ドラゴンボールの最新映画見ました。面白いです。たまにはあの作品のように設定だのなんだのめちゃくちゃにして、欲望まみれの小説でも書きたいですね。
って……何でドラゴンボールの話してんだろ……。更新遅れました、ではどうぞ!
「ーーーつまり、まだはっきりした事はわかっていないということだな」
紅莉栖の報告を聞いた俺はそのように締め括った。紅莉栖も苦虫を潰したような顔をして、首肯し、付け加える。
「そうね。新しい、それもナーヴギアと同質なフルダイブマシンが開発されたっていう逃げの結論しか手が出ない。まあ、中にいる私たちでは、どうやっても解明できないから、そうするしかないわけだけれど」
紅莉栖は溜め息と共に補足を閉じた。
紅莉栖の説明によると、ナーヴギアの異常ではなく、何者かが故意に俺の脳にそのような感覚を送りつけたらしい。今すぐそいつを取っ捕まえて尋問したいが、誰であるのかは、中にいる俺たちでは特定不可能だ。スーパーハカーであるダルも、お手上げだろう。
ただ、ナーヴギアと何かを繋いで感覚を送りつけるにしても疑問が残る。恐らく俺の本当の体は、秋葉原の病院のベッドに横たわっている。そして俺を運び出したのはきっとミスターブラウンだろう。ということから、俺の見舞いにこれるのは、両親とミスターブラウンだけだ。もしくはーーー。
「……ミスターブラウンの、関係者か」
「突然どうしたのよ、岡部」
唐突に俺が呟いたので、紅莉栖は驚いた。短くすまんといって、訳を説明した。
「いや、もし故意に俺に何かをした奴がいるとすれば、の話だ」
「で、なんで店長さんが絡んでくるのよ」
「俺達は、今病院にいる。恐らくだが、俺たちの見舞いにこれるのは家族か、運び出したであろうミスターブラウンだけだ。だが、同伴という形ならば、他の奴だってここにこれるわけだ。だとしたら考えられるのは、ミスターブラウンとその関係者、だろうな」
その関係者、というのも実は見当がついている。ラウンダーだ。このシュタインズゲート世界線に存在しているかは不明だが、可能性はぬぐえない。SERNのハッキングも止めたし、奴等に恨まれる理由はないにせよ、人間思わぬところで危険が迫っているものである。いい例として、まゆりの死がある。
無論俺の居場所を突き止めて関係者を偽って何かをしたということもありうる。でも、だとしても解決にはならない。今は、真偽が怪しくても前提として加えなくてはいけない。
「関係者? ブラウン管の商売のお仲間とか? あり得ないわね。科学者でもあるまいし」
「……」
ミスターブラウンの、SERNの素顔をお前は知っているのか?
そう言いたいが、リーディングシュタイナーを発現させているのは俺だけだ。紅莉栖は、SERNをいまだに素晴らしい研究企業だと思っている。いくら紅莉栖が俺にリーディングシュタイナーを持っていると知っていても、俺の話を鼻っから信じないことだけはしなくても、この過去だけは、話したくない。鮮血が散り、涙を流しながら斃れていく彼女の友人の姿だけは。
「……でも、あんたのその関係者の話はありかもしれないわ」
「というと?」
「科学者よ。それも、私の」
失念していた。紅莉栖は天才科学者だ。脳科学に関係する知識を持っている奴など、紅莉栖の周辺にごろごろいるだろう。だったら、紅莉栖の知人ですと偽って俺へと手を触れた可能性だってある。
でも、疑問はあった。
「なるほどな。俺と紅莉栖が知り合いであることは、研究者たちには知られているのか?」
紅莉栖は即座にまあねと答えた。俺は唸った。これで完全に詰まった。
重たい空気が流れるなか、それをぶち破るように、大きなノック音が響く。少々荒々しいノックだ。誰だかは大方予想がつく。俺は勢いよくドアを開けた。
「何のようだスーパーハカー?」
「よく僕だってわかったな」
間抜けな声と共に、部屋が巨体を招き入れた。ダルは部屋の中にどすどすと入り込むと俺のベッドに座り込んだ。みしっとヒビが入るような音がしたのは気のせいであってほしい。
