side:勇
「はぁ…はぁ…」
始のおじさんの言いつけを破って全速力で大橋の方へと走っていた。どうしてだろう不安で胸がいっぱいだ。幸いなことに近かったのですぐに到着したが、
「(!?)銀!須美!園子!」
崩れ落ちた勇者たちだった。銀はふらついてるながらも無事なようだけど、須美と園子は血だらけで倒れている。
(prrrr)
《勇!やっと出たか!》
始のおじさん……、
《全く…誰に似たんだか。説教はあとでするとして勇者たちは?》
……よくないよ。敵にやられてる。銀は動けそうだけど、須美と園子が…。
《そうか…状況は最悪というわけか》
「動けるのはアタシ1人か……。こりゃあとるべき道は1つかな」
(!?)銀が2人を抱えた。これって…
「よっと……園子より須美の方が重いかな」
「何を言ってるの……銀……こんな時に」
「ミノさん、どうするつもり……」
「勇者が逃げたら世界が終わっちゃうから、ここは頑張るしかないでしょ」
……夢と同じ。嘘だろ……!
「ここはアタシに任せてアンタ達は休んどいてよ」
「ミノさん…駄目!駄目だよ!」
「銀何をするの!離して!」
銀は須美と園子を海へと放り投げた。
「またね」
「「ぎぃぃぃぃぃぃぃぃん!!!!」」
叫びながら2人は落下していった。
おじさん、銀が…銀が…。
《(!?)勇者三ノ輪がどうした!》
1人で戦う気だ!…こんな時になにもできないのか……僕は。
「……どうしてここまで来た…人の子よ」
「(!?)あなたは?」
声に気付いて振り向くと、そこには黒い武家袴に似た和服を纏った青年が立っていた。
―――――――――――
「あなたは?」
「それはどうでもいい人の子よ。今はまだ私の事を知る必要はない」
知る必要がない?初対面で怪しそうだけどなぜか嫌悪感を感じない?
「それでどうしてここまで来た?」
あのような光景を見せられたらほおっておけない。ただ、それだけだ!
「……来ても結局君は無力だ。このまま彼女の運命を見届ける事のみが君の選択だ」
分かってる…分かってるさ。今唯一手の届くところにいるのに……。
「そうだよ…結局は樹海の影響受けないだけのただの無力な人間だよ。あんな事わかったとしても結局僕だけじゃ変えることが出来ないんだ。力さえあればあの子たちを助けられるのに!!」
「そうだ…だからこそ無意識に力を求めていたのだろう」
まるで見透かされたかのように言ってくるな。だが、心当たりは……ある。
~数日前~
「ねえ?」
「ん、どったの勇?」
ある日、ひょんな事から勇者についての話になって色々聞いていた時に自分が言ったことが始まりだった。
「こうやってみんなといるだけどさ時々思うんだ。みんなの力になれてるのかなあって」
「もしかして、いみさん」
「私たちと同じ勇者だったらって思ってるのかな」
「そうなるかもね。僕も選ばれてたらって思うとね。ほら、男だしそういうヒーローに憧れるものだからね」
「あぁ~わかるわかる。けどさ…」
銀は僕の意見に肯定しながらも向き合う。
「アタシとしては感謝しているよ勇。毎日が楽しいからさ」
「あのお姉さんだって言ってたじゃない~「人のためになることを勇んでおこなうことができるから『勇者』」だって~」
「そうよ。私達は神樹様に選ばれたから戦う、それがお役目。勇君は勇君なりのお役目をこなしてるじゃない。あんなに私達のために色々してくれたから安心して戦えるの」
「そうか…そうだよな。ははは、僕らしくもない事を言ったものだなあ…」
「「「あはははは」」」
~現在~
そうだ…彼女たちとはそういう話をした。あの時は気にはして無かった。でも、本当は彼女たちと同じ勇者にもなりたかったと思う。彼女たちのためにもっと力になりたかった。
「それで力を求めるのか…「それでも!」」
彼女たちやお姉さんは言ってくれた。そんな事をしなくても勇者にはなれるって。力はいらない…でも彼女たちを助けたい!今望むのはそれだけだ!
「そうか……」
青年は勇を一瞥すると、
「既に君は力を持っていたようだ……。確かに
覚悟なんてわからない。でも、やれることがあるなら彼女たちを護りたい!
