オカリンの初戦闘ですが……うーんですね。ヘタレです。
では、どうぞ。
風が俺の頬を打つ。一瞬ひんやりした感触が襲い、緊迫の糸をさらに張り詰めていく。このアインクラッドにおける気象設定は現実世界のそれと同じで、冬の気候となってる。そのため風は冷たく、空気も乾燥している、ように感じる。だからといって風邪を引くわけではない。
どうでもいい思考をパッと切り捨て、視線を目の前にいる猪に向ける。猪は殺意を込めた目を俺に向けーーー地を蹴った。今俺と向き合っている猪の名前は《フレンジーボア》だ。だが、その辺にうろついているフレンジーボアよりかは若干違う。足の蹄の色が赤色のフレンジーボアは、少しだけ攻撃力が高いのだ。だが、知ったことではない。フレンジーボアの攻撃パターンは変わっていない。一直線の避けやすい突進を繰り返すだけだ。しかも、そのHP量もソードスキル―――この世界で言う必殺技―――を一発当てる程度で死ぬ量だ。だから楽勝で倒せる敵だ。βテストの時だってノーダメージで倒せたんだ。俺はニヤリと笑おうと、口の端をゆがめようとした。
だが、笑えなかった。笑って余裕だと思いたいのに、笑えない。顔面がこわばっていき、体が震えはじめる。一体これは……?
とりあえず、回避しよう。そう思い、足を動かしたのだが。
―――動かない……!?
突然足が言うことを聞かなくなった。この世界にはすべての痛覚が遮断されているため、筋肉痛とは無縁だ。そもそもそこまで足を酷使したわけではない。だが、足は金縛りにあったかのように、動かない。おまけにガクガクと震えている始末だ。なぜこんなに怖がっているのだろうか。死ぬのが怖いのか? 降り注がれる殺意に恐怖しているのか?
殺意に遭遇したときなどいくらでもある。未来ガジェット研究所のオーナーのミスターブラウンこと¨天王寺祐吾¨の一人娘の綯が俺を殺すと脅したこともあった。俺たちを襲撃したラウンダーたちもそうだった。紅莉栖の父親、¨ドクター中鉢¨が紅莉栖の首を絞めたときもそうだった。俺は様々な殺意を見てきた。それに恐怖しなかったときなど、一度もない。すべてが現実で起こったことだから。
そう、この世界はすべてにおいて現実だ。本来のゲームの敵が抱く殺意は偽物で、余興として認識される程度だ。だが、この世界では違う。この世界では、俺という人間の命を、俺という存在を破壊しようとしているのだ。
途端に俺は、体が硬直するのを感じた。動けない。足が震えている。動けと脳で命令しているのに、動かない。サッと顔から血の気が引いてきているのがわかる。
―――怖い、助けてくれ。
俺は迫り来る猪を見る。躱そうとも、迎撃しようとも考えなかった。ただ、見ていた。
ドスッと鈍い音と共に俺の体は猪の突進をもろに食らった。HPは2割方減ってしまった。
痛みはない。死に近づいている実感はない。これは現実ではないのかもしれないと錯覚するほどに、現実感のないダメージ。
吹っ飛ばされ、ドサッと地面に叩きつけられる。鈍い衝撃が体を貫くも、大したものではない。俺はノロノロと立ち上がり、剣を構える。だが、膨れ上がる恐怖感が消え去ることはなかった。
俺は、浅い呼吸を繰り返しながら猪を見る。猪はまだ死なない俺をさらに追い詰めようと、蹄を蹴る。守らなきゃ、避けなきゃと思っても、震えて何も出来ない。俺は再び攻撃を食らった。
どうやらクリティカルに入ったようで、一気に残り5割ほどになる。防御力が低い初期装備のせいでもあるが、それ以上に、俺の弱さが現れているのかもしれない。
―――そうだ、俺はただの中堅大学の生徒だ。異世界で暴れる剣士などではない。リーディングシュタイナーという特殊な力を持つ以外は、普通の人間と何も変わらない。本来ならば、俺は大学へと行き、ラボメンたちと駄弁って、一人思索に耽るだけのそんな平坦な毎日を過ごす男なのだ。ゲームとして成り立っていないこの世界での俺は剣士ということになっている。でも違うんだ。俺に剣士の資格などない。
猪は再び地面を蹴る。俺はただ、その動きをみていた。もう俺には勝てない。こんな雑魚モンスターですら俺には勝てないんだ。俺はただのへたれだ。先程茅場に俺は戦うなどと宣言したが、あれは恐らく俺の何時もの厨二病の癖でやってしまったのだろう。あの怒りも、しょせんは若気の至りだ。自分は狂気のマッドサイエンティストだという錯覚にとらわれ続け、本当の自分を見失う。だからあんな法螺をふけたのだ。俺なんかに、仲間たちが守れる筈がなかったのだ―――。
