま海に突っ込む。僕も慌てて追い掛けた。水中眼鏡を装着して海に飛び込むと、思ったより海は綺麗で魚も見える。へぇー…日本の海って綺麗なんだなあ……。サンゴ礁の間を泳ぐ魚などを見て感動してしまった。
もっと、深く潜る。イソギンチャクの中にカクレクマノミ。可愛いなぁ……なんだっけ、あのディズニーの…ファインディング……ネモ?まぁなんでもいいや。
僕は海パンのポケットに手を突っ込む。僕特製水鉄砲(試作品)である。威力は岩を砕くレベル。サメ対策はバッチリだ。
いいなぁ、海は。心地よかぁ……これならどこまでも潜って行け……サメだ。まさか、本当にいるとは…僕は斜め下に向かって水鉄砲を発射。その瞬間、ブワッと体が浮き上がり、後ろにぶっ飛んだ。
「ガボバァッ!」
そのまま背中に何人かぶち当たり、水柱を描いて砂浜に落下した。その途中で僕の水鉄砲は破壊された。しまった。反動に着いて考えてなかった。
「す、すいません!」
下を見ると、一夏さんと凰さんが倒れていた。
「うわぁぁ!ご、ごめんなさい!」
「だ、大丈夫だ…むしろ助かった……」
「?」
何かあったのかな……。