side:須美
「須美…須美!」
「あっ…」
「どうしたの、わっしー?」
……いつもの帰り道ね…。ああ、そっか。うどん屋でうどん食べながらいつも通りに3人でお喋りしてたわね。今日は大赦の訓練後だったから勇君はいないけど。
「ううん、ちょっと考え事してただけ」
今は夕暮れ近くになったから帰路についてるんだった。
「くっちゃべってるけど、どうしてこんなに時間が過ぎるのが早いんだろうねえ。もう夕暮れだよ」
「ね~もっとお話ししたいかな」
そうね。でも2人共、また明日があるじゃない。
「そりゃそうだ。楽しかった。またね」
「わっしー、ミノさん、またね~」
「ええ、また明日」
3人はそれぞれ帰路につこうとしたが、須美は銀の背中を見て、なんとも言えない不安にかられる。
明日……明日って銀に会えるのかしら?あれ、銀。なんでそっちに行くの?そっちは家の方向じゃないのに……。
「あ……待って、銀、銀!!」
その時である。須美は夕日の逆光で思わず目を閉じてしまった。
――――――――――
「はっ………」
私が目を開けると、どこかの部屋…大赦の部屋ね。以前にも入ったことがあるから覚えてる。なんでこんなところに?目の前に箱みたいのがあるけど。
「ミノさん…どうして……どうして行っちゃったの……」
声に気付き隣を見ると、そのっちがいたわ。目の下が赤い、泣き疲れて眠っているわね。さっきのは寝言のようだったけど。
……ちょっと待って、これってまさか。
私は箱を上から覗き込むようにしてみると、
「……銀?」
箱の中には銀が安らかな顔で眠ってたわ、認めたくない事だけど私は確かめるようにそっと銀の手を握る。……こんなに冷たい……。そんなついこの間まで、一緒に遊んで、笑って、喧嘩して、戦って……。
「銀、銀!!!」
私の目に熱いものがこみ上げてきたわ。これは……銀の棺。銀はやはり……。
―――――――――――
――― 前話から翌日
No side
「っ…!!」
須美は飛び起きた。荒くなった息を整え周りを見るとどうやら宛がわれた病室のようだ。隣のベットでは園子が穏やかに眠っていた。
「…そっか。検査が終わって寝ちゃってたんだっけ」
どうやら昨日の検査後、怪我は神樹の力で回復し大体は治っていたが、疲労がたまっていたせいか検査後に眠りに落ちていたようだ。しかし、先程の夢の影響か彼女はすぐに不安にかられた。
「…そうだ。銀は…銀はどうなったのかしら」
耳を澄ますとなんだか病院内が少し慌ただしいようだが。その時である。
――― トンットンッ。
「…っ!」
突然のノック音で反射的にビクっとなる須美。
「…須美、園子。起きているかな?」
「え、勇君?うん、そのっちは寝ているけど。入っていいわよ」
「ん、須美は起きたようだな。わかった」
須美の許可をもらい、看護士と共に病室に入る勇。
「あんな事あったけど、無事なようで本当によかったよ。…実はね「銀は…」須美?」
「勇君、銀は…銀はどうなったの?」
不安にかられた彼女は大事な友達の事が気になったがためいつもの冷静さを失っていた。気が動転している彼女は勇に問いただす。
「……私達のためにあれだけ無理して血が一杯出てて「須美!落ち着いて!」…勇君」
勇は須美をなだめた。勇は意を決したかのように口を開く。
「……銀は一命を取り留めて今は眠ってるよ。今は経過見る為に集中治療室だけど…。組織の人が応急処置して迅速に運んでくれたから命に関わることはないんだって、血が出すぎてたけどそれもお医者さんが処置したからもう大丈夫だよ」
「え?」
「実はというとね。ついさっき、目が覚めたみたいなんだ。それで真っ先に伝えたくって」
銀の無事を知った須美だったが、夢を見たための不安、それが払拭されたのと大きな要因が重なってしまったのか、
「うぅ…うわぁぁぁあぁぁぁぁぁ!!!」
「ど、どうしたんだよ須美!」
「だって…だって、銀が死んじゃてる夢見ちゃって…もう駄目かと思っちゃって、怖くて……それで無事だとわかって……うわぁぁぁぁあぁぁん!!!」
須美の感情の堰切れてしまい本気で泣き始めてしまった。勇は須美の頭を撫で慰めながら、
「そっか…もう大丈夫だから。そんな夢はもうない…大丈夫だよ…」
「うん……」
須美は少し落ち着いた時に隣の寝台がごそごそと動いた。
「ミノさん!」
園子が飛び起きた。
「園子も起きたか」
「あ……いさみん、おはよ~」
園子は目をぱちくりとさせながら勇に尋ねた。
「…ねえ、いさみん。ミノさんは?ミノさんはどうなったの?私…ミノさんが…手を振りながら天高くに昇っていちゃって消えちゃう夢見ちゃったんだけど……もしかして…」
「(あぁ、これは…覚悟決めるか)銀は…」
その後、須美と同じ説明をしたところ、須美以上に大号泣されてしまった。勇は抑えるのにかなり手を焼いてしまい、