「勝手に俺のベッドに座るな」
「オカリンと牧瀬氏が過ごした熱い夜の痕跡を探しているだけなのだぜ」
「な、何言ってんのよこのHENTAI!!」
紅莉栖は赤らめながら叫んだが、俺にはそんなのはどうでもよかった。いや、どうでもよく感じるほどに、余裕がなくなっている、というべきかもしれない。
「お前は何しに来たんだ?」
俺はダルに尋ねた。ダルは肩を落として右手を後頭部に回してボリボリと書きながら口を開く。
「いや昨日オカリンがさ、ぶっ倒れたじゃん。んで、ずっと部屋から出てこないからどうしたんかな、って思っただけだお。ま、それに二人でなんか難しそうな話してたし面白そうだったからさ」
「いや待て。部屋での会話は一切聞こえないわよ?」
「聞き耳スキルだ。あれを使えばドア越しでも声が聞こえるのだ」
紅莉栖の疑問には、代わりに俺が答えた。紅莉栖はじろっとダルを睨み、今にも狩り殺そうとする勢いだったが、それから逃れるようにダルはあたふたとさせながら言い訳を言った。
「いや、オカリンずっと何やってんのかなとか思ってやってみただけで、別にやましい目的でやった訳じゃないお」
「他のラボメンにはやってないでしょうね?」
殺意のこもった声音にダルはびびり、もちろんしていないおとブンブン頭を振った。因みに、俺はダルがこっそりとフェイリスの部屋にて盗聴していたことを知っている。ただ、死んでもらっては困るので黙っておこうか。いや、いっそ死んだ方がまともなやつになるかもしれない。
いや、黙っておこう。あのHENTAI脳を治すには絶好の機会なのだが、今俺は壁にぶち当たっている。謎の不可解現象についてダルなら何か知っているかもしれない。
紅莉栖はなおも疑いの目をダルに向けていたが、やがて短く息を吐き捨てて追随を諦めた。
「……まあいいわ。で、話の続きだけどあんた全部聞いていたの?」
紅莉栖の問いにダルは頭をかきながら唸る。
「うーん……僕熟練度低いからさ、はっきりとは聞こえないけど、何の話をしているかは分かったお。オカリンがぶっ倒れた原因のことだよね?」
そうと、紅莉栖は短く首肯する。ダルはいつもの無気力な顔のまま続ける。
「それで牧瀬氏は……何だっけな、新しいマシンができて、それをオカリンに注入したとか、誰かが故意にやったとか、そういうこと言ってたよね?」
紅莉栖は再び首を降る。するとダルは、ちょっと疑問ありげな表情をした。
「でもさ、新しいマシンじゃなくてもそれできるんじゃね? ナーヴギアの改造さえできれば、改造パッチとかを入れ込めば可能だお」
「ダルよ、改造とかすれば俺は死ぬぞ?」
ナーヴギアを分解した瞬間、強烈な電磁波が俺の脳を蒸し焼きにしてしまうと、茅場がチュートリアルで言っていた。よって、改造パッチを埋め込むには分解しなくてはいけない。
しかしダルは即座に返した。
「そりゃあ破壊すれば脳もチンだお。でも、ナーヴギアの接続部分のコードを利用すればいいんだお」
「コードだと? だが、たしか接続口は一つしかなかったはずだが」
ダルは、はあと露骨なため息を吐いた。少しイラッとしたが顔には出さず、ダルの説明を待った。
「よく思い出してみなよ。茅場は10分間の停電ならば死なないって言ってたじゃん。バッテリーがあるからね。どういうことか分かる?」
「つまりコードを切っても、10分間なら動くってことね」
「そゆこと。ということはつまり、何らかの違法な機械をナーヴギアに接続してオカリンに痛覚をぶちこんだってこと。まあ確証はないけど、少なくとも現実性はあるお。痛覚を与えことなんてナーヴギアだって改造すれば出来なくはないらしいし、パッチくらいは余裕で作れる。僕だって材料さえあれば簡単にできるお。素人には無理だし、普通だったら意味ないものだからあんまり作られてないけど」
