神樹館の転入生【凍結】   作:黑羽焔

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第13話 夏休み初日の出来事

side:勇

「ん……朝か?」

 

時間はAM7:30、昨日中に皆で宿題を片付けて寝るのが遅かったのかいつもより遅く起きちゃったな。夏休み初日で気が抜けていたのか寝坊したようだ……。

 

「勇~起きてるか~?」

 

ん?この声は…。

 

不意に声が聞こえたため自室から出て庭へと向かうと近所の三ノ輪家から銀が勇を呼んでいた。

 

「勇、おはよ~っす!」

「おはよう、銀」

 

今日は早いね。宿題終わらすのに遅くまでやってたのに。

 

「須美に起こされた。で、須美が朝食作ったから勇も一緒に食べようかと思って呼んだんだ」

 

なるほどね。おじさんたちも帰ってきてないようだしご一緒しようかな。という訳で、銀の家で朝食を頂くことになった。

 

 

 

-三ノ輪家-

「入ってもいいよ~」

「お邪魔します」

 

銀の許可も出たことで家へと上り込む。声が聞こえた方へと向かうと3人は居間にいた。銀はゆったりとくつろいでいて、須美は台所で朝食の準備をしていた。

 

「おはよ、勇君」

「おはよう、須美」

「むにゃぁ~Zzz」

 

僕が来たことに気付いた須美が振り向き挨拶をする。……園子はどうやらまだ夢の世界のようだな…

 

どんだけ器用なんだ座りながらもこっちに反応しながら寝ているなんて……。

 

「今日から訓練も開始なのにね……いつもこうなのかねぇ」

「たぶん…ね。勇君、運ぶの手伝ってもらえるかな」

「心得た」

 

園子もこの状態だし、銀はまだ動けないので、須美の作った料理をちゃぶ台に並べる。白米に味噌汁、おかずに焼鮭や玉子焼きという和食一色だけどどれも美味しそうだな。

 

「朝は、お米を食べないとね。元気が出ないの。昼はうどん、おやつはぼた餅、夜はご飯。これが私の理想なの」

 

あはは……須美はこだわっているなあ。

 

「アタシはがっつり食べる派だな…。和とか洋とか関係なしに」

「僕もだな」

 

「そうなの?ふふっ、それならそのっちを含めて私の両親みたいに和食派に変えてみせるわ」

 

「あちゃ~モードはいっちゃったよ」

「和食派って…アタシはどっちでもいいんだけど…」

 

「ふにゃぁ~Zzz…ん~いいにおいがすると思ったら美味しそうなものが~。あ、わっしー、ミノさん、いさみん、おはよぉ~」

 

おはよう。朝食の談義をしていると園子が目覚めたようだな。ここらで切り上げて食べるとするか。

 

「「「「いただきます!!」」」」

 

お決まりの挨拶をして、みんなで一品一品箸でつまみ口へと運ぶ。

 

「むぐむぐ……須美の料理はじめて食べたけど、美味い!」

「うん、美味しいよ~」

「この玉子焼き…僕の好みかな」

 

みんなで須美の料理に絶賛し感想をもらす。

 

「みんなの口に合ってよかったわ。それにしても、勇君は男の子だからともかく銀もよく食べるわね」

 

「むぐむぐ……ごくん。アタシは美味しいものを前にすると自然と手が動いちゃうからなあ…むぐむぐ」

 

「わっしーもこんなに美味しいものが作れるなんて~」

 

園子もやってみればいいじゃないのかな?料理は結構楽しいよ。

 

「えぇ~」

 

「そういう、勇君や銀はどうなの」

 

「アタシは家の手伝いでそれなりには作れるけどサ…須美程凝ってるわけじゃないからなあ」

 

僕もおじさんが家に帰れないこともあるから自分で作ることが多いなあ。でも、銀…この前食べたカレーうどんは結構うまかったんだけど。

 

「あれは、有り合わせで簡単に作ったものだよ」

 

「それじゃあこの中で料理できないのは…私だけ~うぅ~しょんぼり」

 

「今度機会があれば教えるわよ。結構楽しいわよ」

 

「うまくできるかなぁ~」

 

「僕だったら一生懸命やって上手くなったら何度でも食べたくなっちゃうかな」

 

話の流れで何故か園子にも料理の楽しさを教えようということになっていた。

 

side out

 

 

 

side:銀

上手くなったら何度でも食べたくなるか…。アタシも勇の親も帰ってこない事が度々あって一緒に飯作ったり食べたりしていたけど、食い専だから有り合わせで作ったあのカレーうどんを勇は夢中になって食べてくれてたな。

 

勇はもしかして料理うまい人が好きなのかな?

 

…やっぱし、はじめて出会ってから色々あったけどアタシは勇のことをはっきりと意識してしまっているようだ。

 

そういえば、以前に須美と園子と将来の夢について話した時に、アタシは意外と思いつかなかったからなあ…普通に家庭をもつ、つまりはお嫁さんになるというのを恥ずかしながら話したけど2人はありって言ってくれたし…。

 

お嫁さんか……早いような気もするけど、ちょっと本気で習ってみようかな。

 

side out

 

 

 

side:勇

「須美、アタシも教わっていいかな…」

 

「いいわよ、銀もやりたいようだし、園子もどうかしら」

 

「う~ん、やってみようかなぁ~」

 

そんな感じで時間が過ぎていき、大赦のお迎えが来たため、僕たちは準備をすると訓練所へと向かった。

 

 

 

――――――――――

 

 

 

-大赦所有 訓練場-

「……すげえしんどい…」

「勇君、しぼられてる…」

「いさみん、大丈夫?」

 

なんとかね…。それにしてもこんなにきついものだったのか。

 

訓練初日という事もあってか僕の体力テストの後、須美・園子と同じ内容のメニューをこなすことになった。基礎的な鍛錬や素振り・技の型の確認とかだったが、慣れてないせいなのか僕は床に伏してぜいぜいと息をしていた。体力には自信があったんだけどなあ……。どうやら銀たちが教官と呼んでいる人が言うには、鍛えていないのか身体が出来上がっていないのか動かし方に無駄があるらしい。

 

須美と園子も呼吸は乱れて床に座っているものの僕ほどの疲労はないようだ……勇者に選ばれたころからやってるからすごいなあ。

 

「そうでもないよ。アタシ等も最初はこんなもんだったし」

 

そう言ってると別メニューをこなしていた銀が戻ってきた。…足まだ治ってないのに体動かして大丈夫なのかな?