だが、その瞬間、脳裏に現れたのは。
まゆりが穏やかな笑みを浮かべながら、息を引き取っている場面だった。頭には鋼鉄のヘッドギアが被せられている。周りにたっているのは俺しかおらず、ラボメンの皆も同じように寝ている。いや、死んでいる。何故かそこには、阿万音鈴羽の姿もあった。
全員が、死んでいるのだ。俺の前で。全員が。
この光景を、俺は見ることになるのか。
だとしてもだ、弱い俺に対する、報いだとしたら受け入れるしかないのだろう……。
―――ふざけるな!!
俺はいつしか叫んでいた。何の前触れもなく猪に叫んでいた。
助けられるかなんてどうだっていいだろう? まゆりを死なせるなんて、俺には出来ない。俺はまゆりを守るんだ。まゆりだけじゃない。ダルも紅莉栖もフェイリスもルカ子も指圧師も、全員守るんだ!! それで俺が命を落としても構わない。俺が殺されるのも嫌だが……それ以上に―――。
俺の腹に猪の頭が突き刺さる。HPは残り3割になり、赤くなった。だが、そんなことを意識などしていなかった。
吹っ飛ばされた体を起こし、ゆっくりと立ち上がる。
「……いてぇだろーが……」
俺は低い声で唸る。だが、猪はそんな俺の様子など気にかけていない。プレイヤーに対しての反応のパターンの欠如ゆえだろう。だが―――知ったことじゃない。俺は殺意を込めた眼差しを猪に向けた。
猪は怯むことなく俺に最後の突進をかける。距離はわずか10メートル。だが、それだけあれば、問題はない。俺は剣を腰に引き、タメをいれていく。たちまちライトブルーの光が剣を包み、キュィィィンと唸り始める。
「ブヒィッ!!」
猪は鳴き声をあげて俺の腹をぶち抜かんと迫る。これを喰らえば俺の生命は粉々に消し飛ぶだろう。俗にいうゲームオーバーだ。だが、そうはいくものか。ラボメンたちの人生は、命は、俺が守るんだ。俺一人がゲームオーバーになっても、彼ら、彼女らだけは守り抜く。何故なら、俺は――――。
「俺は……狂気の、マッドサイエンティスト、鳳凰院、凶真だからだあぁぁぁっっ――――!!」
絶叫をあげながら剣を前へと素早く突き出す。淡い青の光芒をまき散らしながら上方に弧を描いていく。そのまま、剣に全身の力を込めて斬り降ろした。
片手剣
ガラスの割れるような音が耳をつんざく。これがこの世界の死。ベータテストとは大きく変わってしまったこの世界では、もう二度と散ったものは戻ってこない。この猪の場合はシステムが別個体を生産してくれるため、生き返られると言っていいのだが、俺たちはそうはいかない。この死を俺は人の場合で見ることがあるのだろうか、もしかしたら俺の大切な人も―――。
俺は首を降り、一瞬よぎった考えをふるい落す。そんなことは俺がさせない。それにこの世界線は、誰も死なない世界線だ。だから、きっと―――。
「……帰るか」
俺は小さく呟くと、街へと足を向けてその場を去った。
***
始まりの街の中へと入り、まゆりたちをさがす。その途中、悪魔のチュートリアルが行われた大広間を覗く。先程よりかは人は少なくなったが、いまだに大声をあげているものや暴れだしているもの、放心しているものなどがいた。俺はそれから目を逸らすように駆け出していく。待ち合わせ場所へと一刻も早く行かなくては。
全速力でその場所へと向かい、駆け抜けていく。大広間以外に人は余りいない。もしかしたら近辺の宿などに引きこもってしまっているかもしれない。
俺はどうにかアインクラッド外周部分へとたどり着く。すると、夕日に照らされたラボメンたちの姿があった。全員が顔を項垂れている。当然だ、何にも知らないままこの世界に放り込まれたのだ。無理もない。俺は大声で彼らを呼んだ。
「おーい、紅莉栖!! ダル!!」
すると、ダルと紅莉栖はその声に反応した。ラボメンたちも一斉に振り向き、安堵の顔を見せる。
「 岡部!!」
「オカリン!」
俺はすぐに彼らに近づき、膝に手を着く。かなり必死に走ったのは、久々だ。
紅莉栖は俺に近寄り、俺に問う。
「大丈夫だったの?」
「ああ。それよりも萌郁は?」
「桐生さんなら大丈夫よ。無事に戻ったわ」
「そうか……」
俺は息を整えて、萌郁を探し、歩み寄る。萌郁は顔を俯かせていた。俺はじっと見据えてーーー。
パシンッ!