俺は息を飲んだ。ダルの話を否定する気はない。反論する気もない。でも、こんなことが本当にやってのけるのだろうか。というか、本当にそんなことが出来るのか。余りにも話が大きすぎて、恐怖がわかない。今自分の話をされているのにも関わらず、他人事のようにしか思えない。
「……でも、一体誰がそんなことをしたのよ。岡部はバカだけど、恨まれるようなことをしたことはーーー」
紅莉栖は途中で切った。続いて、顔を青ざめて一つのフレーズを、わななく口で発した。
「パパ……」
俺は目を見開いた。ヒヤッとした冷寒が全身を覆う。ちらつくナイフの鋭さ、ドロッとした赤い血、燃えたぎる殺意。思い出したくもない過去の一つだ。
パパ、つまり紅莉栖の父親であるドクター中鉢こと、牧瀬章一のあの光悦な表情は忘れない。
確かに恨まれることはした。いや、したと思う。
中鉢はイロモノ科学者とレッテルを張られているのに対し、紅莉栖は天才呼ばわりされている。それに腹をたてて、嫉妬した中鉢は紅莉栖を絞め殺そうとしたが、それを俺が止めて、挑発し、まんまと乗って俺の腹にナイフを刺した。そのせいで、奴は殺人未遂でロシアにて拘束されている。もしその事がきっかけで俺に何かしたというならば、それは完全な逆恨みだ。まさに、狂気のマッドサイエンティストだ。冗談抜きで、狂っている。
俺は嫌な感触を追いやろうと腕で額をぬぐう。汗はない。でも、じめじめした感覚がこびりついているようだった。もし中鉢が俺のベッドの近くにて、凶刃を降り下ろしたらーーー俺はなすすべもなく死ぬ。
そんなわけはない。中鉢は、まだロシアにいるはずだ。それに俺の居場所などわかるわけがない。そんなこと、あるわけないんだ。あるわけがないんだ……。
「パパ? それって誰ぞ?」
中鉢の真の姿を知らないダルが問いかける。俺は紅莉栖をちらっと見て、教えてやれと促した。
数秒後、ダルは心の底から驚いたような表情をした。
「え、それまじかよ……親子で差ありすぎだろ。にわかには信じられないっす」
相応の反応だと思う。イロモノと天才では天と地ほどの落差がある。まあ紅莉栖の場合はファザコンが入っているからダルのコメントに若干不快感を示していたけれど。
「で、中鉢博士がオカリンに?」
「……余り考えたくないけど、可能性としてはあるわ」
紅莉栖は遠慮せずに言い放った。別に心配りができていないとかの話じゃない。寧ろ隠すような言葉を使う方が失礼だと思っているのだろう。俺も、その方がありがたい。下手に隠されても、逆に傷ついてしまう。
「んまあ、入院してたときにオカリンに事情は聞いていたけど……それって単なる逆恨みじゃね?」
「まあね。だから気にしなくていいけど、一応候補にいれても、いいと思う……。私としては信じたくないけれど」
紅莉栖の中で、父親として慕う気持ちと、可能性を追い求める探究心がせめぎあっている。中鉢は確かに怪しい。けれど、紅莉栖は信じている。人としての情は失ってないことを。
「まあ、娘の牧瀬氏がそういうんだし、そもそもロシアの拘束が解けるとも思えんし、可能性としては限りなく低いだろうけど。……臭うんだよなあ」
「…………」
俺は何も口に出せない。俺の身に、得体の知れない何かが襲いかかっている。そう思うと、怖くなる。偶然だ、起こるはずないと反芻してもわだかまる不安感は消え去らない。早くこの世界から出て正体を確かめたい。何が起きているか知りたい。憶測じゃなくて、直接見たい。衝動が体内を暴れまわっている。このままでは破裂しそうだ。
だめだ。俺はここから出られない。何をしたって無駄なんだ。俺は、苛立った。俺の近くに誰もいてほしくなかった。ああ、もう鬱陶しい……!
「悪いが、しばらく一人にしてくれないか……」
しかしできるだけトーンを抑えた。仲間に当たっても何もならない。ダルと紅莉栖は俺を見て、疑うような目で見た。それがますます俺を苛立たせた。抑えろ、抑えるんだ……!!
