毎度のごとく、誤字脱字誤変換がひどそうです。指摘してくれると嬉しいなぁなんて…。
戦妹申請をしてきたのは俺の後輩、一年生・強襲科の長谷川 紗友里(はせがわ さゆり)という少女らしい。武偵校には珍しく、そこそこ常識があり、銃よりもまずは言葉から、その次にナイフ。と言った少女らしい。2番目にナイフという選択に違和感はあるだろうが、1番目に言葉というだけで武偵校では常識人と同格になる。
香織と面識があったらしく、香織のことを始めに話し始め、そこから矢継ぎ早に話を独自に展開し、俺が口を挟む機会は殆どなかった。
話の内容を要約すれば、ずっと戦妹になりたかったです。お願いです、コレ(フリーダムアームズM2008)買うから、戦妹にしてください。
だそうだ。会話が何度も蛇行運転を繰り返したのでその辺りは省かせてもらう。
が、俺としては至極面倒なので、
「断る。他をあたってくれ」
と言っておいた。が、それで納得するわけもなく、
「チャンスを下さい」
と言ってくる。ここで無理難題をふっかければ何も問題なく戦妹申請は拒否され、何もなかったことになる。
しかし、自分の良心がそれを許さず「後日条件を出すから、それまで待て」の一言で無理やり押さえ込んだ。
本人としてはチャンスが与えられたことによる嬉しさで跳び回っていたが、俺としては睡眠時間を削ってテスト内容を考えなければならないので億劫であった。
その日の授業もそこそこに終え、任務で少しの間どこかに行ってくる香織を見送った後、部屋に戻った俺はベッドの上で考え事をしていた。言うまでもなく、紗友里のテストのことだった。
「さて、どうすっかなぁ」
模擬戦は俺としては断固断る。負ければ下負けという汚名がつく。それのおかげで周りの目が払拭される可能性はあるが、低い上に更に他から挑まれる可能性も高くなる。何より、模擬戦自体が疲れる。
競技をするにしても、対等な条件は持っている銃くらいだ。
自分の腕前を過信するつもりは無いが、紗友里の射撃の成績を大樹に調べさせたところ、香織といい勝負をしそうな腕前だったのは把握している。そして、香織と同じように近接特化らしい。
なので、競技をする方向に考えるにしても対等な条件が思い浮かばない。
「もう面倒だし、ぎりぎりムリゲにすればいいだろう」
と、俺は投げやりに大雑把な方針を立て、眠りについた。
次の日の放課後、俺は紗友里と屋外射撃場に来ていた。
「今から俺と射撃競技で勝負してもらう。距離は50mでだ」
「しゃ、射撃……ですか」
と、不安そうな顔をするので、
「安心しろ、俺自身に幾つかのペナルティを課す。それがお前に対するハンデだ。まず1つ、俺は立射、ワンハンドに限定する。これで3発だ」
「え、えーと、りっしゃ? ワンハンド?」
と、初めて聞く言葉のような反応をしているので、俺は頭を抱えた。
なぜこんなアホの子がよりにもよってこの銃を買ってしまったのか。
「立ったまま、片手で撃つって意味だよ」
「あぁ、ナルホド!」
と手のひらに拳をポンと当てているのを見ると、意味は理解できたようだ。
「お前は好きな様に撃て。立っても寝転んでもいい。片手でも両手でも構わん。それで5発だ」
「それで的に当てた数の勝負ですか?」
「お前、あのターゲットが見えないのか?」
と俺が少し遠くに見える、神埼との勝負にも使ったサークルターゲットを指さす。
「面白いですよね、円の中に円がある的って」
「……」
もう何も言うまい。
「ともかく、あの的の真ん中、一番小さな円めがけて撃て。それが一番得点になる。真ん中で10点、全部当てれば俺が30、お前が50点だ。真ん中から外れれば外れるほど点数が下がるからな?」
「的に当たらなかったら何点ですか?」
もうそろそろ俺の精神が限界になりそうだが、この辺りをちゃんとしておかないと後々面倒になる。
「……おまえは外れた問題に点数をあげるのか?」
「途中経過によります」
「1+1を3と答えた奴には?」
「バツ印をあげます」
「そういうことだ」
「要は0点ですね」