「……!?」
ラボメン全員の息を詰めた音と、乾いた打撃音が重なって響いた。萌郁は一瞬瞳孔を開く。叩かれたことに驚いているのだろう。
「馬鹿野郎!!」
俺は大声で怒鳴った。久しぶりに怒声をあげるなと俺は思ったが、収まることはない。俺は、怒りをそのままぶつけた。
「どれだけ心配したと思っているんだ!? お前が勝手に飛び出して、俺たちは心配したんだぞ!! 俺がいなかったらお前は……お前は……」
死んでいたんだぞ。
そう続くはずなのに、言えなかった。言ってはいけないと本能で思ったからだろう。俺は、荒げた感情をどうにか落ち着かせ、萌郁を見つめる。
萌郁は項垂れながら、小さく弱々しい声で謝った。
「……ごめん、なさい」
「分かればいい。二度と軽率な行動はしないでくれ」
こくっと萌郁は頷いた。萌郁も十分反省しているだろう。俺は許してやることにし、ラボメンたちに向き直った。
「では、これより円卓会議を始めたいと思う」
何時もならば、ダルか紅莉栖が茶々を入れる。だが、今回はそんなことはなかった。そう、誰もこの状況ではふざけられない。空気の読めないまゆりでさえ何も言わないのだ。
かくいう俺も、この状況を利用してふざけようというわけではない。真剣に、俺たちはどうすればいいかを話し合わなくてはならない。もはやただの雑談と化してしまっている円卓会議ではない、本当の意味での円卓会議を求められているのだ。
「今回の議題は……これから俺たちはどうすればいいか、だ」
皆が黙って頷く。何時もこうであればいいのにと俺は思ってしまうが、そうでないのがこの未来ガジェット研究所の特徴なのだ。このような黙りこくる円卓会議は慣れない。
「何か意見のあるものは、手をあげて発言してくれ」
しんと円卓は静まる。まあすぐに具体的なアイディアが浮かぶとは思えない。俺は、後ろにある柵に寄りかかり、意見が出るのを待った。
すると、手が上がった。意外にも最初の発言者は、ルカ子だった。
「あの……この世界でHPが0になると、死んじゃうってのは、さっき岡部さんがいない間に牧瀬さんから説明していただいたんですが、だったら、この街に引きこもればいいんじゃないでしょうか? すごく長い間になっちゃいそうですけど、国が助けてくれたりすると思うんです……。それに絶対に死なないと思います」
つまりルカ子は安全第一を主張するというわけか。確かにいい案だ。誰も死なないから安全に現実に帰ることが出来る。ほぼルカ子の意見で決定だろうと俺は思いながらも、一応他の意見を聞いた。
「ルカ子の意見に何かあるか?」
俺の促しに、誰もなにも言わないーーーかと思いきや。
ダルが手をあげた。
「ん? ダル、なんかあるか?」
ルカ子の意見以外にも、何かあるのか? とダルの顔を覗く。ダルはいつもののっぺりした口調で話した。
「いやぁ、るか氏の意見もいいとは思うんだけどさ、僕的には無しだと思われる」
ダルがそういった瞬間、みんながダルの顔をみる。特にルカ子や紅莉栖は疑問の色を隠せていなかった。俺はちらっとみて彼女らを抑えるとダルに促す。
「それで、どうしてそう思うんだ?」
ダルはこほんと咳き込んで答える。
「僕は一応デスゲームものの映画やゲームとかは結構嗜んでいるんだよね。まあいろいろそれぞれ違ったりするけど、共通点もあるんだお。それは、誰しもがるか氏みたいに引きこもって終わるまで待とうと考えるやつがいること、本当の敵が人であること、そして、引きこもっているやつは騙されるって言うのはもはやお約束なんだお」
