side:勇
病院へと到着すると、すでに連絡を受けていたのか医師・看護士さんが慌てた様子で銀はすぐさま集中治療室へと搬送された。
「銀……」
「ミノさん……」
「……」
僕たちは治療室前で彼女の無事を祈っていると先生から声をかけられる。
「鷲尾さん、乃木さん、三ノ輪さんが心配なのはわかるけどあなたたちも検査を受けないと…」
「「(!?)でも…」」
「あなたたちも傷ついてるし、もしも悪化したりして倒れたりでもしたら三ノ輪さんを心配させることになってしまうから…だから…ね」
「「……はい」」
2人は先生の配慮に察したのかその場を離れることとなった。無理もないかなある程度治ったとはいえ戦闘後の影響もあるから休まないと…。
そして、1人残された僕だったが―――、
「紺野君、君もだ」
「…ここで待つのは駄目なんですか…」
「すまないね紺野君、君も成り行きとはいえ戦闘してしまったから精密検査させて休ませろと君のおじさんから言われてるんだ。それに後日大赦側から君に色々聞きたいこともあるらしい」
それも重要なんですが…やっぱり銀の事がちょっと…。
「でも大丈夫、勇者三ノ輪は大赦が全力を尽くして治療するし、それに聴取の方もすぐに終わらせるよう配慮して戻れるようにするよ」
「……わかりました」
仕方ないか…成り行きとはいえバーテックスと戦い撃退してしまったからな。色々聞きたいのも分かるかな。
春信さんに連れられ僕も治療室前をあとにした。夜も遅いため病院で宛がわれた部屋で一夜を過ごすこととなり、戦闘のあとだったのか僕はすぐに眠りに落ちた。
――――――――――
――― 翌日
起きた僕は春信さんが持ってきた朝食を食べると、準備が終わるまでしばらく部屋で待たされた。
その時に、ニュースを見たんだけど、突然道路の陥没が起きたというのが昨日の大きな事故だったみたいで被害者はいなかったそうだ…もしかしたら、須美もこんな気持ちだったんだろうな。
1時間くらい待ってたら、大赦の職員らしき人たちがやってきて僕は検査室にて診察を受けた。……見慣れない機器もあったが春信さん曰く勇者も使用している大赦開発の機器とのことだった。そして特に何事もなく検査はすんなりと終わった。
須美と園子は検査のあと戦闘の疲労があってか大赦の方で休ませたらしい。今は病室で眠り続けてる。
銀は治療が終わったけどいつ目覚めるか今はわからないらしい。出発前に会おうとしたけど、面会は許可されていないようで行くことは出来なかった。
そして、今、僕は春信さんの車に乗せられ移動中。
「春信さん、どこへ向かってるんですか?」
「あのまま聴取しても君にとっても分からないことだらけだからね。その前に疑問に思うことを払拭しようと思ってね…さあ、ついたよ」
車を降りるとそこは僕の家で、
「「勇!」」
始と輝実のおじさんが玄関前に立っていた。かなり心配させちゃったなあ……。
side out
No side
-紺野家-
自宅に戻った後、4人は居間に集まった。
「……すまない。ここまで巻き込んでしまって」
「いや…こっちこそ言いつけ破って勝手な事しちゃって…本当にごめんなさい……」
「…2人共謝るのはいいが、このままだといつまで経っても収拾つかんぞ」
始と勇は互いの負い目に対して謝りあっている。収拾がつかなくなる前に輝実がそれを治めた。
「それにしても、聴取って聞いたんだけど」
「あのまま行っても大した事は話せないと思うので、先に勇君に事情を理解してもらってから望めるように手配しました。……全く、手配するのに大変でしたよ」
やれやれと手を振る春信。
「ご苦労としか言えないな春信」
「全く…労いの言葉はそれですか。それでは、大赦の人を迎えに行ってくるので私はいったんこれで」
春信は席を外した。
「さてと、まずは勇、お前に私の本当の正体を教える。私の苗字は覚えているか?」
「記憶違いじゃなければ、輝実のおじさんって『
「そうだ。そして、この『御影』という苗字は大赦内ではかなり重要な意味をもっている。…今ここにいる私は大赦一族『
『御影家』―――
大赦の設立に関わったとされ『乃木』家に相当する格式の高さをもっている。大体勇者を輩出はしていないが、その政治的手腕・運営能力の高さで貢献している一族である。
「………」
勇はあまりにも信じられないことに絶句している。
「…と言っても、どれだけ凄いか恐らく実感はできないだろう。さて、お前もここまで関わってしまったからな遠慮なく聞いてくれ」
「……それじゃあ、このシステムっていったい何なの?」
勇は黒装束の男によって追加されたアプリが入ったスマートフォンを机に置く。
「こいつは正式な名称はつけていないが、『勇者システム』を基に製作されたものだ。元々は資質持ちに目をつけて勇者と同様に戦えるように大赦と共同で制作してたのだが…適性者は勇者以上にいなくてな。それを私らが引き取り管理していたものだ」
