One's Ammo.   作:鳳圭介

3 / 14
テスト期間は指が進むなぁ、アハハハ……。はぁ。


射撃練習

「なんで蹴られたんだ俺は。しかも2回も」

 と、顔面に靴の跡をのこしたまま太樹は不満げに呟いた。が、1回目はともかく、2回目はだれがどう考えても太樹が悪いと思う。が、それを言うのも野暮なので、

「気にしたら負けだ」

 と返しておく。

 ついでに、蹴り飛ばした当の本人である香織は結構ある胸(実はスタイルがいい)を張りながら、

「いやー、なんだか言われちゃいけないことを言われそうになったから、記憶消去、あわよくば抹殺。最悪口止めさえできればと思って」

 さらっとひどいことを言っていた。

「やっぱ納得いかねぇなぁ……」

 そんな不憫な太樹の肩を叩いて俺は言う。

「世の中な、どうしようもない不条理で溢れかえってるんだよ……」

「康介……。あぁ、そうだよな。こんなことに負けてちゃあお先真っ暗だよな!」

「てなわけでちょっとコーヒー買ってきてくれないか?」

「ちょっと待て」

「なにか問題でもあるか?」

「大アリだよ! なんで俺が買いに行かなくちゃいけないんだよ!」

「まぁまぁ、怒るなよ。金は出すからさ」

 俺は財布から10円玉を出して太樹に見せる。

「待て、桁が足りない。材質が違うし……」

「大丈夫、10円玉の方が制作費用的な意味で価値は高いから」

 俺が爽やかに親指を立てて言っても、太樹は納得しないようだ。そこに香織が、

「コースケ!」

 叱るように俺の名前を呼ぶ。少し驚いて俺がそっちを見ると、その顔が少し怒っているのがわかる。

「おぉ、香織様、俺を助けてくれますか……!」

 と、太樹が女神を見たように穏やかな顔になる。が、

「うん、助けてあげるよっ! 代わりにポカ●スエットおごってー」

 この女、ぶりっ子なのか悪魔なのかもはやわからない。

 太樹は穏やかな顔でそのまま固まる。

「いじりすぎたかな?」

「いじりすぎたのかもねー」

 そして、どんどんとうずくまり、肩を震えさせ始めた。

「泣いた……のか?」

「泣いちゃったね」

 香織の中では太樹は既に大泣きしているようだ。

 そんな馬鹿げた会話をしていると、太樹が急に立ち上がり、そのまま「うわあああああん、覚えてろよおおおおおおお!」と、悪役が吐きそうな言葉を残して教室の外へ消えていった。

 それを見て担任は「太樹は遅刻っと」と言いながら出席簿にペンを入れていた。

 

 その後、HRが終わってすぐに太樹が帰ってきた。手には缶コーヒーと500mlペットボトルに入ったポカ●スエットが握られていて、不機嫌そうにそれを渡してきた。その姿があまりに可哀想だったので、俺と香織の分に追加100円を渡したら「今度からもいろいろ頼み事してくれよ、康介!」と機嫌を取り戻していた。コイツの中では友人は金で買えるのだろうかと疑問に思ったが口には出さなかった。

 ついでに、香織はそんなやりとりを見もせずにポカ●スエットを一気飲みしていた。

 

 さて、その日の授業も特に何もないまま5限目が終わった。

 武偵高校では5限目以降は自由履修となっており、その時間俺は大抵0.1単位のクエストをやるか、射撃レーンに篭る。

 そして、今日も今日とて射撃練習をするために、強襲科棟の射撃場に来ていた。

 強襲科の奴らは大抵が近接戦闘関連か基礎体力作りに励んでいるため、射撃レーンはいつも人が多くもなく少なくもない状態である。

 発砲音が響き渡る射撃場の中、ピンク髪と茶髪の身長の小さい2人が一緒にレーンに入っていた。

 ピンク髪の方は見覚えがある。転入してきたSランク武偵、神崎・H・アリアだ。あの身長とあの手の小ささでガバメントを2丁振り回す姿は、1度だけ見たことがあるが手からすっぽ抜けそうでヒヤヒヤした。

 そして、もう1人は神崎のアミカの間宮あかりだ。Eランク武偵ながらも、神崎からワッペンを奪ったと一時話題になった。

 そのあかりがマイクロUZIを構えて、それに対して神崎が怒鳴っているのを見ると、射撃指導でもしているのだろう。

 が、あかりの放つ弾丸はターゲットどころか的にすらなかなか当たらない。

(まぁ、マイクロUZIのストック無しは保持も難しいだろうし、エイムもつけにくいだろう。あそこまで外れるのは珍しいが)

 そして、そのままそのレーンを通過しようと思った。が、

(……?)

 マイクロUZIの左側面、CALという口径を表す英語の後に『6mm』と書いてある。いや、見えにくいが少なくとも9mmではない。おおい目に見ても、削れたといっても『8mm』にしか見えない。

(……あれ、9パラじゃないのか?)

 数度目をこすって見ても、変わらない。あくまでも6mmだ。

(……見なかったことにしよう)

 俺はそう思いながら、そのレーンを通過した。その時に神崎がこっちを見た気がしたが、気のせいだと自分を納得させておいた。

 

 さて、レーンに入ってから何分経っただろうか。ラーマM82から感じる9パラの反動が腕に慣れながらも、倦怠感を覚え始めた。

「……ふぅ」と一息吐いて、上げていた腕を下ろす。

 スライドオープンしたラーマM82に新たな弾倉を入れてスライドストップを下ろす。それと共にスライドが締まり、新たな弾丸が薬室に放り込まれる。セーフティレバーを下ろすと、同時にハンマーが軽い金属音を鳴らして落ち、デコックされる。ラーマM82はベレッタM92Fと同じくセーフティがデコッキングレバーを兼用しているのだ。

 ラーマM82をホルスターに戻しイヤーマフを外す。

 そのまま後ろを向くと、

「……」

 神崎が腕を組んで俺の方をじっと見ていた。

「……えっと」

「あんた……」

 俺が何か用かを聞こうとした瞬間に神崎は口を開く。

「何者?」

「は?」

「片手撃ちにしてもだらしない姿勢、やる気なさ気なそんな状態で撃って当たり前のようにターゲットの真ん中に飛んでいくなんて普通じゃないわ」

 俺の撃ち方は、特殊だ。

 俺自身が堅苦しいのが苦手なので、よほどのことがない限り、あるいは気が向かない限りちゃんと構えて撃つことはない。

「あー、うん。人っていうのは『慣れる』生き物だ。何も不思議ないんじゃないか?」

「……」

「それに、強襲科の上の方のやつならこれくらいできるだろう。な?」

 神崎は話を聞いているのか聞いていないのか、腕を組んで目を閉じている。

「あー、えーっと、人に見られると気になるから、出来たら戻って欲しいんだが……」

「あんた」

「はい?」

 神崎が急に目と口を開いた。今度は一体何を言われるのか、心の中で身構えていると、予想外な。そして最も面倒なことを言われた。おそらく、この1週間で一番めんどうなことだっただろう。

「私と射撃で勝負しなさい」

 Sランク対Aランク。勝負は目に見えてる。そうだろう?




 日本語を間違えるって、恥ずかしいよね……(遠い目)
 ついでに、あかりのマイクロUZIが本当に6mmかどうかは別として、刻印が6mmだったのは本当です。詳しくは『緋弾のアリアAA』の2巻を参照。1ページだけ、ページの都合的に見えにくい場所に刻印が見えるマイクロUZIがあります。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。