今話は銀の退院のオリジナル回となります。
第12話 退院と新たな決意と…
No side
――― 前回の戦闘から1週間後
「まだかな、まだかな~~~」
「園子、上機嫌なのもいいけど、ちょっと落ち着いたほうが……」
「そうよ、そのっち。そんなに慌てなくても…すぐに来るわよ」
「だって~いよいよこの時がきたもん~」
園子が上機嫌なのもある意味2人は理解できる。何故なら今日は……。
「ミノさんの退院なのに落ち着いてはいられないよ~」
銀がついに退院する日なのである。本来なら入院期間が長いほどの負傷で一時は危うい事もあった。
しかし、それとは裏腹に後遺症も確認されず、勇者の回復力もあってかほぼ完治した。また、バーテックスの攻撃による影響も大赦側で示唆されていたが検査の結果、問題はないことが証明されたため早期の退院が認められたのだ。
「もう我慢できない~迎えにいくよ~」
そんな中、園子が待ちきれずに病院に入ろうとしたのを須美・勇は止めようとした瞬間、病院の正面玄関が開いた。どうやら退院の手続きが終わったようで銀が3人の姿を見つけ、軽く手を上げて挨拶をした。
「やっほー。なんとか退院できたよ~」
「銀、お勤めご苦労様」
「おかえり~ミノさん~」
「元気に退院できてよかったよ」
3人は銀の元へと駆け寄る。銀は、バーテックスに撃ち抜かれた足が治りきってない事もあり今は車椅子を使っている。一番酷かったということもあるがこちらも順調に回復し、治り次第リハビリの予定だ。
「勇君、須美ちゃん、園子ちゃん。こんにちは」
「あうあう」
「あらら、挨拶しちゃって。この子も混ざりたいのかな」
「こんにちは。銀のお父さま、お母さま」
「こんにちは~。弟さんも一緒なんですね」
「陸さん、碧さん、巧君。こんにちは」
車椅子を押しているのは銀の父『三ノ輪
「さてと、立ち話もなんだけど学校に送っていかないと」
「終業式には間に合わないと思うけど、ホームルームには間に合いそうね。3人も乗って行ってね」
「そうだった。行かないと」
「「「はい。お願いします」」」
3人は本来なら夏休み前の終業式で学校に行かなければならないが、銀の退院日と重なったため大赦による口利きもあり先に迎えに行くことが可能となった。変わりに終わり次第学校へ銀と共に顔を出すことになっている。
銀を含めた4人は、大赦が用意してくれたのか専用の福祉車両に乗り、陸の運転で学校へと向かった。
―――――――――――
-神樹館 6年1組教室-
「ギンちゃん~本当に元気になってよかったよ~」
「足の方は大丈夫?歩けるようになるの?」
ちょうどホームルームも終わった頃に教室へと入った4人だったが、車椅子姿ながらも無事な姿を見せた銀にクラス中の主に女子が集まり、近況などの質問攻めにあっていた。
「順調にいけば夏休みはじまって数日中には歩けるようにはなるし、鍛えれば走ったり跳んだりできるようになるってサ」
銀は須美と園子のフォローもあってか質問に答えていた。久しぶりの学校もあってか笑顔が絶えない。いつの間にか女子限定でのおしゃべり会と発展していた。
その一方―――、
「わ……我らの銀ちゃんが……orz」
「ま……負けた。何もかも……orz」
「ぱっと出の転入生に……orz」
「あいつらはいったいどうしたんだ」
「ほっといてもいいんじゃないか…」
一方、クラス中の男子が車椅子を押し入ってきた勇の姿を見て沈んでいた。勇は和人の言う通り気にしないことにした。
「「「これで勝ったと思うなよ―――!!!」」」
「いったいなんなんだよ。それは……」
――――――――――――
―――
「あっはっは。どおりで男子が静かだと思ったらそんな事あったのか」
「銀って男子に人気があるからね」
「でも~うちらの男子っておもしろい事もあるんだけど、空回りしてるのがね~」
学校の終わった帰り道、4人は先生から夏休みの注意事項等を受け銀の家へと向かっていた。
(というか、須美も園子もそれなりに人気あるみたいだけど黙っておこう)