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁん!!!ミノさん…本当に生きでてよがっだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉおぉぉ!!!」
「ちょ、ちょっと園子…泣かないで(おろおろ)」
「そ…そのっち落ち着いて。勇君も困ってるじゃない!」
須美までも園子を泣き止ませようと奮闘する姿があった。
「落ち着いた?」
「うん、ごめんなさい、 いさみん、わっしー」
「謝ることはないわ。私もそんな感じだったし」
園子を落ち着かせることができた2人だったが、ここで空気を呼んでその様子を見守っていた看護士から、
「さて、落ち着いたことだし。彼女たちに三ノ輪さんが無事なのを見せなくっちゃね。でも、そんな姿で行かせるわけにもいかないし、着替えさせるから男子はいったん退出してね」
「「あ……///」」
「すみません、すぐに出ます///」
看護士の手伝いもあり2人は着替た後、部屋の外で待っていた勇と共に銀の元へと向かった。
「ほら、2人共」
「銀…」
「ミノさん…」
「……よ。須美、園子。そっちも元気そうで何よりだ」
2人の呼び掛けに銀はその瞼を静かに開き、いまだに回復しきってないながらもしっかりと応えた。
「銀…生きてた…」
「何言ってるんだよ須美。この銀様がそう簡単にくだばるかってんだ」
「ミノさん~本当に無事でよかったよ~」
親友の満面の笑顔を見た須美と園子はやっと安堵な様子を浮かべるのであった。
「だから、隊長直々のご説教はまた今度にしてあげるね~」
「ちょ、隊長殿、それは勘弁を~」
「そ…そのっち、それは」
「か…仮にも怪我人にそれはちょっと…」
「冗談だよ~」
――――――――――
あの後、お医者さんから病み上がりという事で銀は穏やかに眠りについた。須美と園子は特に入院する必要のないため勇と共に帰宅の路についた。翌日、須美・園子は大事をとってなのか学校を休んだ。勇は特に問題はなかったため普通に登校した。
「3人共休みなんて珍しいわね」
「大赦でのお役目の関係なのかな?」
「勇、なにか聞いてないのか?」
「う~ん、僕も何も聞いてないからなあ」
事情は知っていたが親友の和人の質問を誤魔化しつつも答えた。その後、先生から正式に3人が諸事情で休む事を生徒に伝えた。
翌日、須美と園子が登校し皆で暖かく迎えた。クラスの皆は先生のフォローがあってなのか深くは追求せずいつも通りに接してくれた。
そして、あの戦いからちょうど1週間の土曜日…銀の体調がほぼ回復したという連絡もあったことで半日授業のあと3人でお見舞いに行くこととなった。
「いさみん~そういえばさ~どうして、あの時に大橋にいたのかな?」
「あの時は銀の事があったから聞きそびれたけど、私も気になるわね」
色々お話しながら病院へ向かっている最中、須美と園子はあの時勇が大橋にいた理由などを問いただそうときり出してきた。
「……僕にもよくわからないんだ。すごく嫌な予感がして大橋に行ったんだけど、そうしたら3人が倒れていてね。これはまずいなあって思ったら変なアプリが出て、あとは無我夢中でバーテックスと」
「そうなんだ~」
「なんだか導かれたっていう感じね。神樹様がもしもの助けを出してくれたのかな」
「どうだろうね(さすがに他の神様の仕業とは言えないかな)」
2人はそれぞれ納得していた。
「大赦の方で何か分かったのかな~」
「それがねえ。前代未聞のことらしくて調べてるってさ。男の子の勇者なんて今まで存在しなかったからみたいで」
「ふ~ん」
そうこうしている間に病院へ到着し、銀の病室前についた。
「銀~起きてるかしら~」
「お、来たな~。園子も勇もいらっしゃい」
須美が一言いい扉を開けるとあの出来事があったにも関わらず元気な銀の姿がそこにあった。
「お邪魔するよ」
「ミノさん~お久しぶり~」
「こらこら、この甘えん坊め!」
その姿を見て園子が銀に抱きついた。ちなみに須美もその姿を見て一緒に抱きついている。
「あのう…男の子いるのにそれはちょっと…刺激が強すぎるというか…///」
勇の突っ込みで須美と銀は顔を赤くし、3人は離れた。
「も~いさみん。これ『
「なんですか、それは」
3人は園子の言う意味が分からず首をかしげた。気を取り直し、須美は皆が落ち着いたのを見計らい銀の体調と状況を確認することにした。
「それにしても、意外と元気そうでよかったわ。身体はもう大丈夫?」
「へへっ、大丈夫サ。血が出すぎて貧血気味だったけど今はもうこの通りなんともないさ。検査もして医者の太鼓判もあるからこうして会えるわけで…でも、バーテックスに撃たれた足の怪我が治ってないからしばらくは不自由になるって…それで、イネスに行けないから不満かな」
