デート・ア・ライブ error bugs 作:warabe
2015年4月5日、加筆しました。
2015年6月28日、「四年前」を「昨年」に変更。
第一話 機械仕掛けの神への異物混入
とある日の天宮市。ここは空間震なる災害が多発する日本の街である。
それは空間がまるでそこを巨大なスプーンで抉ったかのように消滅する現象であり、空間の地震というよりシンクホールといった方がいいくらい甚大な被害をもたらす災害だ。その発生は突発的であり、その詳しいメカニズムも未だ不明。超常の存在が起こしているものだという説もあるが定かではない。
昨年も天宮市は大規模な空間震によって引き起こされた大火災でその大部分を焼き尽くされており、そのため街の建造物のほとんどは大火災後に建て直された新築である。かつては十数年かけて行われる大規模な復興作業は、人類が空間震に対抗すべく造り上げた
そんな災害に屈せず活気にあふれる天宮市を一望できる高台の上。学校の昼休みを告げるチャイムをBGMに、高台のベンチに座った青年が街を眺めていた。彼の手には企業案内のパンフレットが握られており、スーツ姿をしていることから就職活動中だと見て取れる。パンフレットの誌面には「デウス・エクス・マキナ社」、「アースガルド・エレクトロニクス」という名前が見受けられる。どちらも顕現装置製造の大手であり、特に「デウス・エクス・マキナ社」、通称「DEM」は世界各国の国家機関の使用する顕現装置のほとんどを提供しているトップ企業だ。
「どうすっかな就職先。――
黒い髪をガシガシとかきながら青年がぼやく。彼は大学で修めたばかりの、顕現装置を開発するための技術を早く生かしたがっていた。ただし、それにはいくつか克服しなければならない問題点がある。
「オレは人体実験がしたいけど普通の企業じゃそんなの間違いなく無理・・・・・・というか社会的に殺される。特にアースガルドはそういうの滅茶苦茶うるさいから却下。逆にDEMはそういうことに関する黒い噂が絶えないから有望株かな」
人間をモルモットにしたいという青年の異常な願望はさておき、彼の言っていることは色々と穴だらけである。
一つ、あくまでも噂は噂。二つ、仮にそれが本当のことであったならば、入社する前に「君は知り過ぎたんだよ・・・・・・」と口封じに葬られて犠牲者の仲間入りだ。そもそも入社試験の面接官といった下部の人間はそのような事実自体、知らないであろう可能性は高い。正攻法で入社した上で、会社の暗部に所属する人間に接触できるまで機会を待つのが無難だろう。
もっとも青年としてはそんな気はまったく無い。普通に就職して成果を上げ、社内で認めてもらえるまでには相当の時間がかかる。そんな面倒なステップを踏むほど彼は気が長くないし待ちきれないのだ。研究方針そのものは大学時代にとっくにまとめてあり、設備と素材さえそろえばすぐにでも実行に移せる。――内容は人体実験上等なブラックすぎる代物であるためまだ日の目を見てはいないが。
ちなみに大学の卒業論文には『顕現装置を用いた新たな料理の可能性』というメルヘンで無難なものを提出した。その功績でイグ・ノーベル賞と賞金の1億ジン〇ブエドルを得たのは余談。
「あ~、かのサー・アイザック・レイ・ペラム・ウェストコット卿がたまたま用があって、この街に来ていたりしないかねぇ? そしたら直接、オレ自身を売りこむんだが」
サー・アイザック・レイ・ペラム・ウェストコット。DEM者の創設者にしてCEO。世界各地で発生する空間震に対処するのに必要不可欠な
「きっとオレなんか足元にも及ばないバケモノ、または天才なのだろうな。一度でいいから会って話してみたいところだ!イヤッハー!」
アポを入れたり面接したりとか全部すっとばして結果を得たいというものぐさ根性丸出しで青年は叫ぶ。近くを通りがかったサラリーマンとか子連れの主婦とかが不審者を見る目でいるのは気にならないほどに、彼の気分はハイになっていた。春先なのが彼のただでさえオカシイ頭の具合を悪化させたかどうかは定かではない。
「随分と私を持ち上げるんだな君は」
「当たり前だ! あのDEMのCEO様とか、
青年が顔を上げると、いつからそこにいたのだろうか、30代ほどの西洋人男性が目の前に立っていた。その銀髪の男は底が見えないような暗い目を青年に向け、流暢な日本語で話しかける。
「君がバケモノまたは天才であると称したアイザック・レイ・ペラム・ウェストコットだ。なにやら私の名を叫んでいるのが聞こえたのでね、立ち寄ってみたのだが。――私になんの用かな?」
「え、ご本人? このオーラは只者じゃないから、きっと本物、うん違いない! ――ミスター・ウェストコット、オレをDEMに雇ってください! 物騒な武器大量に作って人体実験がしたいんです!」
「いきなり穏やかではないね。 DEMに犯罪行為に手を染めろと? キミの発言は常軌を逸した狂人のソレだ」
人間を実験材料にして消費したいという非人道的な発言に対する、常識的な返答だったが、それでも青年に引き下がる様子はない。
「身内にも言われましたねぇ。でも気になるんです、やってみたいんです、知りたいんです! 科学の発展には犠牲はつきものってね。全否定する前に、一目でもオレの考えた武器の草案を見てくれませんかミスター?」