クラス内では銀の他に須美と園子にもかなり人気があることが男子内のネットワーク経由で伝わっていることを勇は知っていた。以前にこの人気もあってか園子の元に恋文が届く(相手は女子だったが)という事件も起きているし、須美も目立ったことは今のとこ見ていないが以前に説教をくらった男子が惹かれるという事があったらしい。
「そういやサ、3人の夏休みの予定は?勇もこれから訓練する事になるけどそれ抜きで」
「行けるとこは全部行きたいな~」
「そうね。みんなと一緒に楽しみたいかな」
そんな中、勇者3人はこれからの夏休みの計画について話し始めた。それを聞いた勇は、
「そうだな…、確かに楽しみたいけどそれなら思いっきりやりたいな。みんながよければだけど宿題もすぐにでも片づけたいと思うんだけどどうかな」
「えぇ~~~こんな時にそれかよ勇~」
勇のアイデアに銀は不満だったが、
「普通ならちょっとずつやっていくのが基本だけど…勇君のアイデアも一理あるわ」
「いさみんやる気だね~」
「僕は面倒なのはすぐに片づける方だからなあ。みんなでやればすぐに片付くし、やろう銀」
「ん~。うし、夏休みを思いっきりエンジョイするためにもやっちゃおうか」
「決定ね。私達はいったん家に戻って宿題やら荷物やら持って、銀の家に向かうからいったんお別れね」
「ミノさん家でお泊り会になるはずが、宿題合宿になっちゃったねえ~」
この後、3人は銀の家でお泊り会をすることとなっている。両親はお見舞いの後、大赦へと行ったため今日は帰れないだが、銀の弟である巧が家に残っているためでもある。
「んじゃまあ、またあとでな」
須美と園子はいったん彼女たちの自宅へと戻り。勇は銀の車椅子を押して家路へとついた。
「勇、重くないかい…///」
「ん?いや、問題ないよ」
2人がいなくなった後、そんなやり取りをしながらだが。
――――――――――
-三ノ輪家-
「あ~食った食った。シャバの飯はうまいうまい」
「……どこのお勤め後のひとだよ…」
勇の突っ込みがとんだが、銀は久しぶりの御馳走に舌鼓を打っていた。入院中の病院食生活があったせいなのか病み上がりにも関わらず結構な量を食べていた。
「本当によく食べたわねえ…それにしてもそのっち」
「ん~」
「あんなのどうやって用意したの?」
台所を見ると使用人やら板前やらが片づけをしている。
「ふふ~。こういう時こそお家パワーだよ」
どうやら園子の仕業らしい。銀の退院祝いで前々から計画を練っていたようだ。こういう時の行動力は目ぼしいほどである。
「さてと、腹休めも終わったことですし、紺野先生やりましょうか」
「……そうですね、鷲尾先生」
夕食を終え休憩も終えた須美と勇は先生モードへとなった。
「わ~鷲尾先生と紺野先生再びだよ~」
「あ、あのす「鷲尾先生よ。銀」…本気でやるんですかい」
そうやら須美は先生キャラがえらく気に入ってるようで完全成りきっている。
「当たり前だよ。入院で遅れた所はマンツーマンで教えるから」
「ミノさん~いさみん達もやる気だし。あきらめて、片付けよ」
「とほほ……退院して早々これだけど、頑張ろ…」
銀は3人の言い分に負け、夏休みの宿題を片づけることにした。
鷲尾先生と紺野先生が主導となり宿題のわからない所を教えながら自らも解いていく。園子は時々答えの記入欄がずれるということもあったがスラスラと進んでいる。銀は入院生活もあったのと勉強が苦手なためかなり悪戦苦闘していた。
「ここは…こうかな」
勇がマンツーマンで教えていたが、
「ん、そっか。そういうことか」
(銀は苦手って言ってる割には物分りがいいな。これならなんとか終わらせそうだ)
銀が意外と物分りはいい方ということが分かり、次第に解くペースが徐々に上がっていった。
――――――――――
side:銀
な…なんとか宿題が終わった…アタシもやれば出来るんだな。
須美と勇は初日に終わらせようと気合入り過ぎだろ。こっちは病み上がりなんだし!