「……あの人が使ってたのはどう違うの?」
勇の言うあの人とは救出に来てくれた隊員の事である。
「あれはこのシステムをやっと使えるようになるくらいまで弱体化したいわゆる出来損ないみたいなものだ。精々身体強化しか使えんからバーテックスに挑んだら塵のようにやられてしまうぞ。…それにこれは『勇者システム』と同じでな元々神様の力をかりるための媒体みたいでもあるからな」
「(須美たちも『勇者システム』に関してそんなこと言ってたな)神様の力をかりるってことは神樹様の力なの?」
勇の質問にやっぱりかと思い、溜息を吐く一同。
「…残念だが、これは神樹様のものじゃないんだ」
この四国で神様といえば誰しもが『神樹』というほど一般的である。彼神は幾多の神が集結し一つの大樹となり『壁』と呼ばれる根の結界を張りその内部にある大地や海に恵みをもたらし人々に敬われている。
勇は『神樹』様の仕業ではないことを聞いて驚いた。
「……へ?それじゃあ…いったい」
【……それの役目を担ったのが我が創造主という訳です】
スマートフォンの隣に勇を手助けした麒麟と呼ばれる存在が具現化した。
「ちょ、ちょっと急に現れたりしたら…」
【問題はありません我が主…この方々は私がどのような存在かご存知ですので】
「まあ、実際にみるのははじめてだけど」
「こいつがご先祖の文献にあった角をもった蒼と白の獣か」
「驚いてないし!というか知ってたの?」
【それについて今から説明します…とその前に】
麒麟は勇の前で向き合い、
【改めて初めまして我が主よ。私は『麒麟』…我が創造主の命により使わされた存在です。我が創造主から選ばれし者の守る盾となり、時には剣となり尽くすのが私の使命となりますね】
「盾と剣……」
勇の脳裏にバーテックスをはじめて撃退した時のことを思い出した。
「あれは君の?」
【いえ、私はあなたに秘められた力を具現化しただけ。私はそのサポートをしたにすぎません】
「そうなんだ。それじゃあ、大橋に現れた人がその…」
【そうです。あの橋で出会った黒装束のお方が我が創造主であり、貴方たちの信仰する『神樹』と同じ神様と呼ばれる存在です】
「(!?)……神様だって…」
「まあ、西暦時代のときの日本は『八百万の神』といわれるくらい多くの神様を信仰していたからな、あながちいてもおかしくはないだろう」
(どっかの昔話とかでそういうのがあったな)
勇はそう思い納得。次の質問に変えた。
「おじさんたちはその神様とはどういう関係なの?」
「私のご先祖からになるが、『神樹』様の声を聞いて反映させる『大赦』のように、私らはその神様の声を聞いて世界のために尽くし、それに関しての管理を行うために『組織』ものも立ち上げた。まあ、大赦内では『特務異能対策班』と呼ばれているがな。表向きは大赦内の一部署として『資質持ち』の保護の他にバーテックスに関する色々な事も従事しているがな」
「でもさ、僕たちは『神樹』様を信仰しているわけだし、今更他の神様が出てきたら大騒ぎになるんじゃ」
「そうならないようにしてたのも『特務班』の役目だ」
「どうして、態々そんな事を」
【我が神のたっての希望でもあり、『神樹』様に信仰…つまりは神様を信じる力を蓄えさせるためです。主、この四国を護る結界はご存知ですよね】
「そうだけど…壁の外にあるウィルスを抑え込ませる樹の根っこのような『壁』だよね」
『壁』は『神樹』の張っている結界の事で、勇はその恩恵などを須美達から詳しい内容まで聞いている。そこに輝実は問いかけた。
「勇、気づかないか?あの広大かつ強大な『壁』を。どうやってあそこまで維持できてるんだ?」
「どうやってって…あっ」
【気付いたようですね。神様の力はその存在を信じる事、つまりは信仰がそのまま力となります。あの規模となる結界ですとかなりの力を使います。神様が複数いるってことがわかったら信仰が分散して削がれてしまいます】
「そっか。随分お人よし?っていうか考えてるんだな」
勇の質問を輝実と麒麟が互いに答えていると、
(prrrr)
始のスマートフォンに着信が入る。着信先は春信のようだ。
「もしもし」
《あ、始さん。勇君の事情説明はなんとかなりそうですか?》
「ひとまず、大雑把な事は話したよ。これから内容に関して打ち合わせておくよ」
《そうですか。こっちは使者引き連れて今むかっている所です》
「わかった。こっちも詳細は詰めておくよ。今こちらに向かってるそうだ」
始は着信を切ると、2人と1匹?に呼び掛ける。
「まだ説明し足りない点があるがこれまでか」
「……そういやこっちが質問していただけだったけど、聴取ってどうすればいいの?」
「正直に言うとね、勇は特には答えなくてもいいんだ。まだ子供だしこういうのは私達大人がやるからね」
「まあ、特に深く考えずに質問に答えるだけでいい。…それとこの神様の事も大赦には黙っていて欲しい。未だにその段階じゃないからな…システムの経緯はこちらがつじつまを合わせておこう」