皆が黙った。ダルの知識と経験は舌を巻くものだ。コミュニケーション能力は恐らくラボの中でトップクラスだろう。ダルの言葉に誰も言い返せない。
だが、ここで発案者であるルカ子が口を出した。
「で、でも……それはゲームや映画の話であって、実際はそうじゃないって思うんですが……」
反論の糸口としては適格だと思う。というか普通そう反論する。だが、ダルはすばやく返した。
「確かに、虚構と事実じゃ違うことがある。じゃあ逆に僕が聞くけど、るか氏はそれがわかるん? 僕は全くわからないお」
ルカ子は言葉に詰まる。わかるわけがない。ルカ子はそう言った怖いものではなく、ほのぼのとした物語を好むのだから。
「分からなければ、たとえ現実と違ってもそれを判断材料の一つとすべきではないかと思われ。もちろんるか氏の言う通りフィクションだから大幅に変わっていてもおかしくはないけど」
追い打ちをかけるようにダルは言葉を締めた。ルカ子は今にも泣きそうな顔をしていた。ここまで論破されては、誰だって落ち込む。気の弱いルカ子なら尚更だ。
ついに涙を流したルカ子にまゆりが近寄った。
「ああ、ルカ君大丈夫? ダル君、少し言い過ぎだとまゆしぃは思うのです」
まゆりに窘められたダルは首を縮めて反省の言葉をかけた。
「ああ、ごめんお。僕も少し気が立ってたからさ……ごめん」
ダルが謝ったところで、俺は質問をした。
「ではダルよ。お前ならどうするのだ? 俺たちはどうすればいいと考える?」
今頼れるのは、ダルしかいない。皆の視線がダルへと集中する。
「んーと、まあ、確かにむやみに身を投げるように危険な行為はしちゃいけないんだよね。かといって、身の安全のみを考えて引きこもったりするのもNGなんだよね。うまく利用されるだけだし。そこで生き残る法則があるんだお」
ダルは一度言葉を切る。頭の中で話をまとめているのだろう。
「まずは、情報や知識を得ることだお。情報こそ命になってくるからね。だけどデマとかも回ったりするから、情報の識別能力も必要になってくる。次に、連帯。しっかりとした連帯関係があればそうそうと崩れることはないし、生き残るのに大きな力となるんだお。」
なるほどと皆が頷く。理解力に乏しいまゆりでさえ、理解の頷きをする。確かに情報がなければ何も出来ないし、連帯がなければ、バラバラになってしまう。
「そういうことニャら、ギルドを作ればいいニャ! ダルニャンのいう連帯なら、これで完璧ニャン!」
「ギルドってなぁに? フェリスちゃん」
その質問には俺が答えた。
「グループのことだ。ネットゲームではギルドというのだ。まあ、この未来ガジェット研究所のようなものだ」
「そっかー、ありがとオカリン」
「それで、ギルドは作れるのかしら?」
紅莉栖が腕を組んで問う。だが、俺は首を横に振った。
「現時点では不可能だ。ギルドを組むには第3層のクエストをクリアする必要がある」
「じゃあ当分はどうすればいいんですか、岡部さん?」
「鳳凰院だ。ーーーまあ当分は何処かの宿を拠点として活動すべきだな」
その際皆で貴重な初期金額を払うこととなるがと付け加えた。だが、文句を言うものはいなかった。
「じゃあ、その連帯に関してはそこで納めておくとして、情報はどうするの? 一応岡部がβテスターだから、しばらくは岡部の情報を頼りにしていくしかないけど、それ以降のことも考えておかないと」
俺が知っているのは、第6層までだ。6層あたりで上をいくのが面倒になり、そこで留まったのだ。今にして思えば、もっと進めばよかったと思う。
