1発の銃弾があれば、何ができる?
1人を殺すか、1匹を殺すか、1つを壊す。そんなことしかできないだろう。多少工夫したところで、数字が変われど大きなことはできないように見える。
一見すると、とても小さなことしかできないように見えるだろう。
けれど、俺は思う。
1発の銃弾さえあれば、世界を変えれる。
だってそうだろう? その1発を放ったあとでは、どこか必ず世界の形は変わっているのだから……。
真っ暗な世界の中、その世界が揺れているのがわかる。
「おらー、起きろー!」
と、揺れる意識の中声が聞こえた。
鬱陶しいので、あえて無視しておく。
「とっとと……」
無視。無視。
「起きろぉー!」
と、次の瞬間真っ暗な世界が、真っ白な世界に変わる。
「ぬわあああ、目が、目がああああああ!?」
あまりの眩しさに俺は目を抑えてどこかの大佐が死に際にはなった言葉を真似しながら悶絶する。
「おはよう、目が覚めた?」
と、俺を揺らしていた声が俺に問いかけてくるが、眩しくて見えない。だが、声とテンションだけでわかる。というより、間違えようがない。
「目が見えんが、絶対香織だろう、お前!」
「だいせいかーい。目が見えないのによくわかったね、超能力? SSR(超能力捜査研究科)に転科できるんじゃないの?」
「声とテンションと奇天烈な行動で丸分かりだよ!」
「おぉ、ってことは探偵科(インケスタ)に行ける?」
「行かねーよ!」
そろりそろりと瞼を隠していた手を退けつつ、俺をたたき起こしたアマ……辻 香織を睨みつける。
「おー、怖い怖い。コースケ、そんな顔してたらシワが増えちゃうよー?」
「増やす原因を作ったのは誰だろうな……」
「さー、誰だろうねー」
と、額に手のひらをあてて遠くを見るポーズをして明後日のほうを向く香織。
ため息をつきながら現状を整理する。
俺の名前は斎藤康介。東京武偵高校の強襲科(アサルト)の2年生だ。ランクはAだが、自分がそこにいる意味がわからない。てっきりDかEだと思っていたのだが、勝手にランク付けがAになっていた。
で、俺の目の前でぶりっ子を演じているように見えるのが辻 香織。俺と同じく強襲科(アサルト)のAランクで、現在俺のパーティメンバーであり、小学時代の幼馴染だ。ついでに、この性格は幼馴染だからこそ分かるが、素だ。
「で、なんで朝からこんなふうに起こしに来てるんだ?」
「幼馴染だから?」
「なぜ疑問系なんだ……」
「昨日のアニメで、胸張って言ってたもん。あの目は嘘言ってないと思うよ、私!」
さて、こんなやつなのである。
「あー、うん、わかった。とりあえず着替えるから出てけ」
「はーい。じゃあご飯作っておくねー」
「おぅ」
ついでに、香織はあの性格ながらも料理ができる。それもかなりだ。
香織が俺の部屋から出ていくのを確認してから、俺は空いているベッドの淵に乱雑に掛けてある東京武偵高校の防弾制服を手に取った。
香織が作ってくれた朝食は食パンを基本とした洋風ブレックファストだった。それを口に放り込みながら、テレビを見る。
『……尚、この件に対して●●議員は……』
「議員の金の無駄使いか……。やっぱ、この国っていろいろ腐りかけてるな……」
「コースケ、そんなこと言っちゃダメだよ」
と、真正面に座って頬杖を2本突いていた香織がそう言いながら俺の方を少し怒ったような顔で見るので「すまん」とだけ謝った。が、
「日本じゃなくて、議員達が腐ってるんだよ」
予想の斜め上を行く酷さである。しかも、腐り『かけ』ではなく、断定してる分余計にタチが悪い。
「ま、まぁ、お前がそう思うならそうなんだろうな……」
「うん、その通りなんだよ。私の中では」
「と、ごちそうさまでした」
「はい、おそまつさまでしたー」
俺は自分の使った食器を流し台に持っていく。
「あ、洗い物は私がやっておくねー」
「ん、すまんな」
「それより早く準備しないと遅刻するよ?」
「まぁ、そうだな」
時間は余裕がないわけではないが、用意をしていたらちょうどいい時間になるだろう。
自分の部屋に戻り、机の上に置いてあるホルスターを腰と左の横腹のあたりに装着し、ナイフ……というよりは、ナイフよりほんの少し長い短刀を背中に付け、一緒に置いてあるラーマM82を腰のホルスターに入れる。
ラーマM82は、ベレッタのコピー銃だ。スライドがフルカバーになっており、ベレッタの特徴である飛び出た銃身もなくなっている。また、銃杷の形も少し独特なものになっている。
それと、もう一丁。
ステンレスのフレーム、木製のハンドガードとグリップ。普通のハンドガンにはつくはずのないスコープ。ハンドガンにしては長い銃身。
シングルショットピストル、フリーダムアームズM2008。
銃身の取替により、あらゆる弾丸を使用可能な単発式中折れ拳銃である。
ついでに、ハンドガンとしては驚きの308Win弾が使用可能な強力な『拳銃』である。かなり長く、携帯性に欠けるのが難点だが。
それを横腹についたホルスターに入れて、上着を着る。
机に立てかけてあったカバンを持ってリビングに戻ると、香織がテレビをつけたまま居眠りをしていた。
「まったく、慣れてもないのに早起きをするからだ……」
一緒に朝食を食べなかったところをみると、先に食べてきたのだろう。そして、俺を起こしに来る余裕があるのだから、起きた時間はかなり早くになるだろう。
俺は苦笑しながら、香織の肩を掴んで揺らす。
「ほら、起きないと遅刻するぞ?」
「んぅ……あと1日」
「ベタなネタだが、あえて乗らないぞ? そのまま行くぞ?」
「いってらっしゃぁーい……」
俺はまたため息をついて、部屋をあとにした。
「さて、今日も1日がんば……るのは面倒だからダラっと過ごすか。うん」
今日も、1日がはじまる。