白い服を着て肩までかかる長さで癖が強い水色の髪の毛を持つ私は大きな城の一室の扉の前で背中に生えた小さな羽をパタパタさせながら座っていた。時折部屋の中から聞こえる私の母の怒鳴り声が聞こえてくるから扉に耳を当ててみるけれど、会話の内容がよく聞き取れないからため息をつく。
「あっ!やっと見つけた!」
「……何処に行ってたのユキ」
「マイの後ろを追いかけてた筈なんだけど気がついたら一人になってた!」
この全く自分が悪いとすら思っていないのか私の目の前で堂々と仁王立ちをしている金髪で黒い帽子に黒い服を身に纏った少女はユキ。周りからは私のパートナーとか思われているけれど、実際は彼女が勝手についてきているだけで私はそんな彼女が苦手だ。
「ねえマイ。ここってなんなの?」
「……知らないでついてきたの?」
「神綺も夢子も何か言ってたのは覚えているけど忘れたの!」
「この単細胞……」
「なんか言った?」
「……?私……何も言ってない」
ユキは笑顔で「気のせいか!」って言ってる姿を見て、また私はため息をつく。どうせすぐに忘れるでしょうと思いながらも私は口を開く。
「……ここは夢幻世界。私達が普段生活している魔法の世界、魔界のベースになった場所。そしてこのお城は夢幻世界を作り上げた幻月と夢月が生活している。ここまで分かる?」
「え?あーうん分かる分かる」
「それで私は母さんが幻月と夢月に会いに行くって言うから夢子とボディーガードって事でついてきたの。分かった?」
「うん。さっぱり分からない」
「つまり貴女はいらない子」
「なるほど!私はいらない子か!!」
心の中で馬鹿と言いながらデコピンをすると、背中の扉がすごい勢いで開いた。驚いて振り向くと、部屋の中から赤い衣を着た白銀の髪のぼんっきゅっぼん……私達の母、神綺が顔を真っ赤にしてとても怒った表情で出てきた。一体中で何があったのやらと部屋の中を覗いてみると、そこにはなかなか理解し難い光景が広がっていた。
「やめて夢子……今幽香が寝てる……」
「たまにしか会えないからいいでしょ?それに……私をこんな風に変えたのは夢月なんだから……」
「幽香は私が預かるから、お二人さん寝室で楽しんでらっしゃい」
「助けてよお姉様ぁ〜!」
「お姉様から許可を頂いし、いっぱい愛し合いましょ」
そこでは緑色の髪の赤ちゃんを背負った青いメイド服に白いエプロンをしたなかなかグラマーな金髪の女性が赤いメイド服を着た夢子に頬をキスされており、そばで天使の羽が生えた白いワイシャツを着た女性が苦笑いをしながら赤ちゃんを回収している場面が繰り広げられていた。夢子がグラマーな女性を寝室と思われる部屋に連れていくのをポカーンとしながら見ていると、ワイシャツの女性が私に近付いてきた。
「貴女……魔人?」
「……そうだけど……貴女は?」
「私は幻月。名前くらいは聞いた事があるんじゃないかしら?」
私は幻月の質問に首を縦に振って頷くと、彼女はいきなりニンマリとし始めた。
「……なに?」
「貴女って昔の夢月にそっくりで懐かしいなーって。せっかくだから名前を聞かせて頂戴」
「私は……」
「ユキ!私はユキ!!」
「何その子?」
「はぁ……私のイソギンチャクだから気にしないで」
私が自分の名を名乗ろうとした瞬間、ユキはいきなり私の背中からひょっこり顔を出した。すると幻月は何が面白いのか私を指差して笑い始めた。
「……次は何?」
「ふふふっ……イソギンチャク……腰巾着じゃなくてイソギンチャク……」
「あっ……わ、私はマイだから……」
「あっ!!待ってよマイ!!」
「今度は二人でゆっくりしに来なさい……って聞いてないか。なんか私と夢月に似てるけど、あのおっぱい魔神……狙って作ったのかしら」
自分が相手を馬鹿にした言葉を間違えていることを笑われた私は顔を両手で隠して先に行った母さんの元へ走って行った。母さんの元に着くと流石に落ち着いていたのか私は普段通りの表情を装って母さんの顔色を伺った。
「どうして……怒っているの……?」
「聞いてよマイちゃん!!最近魔界に法界とか訳がわからない物ができて困っている事を愚痴りに来たのに夢子ちゃんと夢月ちゃんが……きーっ!!あのたわわなドリームおっぱいを揉みたい!!」
「そ、そうなんだ」
戦争が始まるのかちょっと不安になりながら聞いた私が馬鹿だったと後悔した。噂に聞いた事はあったけど、これがプライベートモードの時にだけ見れるおっぱい魔神か……
「マイちゃん!貴女も夢月ちゃん並みのおっぱいに育ちなさい!」
「そ、そう言えば夢子と夢月……さん?ってどんな関係なの……?」
「あの二人……私が知らないうちに子供を作るなんて……」
「子供!?」
女同士で子供って一体どうなっているんだろう……それよりも普段見ない母さんと凛とした夢子の姿を見れて今日はすごく楽しかった。
しかし私は数年後、あの時少し見た赤ちゃんにボッコボコにされるとは微塵も思いもしなかった。