「だったらこうすればいいんじゃないかなー? クリスちゃんとダル君を情報入手係にすればいいんだよー。二人とも頭いいからねー」
まゆりのアイディアはなぜかこういうときになって役立つものだった。まゆりも決してバカではないとは知っていたが、心強いものだ。俺もその意見には賛成だ。
「確かにな。だが、他のラボメンはどうする?」
「んー……。ねえ、オカリン」
「何だ?」
まゆりは人差し指を顎に添えながら言った。まゆりのたくさんある癖の一つだ。
「このSAOって、お料理やお裁縫って出来る?」
突然訳のわからないことをと思ったが、そんなことはなかった。
つまりまゆりは生産職をしようとしているのだ。確かに俺はまゆりには戦闘をしてほしくないと思っていた。うってつけだ。
「ああ、できる。まさかまゆりよ、生産職をするのか?」
「うん! まゆしぃに出来ることはお裁縫くらいだから」
「じゃあフェイリスはお料理をするニャン!」
「僕も、お料理なら……」
「私は……何をすればいいの……?」
ルカ子とまゆりとフェイリスがやることを決めた中、指圧師だけが迷っていた。俺はかつての世界線の記憶から、戦闘職を勧めると言おうとした。彼女はラウンダーであるので、戦闘能力は非常に高い。だが、先程かなり恐怖して逃げだした身である以上、戦闘職を提案することはできないだろう。
「ふむ……ならば鍛冶とかはどうだ? 武器を作成する職業のことだが、別にセンスなど要らないのが特徴だ」
それは料理や裁縫にも同じことは言える。SAOの生産スキルは別にセンスや腕前がなくとも、熟練度さえあれば相当いいものが作れるシステムになっている。逆に言えば、いくら現実で料理ができようとも、熟練度がなければ紅莉栖やまゆり並みの破壊力を持つ料理が出来上がってしまう。今のところ料理と裁縫は埋まっている。だから、指圧師に鍛冶を勧めたのである。
指圧師は少し考えるように目を伏せたが、こくんと小さくうなずいた。
「……わか……った」
「よし。では、俺は戦闘職とする。俺たちの生活費くらいは稼げるからな」
俺はそう宣言し、ラボメンたちを見回す。皆少し気が楽になっている。俺も気が楽になった。皆で話し合うことはかなりいいことだと言うことを実感させられた。
「じゃあまとめるわね。私と橋田が情報収集、まあつまり頭脳係ね。で、まゆりが裁縫、漆原さんとフェイリスさんは料理、桐生さんが鍛冶、で岡部が戦闘。でいいわよね?」
「ああ」
紅莉栖が上手くまとめ、皆が頷く。俺は高らかに宣言した。
「では、これより未来ガジェット研究所は、生き残りを掛けた聖戦、名付けて¨サバイバル・ジハード¨に身を投ずる! 必ず生き残ってやるのだ!!」
こんなときに中二病台詞でしか言えないのは残念だ。ダルや紅莉栖に茶化されても可笑しくない。だが今回ばかりは神妙な表情で受け止めていた。少し拍子抜けしつつも、頼もしく感じた。
「では、これで円卓会議を終了する。宿へと戻るぞ」
ーーーそうだ。これからだ。俺は、俺たちは生き残るんだ……何故なら、これが……
一人胸の中で支離滅裂な言葉を並べた俺は、遥か上で見下ろしているであろう茅場の姿を思い浮かべながら、宿へと向かうラボメンたちを照らす仮想の夕陽を睨み付けたのであった。
saoの二次創作って、なぜか皆雑魚でも怖がったりしてないんですよね。強いんでしょうね。でもオカリンは怖がるかなって思ったので、そうしました。ヘタレなんで。まあやるときはやるんですがね。
今回は用語解説はありません。思われが、思われる、という意味くらいか。
では、感想やお気に入りお待ちしております。