One's Ammo.   作:鳳圭介

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Freedom Arms M2008(改)

「君も大変だね」

 そう言いながら笑うのは、昨日の電話の相手である篠山柑那だ。

 そして、場所も装備科の中の個人スペース……部屋で銃器の点検・修理・改造などをするためのガンスミスのための工房だ。

 広さは1辺4mほどのほぼ正方形でゆとりのあるスペース。部屋に入って正面に、壁から壁までの大きな机があり、その上にディスプレイやら工具、本など、銃をいじる上で必要なものからそうでないものまでいろいろとのっている。その前に椅子がひとつ置かれ、そこに篠山柑那がこっちを向いて座っている。

「『も』じゃなくて『は』じゃないのか? お前の場合は」

「これでも色々と忙しいんだよ」

「へーへー、そうですかい」

 クラスメイトから必死に逃走し、なんとかこの部屋にたどり着いた俺は、事の次第を簡単に説明し、冒頭に至るわけだ。

「で、俺に用ってなんだ?」

「M2008に関してだよ。昨日の会話の時点で分かっていただろう? ほら、早く出すんだ」

 手のひらをこっちに向けてクイクイしてくるのを見て、俺はなんとも言いにくいため息をつきながら懐からM2008を出す。

 それを受け取った柑那は周りを一通り見たあと、薬室を開き、そこから銃身を覗き込み、満足そうに微笑む。

「相変わらず、手入れはちゃんとしているようだな」

「構造が簡単なだけに、楽にできるからな。ラーマM82のついで程度に出来る」

「じゃあ、少し借りるよ」

 そう言って、柑那は作業台の方に椅子を回転させた。

「なるべく早くしてくれよ。外が面倒なことになるのは避けたいんでね」

 クラスメイトを撒いてきたつもりでも、相手は同じ武偵校の生徒。尾行や盗聴なんかもお手の物だろう。

「ところで……」

 作業台に向かいながら柑那が俺に問いかける。

「神崎さんとの勝負はどうなったんだ?」

「お前も噂か……。どっちだっていいだろう」

 俺が吐き捨てるように言うと、彼女は興味をなくしたように「ふーん」と適当なあいずちを打って静かになった。

 

 数分後……。

 戻ってきたM2008の銃身長は短くなり、先端部分にいくつもの小さな穴の空いたものになっていた。銃身を切った音も穴を開けるような音もしなかったので、おそらく、銃身自体を換装したのだろう。そして、グリップの部分も自分の手の合う形になり、少し分厚くなっていた。

「……いつの間に取り寄せてた?」

「M2008を渡した、その日に準備は出来てたんだよ。手の大きさを測り、ガスポート付きの12inの223rem仕様のバレルをオーダーメイドする準備もね」

「これ、223remなのか」

「そうだよ」

 今まで使っていた308winよりも一回り小さい弾丸だ。ついでに、308winは7.62mmNATO弾、223remは5.56mmNATO弾である。

 ついでに、223remと5.56mmNATO弾は正確に言うならば、薬莢の分厚さの若干の違いがあるそうだ。

「俺は308winしか持ってないんだが?」

「新しく223remを買えばいいだろう」

「じゃあ、今まで使ってた308win弾をどうすればいいんだ?」

 俺の疑問に柑那はにやりと笑い、

「一応取っておくといい」

 とだけ言った。

「ところで、このバレルを実際に頼んだのは?」

「4ヶ月前」

「なるほど」

 俺がこのM2008をもらったのは、かれこれ半年前だ。彼女の書いているGun誌の特集で取り上げられていた時に、一目ぼれしてしまった結果、貯金と生活費を限界まで削ぎ落とし、射撃練習の時間を一切なくし、単位と金が多くもらえる少し良い仕事を入れて、なんとか買ったものだ。

 そして、引渡しの際にここに来たのだが、その時に紙に鉛筆で手の形に沿うように描く、型取りのようなことを簡単にしたのだ。

 銃身が短くなったのは、俺が受け取った時に「想像以上に長いな……」と軽く愚痴ったせいだろう。そして、反動が大きすぎることも彼女も知っていたのだろう。

「で、なんでそんなことしてくれたんだ?」

「君以外に買ってくれる人がいないんだよ……」

「そりゃそうだろうな……」

 武偵校の生徒はシングルショットピストルなんかよりも、得体もしれない化物銃の方へカスタムさせるので、精度もわざわざこんなものに頼らずとも問題ないと言い出すのだ。威力に関しても同じような意見で魔改造させている。

 装備科の奇人変人はどうやってあんな改造をしているのか、俺の頭でも理解できるように原稿用紙2枚にまとめて書いて提出して頂きたい。色々と参考にできそうだ。

「で、金は? 最近は少し余裕があるとは言え、オーダーメイドの品は高いんだろう? ローンでもいい――」

「それには及ばない」

「うん?」

「君が学園で宣伝するのを条件に、この2つをタダにしてくれるそうだ」

「……宣伝って、まさか」

「神崎さんに勝ったって言うなら、それがいい宣伝じゃないか」

「いやな、今の世の中、大会とかでなるべく人の多い中で勝たなきゃ、いい宣伝にはならないんじゃないか?」

「それもそうだな……。なら、これから宣伝すればいい」

 俺はその場で頭を抱えた。

 あぁ、面倒だ。と、ただそう思った。

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