【御両人、なにかあれば私もご助力しますが】
「それなら…なにかあったら勇にフォローをいれてほしいのだが、出来れば姿をさらしてほしくはないが…うむ」
【大赦の使者とやらが来たら姿を消して主にのみ聞こえる声を送りますので問題はないかと】
「うむ、勇もそういう方針で頼む」
「わかった。ところでさ麒麟」
【どうしましたか主?】
「…ちょっと主っていわれるとなんかなあ…ちょっと堅苦しい感じがするから名前で呼んでほしいかな」
【…わかりました、勇】
その後、春信さんが大赦の使者を数人引き連れてきた。……春信さんとは違って仮面をつけた人物が
ゾロゾロと…この人たちが相手だったから色々打ち合わせしたのか…。
【勇、ともかくこの場をなんとか致しましょう】
【な…なんとか頑張ってみるよ…(これ初見で子供相手だったら泣かれるぞ。怪しすぎるぞ)】
大赦仮面(勇仮称)に内心突っ込みを入れたが、僕はおじさんたちや麒麟のフォローもあり、その神様
についてを伏せながら聴取をこなしていった。
――――――――――
side:勇
……はぁ。兎にも角にもなんとか終わらせることが出来た。あの大赦仮面の威圧感がが半端ないな。
所々おじさんたちや麒麟のフォローもあってかなんとかなるようにはなったと思う。一応、始のおじさん曰く「こちらの思惑通りに納得はさせた」らしい。まあ、要は色々と理由をでっち上げたの事らしい。
ちなみにある程度納得したのか聴取も終わったことにより僕は自室へと帰された。居間の方ではなんか今後の事を打ち合わせると大赦の使者との会談が続いているんだけどね。
「そういえばさ、麒麟。あの時に、1つ聞きそびれたことがあったんだけどいいかな?」
【構いません。親御さんからはすべて話してもいいと仰せつかってますので】
「『資質持ち』って本当はいったい何なのかな?」
【…とても大きな話となります。…それはとても幼子のあなたでは考えられない程のものです】
構わないよ。ここまで関わってしまったからね。
【わかりました…。
その昔…神世紀に入るちょっと前の頃…人類がバーテックスの攻撃を受けると知った我が神は人類に呼びかけました。その声を聞きた人で動いた人は決して多くありませんでしたが、我が神から力を受け取り、共に戦う者と人類を守る者に分かれてと奮闘しました。だが、我が神は敗れ、守る者たちもそのほとんどを失い力も消失しました……。
敗れた我が神はその力をほとんど失いなんとか四国へ到達し生き残った人たちを束ね力の回復をつとめながら世界を見守っていましたが、その最中に樹海の影響を受けない人が出たことが判明しました。……我が神が授けた力の欠片がその人々の血筋に残っていたようで、それが目覚め神樹の勇者と同じような性質になったものです。これを御影家のものが『資質持ち』と名付けたようです。
我が神は、残った人々にその人たちを保護するよう神託を出し、出来うる限りの事をし今に至るという訳です】
…随分とスケールのでかい話になったな。超展開とはこのことかな。
【我が神が調べたところ、与えた力がバーテックスとの邂逅で何らかの進化をしその性質を変えたようで、バーテックスがもっている再生・進化能力を阻害させてしまうというものとなってしまいました。
しかし、今までの人たちはその力が小さくバーテックスを滅す程の力がありません。
勇者システムと同等クラスに使いこなせるほどの適性者はあなたが初めてという訳になります】
それが僕の力ってことなのかな。
【そうなりますね……武器などは彼神の力がこめられたものになりますが】
なるほど。…もっと知りたいことがあるけど、PM11:00…結構遅くなったな。
【色々ありましたからねある…いや、勇】
もっと話したいこともあるけど、明日は銀たちの様子見にいかないといけないしもう寝なきゃ。しかし、とんでもないことになったものだなあ。……色々あり過ぎて頭が追いついてないよ。
なんだかどうでもいい回となってしまった…。独自設定要素まとめるのかなり難しいな…。
「もし」も的な改変である。オリジナルキャラである神様を追加。設定した理由は裏話にて。
以下、短縮版
・勇が使ったシステムは勇者システムを基にしたもの
・力を与えたのは当小説オリジナル神様
・現時点で判明してる主な目的は世界の維持
・神樹に信仰を蓄えさせているのもその一環
・勇はその神様に選ばれたために麒麟が派遣された
・世界の人々(特に大赦)にはまだ公開したくはないらしい
・『資質持ち』はその昔オリジナル神様と共に戦った人たちの末裔であり、その力の欠片が覚醒した人たちのことを呼んでいた
設定裏話
・信仰に関しての見解は『東方project』の信仰の設定を使用。ゆゆゆ原作でも神樹による結界は相当ギリギリなバランスで成り立っているっぽいことがアプリの説明にあったとのセリフがあり。