「メールにあったのはこの事だね」
3人は銀自らのメールで今日の事を知っていた。その内容でイネスに行けないことを愚痴ていたがこれで理由がはっきりとした。
「でも~本当に良かったよミノさん~。…という訳で、わっしー、いさみん」
「わかったわ、そのっち」
「心得た」
「パーラリララ~、パーラリララ~♪」
須美は書店の袋を勇は何らかの箱を取り出した。園子は楽しいリズムを口ずさんでいる。
「へ、何々?」
「はい。2人共~どうぞ~」
「私からは漫画本ね。楽しみにしてた新刊、銀の親から預かってたの」
「僕からはいつものジェラード。あそこのおばさんが態々クーラーボックスまで貸してくれたんだ」
「私達からの快気祝いだよ~それに私とわっしーを助けてくれたお礼~」
「おお~~~~~」
心成しか銀の眼がキラキラと輝いている。
「サンキュー。本当にうれしいよ」
ジェラードなどのオヤツを食べてもいい事は既に銀からも聞いてある。4人はそれぞれ好みのジェラードを食べ、久しぶりの会話を楽しんだ。
「いやぁ~時間が過ぎるのがやっぱ早いな」
「本当だ。もうこんな時間か」
気付けば既に夕暮れである。楽しい時間だからこそ過ぎるのも早い。
「そっか~そろそろお別れだね~」
「名残惜しいけど仕方ないわね」
「また遊びに来てよ。病院で過ごすのはやっぱり暇だよ」
「まあ、銀の性格を考えるとこういうところは窮屈だよね」
「だね。…でも、お役目もいつ来るかわからないけど、来たら任せないといけないな…」
「大丈夫だよミノさん~」
「私達に任せてゆっくり治して。その分私達で頑張るから」
「そっか。でもさ、なるべく早く治してすぐに復活して大活躍してやるからな」
「ふふ、全部倒さないうちに戻ってこれるかしら」
「戻ってくるさ!」
「(……なんでだろう。あんなことがあった後で死にかけたりしたのに…。この子たちはこんなに前向きに物事を見れるんだろう)」
3人の会話を聞いて勇はそのように思っていると、
「ここに、まだペーペーだけど新人『勇者』もいるからさ。いざとなったら、なんとかなるって」
「え、僕もなの?」
「当たり前だ。誰がなんと言おうと、この銀様を助けた『勇者』だからな」
「ふふ、そうね」
「いさみんの勇者姿もう一度見てみたいな~」
そんな事を言ってると時計の針が面会の時間が終わる頃に刺しかかった。
「あ、もうこんな時間だわ」
「もう帰らないといけないな」
「うん。ミノさん~それじゃあ私達はこれで~ばいばい~」
「おう、またな!」
銀が手を振るなら3人は病院をあとにし、それぞれの家へと帰って行った。
――――――――――
【勇、聞こえますか?】
【あ、うん。聞こえるよ】
勇は家路を歩いていると、麒麟が思念波で語りかけてきた。人の気配もない事で出てきたのであった。
【勇者の子がお役目の話をした時、ちょっと思う事があったようですね】
【…顔とかに出てたのかな】
【ほんの些細な事だったので、私くらいにしか気付いてないかと。でも、隊長やっている子なら注意
深く見られたら気付かれたかもですね】
勇は園子ならあり得るかもなっと思い、正直に話すことにした。
【……率直に言うとね。なんであんなにあの子達は強いんだろうなあって思ったんだ。……僕が乱入したとはいえあんなに辛いことがあったのに、無我夢中でやって、いざ冷静になってみるとなんとなくそう思って】
【なるほど……。あの子達もお役目をこなすために鍛えてきたのもありますが、それよりも…】
【それよりも】
【勇、思い切って彼女らにその疑問をぶつけてみたらいかかですか】
【どういうことなのかな?】
【勇は私の推測ですが、我が神に選ばれて、あの銀と呼ばれる勇者を助ける為に初陣を乗り越えましたが、その後の続ける理由を見失ってると思われます。恐らく、それ以上の戦う理由がないのでしょう…という迷っている状態となってますね】
【……すごいな。その通りかも…実際言われてここしばらく考えていたもやもやとした気持ちに気付けたんだと思うよ】
ここで勇は少し空を見上げ、少し考える。
「(銀にも期待されちゃったし、次行った時に聞いてみることにするか。今のもやもやとした気分では戦えないと思うし)」
そう決めると、勇は自宅へと走り始めた。
バーテックスの周期が原作とずれていますが、原作5話後半部分のバーテックス戦の内容を変更する予定なので原作2日のインターバルを1週間ほどに伸ばしております。
以下、後書き
●園子の『需要と供給』
わしゆラジオにてこの事が言及されていた。この歳でわかるなんて恐ろしい創作者でもある。
●銀の怪我の具合
原作でも足を貫かれていたので、もしも生存ルートならこうなる可能性が高いとの作者的考察。