姉ちゃんにメチャクチャ怒られた後、僕は一夏さんとまた海に向かった。その時、
「あ、ここにいたんだ」
振り返ると、シャルさんとなんかミイラがいた。
「ほら、出て来なってば。大丈夫だから」
「だ、だ、大丈夫かどうかは私が決める……」
なんかこの声聞いたことあるな……。
「ほーら、せっかく水着に着替えたんだから。イアンに見てもらわないと」
「ま、待て。私にも心の準備というものがあってだな…」
「もー。そんなこと言ってさっきから全然出てこないじゃない。一応僕も手伝ったんだし、見る権利はあると思うけどなぁ」
そういえば、この二人って同室なんだっけ。よくこの前まで戦い合ってた同士が仲良く慣れたなぁ…。
「うーん、ラウラが出てこないんなら僕、イアンや一夏と遊びに行こうかなぁ」
「えっ?」
「うん。そうしよ。二人ともいこ?」
そのままシャルさんは僕の手を取って海へ向かう。
「ま、待てっ。わ、私も行こう」
「その格好のまんまで?」
「ええい、脱げばいいのだろう、脱げば!」
男前にバスタオルをかなぐり捨て、水着姿のラウラさんが現れた。
「わ、笑いたければ笑うがいい……!」
な、なんだろう……普段、制服姿しか見たことないからかもしれないけど、こういう女の子らしい姿のラウラさんは、こう………新鮮?
「じ、ジロジロ見るな!見るならなにか言え!」
「あっごめんなさい!え、えと…その……」
な、なんて言えばいいんだ……?
「その、いい感じ…というか、可愛いというか…その…うぅ……」
いかん。僕が恥ずかしがってどうする。
「か、可愛い!?わたしが!?」
「えっ!?は、はい…とても……」
「そ、そうか…にへへ……」
あぁ、僕の中のラウラさんのイメージが……。
「あ、それとシャルさんも…ですよ?」
「ふえっ!?」
自分も言われると思ってなかったのか、一気に顔を赤くする。
「あ、ありがと……」
…………なんだこの空気。と、思ったら、三人、女子達が寄って来た。
「織斑くーん!さっきの約束!ビーチバレーやろうよ!」
「わ〜!おりむーと対戦〜。ばきゅんばきゅーん」
本音さんと友達が寄ってくる。
「おう。いいぜ。こっちは一人多いけど」
「あ、僕は見てますから」
ここは自分から抜ける。歳上に譲るべきだし、なによりスポーツは苦手だ。が、
「だーめ。ラウラがあれ完全に放心状態だし」
見ると、「可愛い、私が…にへへぇ……」と呟いていた。
「仕方ないですね……」
なるべく迷惑かけないようにしないと……。
「ふっふっふっ。七月のサマーデビルと言われた私の実力を……見よ!」
いきなりジャンピングサーブ。しかも直線で僕に向かっていた。
「わわっ!」
思わず頭を抱えて回避。すると、後ろからバァンッ!と音。見ると、凰さんの顔面にボールがめり込んでいた。
「あっ………」
ぼさっとボールが落ちた。
「イ〜ア〜ン〜……」
「ご、ごめんなさ……」
「ゆるさーん!」
鬼ごっこが始まった。
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夕食。僕はぶかぶかの浴衣を着て一夏さんの隣に座った。反対側にはシャルさんが座っている。
「浴衣、大きい……」
「さっき転んでたもんね」
苦笑いのシャルさん。
「それよりイアン。刺身美味いぞ」
「本当ですか?」
では一口。おぉ!本当だ。柔らかくてなんか、こう…美味い!僕はグルメレポーターには絶対なれないだろうと思いました。一人でパクパク食べてて思い出したけど、シャルさんは確かお箸苦手じゃなかった?
「あ、シャルさん。お箸……」
「ん?どうかした」
バリバリ平気で使ってた……。
「い、いえ。なんでもないです」
「そういえば、イアンはわさび使わないの?」
「は、はい…わさびはちょっと…お寿司屋さんでも姉ちゃんにわさびを取ってもらってます」
「ふぅーん……」
「………なんですかその目」
なんか生暖かい目を向けられてる……。
「いやあ?子供だなあと思って」
「子供じゃないです!」
失礼な人だ。
「じゃあ、コーヒーに砂糖は?」
「入れます」
「お茶とジュース、どっちがいい?」
「ジュースです」
「好きなテレビは?」
「仮面ライダー!」
「ほら子供」
「〜〜〜っ!シャルさん意地悪!」
僕は不貞腐れて前を向く。
「ごめんね。からかい過ぎちゃった」
「だから頭撫でないでください!」
もう嫌だ。僕はさっさとご飯を食べ終えて部屋に戻った。
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お風呂から上がり、僕と一夏さんは自室へ。中には織斑先生がいた。
「おぉ、戻って来たか」
「うん。ただいま」
「し、失礼します……」
「なにをかしこまっている。ここはお前の部屋だ。リラックスしろ」
「そ、そうは言っても……」
姉弟の中に部外者がいるんだから気まずいものは気まずい。そんな僕の様子を見て織斑先生はニヤッと笑った。
「ならリラックスさせてやろう。一夏、あれをやってやれ」
「はーい」
「へ?あれって……」
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食事の時にセシリアは一夏に部屋に呼ばれていた。だから、ウキウキしながら廊下を歩く。だが、部屋の前にとある四人が聞き耳を立てていた。
「なにをしておりますの?」
しぃーっと指を立てる四人。セシリアも耳を傾けることにした。
『どう、だ…イアン……』
『ふあっ…やっ……き、気持ちいいです……』
『ここ、固くなってる、ぞっ』
『あんっ…そこはァッ……ッ!らめぇ……』
『ふん、やらしい声を出しおってがガキめ』
『ひあっ!せ、せんせぇくすぐったいで……ぁんっ!』
その瞬間、セシリアは突入した。
「ひ、ひ、人の弟になにをしてるんですっっ!?」
顔を真っ赤にして突撃するセシリア。中ではイアンのちょうどお尻の所に馬乗りになっている一夏に、足の裏をつつーっとなぞる千冬の姿。
「なにって…マッサージ」
一夏が当然と言った顔で答えた。イアンの顔は完全に腑抜け切っている。
「あえぇー?ねえちゃん……?」
その声で五人はかあぁぁっと顔を赤くした。それと共に自分自身の思考を恥じるのだった。