「わかった。時間がないから君のスマホを貸してくれ」
いきなり初対面の人に貸すのもどうだけど
《勇、誰と話しているんだ?》
そうだ、おじさんと話し中だった。なんか黒い和服来た人が現れてなんか言ってきてるんだけど。
《……(!?)勇、彼と代わってくれないか》
おじさんに言われたからいいけど……僕は彼にスマホを渡すと、
「私だ。時間がないからそちらの御頭首と変わってくれ」
《…あ、貴方は!?わかりましたすぐに》
そして淡々とおじさんたちと話をすると、すぐに僕に手渡してきた。
《勇…話は聞いたよ。お前は本当にいいのか》
始のおじさん…ごめん。でも、あの子たちを本当に助けたいんだ。それだけは譲れないよ。
《私達も君に託すしかいい方法がない…押し付けた責任もある分本当にすまないと思っている。無理はするなよ。輝実に変わる》
《正義の味方気取りか。お前もあいつに似たものだな》
輝実のおじさん…僕の亡くなった父さんもそんな人だったからね……血は争えないよ。
《これだけは約束しろ…やばくなったら即勇者三ノ輪を連れて離脱しろ!残り2人も一時離脱中なら合流して再防衛も可能だ!》
…わかった。帰ったら全部話してくれるといいかな。自分も置いてかれてるとこあるし。
《当然だ。彼にスマホを渡してくれ》
「さてと……仕上げだな」
黒装束の人がスマホを受け取ると手をかざす…すると手元が光った!?そして、そのスマホ僕に返す。
「これで君も彼女たちを同じ…いや君次第ではそれ以上に戦える可能性を秘めている。……この先自分の決めた気持ちを忘れるな。迷うかもしれないが自分の選択に後悔はするなよ」
スマホのメイン画面が変わっていた。中央に見慣れないアプリが追加されている。
「導きは今1つの可能性となり紡がれた。さあ行くがよい、人の子よ」
僕は橋の方にいる銀、そしてバーテックスの方へと再び走り出した。
side out
――――――――――――
~銀の戦闘開始時間に戻る~
side:銀
これで須美と園子は大丈夫っと、さーて、と……
「ここは任せろって言った以上……責任持たないと、かっこ悪いからね……いっとくかァ!!!!!」
アタシはすぐに鋏野郎に突撃した。相手にしたから弱点は分かってる鋏は堅いけど胴体はそれほどでもねえ。ひるむ箇所も須美の矢で分かってる!
【!?】
鋏のバーテックスが大きく仰け反った。
「化け物にはわからないでしょう、この力!」
(脳裏に須美の姿が浮かぶ)
――― ダンッ!ダンッ!
矢を撃ってくる奴は今は無視だ。鋏野郎を盾にしていったん凌ぐ。(!?)死角から尻尾野郎の攻撃!これは斧で交差して防ぐ。
――― ダダダダダダダッ!
弾幕を張ってきたが全部は避けれねえ。最小限の回避で急所には当てさせない。今度は尻尾野郎の胴体に連続攻撃だ。
【!!!】
尾のバーテックスは乱舞を食らいつつも必死に抵抗してくる。
「これこそが!人間様の!気合ってやつよ!!」
(脳裏に園子の姿が浮かぶ)
いつつ…体にダメージが…。でも押し負けるわけにはいかない!3体のバーテックスは徐々にアタシのラッシュで後退してる。
「このまま……出て行けぇぇぇ!!!」
(脳裏にアタシの大切な家族の姿が浮かぶ)
――― ダァァァァァアアアン!
(!?)いっっっっっっぅう!光の矢が…アタシの足を貫いた。その痛みで膝をつき一瞬動きを止めてしまう。
【・・!】
【・・・!】
鋏と尻尾野郎が突っ込んできた。同時攻撃かよ。斧で防ぐが2体分の力がかかって…やばいほとんどギリギリだ。
【・・・・】
とどめを刺そうと乱入してきたやつが矢を引き絞ってきた。ここまでなのか……。
「ぎぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃん!!!!」
勇の声が聞こえる…もうやばいかな…ごめん勇、アタシもう帰れないかも。
――― ダァァァァァアアアン!
バーテックスから光の矢が放たれ、アタシはアレに貫かれたと思ったが、
――― ガギン!
ありえない事が起こった…。光の矢はあさっての方向にはじかれ、アタシを捕えていた鋏と尾がバラバラに切り裂かれた。須美と園子が回復した?こんな短時間で…。
「銀…大丈夫?」
聞き覚えのある声がしてアタシは顔をあげると、いや絶対にここには来てはいけない人がそこにいた。なんで、お前がそんな姿でここに来たんだよ…。危険な事には踏み込まないって言ってたじゃないか!
「それは後でちゃんと謝るけど、ほっとけなかったんだ。だから…今は!」
クラスメイトである勇の後姿がそこにあった。その姿は、白の紋用が入った黒のズボンとインナーに、白に紫の装飾が入ったベストとコートと腰装備。右手には両刃の片手剣、左手には盾を携えていた。まるで、アタシ等勇者みたいじゃないか。
「悪いけど、お前らがなぜここを襲いに来て、あの3人たち…勇者を傷つけてまで神樹を狙うかは
分からない。でも今言えることは……あんたらをここから通すわけにはいかないな」
勇はバーテックスたちを睨み付け、そう口上を述べたのであった。
――― この瞬間…、人とは少し違う性質をもった少年と
この場所で散るはずだったとある勇者の少女の運命は変わった ―――。
――――――――――
所詮は知っていても■■を変えるには大きな■が必要だ。
そしてその■を扱うには同じくらいの意思もいる。
僕が無意識に■■ための■を求めたのは必然的だったかもしれない。
その■■が■■な■■であったとしても。
それでも僕はその■■を決める意思だけはあったのだから。
それが勇者である彼女たちを■■ためなら……。
■■■御記 紺野勇(大赦検閲済み)
ひとまずやりたい事をやってしまいました…。
小説内の原作の「もし」も的な改変ありはこの事になります。
タグでのネタバレがついている小説があり、質問掲示板などでそれについて調べ、それを踏まえてあえて最初はつけてなかったため賛否両論はあるかもしれませんが……。そこは甘んじて受けます。