「その通りだ。ついでに、的の線上に当たったらどっちにより入っているかで決める。もし曖昧な場合は低い方で判断する」
ルールの説明としてはこれくらいか。
「先に言っておくが、ボーダーラインは30点だ」
「先輩、全部10点満点ですか?」
「予言とかそんなのは嫌いだし、自分がそういうことを言うつもりはないが、俺はそのつもりで自分に3発と決めた」
俺がそう言うと、気を引き締めるように気を付けし
「わかりました!」
と元気よく紗友里が返事をした。
さて、俺も先日のように心を乱して外すなんてことはするつもりはないが、下手に手をブレさせれば当然外れる。特に、クリードモアポジションを使えないとなると3発でも反動で手の感覚が狂うのだ。
「それじゃあ、俺が先に撃たせてもらっていいか?」
「はい! お手本として見させてもらいますね!」
と、そう言って「じーっ」と自分の口で効果音を出しながらこちらを見つめてくる。
少し鬱陶しいが、こういう妨害も武偵ならではだろう。あるいは、香織のように素なのかもしれない。
俺はふぅと軽く息を吐き、目標を見据える。先日と違うのは、立射であること。それだけだ。
フリーダムアームズM2008をゆっくりと持ち上げ、狙いをつける。そして、ある程度狙いが付いたところで息を大きく吸い、吐いていく。それを、もう少しで吐ききると言う前で止め、更に細かく狙いをつける。
30メートル程度であればここまでする必要はないが、50メートルの立射であればこれくらいしないと難しい。いくら体制が崩れても当てれるとはいえ、手ブレがないわけではない。手ブレを最小限にして撃つしか無いのだ。
そうして付けた狙いを逸らさぬように引き金を絞る。
経験と感触で撃鉄が落ちる瞬間を見極め、最後に少しだけ強く絞り込む。
引き金は引くものではなく絞るものだと、香織に偉そうに高説されたこともあったが、その意味は今ではよく理解している。
引こうと意識すると、どうしても狙いが逸れた。それを、自然に握るように、絞るような感覚で引き金を引いてみると、狙いが逸れにくくなった。下手に口で説明するよりも、自分で実感することができた教訓だ。
そうして発射された弾丸は、サークルターゲットのど真ん中に着弾した。
それを見て後ろの紗友里は「おーっ!」と驚いた声を出しているが、この程度の狙いをつけれなければ武偵としての射撃技術は絶望的だと思っている。
その調子で3発を淡々と撃つ。
腕の感覚が軽くおかしくなったが、痛みを伴うこともなく、的もすべて10点に入っていた。
その紙を紗友里に見せて、
「これが、お前の目指すものだ」
と言ってやる。紗友里はそれを見て喉を鳴らすように唾を飲み込むが、その目はまだやる気に満ちていた。
「やってみせろ。そうすりゃ、面倒くらいは見てやる」
と投げやりに言うと、
「頑張ります!」
そう言ってレーンに入っていった。
そこまでして、俺の戦妹になりたい理由がわからない。そんなに憧れる理由がわからない。その後姿を見て俺はなんとも言えない感情を抱いた。
なれない手つきで薬室に弾を放り込み、慎重に閉じる彼女を後ろから見てから俺は周りを見る。
俺が神崎に勝ってしまったせいもあって、ギャラリーが集まっていたようだ。いくら射撃に集中していたからとはいえ、さすがに不用心すぎた。その周囲から3発を確実に当てたことに関して囁く声が聞こえる。
「あの銃を使えば当てれて当たり前だろう……」
「仕方ないといえ、あんな勝負をふっかけられた神崎も気の毒だな」
さて、一つ補足しておこう。この武偵高校の噂の真偽がわかる速度は速いが、やはり尾ひれがついていくのも仕方のない事だ。今言っていたとおり神崎が勝負を『ふっかけられた』ことになっているが、実際は俺が『ふっかけられた』側で被害者だ。だが、コレについてはよくあることだろう。痴漢をしていないのに犯人に仕立てあげられる被害者なんかも、一昔前のアッパクのせいで自分が犯人だと言わざるをえない状態にさせられたり。警察も武偵もそのあたりは大差ないのだ。