…まあ、そのおかげで終わったから夏休み中は遊びまくれるんだけどね。いっしっし。
「お疲れ様、銀」
「Zzzzz」
「巧君、かわいいなぁ~♪」
ご自慢の弟なんだから可愛いのは当然だぜ園子。しっかしなあ、本当に戻ってこれたんだなあ。
「ミノさん、なんか黄昏ちゃってる~」
「どうしたの、銀。いつものあなたらしくない」
うん……、あの戦いで2人を逃がして戦ったけどさ、結局は勇に助けられて撃退はできだんだけど…。そん時にさ…はじめて死ぬって思ってさ、もうあの日常に戻れないかと…。
「あ……」
「銀……」
いつかはこうなるかもしれないから覚悟はあったしけど、友達が傷付いて死ぬかもしれなかったとこを見たらさ…いてもたってもいられなくなっちゃって。胸が張り裂けそうだった思いはこの事だったかもな…。
それに勇にも言われて気付いたんだけど、知っている人が失いそうになるってのは本当に怖かった…辛かったんだ。
「ミノさん、それを言うなら私もだよ…」
「私もだわ……夢で銀が死ぬのを見ちゃって」
そっか、2人もか。……とここでアタシ達はお役目の悲惨な現実に直面しみんな黙ってしまう。みんなその目が潤んでいて、
「「「……うぅ…くっ…」」」
3人して気持ちをぶちまけたのとあの辛かった戦いを思い出し、みんなで泣きながら抱き締めた。アタシは動けないから須美と園子からだけどね。
落ち着くまで抱き締めて泣いた後、アタシは意を決して2人に口を開く。
「……アタシ決めた。もうこんな事がないように強くなる。命を投げ出すようなヒーローみたいじゃなくて、何があっても帰って来れるように強くなる!」
「私もだよミノさん。もうあんな辛い事…絶対にさせないよ!」
「まだまだ強くならないといけないわね。3人…いや勇君を入れて4人で無事にお役目をこなすために!」
アタシ達3人は改めて勇者としての決意をした。もう2度とあんな事にならないように強くなろうと。
―――――――――――
side:勇
「ふう…」
自室のベットに転がりながら僕は今までのことを振り返る。
これまでいろいろあり過ぎた2週間だったな。銀を助けたいと思って勇者みたいになったし、それから共に四国を守るために一緒に戦うことを決めたりと……。
自らの秘めた力で彼女たちを守れたんだなと。
「なあ、麒麟」
【どうなされましたか】
前の戦闘の後に疲れで倒れてしまったからもっと鍛えないと駄目だと思うんだ。長期戦になって途中で倒れたら元も子もないし。大赦でこれから訓練あるけど正直力の使い方で分からないことが多い、だから、頼りになるかもしれないけどよろしくね。
【お任せください。ですが…訓練に関しては少し厳しめにいかせて頂きますよ……】
「ははは…お手柔らかに」
僕は麒麟とそんな事を話しながら改めて誓う…これからも誰かのためでなく、自分の意志でみんなを戦う事と、そして……なにがあってもこの日常を彼女らと共に守っていくと。
さてと、明日からの夏休み…いつものとは少し違うけどどうなるか楽しみだな。
―――――――――――
――――――――――
side:大赦
「……以上が、バーテックスの逸脱した行動の内容となります」
大赦内では今後の対応についての話し合いが行われていた。原因は、バーテックスの法則から外れる行動内容、それらに戦略的な意図があったということでの対策会議である。
「そうなるとやはり…勇者の力の強化が必要になるか」
「開発班や特務班共同での新たなシステム開発が進んでいますが」
「神樹様の与えられた力が足りないのが問題です。想定通りの性能にはほど遠いかと」
大赦の大人たちは何度も話し合いを続ける。
「……やはり、勇者を死なせたくありません」
「うむ。神樹様にお願いしましょう。あの子達が生き抜き、戦える力を」
今後の方針の一つが、勇者のために四国の守護を司る神樹に新たな力を授かる事とした。
そして、もう一つの方針が、
「……新たに確認された男子の勇者については」
「これに関しては、この子が『資質持ち』であることが特務班から報告が入っています」
「うむ……、特務班からはどう見るのかね。そちらの所持していたシステムに関してもな」
「……幸い、彼は勇者の活動を知っており、勇者になった因果関係は現在も調査中です。勇者と共に戦う事に関しての協力を受理してくれました。システムは以前共同で開発していた専用のものとなってます…運用出来ずに保管されていたものですが手元の資料通り高い成果を挙げています」
「少年の両親等の許可は?」
「こちらの組織の人員の身内の子です。子の意思を尊重するとこことです。つきましては……」
「『資質持ち』に関してはそちらの組織が担当することになってるであろう。そちらは任せる」
「……わかりました」
新たに確認された勇者である勇を戦力化にすることが決まった。ただし、大赦としてではなくあくまで特務班の所属という条件付きだが認められることとなった。
(ひとまずは現状はこれでいい。勇を戦力に引き入れる事だが事前の根回しでこちらの担当にすることが出来た)
(本当はあいつを巻き込みたくはなかったが…あの子の言う通りになってしまったな……だがあいつが共に戦う事を決めたのなら、勇者と共に何があっても守る…それが先祖たちの決めた方針でもあるがそれよりもあいつらとの約束だ!)
こうして、大赦での会議は夜明けまで続き、各々早急なる対応を行うこととなる。
●三ノ輪家一同の名前付け
適当に引っ張ってきましたが、なぜか気づいたら漢字一文字を選んでいた…。
●モブ男子
残念なのは仕様です。
●鷲尾先生再び
作者も気に入ってるためやりたかったネタである。
●大赦サイド
この章で度々出る予定、裏ではこんな感じにやってたんだろうとの設定。