僕は一夏さんの家にお泊まり会に来ていた。午後からどこかに遊びに行って夕方は一夏さんの家で遊ぶ。で、今は晩御飯。
「やっぱり一夏さんって料理上手ですねー」
「そうでもないよ。普通だ普通」
「でも美味しいですよ?」
「まぁ、千冬姉が味にうるさいからなぁ……」
「織斑先生って家だとどんな感じなんですか?」
「あー案外だらしな……」
そこで、パコッと叩かれる一夏さん。
「余計なことを言うな馬鹿者」
「お、織斑先生……」
織斑先生が立っていた。
「イアンか。今日は泊まるのか?」
「は、はい……」
「そうか。セシリアには言ってあるんだろうな」
「一応、言いましたけど」
「ならいい。あまり姉に心配掛けさせるなよ。そここの馬鹿者のようにな」
「は、はあ。でも一夏さん、結構しっかりしてるように見えますけど…」
「姉からしたらまったく成長してない。まだまだガキだ」
「それって、織斑先生がブラコンなだけじゃ……あっ!いやなんでもないで……」
「ほう、お前も言うようになったなクソガキ」
「いだだだだっ!」
アイアンクロー。うわあ、この人容赦ない……。
「あ、千冬姉もご飯食べる?出来てるけど」
「いただこう」
ま、まさか…担任の先生と同じ食卓に付くことになるとは……。その後、あまりにも気まずい食事を過ごした。
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次の日、朝から僕と一夏さんはお出掛け。ホームセンターでの買い物を手伝って、その帰り道。
「悪いな。手伝ってもらって」
「いえ。泊まらせてもらってる身ですから」
なんて会話しながら帰宅中。今日は1日一夏さんの家で遊ぶ。で、家の前に着いたのだが、
「せ、セシリアはここにイアンがいるって言ってたよね…大丈夫……」
なにを言ってるか聞こえなかったが、なにかボソボソ言ってるシャルさんが表札の前に立っていた。変に深呼吸してるし。僕は助けを求めるように一夏さんを見たが、まったく察することなく、一夏さんは言った。
「あれ、シャルロットか?どうした」
「ふえっ!?」
いきなり声を掛けたもんだから、驚いてこっちを振り向くシャルさん。
「あ、あっ、あのっ!ほ、本日はお日柄も良くっ……じゃなくてっ!」
「「?」」
「え、えっと、ええっと……」
なにをパニクるのか。そんなに驚くようなことかな……。
「き……」
「「き?」」
「来ちゃった♪」
えへっと微笑むシャルさん。……なるほど、夏休みにわざわざクラスの男子の家に遊びに来るなんてこの人、一夏さんのこと好きなのか。だったら僕、お邪魔かな。………最近、僕お邪魔虫になり過ぎじゃね?が、そんな僕の気遣いなどまるで気付かずに一夏さんは言った。
「そっか。じゃあ、上がって行けよ。あんまり盛大なもてなしは出来ないけどな」
「う、うん。ごめんね、男同士だったのに」
あれ?この人、ここに僕か来てること知ってたのかな。そういえば最初会った時、「なんでいるの?」って聞かれなかったな。で、僕達は家に入る。
「しかし今日も暑いなー。ちょっと座って待っててくれ、飲み物出してくるから。イアンも座っててな」
「う、うん。ありがとう」
「はい」
僕とシャルさんはソファーにかける。
「しかし、シャルさんもすごいですね。わざわざここまで会いに来るなんて」
その瞬間、ブッフォ!と噴き出すシャルさん。顔を真っ赤にするシャルさん。
「なっなっなななにを!?」
「え?だって一夏さんに会いに来たんですよね?」
「べ、別にイアンに会いに来たわけじゃ……えっ?」
「えっ?」
「………ごめん。もっかい言ってくれる?」
なんか笑顔が怖いけどいいか。
「や、だから一夏さんに会いに来たんじゃ……」
その瞬間、笑顔で僕の首に腕を回して締め上げるシャルさん。い、痛いし顔に胸が……、