「……分かったわ。橋田、行きましょ」
「分かったお」
二人がドアへと足を向け、ガチャリと音を立てて部屋を出ていくと俺は、溜めていた息を吐いた。そして、ベッドに沈み込んだ。
(……一体、何がどうなってんだよ……)
身の毛もよだつような現象が起こり続けている。もう勘弁してくれ。頭も疲れた。普通に過ごさせてくれ……。
倒れ込んだ体の力を抜き、意識を沈ませて、俺は遠い世界へと眠り落ちていった。
「岡部倫太郎」
どこからか、声が聞こえる。俺は閉じていた目を開き、辺りを見渡した。何の装飾もない真っ白な場所。壁も空の蓋もない、限界を知らない世界。そこに俺一人が立っていた。そういえば、以前にもこんな空間に迷い込んだことがある。また同じ夢を見ているのか。それともデジャヴに過ぎないのか。
「誰かいるのか? いたら返事を……」
「岡部倫太郎、聞こえているかい?」
俺の声に即座に反応した。声のする方へと振り向き、誰かを確かめようとしたが、見えなかった。声にはわずかなエコーがかかっていて、誰かを判別することはできない。ただ、間違いない。この空間には俺以外の誰かがいる。
「誰なんだ? そこにいるのは?」
俺は声をあげて問いかける。しかし、声がこだますだけで、答えはない。その代わりに、声のトーンを落とし、俺に話しかける。
「岡部倫太郎。君は痛みに襲われたな?」
何故それを知っているんだ? 見ず知らずのお前が?
俺は背筋が寒くなるのを感じる。 不安が胸の中を覆い尽くす。そして、こんな感覚を以前も感じたことがあるような気がする。そうだ、SERNから謎の脅迫メールが送られたときだ。あの時は偶然だと割り切って気にしなかったが、実際に悲劇を経験した俺ならばわかる。間違いなく、何かがあると。それを探らなくては、俺に、いや、もしかしたら俺たちに何が起こるかもしれない。避けられるのならば、避けなくては。
「……何故お前が知っているんだ?」
絞り出した俺の問いに謎の人物は即答した。
「そりゃあ、君の頭を覗いているからね」
……何?
俺は顔をしかめる。頭を覗くだと? そんなことができるわけがない。頭、すなわち人の記憶や思考を読み取れることが出来る存在など誰一人としていない。SFの世界だけだ。俺は失笑を溢す。
「笑わせるな。現在では不可能な技術だ。中二病もほどほどにしておくんだな」
「お前が中二病なのだろう。鳳凰院凶真とかいったが、ダサいぞそれ」
何を夢なのに俺はこんなに真面目に相手してあげているのだろう。俺は密かにさっさと夢から覚めてくれと願った。
「とにかく、デタラメはやめろ。俺の頭を覗くなど出来やしない」
それだけ言い捨てて俺は目を閉じて再び眠りにつこうとした。こんな馬鹿馬鹿しい茶番には付き合ってられない。原因を探ろうにも、そもそもこれは絶対に夢だ。不可能なことは、不可能なんだ。
しかし、俺は眠りにつけなかった。
「ーーーっ!?」
突然のことだった。どくんと頭が鳴り響き、白に染まる視界が妙な光彩で彩られる。それが何度も続き、視界に何かの光景が作られていく。一枚の写真のようなものだった。それに写っていたものは……紅莉栖だった。それも、血塗れで倒れている彼女だった。
「なっ……!?」
この光景は見覚えがある。2年前にβ世界線にて中鉢博士の講演会にまゆりと二人で行ったとき、人工衛星ーーー実はタイムマシンだがーーーが墜落、いや、不時着して駆けつけた際に偶然見つけたものだ。紅莉栖が血溜まりのなかで横たわり、ぐったりと倒れていたのを見た俺はすぐに逃げ出した覚えがある。だが、何故この記憶が蘇る?
