「えっ!?一夏の誕生日って今月なの!?」
「お、おう」
そのシャルさんの言葉に姉ちゃんの耳がピクッと動く。
「そうだったんだ〜おめでと……」
「そ、それはいつです!?」
ガタッと立ち上がって姉ちゃんはフォークを突き付ける。恋する姉ちゃんはステキだなぁ……。
「に、27だけど……」
「そ、そうですか…日曜日ですわね?」
「お、おう…日曜日だな……」
で、ブツブツと「日曜日、日曜日……」と、呟く姉ちゃん。日曜日…27、か……なにかプレゼント買いにいかないとなぁ。
「一夏さん、そういう大事なことはもっと早く教えてくださらないと困りますわ」
「え?そ、そうだな…」
「しかしセシリア。そのことを知ってて教えなかった奴もいるんだぞ」
そのラウラの言葉でバッと顔を背ける二人がいた。無論、幼なじみの二人だ。
「べ、別に隠していたわけではない!聞かれなかっただけだ!」
「そ、そうよそうよ!聞かなかったあんたらが悪いんでしょ!?」
うわあ……言ってることは正しいのに言い訳じみてるのが不思議だ……。
「と、とにかく!一夏さん、予定は空けておいて下さいな!」
「あ、ああ。一応、中学の時の友達が集まって祝ってくれることになってるんだが、いいか?」
「もちろん!」
そんなわけで、約束した。しかし、27か。あ、その日って、
「そういえば、その日ってキャノンボールファストの日ですよね」
僕がいうと、皆さんは思い出したような顔をする。
「そうだったな。明日から高機動調整を始めるんだよな?あれって具体的には何するんだ?」
「ふむ、基本的には高機動パッケージのインストールだが、お前の白式には無いだろう」
一夏さんの問いに、ラウラさんがプチトマトを頬張りながら答えた。
「それって、僕の秋桜も関係なかったり……」
「するね。その場合は駆動エネルギーの分配調整とか、各スラスターの出力調整とかかなぁ」
それにしても、高機動パッケージかぁ……。なんかパッケージっていう名前の響きがもうね、G-セルフみたいでカッコイイよね。僕の秋桜にもトリッキーパックとか欲しいなぁ…個人的にはリフレクターパックが好きです。
「でも、そうなるとセシリアとかが有利になるんじゃないか?ほら、確かナントカってパッケージあったよな」
「えぇ、ブルーティアーズにはストライクガンナーが搭載されておりますわ」
「なら今度超音速機動について教えてくれよ」
「……申し訳ありません。それはまた今度。ラウラさんにお願いしてくださいな」
………そっか。姉ちゃん焦ってるんだよなぁ。模擬戦の成績は上から僕、ラウラさん、シャルさん、凰さん、でその下に姉ちゃんと一夏さんと篠ノ之さんが並んでいる。僕はそういうのは余り気にしないが、プライドの高い姉ちゃんはそうはいかないんだろう。だから、いくら一夏さんの頼みでも、まずは自分をしっかりさせなきゃいけないと思ってるんだと思う。
「はあ………」
なんとかしてあげたいなぁ……。そんな事を思いつつ、ため息が出た。
「? どうかしたのイアン?」
心配そうにシャルさんに聞かれた。
「あ、いえ何でもないです」
「ていうか、有利っていうならあんたとイアンのも同じでしょうが。機動力おかしいのよあんたらの機体」
それを言うなら紅椿もだけどね、と付け加えた。
「そうだな。特にイアンのはおかしい。普通の生徒じゃ乗りこなせないぞあの機体は」
「へ?そ、そうなんですか?」
ラウラさんに言われてギョッとする。
「あぁ。と、いうかドンドン早くなっていっているだろう」
それを聞いて思い出した。束さんは僕の機体は使えば使うほど、僕の戦闘スタイルや癖を捉えて進化していくと。なるほど…だから毎回使いやすくなっていくのか。
「で、でも…僕なんかじゃなくてもラウラさんなら乗れるんじゃないですか?」
「どうだろうな。試してみないと分からん」
「試さなくても分かりますよ。だって僕でも乗れるんですよ?」
「……………」
言うと、なぜか微妙な空気になる。
「………たまにイアンのその謙遜さはイラっとくるな」
「えぇ!?っていうか謙遜なんてしてませんよ!」
「なら尚更ムカつくわね。あんた、言っとくけど相当強いのよ」
「生徒会長と引き分けたお前の言う台詞か」
ラウラさん、凰さん、篠ノ之さんと怒られた。
「な、なんかすいません……」
「そうだな。これから全力演習でもやるか。言っておくが、そろそろ私もお前の動きが掴めた頃だ。そう簡単にはやられんぞ」
ラウラさんが僕に言った。
「え?あ、いや…でも僕なんかより強い人と模擬戦した方が……」
「もうアレだなお前。ちょっと生身で殴り合うか?」
「ええっ!?」
ダメだ。これ以上、この話題は僕の命に関わる。
「そういえば、結局学園祭で僕達はどのクラブに入ることになったんですかね」
確か、学園祭の出し物で一、二番を取ったクラブに僕と一夏さんが引き渡される事になったはずだけど……、
「そうか。イアンは怪我してたから知らないのか。生徒会だよ」
一夏さんに言われて僕は「はっ?」と言った顔になる。
「ほら、イアンが誘拐されたこともあって生徒会の出し物が出来なかったんだよ。生徒会も一応、その争奪戦に参加してたから、これは不平等だのなんだのあったらしくて結果的に一時的に俺は生徒会に入ることになった」
「僕は?」
「お前まで生徒会に入れるわけにはいかないだろ。前まで毎日の様に楯無さんに虐められてたから俺が庇っておいたよ」
「い、一夏さん……大好きです!」
思わず姉ちゃんに抱き着く勢いで一夏さんにも抱き付いてしまった。
「お、おいおいイアン……」
困った顔をしつつも頭を撫でてくれた。そんな僕達をゴミを見る目で見る女子達。
「き、貴様ら…」
「男性同士で…」
「抱き合うとか…」
「気持ち悪いよ?」
「不健全だ」
な、なぜ……?
「それより、お前らは部活入ったのか?」
「私は最初から剣道部だ」
「ら、ラクロスよ」
「り、料理部……」
「英国が生んだスポーツ、テニス部ですわ」
「私は茶道部だ」
なんか、みんなそれぞれ似合わないなぁ……いや篠ノ之さんは似合い過ぎてるけど。
「ふーん…しかし、ラウラが茶道部か……」
「なんだ。何が言いたい織斑一夏」
「いや、ラウラの着物姿とか見てみたいなって。案外似合いそうだし」
「ふんっ。誰がお前になど見せるか。見せるなら…その、イ、イア……」
「へっくち!」
ヤバッ。鼻がムズムズして……。
「す、すみません…って、ラウラさん?フォークを握ってな、何を…どうして僕に向けて……や、やめて止めてやめて止めてやめっ……」
僕の悲鳴が食堂に響いた。ていうか最近、僕の悲鳴至る所で響き過ぎでしょ。