「エレン」
「はい、アイク」
青年はウェストコットに近づこうとしたが、ウェストコットに呼びかけに応じて現れた少女によってその歩みは強制的に停止させられた。
「身の程をわきまえなさい狂人。それ以上近づけば斬り捨てます」
金糸のような髪をした少女が構えた剣の切っ先を青年の首に突き付けている。彼女は
「やっぱり現れたねエレン・
「私を呼ぶための挑発であったと? 命乞いにしては陳腐ですね」
「いや、当事者は全員居た方がいいと思ってね? 役者が揃ったところで改めて言いましょう。――オレをDEMに雇えミスター・ウェストコット。オレの造る武器は、凡人にも
青年が言った言葉にウェストコットとエレンの目つきが変わった。なぜなら「精霊」という言葉は彼らにとって特別な意味を持つものだからだ。
「答えなさい、何をどこまで知っているのです? 言わなければその首が落ちることになりますよ」
ウェストコットの目配せに応えるようにエレンは手に持った剣、レイザーブレイドを青年の首元に当てた。これは顕現装置の魔力を刃のカタチに生成する武器であり、その切れ味は青年が少しでも妙な動きをすればすぐにでもその首を落とせる。場合によっては指や目鼻を少しずつそぎ落として拷問に使うことも可能だ。しかし青年は自分の首筋からほんの数ミリしか離れていない死神の鎌に怖気づくことなく、興奮気味にまくしたてた。
「精霊についてはASTなる組織のデータベースをハッキングしたときに知った。顕現装置を使用した兵器を扱っている連中が何にその武力を用いているのかが気になってね。
そしたらその目的は、精霊とかいう少女の格好をしたUMAとの戦闘行動だというじゃないか! しかもそいつらは複数種類確認されていて、原因不明と言われていた空間震を引き起こしている超常の生物! オレの武器をぶっ放すのに丁度いい相手だと思わないか!?」
AST(Anti Sprit Team)は空間震を引き起こす生きた災厄である精霊を討伐するための自衛隊所属の組織である。そして彼らが扱う顕現装置、CR-ユニットのほとんどをDEMが供給している関係上、ASTにはDEMから出向している人員もかなりいる。それはさておき青年のマシンガントークはまだ止まない。
「何よりも、DEM社の精霊に対する姿勢があまりにもアグレッシブだったのに興味を持った。撃退してオシマイではなくその先、まるで捕まえた後で解剖実験でもしたいかのようだ!
ことのついででDEM社のほうにも不正アクセスして武器の情報をいただいたんだが、人体実験のデータが山ほど一緒に出てきたのには驚いたね! 被験体は全員行方不明扱い、今週も3人ほど廃人になったんだろ?
ちなみにハッキングはセキュリティホールが多くて楽勝だったので、システムの全面的見直しをお勧めする。――オレの話はこんなところかな?」
青年の喋りはまるで決壊した堤防からなだれ込む瀑布のごとく。途中からレイザーブレイドが強めに首へと当てられ、刃が食い込んだところから出血しているが、気にも留めていない。今は自分のやったことを自慢する子供のような無邪気さと、自分の命の危機すらどうでも良いかのように何かへ執着する狂気とが混在した眼で二人の反応を窺っていた。その生気を感じさせない昏い眼に何かを感じたウェストコットは青年に問いかける。
「少し君に興味がわいたな。名前を聞かせてもらおうか」
「オレは
紅坂円錐が名乗りと同時に宣言したのは精霊と呼ばれる、超自然的存在の模倣とそれによる世界改変。奇しくも精霊の力を利用して世界を変えんとしているウェストコットたちの目的に沿った内容だった。
「思い上がりも甚だしいですね。
少しコチラ側の情報を持っているからと言って何様のつもりですか?」
「ぐ、アイタタ!?」
声に怒気を滲ませてエレンはレイザーブレイドで円錐と名乗った青年の傷口を抉る。口だけではなんとでも言えるのだ。今のところエレンにとって円錐はDEMの機密情報を盗み出して優越感に浸っている薄汚いクラッカーでしかない。よって信用することもなければ突きつけている刃を収めることもない。
「信じてもらえないのは当然だし、想定内。というわけで1週間かけてオレを試してみないか? それで価値なしと判断したなら、煮るなり焼くなり好きにすればいい」
「ふざけているのならば、今すぐにでもその首を刎ねて差し上げましょう」
「首の前にこの情報端末を差し出そうミス・メイザース。これには既存の武装の改良案とその図面やデータ、およびオレが作りたいと考えている武装の企画書が入っている。
それと今月実験で廃人にして廃棄予定の魔術師を2~3人寄こせ。一週間かけてそいつらを実戦投入できる人間兵器として改造してみせるからそれで見極めろ。お眼鏡にかなわないなら首を吹っ飛ばすなり煮るなり焼くなり何なりと」
円錐は怯むどころかさらに自分を売り込む。首からの出血がさらに酷くなっていたが、円錐の胸ポケットにしまわれていた小型
「っ、何を!?」
直ちにエレンは円錐の胸ポケットを切り裂き、起動したそれを破壊。そしてその残骸を見やって瞠目した。
「これは顕現装置!?