さて、調子はどうだろうと紗友里の方を見ると彼女のすぐ横の台にはまだ銃弾が2発残されていて、そしてすぐに発砲音が聞こえたところだった。
制服のポケットに入れてある望遠鏡で的を見てみると……
「うわぁ……」
思わず声が出るほどに酷かった。
3点ゾーンに1発、枠外に1発。おそらく奇跡だったのだろう、8点ゾーンに1発。3発撃って合計11点。ここから2発ともを10点ゾーン……つまりど真ん中に当てなければ彼女は俺の戦妹にはなれない。俺としては嬉しいことだ。
だが……
「……」
どうしてだろう、言いようの無い気分の悪さが胸元で渦巻く。
「ど……どうしよう……」
彼女が小さな声でそう言いつつ、震える手で空薬莢を取り出し、新たな308winを薬室に放り込もうとする。
「だぁ、もう……仕方ねぇな……」
面倒だと思いつつ、こんな言葉が口を突く。
「……え?」
若干涙目の紗友里がこっちを見てくるが、構わずにその腕を抑え、言う。
「緊張するなとは言わねぇけどさ、落ち着きな」
「は……はいぃ」
消え入りそうな声で返事をした彼女を見て俺はため息をつく。
「次、撃たずに構えるだけ構えてみろ。絶対撃つな」
「は、はい!」
そう言って、薬室に308winを放り込み、ゆっくりと閉じた彼女は銃をほぼ目の前に持って行き、なるべく近くでスコープを覗こうとする。おかげで脇は開き、持ち方もよく手首をひねらなかったなと言いたくなるような持ち方になっていた。足元に目をやると、パンチューだった頃の女子が会話をするときのような、揃えてるようで揃えない気を付けの姿勢のようだった。
「おい」
「ふぁい!?」
「銃を一旦降下ろせ」
「は、はい!」
さっきからこいつハイしか言ってないような気がするが、気にしない。
「脚は的を正面から見るようにして肩幅に開け。腕はまだ下ろしたままだぞ」
俺が言うと、今度はコクコクと首を縦に振り、言われたとおりに的に向かって肩幅に足を広げる。
俺が内心で思ったことを感じ取ったのか? エスパーじゃあるまいし、顔色でも伺ったのだろうか。
とりあえず、もう少し教えないとこいつはどうも気になる。
「そのまま自然と腕を上げろ。顔には近づけず、ただそのまま持ちあげるだけでいい。スコープが遠くて慣れないだろうが慣れろ。遠いスコープのレンズの中に的が映ったら手を止めろ」
「こ、こうですか?」
とまだ揺れる腕で俺に問いかけてくるが、こっちを見てこない。大方スコープの向こうの的を見るのに必死なんだろう。
「そーだ。さぁ、撃つまであと1歩だ。3回深呼吸しろ」
俺が言うと、紗友里が息を大きく吸いて吐いてとを始める。それを2回繰り返したところで俺はまた言う。
「もう一回息を吸って、8割吐き出して止めろ。そこで狙いを定めろ。雑念は捨てろ、無駄なことは考えるな。狙うものと引き金のことを考えろ。狙うものが真ん中に来たら引き金を絞れ。引くんじゃない、絞れ」
と、矢継ぎ早に言うと、紗友里はもう一回息を吸って、吐き出す。そして、止めた。
「撃ちたいときに撃て」
「……っ!」
4度目の乾いた発砲音が響く。
跳ね上がった腕と、彼女の顔が驚きに変わるのがほぼ同時だった。
「どうだ?」
「あ、当たりましたよ! 真ん中ですよ、先輩!」
「当ててもらわなきゃ困る。さぁ、同じようにやってみろ」
「はい!」
そう言った彼女の目に、もう揺らぎはなかった。
結果として、30対31で俺の負けだった。ハンデをあれだけやってこの点数だったことに驚きだったが、それ以上に最後の1発も10点を当てるとは思っていなかった。コツを教えたといえ、そうそう簡単な話じゃない。だからこそ、射撃というのは難しい。それを、10点を2連続で当ててきた。
(運がいいのか、それとも、スジがいいのか。何にしても)
「おめでとう。クソッタレ、今日からお前は俺の戦妹だ」
そう言って俺はパッチを紗友里に投げやった。
あ、待ってない? デスヨネー。
と、ともかく、本当にぼちぼちと投稿していきますのでゆっくりと、キリンよりも首を長くして待ってもらえると嬉しいです。