オチは考えてはいるのですが、文章にするのが時間がかかってしまいます…(S16)
「最近元気が無いように見えるけど、何か悩み事かな?」
いつも通り提督の前に座ると、心配そうに尋ねてくる。顔には出さないように努めてはいたのだが、隠しきれてはいなかったらしい。
「いや、別に…」
ついつい口ごもってしまうが、これでは肯定をしてしまっているようなものだ。
「何か思う所があるなら、遠慮なく言ってくれるといいよ。もっとも、出撃がしたいだなんて言われても困るけど…」
安心させようと、わざと茶化しているのだろう。言いながら、ニッコリと微笑んで見せる。その笑顔には、球磨姉たちとはまた違った安心感があった。
「別に、大したことでは無いのだけど…」
気を許してしまっているのか、話してしまおうとしている自分が少し悔しい。
「提督は…、その、友達の秘密を知ってしまった時…。しかもそれが後悔をするぐらい重い内容だったとしたら、どうします?」
的を得ない、曖昧な質問であることは百も承知ではあるが、それでも尋ねずにはいられなかった。あの日記さえ読まなければ…。何度も忘れようと努力をしたのだが、その度に生々しい記憶が蘇ってしまう。
「もしかして…北上さんの事なのかな?」
その言葉に、思わずドキリとしてしまった。北上さんとは同じ部屋でいるため、ある程度は予想がつくことなのかもしれないが、こうもあっさりと見破られてしまうとは思っていなかった。
俺の反応を見て確信したらしく、提督が続ける。
「北上さんとは、普段どんな会話をするのかな?」
もう少し切り込んだ質問を覚悟していた俺は、少し面食らってしまった。
「普段…ですか?」
何気ない質問であることに違いはないのだが、改めて尋ねられると返答に困ってしまう。
「そうですね…。普段は料理の事や部屋の掃除の事とか…」
「日常的な会話が多いんだ」
「はい。やはり、ルームメイトですから。いつもどんな会話をしているかというのは、あんまり気にしたことが無いです」
「そうなんだ…。確かに、ルームメイトだからね」
提督がうんうんと頷いて見せる。
「でも、俺はもう少し気を遣うべきだったんです。魔が差してしまって…。それで、日記を盗み見たりなんかして…」
「北上さんの…、日記を?」
「はい…。それで、その内容に勝手に驚いて、落ち込んで…。最低ですね、俺って…」
すっかり打ち明けてしまい、気が緩んでしまったためか、涙がこぼれそうになってしまう。俺が落ち着くのをたっぷりと待ってくれた後、提督が続ける。
「北上さんは君にとって大切な人…、なんだよね?」
俺は黙って頷く。
「だったら、その内容を受け入れてしまっても良いと思う。確かに、人の日記を勝手に見てしまうのは良く無い事だ。その上、勝手に幻滅をしているんだからたちが悪い。だけどそれでも、相手の嫌な事を知った上でも、その人が大切だと思えるのであれば、その気持ちこそ大事にするべきだと私は思うよ」
確かに提督の言葉には一理ある。日記の内容に驚きはしたものの、嫌悪感をありありと抱いたわけではない。しかし、全てを許容してしまえるほどあの内容は軽いものでは無かったのだ。
「ありがとうございます、提督」
自然と感謝の言葉が口に出ていた。問題が解決したわけではないのだが、やはり話を聞いてくれるだけでも気が楽になるものだ。
「礼には及ばないよ。君たちの悩みを聞いてあげるのも、僕の仕事だからね」
提督もこれで問題が解決するとは考えてはいないだろう。しかし、親身になって対応をしてくれるところが本当にありがたかった。
「ところで…」
俺が席を立とうとすると、提督が思い出したように言う。
「口調が少し戻ってきたようだね。良い兆候だよ」
嬉しそうに、微笑んで見せた。