だが、頭の疼きは俺に考える暇すら与えない。再び大きな鼓動が打ちつけ、悲鳴を絞り出す。
「がぁっーーー!?」
頭を必死に抑えて波打つ疼きを止めようと努力する。しかし、それは無駄な足掻きだった。再び写真のようなものが写る。見たくない。俺は反射的に目を閉じる。だが、瞼裏にも入り込み、俺を執拗に追い詰める。嫌でも写り込む光景は見たことがあった。電車の音が鼓膜に響き渡るなか、まゆりが線路へと体を踊らせて、その後、視界が赤に染まるという、思い出したくもない記憶が、また蘇ってきた。血の臭いが鮮明に思い起こされる。バラバラになったまゆりの疑惑に満ちた顔が見える。天王寺綯の生気を失った顔が見える。
「分かった? 岡部倫太郎。私が、君の記憶を見ることが出来ると?」
ーーー黙れ!
俺は叫ぼうと喉に力を込める。だが、新たな痛みが体を蝕み始め、喉から声が出ることはなかった。今度浮かび上がってきた光景は、またもや見覚えのある光景だ。手紙が浮かび上がる。その文面には、びっしりとあるワンフレーズが埋め尽くされていた。『失敗した。失敗した。失敗した……』。その繰り返しの文章だった。それが、虫のように蠢き始め、俺に迫り来る。これは、鈴羽が自殺したときの手紙だ。何故……何故わかるんだ!? これらは、俺でしか知らない事実なんだぞ……!!
「何で知っているかはさっきいったな? 君は、脳を覗かれているんだよ」
「認めないぞ、俺は絶対に認めないぞ!!」
俺は激しく首を振り、入り込む言葉を塞ぎ込む。でも、実際そうなのかもしれないと思い始めた。俺でしか知らない別の、すでに消滅した世界線の記憶を保持できて、且つ俺の身近にいた人物と言えば誰もいない。その記憶を第三者が保持できるすべがあるとすればーーー俺の記憶から盗むしかない。
言葉を投げ掛けてくる謎の人物は、冷淡な声で撫でるように語りかける。
「とはいうけど、今君は認め始めているね。考えていることは全部筒抜けなんだ」
「黙れっ!!」
俺は思いきり叫ぶ。しかし、内心では恐怖を覚えていた。俺の考えや記憶が筒抜けと考えるだけで……怖くてたまらない。悪い夢なら早く醒めてくれ。
「しかし……君はこれを夢だと思っているんだね。哀れな男だよ。確かにこんな非現実的な話は、普通はないけどいずれ分かるよ。その時に分かっても、もう遅いからね」
「どういうことだよ……なあ、答えろ!! お前は誰なんだよ!?」
今だうずく頭を抑えながらどうにか叫ぶ。しかし、答えはなかった。代わりに、白い空間が黒に塗りつぶされるように壊れ始めていった。
何が、どうなっているんだ……?
がらがらと音をたてて崩れる白の壁は黒の空間に溶けて消え、闇は俺へと襲いかかっていく。
「では、いずれ会おう。岡部倫太郎」
黒の波の果てから、謎の人物の声が響く。俺は追いかけようと足を踏み出すが、波は俺を容赦なく飲み込み、謎の人物と正反対の方向へと流し込みーーー。
気がついたら、自分の部屋のベッドにいた。ガバッと跳ね起きた体は興奮していた。激しく肩を上下させながら息を整える。
気分は落ち着いてきた。だが、吐き気がするほどの気持ち悪さが充満している。
俺の身に起こる様々な不可思議現象。散々だ。
どうして俺に起こるんだ?
どうしてこんな目に遭わなくちゃいけないんだ?
どうして……俺の邪魔ばかりするんだ……!
「…………もう、いい加減にしてくれよっ……」
夜中の寝室に響く俺の溜め息は、余りに虚しいものだった。
次回から一気に飛ばします。蛇足になってきたし、書きたい場面にさっさと移りたいからです。この辺が一番つまらなかったでしょうね。作品に動と静があるとするならば、私は動の方が書きやすいですね。止まっている、ゆっくり進行している静はどうも書きづらい。コツあったら是非教えていただけると助かります。
では、感想やお気に入りお待ちしております。
それと、androidやiOsで配信中のRPGゲーム「マシンナイト」を原作とした二次小説を新たに投稿しました。よろしければそちらもご覧ください。知らなくても設定がちゃんとかかれていますので。