「じゃんけんぽん」
「あっち向いて……ほい」
「甘いね私。あっち向いてほい」
「私の手はお見通し……あっち向いて……」
今、この私……夢幻は目の前にいる夢月とあっち向いてほいをやっている。お姉様は少し離れたところから寝転がってこの奇妙な光景を眺めていた。
これの始まりは三十分ほど前に遡る……
「起きて夢月。ちょっと聞きたいことがあるの」
「まだ眠い……」
「起きなさい!!」
「うひゃあ!?」
「全く寝坊助なんだから……それでこれは何?」
私より先に起きた幻月は突然私を叩き起こした。なんだなんだと重い瞼を開けて幻月が指差しているところをみると、そこには正座をしている私がいた。
「お姉様……何これ?」
「それは私のセリフよ。私が寝ている間に何やってるのよ」
「私……知らない……」
私とお姉様が困惑している中、もう一人の私は無表情でこちらにヒラヒラと手を振っている。自分であるはずなのに何故かそれを見ているととても腹が立つ。
私がジロジロ見ていると、それはいきなり立ち上がってその場でクルクル回り始めた。
「ねえ夢月。こいつ絶対やばいよ」
「私も……怖い」
「壊す?」
お姉様とヒソヒソと話していると、お姉様は右手を突き出した。その手には何か力が集まっているのかバチバチと火花が散ってた。
「……待ってお姉様。私……これを色々調べたい」
「夢月がそう言うなら私はここで見てるわよ」
右手から火花が消えるとお姉様はその場にゴロンと寝転んだ。お姉様が何をしようとしていたかも気になるけれど、それよりもクルクル回っているこいつはよくよく考えてみたら生まれ変わる前の私と顔の感じが変わっていない事の方が気になった。
「お姉様。私とこれって瓜二つ……?」
「この私でも違いが見当たらないほどそっくりよ」
ここには鏡が無いから分からなかったけれども、どうやら私は身体だけが変化しているだけなんだと言う事が分かった。それはそれで安心できるけれど、これが何かを突き止めた方が良いかも。だから私はとりあえずこれに近づいてコンタクトを取る事にした。
「……貴女は誰?」
「私は……夢月」
「夢月は私」
「じゃあ私も夢月」
私が話しかけるとそれはピタッと回るのをやめて返答をした。話し方と言い私のたまに相手から目線を外す癖まで同じところを見るとこれは私が無意識のうちに作った分身なんじゃないかと思い始めた。
「貴女も夢月なら……あっち向いてほいをやりましょ」
「私……負けない」
ふと思いついたあっち向いてほいなら私と同じ考えをしているか分かるんじゃない?と言うことで私達はあっち向いてほいを始めたのだ。
そして今に至る……本当に同じ考えをしているのか一度も勝負が決まらない。この光景に飽きてきたお姉様の貧乏ゆすりの音が少しずつ大きくなっていくからそろそろ何かを言い出すかもしれない。
「ねえ夢月。そう言えばどっちが本物だっけ?」
お姉様はニヤニヤしながらサラッととんでもない爆弾を投下した。あまりにもいきなりの事だったからじゃんけんをしていた私達は目を見開いて見つめあっていた。
「お姉様私が本物。こいつは偽物」
「違う……私が本物。これが偽物」
先手を打たれた!と心の中では絶叫をしていた。なんとかして自分が本物だと証明をしたいけれど、それをできないのが歯痒い。
何か良い案が無いかなと考えているともう一人の私はいきなり私にビンタをしてきた。
「偽物は……殺す」
「……なら殺される訳にはいかない。私が本物だもの」
そのまま私達は子供の喧嘩みたいに取っ組み合いを始めた。必死にポカポカ叩き合ってる間、お姉様がお腹を抱えて大爆笑している声がこの空間に響いていた。一瞬「あれ?どっちが本物だっけ?」とか聞こえた気がしたけれど気の所為に違いない。お姉様はしばらく唸っていると、何かを思いついたのか両手を谷間の無い胸の前で叩いたので私達はお姉様に目線を移した。
「はい注目!!どっちが本物?」
「私が本物……」
「だから私が夢月……」
「じゃあ……どっちが偽物?」
「これが偽物」
「違う。こいつが偽物」
お姉様はよく意味が分からない質問をすると納得するかのように頷いていた。そしてにっこり笑って私の前に立つと、お姉様はもう一人の私の鳩尾に蹴りを放った。
お姉様の突然の行動に驚いて声を出せないでいると、お姉様は私の頬に優しく右手を添えた。
「貴女が私の妹の夢月よ」
「どうして……そう思ったの?」
「夢月ってもう一人の自分に対して「これ」って言ってたでしょ?でももう一人の夢月は「こいつ」って言ってたから貴女が本物なんじゃないかなーって思ったの」
「……それだけ?」
「それだけ」
お姉様はニコニコしているけれど私は冷や汗をかいていた。諸悪の権化であるお姉様のこれっぽっちも反省しようともしない姿を見ているとムッとしてきたから、私はお姉様のほっぺを両手で摘まんでムニムニし始めた。
「お姉様が余計な事を言わなければ……」
「ひはい!ひはい!はやまるはらほのへをはなひへ!」
「全く……」
「私が初めて作った子を壊そうとするなんて貴女達酷いわね」
お姉様の瞳に涙が溜まっていたからやめてあげようとした瞬間に背後から謎の女性の声が響いた。殺気も感じた私はほぼ反射的に振り返ろうとすると……後ろから胸を揉まれていた。
なんか自分の書いたものに違和感がある……アドバイスなど頂けると嬉しいです