あれから二日。僕はシャルさんとラウラさんの部屋にいる。ベッドに突っ伏して。部屋に戻ると楯無さんがいるのでここにいるしかない。姉ちゃんの部屋だとナギさんいるし。嫌いじゃないけど慣れてない人だからなぁ。
「大丈夫?イアン」
「もうやだ……女の子怖い……」
素直にそう思った。
「あの、僕も女の子だよ?」
「私も怖いか?」
「ラウラさんは元々怖いです。少し」
「んなっ!おまっ……」
「ま、まぁまぁラウラ。それで、何があったのイアン?」
「もうダメです……ここ最近なんて一緒に寝かされてるし……」
「「んっ?」」
「それに昨日なんてお風呂にまで突入して来て…裸なのに擽られて……」
「「んんっ?」」
「もうやだ……」
「…………嫌なのはこっちだよ」
なぜかシャルさんは不機嫌だ。
「な、なんか怒ってます?」
「怒ってないよ?」
「いやでも…」
「怒ってないよ?」
なんかまたマズイこと言っちゃったかな……。
「とにかく、なんとかしてくださいよ……楯無さんと引き分けて以来、周りに人が集まって来るし……」
「イアンはもっと女の子の心を知るべきだね」
「へ?」
「そうだぞイアン。ここ最近、私の訓練にも付き合ってくれなくなったしな」
「うっ、それはすみません……」
なんか二人とも機嫌悪いなぁ……。
「とにかく、ここに少しだけいさせてもらえませんか?」
僕が聞くと、なぜか二人は顔を赤くする。「上目遣いはズルイよ……」なんてよくわからんことを小声で言うシャルさん。
「ま、まぁそれくらいなら構わん。なぁシャルロット?」
「う、うん。なんなら泊まっていってもいいし」
「そ、それは……」
いや楯無さんと一緒に寝るくらいならここにいた方がいいか。シャルさんとは同じ部屋で暮らしてたこともあるんだし。
「じ、じゃあ…お願いします」
「へ?本当に?」
「楯無さんと寝るのは嫌ですから。耳に息吹きかけて来ますし……」
「耳弱いの?」
「ち、違いますよ!その、力が入らなくなるだけで……」
「それを世間一般では弱いって言うんだよ?」
うっ、そうなのか?
「ま、ここにいなよ。それともお腹すいてるならご飯食べに行こうか?」
「もう寝ます……なんか疲れてるので……ラウラさん、ベッド借りますね」
「むっ?私のか?」
「身長が変わらない人と寝た方がお互いスペース取れるじゃないですか。嫌ならいいですけど……」
「そ、そうか。では、寝よう」
「待ってラウラ」
ガッと止めたのはシャルさん。
「ラウラは僕と一緒に寝ようね。男の子と女の子は一緒に寝るものじゃないよ」
「し、しかし……」
「寝ようね?」
ギリっとラウラさんは奥歯を噛み、渋々了承していた。
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学園祭当日。数人の女子生徒が一年一組にご入店。僕はそれを出迎えた。
「お、おかえりなさいませ…お嬢様……」
メイド服で。その瞬間、ほわあぁぁと顔を赤らめる生徒。
「か、可愛いー!イアンくん、だよね!?」
「は、はあ……」
結局メイド服を着ることになった。これなら蘭さん呼ばなきゃ良かったなぁ……。それと、一夏さんの執事服。それを目当てに来てる人が多く、一組の前はアリの行列のようになっている。僕は深くため息をついた。
「はぁ……」
「どうかしたの?イアン!」
僕の肩に手を置くのはシャルさん。さっきまで鼻血出てたけどどうしたんだろ。鼻くそ深追いするタイプのキャラじゃないしなぁ……。
「ご機嫌ですね……」
「そりゃあもう!」
ついさっき、僕がこの格好で「その…似合ってますね…」と言ったら鼻血出しながらこの調子である。
「きゃあー!イアンくーん!接待してー!」
「ほらイアン。お呼びだよ」
「は、はい。ただいま…」
「元気良く!」
あんたは僕の監督ですか。
「はーい☆ただいま」
マントルまで減り込んでいた元気を無理矢理引き上げて応対する。
「お待たせいたしました。お嬢様♪」