 

「んー。上半身だけの特別メニューでそれほどきつくはないし。あまり鈍らないようにするためのやつだってさ。ほらよ」

 

銀はどこからか持ってきたのかドリンクを手渡してきた…火照った身体に冷たいのが染み渡って美味しいな。

 

「ありがと、ミノさん…ごくごく、ぷは~」

「そのっち、それ銀の真似?」

「ちょっと真似てみたぁ~」

「あはは、今のはちょっと似ていたけど、まだまだかな~」

 

ちょっと女の子なんだし、それははしたないよ……。

 

「さて、休憩もこれまでにして紺野は乃木と模擬戦を行ってもらう。その後、休憩をはさんでから鷲尾とだ。三ノ輪は見学だが、気づいたことは色々言ってくれ…見るのも勉強だからな」

 

どうやら訓練初日のラストは模擬戦で締めるらしい…相手は園子か。

 

「いさみん~やるからには負けないよ~」

「お手柔らかに頼むよ」

 

「紺野は初心者なので自由に打ち込むでくれ。それでは……始め!」

 

安全のために防具を着け、合図と共に園子へ持っている木刀を打ち込む。僕は剣技に関しては素人なため、自分のやり易いようにやっている。園子は、その大筋を見切っているのか槍の練習で使っている長めの木棒で丁寧に捌く。

 

side out

 

 

 

視点:銀&須美

「勇君、大丈夫なのかしら…」

「あの時だってそれなりに戦えたけど、どうなんだろ」

 

【結果は見えてると思いますよ】

 

「(!?)いつの間に」

「うわっと。…ええと、麒麟だっけ?いつの間に、それに結果は見えてるって…というか出てもいいのかよ」

 

麒麟に関しての事は、銀・須美・園子には勇から詳しく事情は話してある。後々に勇者システムに組み込む予定のサポートの一種としての存在として彼女らは認識してある。

 

【今はお二人にしか見えないように配慮してますよ。結果が見えてる件については、あの時は私のサポートもありましたから…今はそれがないもので】

 

「う~ん。どういうことなんだ」

「もしかして…」

麒麟の言う事に須美は気づいた。

 

「そこぉ~!!!」

「!?」

 

その瞬間、勝負があった。園子は切り上げで、勇の木刀を弾き飛ばした。すぐさま、その空いた首筋に木棒の先端が突きつけられた。

 

「私の勝ち♪」

 

 

 

――――――――――

 

 

 

視点:3人称

-うどん屋-

その日の訓練を終えた4人は近場のうどん屋で昼食をとることにした。この地域ではうどん屋が豊富で小学生だけでも歓迎してくれるし、安いため懐にも優しい。

 

「『醤油かけうどん』で」

「『きつねうどん』~」

「アタシは『梅干しうどん』だな」

「僕は『明太おろし醤油』で」

 

4人はそれぞれ注文をし席へとついていた。勇はテーブルに突っ伏しながらぼやいた。

 

「なんか男としてのプライドが傷ついたような気がする……」

 

模擬戦の結果を言えば、勇は須美・園子相手に1回も勝つことは出来なかった……。園子には間合いに入れずいなされたり懐に誘われて弾かれたりした。須美は徒手空手はあまり得意ではないと言ったけど完全に制されてしまっていた。

 

「まあ、ど素人ながらよくやった方だと思うぞ」

「でも、そう言ってる割には筋は良かったと思うけど」

「うん~。やる度に動きが良くなってたよ」

 

「そう…かな…」

 

回数を重ねるたびに勇の動きはよくなっており、勇者としての訓練を前々から受けている須美や園子ですら唸らせる動きを見せていた。3勇者はそれを素直に評価し感想を述べた。

 

「勇はそこら辺の感覚はいいからさ。訓練すればアタシらみたいに出来るってさ。そこは誇ってもいいんじゃないかな」

「そう言われると少しは楽になるよ……」

 

「それに勇君は私達と違ってお役目のための訓練はこれが初めてだしこんなものだと思うわ。今がどのくらいか知れば次につなげることが出来るし…今まで以上に頑張りましょ」

 

そうこう話しているうちに注文していたうどんが運ばれてきた。

 

「さてと…話はいったん切り上げて食べましょうか」

「うんうん~」

「そうだね。これを食べて次回につなげよう…次は絶対に勝ってやるぞ」

「あはは、勇も意外と負けず嫌いだな」

 

 

 

 

――― しばしの平穏は続く。4人の夏は始まったばかりだ。




<後書き>
●銀のオリ主の思いについて
夏休み中に徐々に進行する模様。須美と園子は後々に気付く予定。

●銀の料理スキル設定
わしゆラジオのネタを使用。現在は有り合わせでのものしか作れない。

●主人公のシステムなしでの強さ
チート抜きでそれなりの身体能力という設定。ただし、現時点では勇者の特訓をしていた3人にはかなり劣っている。

次話は時期列がとんで原作6話の夏祭り回になると思います。
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