「ほんとぉーにイアンは歳上をからかうのが上手だね。僕、感心しちゃうなぁ」
「ご、ごめんなさい!え?でもなんで!?」
「わからないのかな?」
「ごめんなさい!そ、それと…あのっむ、胸が…顔に…」
「………へ?」
すぐに顔が赤くなるシャルさん。その瞬間、僕のことを突き飛ばして自分の胸を庇うように僕を睨むシャルさん。
「………イアンのえっち」
「な、なんで……!いやすいません……」
「ふんっ」
あー…完全に拗ねちゃったよ……。どうしよう……。
「ほいっ麦茶」
突然、僕とシャルさんの前に一夏さんが麦茶を置いた。
「? どうかしたのかシャルロット?」
「んーん。イアンが僕のことからかうもんだから」
「だから僕が何したって言うんですか!?」
「まだ分からないんだ」
ニッコリ微笑むシャルさんが怖い。
「あー…イアンは鈍感だからな。頑張れよシャルロット」
「それをあなたが言いますか。ていうか僕は割と敏感ですよ。神経質って姉ちゃんに言われたこともありますし」
「「そういう所だよ」」
2人に突っ込まれた。なんでだろう…分からん。なんてやってると、ピンポーンとインターホンがなった。
「宅配便か?」
一夏さんは玄関に向かった。
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で、そこにいたのは姉ちゃんだった。
「………………」
「………………」
「………………」
なにこの沈黙。
「お待たせ〜」
姉ちゃんの買ってきたケーキを運んでくる一夏さん。ケーキは四種類あった。おそらく、一夏さん、姉ちゃん、僕、織斑先生の分だったんだろう。
「どれがいい?セシリアが買ってきたんだし、セシリアから選べよ」
イチゴのショートケーキ、チーズケーキ、チョコレートケーキ、フルーツタルトの四つ。
「そ、そうですわね。では、わたくしはタルトをいただきます」
「ん、了解。シャルロットは?」
「僕より先にイアンが選びなよ」
「え?い、いいですよ。先にお二人が……」
「いいからいいから。歳下は甘えろよ」
一夏さんにまで言われ、チラッと姉ちゃんを見ると、ニコッと頷いた。
「じ、じゃあチョコレートケーキで」
「はいよ。………子供だな(小声)」
「聞こえてますよ」
と、一夏さんはチョコレートケーキを取ってくれた。で、シャルさんはショートケーキを取り、一夏さんはチーズケーキを取った。
「いただきます」
僕はさっそく一口食べる。
「わっ、これ美味しいですね!姉ちゃん、これどこで買ったの?」
「駅の地下街にある『リップ・トリック』ですわ。今日は運良く買えましたけど、相変わらずすごい人混みで大変でした」
ふぅーん。姉ちゃんって人混みとかあまり好きじゃなかった気がするんだけど…そんなに一夏さんと食べたかったのかなぁ。
「なぁ、せっかくだしちょっとずつ交換しようぜ。三人とも四つ食べれた方が嬉しいだろ?」
「えっ?そ、それは、その……」
「た、食べさせ合いっこ……みたいな?」
え?なんでわざわざそんなことする必要あるの?自分でテキトーにつまめばいいんじゃ……、
「おう」
一夏さんも何言ってんの?まぁ嫌じゃないけど……。
「じ、じゃあ一夏さんのケーキを……」
「僕はイアンのが欲しいなあ」
「えー嫌ですよ僕。チョコレートケーキが一番好きですもん」
その瞬間、ピシッと音を立てて固まるシャルさん。そして、姉ちゃんにゴミを見る目で見られ、一夏さんは呆れたように苦笑いしながらため息をついた。
「な、なんですか?」
「イアン…お前さ……」
「まったく愚弟が……」
「ならいいよ。僕、一夏のもらうから」
なぜか三人に思いっきり呆れられた。
「え、じゃあ…シャルさん食べます?」
その瞬間、世界が照らし出されるような笑顔でシャルさんは振り返った。
「いいの!?」
「は、はあ……」
「じゃあもらおうかな!」