「おー来た来た。じゃあこのメイドにご褒美セットで」
「えっ」
「えっ?」
「あっいやなんでもございません。かっ、かしこまりましたお嬢様」
仕方ないので立ち上がって裏方へ。
「す、すいません……」
テキトーに声を掛けると、鷹月さんが出て来た。
「あら、どうしたのイアンちゃん」
「あの、その呼び方ほんと勘弁してもらえます?」
「あははっ、ごめんね。それでどうかした?」
「め、メイドにご褒美セット一つ……」
多分、今の僕は顔が真っ赤だろう。それでもやらなきゃいけないことがある。それが働くということだ。今、身をもって知った。
「はいはい。ちょっと待っててね」
鷹月さんが準備をしている中、待機してると携帯が震えた。蘭さんからメールのようだ。
『どこにいるの?』
あー…来ちゃったかー……。
『一年一組で仕事してます。来ても大丈夫だと思いますよ』
と、返事したところで僕の手元にポッキーの入ったグラスが運ばれた。
「じゃ、頑張ってね」
「は、はい……」
と、仕方なく仕事をして数分後、
「イアンく……イアンちゃん。ちょっといいかな?」
誰だかわからないけど多分二年生の人に呼び出された。ていうか、言い直した理由をすぐ様問い質したい。
「は、はい」
呼び出されて僕は付いて行くと、一夏さんが立っていた。それと楯無さん、篠ノ之さん、姉ちゃん、凰さん、シャルさん、ラウラさんのいつもの面子。
「私、新聞部の黛薫子です。それでね、写真を撮りたいんだけど…」
「絶対嫌です!」
こんな恥ずかしい格好を撮らせてたまるか!
「ま、まぁまぁイアン。写真くらいいいではありませんか」
「姉ちゃんに言われてもそれだけは嫌だ!」
と、言った瞬間、後ろから楯無さんに手を固められる。
「わがまま言っちゃう子はお仕置きかな〜?」
「い、いだだだ!でも嫌ですよ!ただでさえ恥ずかしいのに……!」
「ウルトラ兄弟変身アイテムセットでどうかな?」
「中身はベーターカプセル、ウルトラアイ、ウルトラリング、ウルトラバッチの四つですか?」
「レオリングも付けちゃう」
「撮りましょう」
やったぜ。僕、勝ち組。周りから生暖かい視線を感じるが無視。あー学園祭が終わった後が楽しみだなー。
そんなわけで、一枚目。姉ちゃん。
「姉ちゃん、姉弟で撮る必要あるの?うちにチェルシーさんいるんだから帰国したときにでも……」
「ダメですわ。せっかくですから今撮りましょう」
二枚目。ラウラさん。
「……なんか、僕たちの組だけ中学生の写真みたいですね」
「……どういう意味だ?」
「いや僕と身長変わらな…」
殴られた。
三枚目、シャルさん。
「なんか、どっちかっていうとシャルさんの方がお兄さんに見えますね」
「あー…でもそれじゃあ男同士でコスプレして写真撮ってるみたいだよ?」
「でもシャルさんみたいなお兄さん欲しいです。もちろん、お姉さんでも」
「お、奥さん、は……?」
「? 何か言いました?」
「な、なんでもない!」
四枚目。一夏さん。
「イアンくん、織斑くんの腕に腕を絡めて」
「「は?」」
「ほらほらいいから。せっかくだからいい物撮りたいもん」
黛さんに言われるがまま腕を絡ませる。
「一夏くん、手袋外して手に持って、イアンくんの腰に手を添えて、そう、OK」
で、パシャっと一枚。
「出来た!結婚写真!」
「そういうことか!」
「や、やめてくださいよ!」
「やめてもなにも、もう撮っちゃったもーん。はい、この写真欲しい人、一人500円ー!」
そのまま女子の群れは黛さんの方へ。意外に食い付かなかったのは専用機持ち。一夏さんの写真なら喰いつくと思ったんだけど……、
「で、貴様ら?」
言ったのは篠ノ之さん。なぜか日本刀を握る。周りの代表候補生たちも何故か武器を展開。
「貴様ら、まさか男同士でそういう関係なのか?」
「は、はぁ!?箒!お前本気でそれ言って……」
「そ、そんなわけないでしょう!僕がそんな……」
「問答無用!」
篠ノ之さんの号令で僕達は袋叩きにされた。