ここまで小型化されたものは市販には流通していないはず・・・・・・!!」
「フレームからパーツ一つ一つに至るまですべてが自作の代物だ。少しはオレの話の信憑性が上がったか、最強の魔術師さん?」
円錐はこともなげに言ってのけたが、顕現装置は一番コンパクトなタイプでも背中に背負うようなサイズであり、まして医療用のものともなると部屋1つ占拠するようなサイズになってしまう。とてもではないが携帯端末には収まらない。バズーカ砲を威力や性能はそのままにシャーペンサイズにしてしまったような暴挙。はっきりいってありえなかった。
「面白そうじゃないかエレン。やらせてみるとしよう」
「アイクッ!?」
思わず咎めるような声を出してしまうエレンを余所に、ウェストコットは円錐の方を向いて笑った。
群を抜いているであろう技術、死が目前に迫っても平然と返す胆力、そして目的のためならば手段を選ばないであろう狂気。紅坂円錐の見せたそれらの特徴はウェストコットの好むものであり、当人が提案したように試してみる価値は十分にありそうであった。だから。
「紅坂円錐、キミの能力を試させてもらおう。私とエレンが満足のいく結果をキミが出せないのであれば・・・・・・」
そこまで言ってウェストコットは円錐を見る。円錐は笑って返した。
「オレは喜んで死ぬし、実験材料にされようとも拷問されようとも笑って受けいれよう。紅坂円錐は貴方達を退屈させないことを約束する」
~~~~~~~~~
1週間後、DEM社日本支部の地下研究室に軟禁される形で招かれていた円錐は、譲り受けていた廃棄予定の魔術師3人を遠隔操作可能な人間爆弾へと加工してのけていた。
全身への魔力処理により、顕現装置を稼働させるのに最適化された魔術師たちは、改造前の10倍もの魔力出力が出せるようになった。強大な力を得た代償に自我は崩壊、余命も持って数時間、しかも命が尽きる時はその魔力を暴走させて辺り一帯を焼き焦がす業火を放つようになっている。なんともふざけたことに円錐はこの人間爆弾を「
人間爆弾と化した3人の魔術師たちのデータが映し出されたモニターを前にウェストコットと円錐は愉しそうに談笑している。
「君の提出した兵器の改良案はいずれも素晴らしいモノだったと言わせてもらおう。それと、早速これを精霊相手に試してみようと思う」
「へぇ、精霊が出てきているんですかCEO? 研究室に缶詰なんで気づかなかったですね。さしずめDEMの周りを嗅ぎまわっているシリアルキラーの精霊《ナイトメア》とか?」
「その通り。この精霊はエレンが何度か殺害しているのだが、またいくらでも出現するのが特徴でね。――的にはうってつけだろう?」
「そりゃあいいですね。精霊さんに花火をお見せしましょうか!」
人間爆弾3体はいくら殺してもまた現れるという精霊《ナイトメア》に対して放たれ、出現していたその精霊ごと自爆でもって灰燼に帰せしめた。廃人確定であった凡百の魔術師が一時とはいえ精霊をも殺せる力を手に入れることができる技術力。それを証明して見せた紅坂円錐のDEMへの入社はすんなりと決まり、前任を押しのけて兵器開発部門の部長へと抜擢された。ちなみに円錐が入社してから社内の行方不明者数が急増したようである。
<原作が始まるまであと4年>
ナイトメア「何ですのアレは!? 魔術師たちが目、鼻、口から大量の血を流しながら突っ込んできたと思ったら自爆しましたわ! ――分身体のわたくしでなかったら、死んでいましたわね」
デート・ア・ライブのSSでDEM側のオリ主ってあまりいない。
だったら自分でと思って書き出してみたが、最初のこれしか書けてない!
更新は遅めになると思います。