言いながら口を開けるシャルさん。何がそんなに嬉しいのか分からんが、とりあえず口にチョコレートケーキを運んだ。
「あーん……」
「あっ、んむっ。美味しいねぇ」
やけにニッコニコしてるシャルさん。と、思ったらなぜか姉ちゃんまで口を開けていた。
「………なにしてんの」
「そ、その…わたくしも食べてあげてよろしくてよ?」
「嫌ならいいよ。僕は交換しなくてもいいし」
そのままチョコレートケーキを一口、食べようと思ったら後ろから叩かれて、フォークに刺さったケーキが鼻の穴に入った。
「ムゴッファ!い、いひかさん!ティッシュ!ティッシュ!」
「お、おう。はい」
で、ブッピィーと鼻をかむ。
「な、なにすんだよ!」
「ふん。愚弟が。いつか撃ち殺してやりますわ」
「ええぇ………」
僕が何したって言うんだ……。
「大丈夫?イアン」
シャルさんが優しく心配してくれる。
「だ、大丈夫です……」
「うんうん。よしよし」
「だ、だから子供扱いしないでくださいよ!」
なんてやってるうちにケーキを食べ終わってしまった。
「さて、これからどうする?うちってあんまり遊ぶ者なきし、外にでも出るか?」
「い、いえ!外は暑いですし、せっかくですから……あ、一夏さんの部屋を見せていただけません?」
「俺の部屋?見てどうすんだよ、そんなもん。ん、まあ、いいけどさ」
で、僕達は一夏さんの部屋へ。
「そんなに広い部屋じゃないが、どうぞ」
「お、お気遣いなく」
「お邪魔しまーす」
と、みんなで入室。僕はベッドに腰を掛けた。
「昨日はこのベッドで一夏と一緒に寝たんですよ。ね?」
「「は、はぁっ!?」」
顔を真っ赤にして過剰に反応する女子二人。
「あ、あぁ。イアンがどうしてもって言うからな……」
なぜか照れ臭そうに頬を掻く一夏さん。
「だって男の人と一緒に寝て見たかったから。僕、イギリスでもお泊まり会とかなかったし、そもそも男の子の友達少なかったし」
そう、別に女の子の友達が多かったとかじゃなくて、単に友達が少なかった。両親が亡くなった事もあって遠慮されていたんだろう。
「ね、ねえ…一夏とイアンってさ、」
「どんな関係ですの?」
なぜか緊迫した顔で聞いてくるシャルさんと姉ちゃん。
「どんなって……」
僕は答えに困った。同じ学年とはいえ、年齢の違う人と友達と言っていいのだろうか。しかし一夏さんは躊躇なく、
「友達だろ?」
と、答えてくれた。それが妙に嬉しかったり。
「だ、だからって一緒に寝たりするのかな……」
「そ、そうですわ!不健全じゃありません!?」
「だ、だからなにがだよ!」
僕は反論して、一夏さんの援護射撃を待った。だが、
「そうなんだよなぁ…こいつ無駄に可愛いから昨日、中々寝付けなかったんだよ……」
と、なにをボソボソ言ってるのか聞こえなかったがなんか言ってた。で、微妙な空気になった時、ピンポーンと音がした。
「ん?誰か来たのか。ちょっと行ってくる」
そのまま一夏さんは行ってしまった。その瞬間、僕は姉ちゃんとシャルさんにベッドに押し倒された。で、突き付けられるスターライトとヴェント。
「な、な、な、なに!?」
「イアン?聞きたいことは分かるよね?」
「一夏さんと、昨日の夜何かしました?」
二人が怖い。や、本当に目が据わってる。
「な、なにかって……ね、寝ただけ、ですけど……?」
「本当だね?」
「は、はい……ていうかベッドの中ですることって何が……あっ」
そうか、理解した。
「そ、そんなことするはずないじゃないですか!なんなの二人して!」
「ふん。変態な弟ですわね」
「イアンのえっち」
「変態でえっちなのはお前らだ!」
なんてやってると、一夏さんが上に上がってきた。
「三人ともきてくれ」
「「「えっ?」」」
言われるがまま下に行くと、いつものメンツが揃っていた。どういうことなの?