No side
「……夏だねぇ~。もう8月だよ」
「今日はどのくらい暑くなるのかしら」
「うぅ~蝉も絶好調だな。どっからも聞こえるよ」
「全くだね……」
夏本番ともいえる8月のある日、4人は訓練終了後夏休み中の神樹館へと足を運んでいた。
「先生の用件ってなんだろうねえ~」
「だよなあ。それに新しい勇者システムのことも知りたいし。どうなるんだろうな」
「だからこうして先生に聞きにきたんじゃない」
目的は今度実装される新たな勇者システムのことである。ある程度の仕様を聞いている須美・園子・銀であったがわからない所があるため先生に聞こうと訪れたわけだ。
「……まあ、とにかく聞いてみるのが一番だね」
勇はそう言うと扉を開け4人は職員室へと入っていった。
「新型の勇者システムのこと?」
「はい。そろそろ実装される前に色々聞こうと思いまして」
「そうね…前にあった事を踏まえて勇者を極力死なせないための配慮をすることになってサポートと『切り札』この2つを加えることにしたの」
「サポートっていうと」
「精霊のことよ」
「それってうらめしや~っていうものじゃないよね~」
「園子…それ幽霊だよ」
「虫は平気なのに幽霊は駄目なんだ……」
あたふたする園子に銀はいつもの調子で突っ込み、勇は遠慮がちに笑った。
「サポートの精霊だけど、勇君の使ってるシステムにあるのがそれよ。それと似たようなものよ」
「そうでしたか」
「勇も言ってたけど、その通りなんだな」
「元々は試作段階のを勇君が使って高い成果を挙げたから実戦用にするみたいね。あとは、『切り札』ともいえるものも実装するんだけど、こっちは未だに調整中だから時間がかかりそうね。そっちはまだ語れないの。新型が支給されるまでの楽しみにしといてね」
「分かりました。可能な限り答えていただき、ありがとうございます」
須美が代表して言うと、4人はぺこりとお辞儀をした。
「さて…4人にはこれから特別なお役目もあります……」
改まった先生の口調で、須美は直立不動の姿勢に、勇は気持ちを改め、園子と銀は何々といった様子で先生を見ている。
「貴方たち4人には今日のお祭りに行って楽しんでくることを命じます」
「え……?」
予想外の言葉に思わず声が出てしまった須美は、
「楽しんでくるって…先生、私達は勇者としてのお役目を……」
「三ノ輪さんや紺野君の事もあって頑張るのはわかるんだけど……」
「先生、私は」
生来の頑固さもあってかお役目の事を優先してしまいこんな事をするべきじゃないと思い反論しようとしていた。その様子を見ていた勇は、
「(う~ん、また須美の悪いところ出ちゃったかな。ここは悪いけど…)須美、先生もこう言ってるし楽しんでこようよ。確かに、お役目のこともあるけど休むのも大事だよ」
「そうだよ、須美。ここんとこ鍛錬ばっかだったし休まないといざという時に力だせないしサ。思いっきりエンジョイしないと」
「そうだよ~わっしー」
須美の言葉を遮り強引に止めることにした。意図を呼んだのか銀・園子の援護もあって須美は思いとどまった。
「みんなの言う通りよ。大赦からの許可も出ているし、というか祭りがおこなわれる神社がそもそも
大赦と同義だもの。こう考えれば気も楽でしょう? お祭りには出なくちゃ、ね?」
「……分かりました」
「「「先生、ありがとうございます」」」
「楽しんでくるのよ」
四面楚歌になった頑固な須美はついに折れ、4人は夜に行われる夏祭りに参加することとなった。
―――――――――――
-三ノ輪家-
side:勇
今僕は巧君のお世話をしながら銀を待っていた。
どうやら碧さんが私服で行こうとした銀を捕まえ、浴衣の着付けをするために引っ張って行った。
ちなみに夏祭りに行くということで僕もおじさんが出してくれた甚平を着ている。お小遣いとか色々用意した後に、大赦の人との懇親会に陸さんと共に行ってしまった。
「よ、よう。待たせた…かな」
声がした方に振り向くと、
「うぅ~こんなの似合わないのに……」
「何言ってるの女の子なんだからこういう場はこれじゃないとね。勇君、銀はどうかしら」
いや、凄く似合ってるよ…。銀の浴衣は橙色で牡丹の花をあしらった模様で、髪型もいつものとは変えアップして纏め簪でとめている。いつも元気いっぱいな銀が雰囲気が変わってお淑やかに見えるのかより綺麗だ。
「よく出来ました♪」
「そう言っても何も出ないぞ、勇!」
実際そうなんだから素直にそうとしか言えないよ。時間にはまだ余裕があるけどそろそろ行こうか。
「そうね。車椅子の分時間もかかるしちょうどいいわね。はい、お小遣い」
杖を使えば銀もそれなりに歩けるようになったけど人ごみで自由に動きづらいということで小回りが利く車椅子で行くことになった。銀の希望でもあるが…。
「……なぜか勇に押してもらうと安心できるんだ。それじゃあ、お願いな」
「そっか。それじゃあ碧さん、巧君いってきます」
「いってきま~っす」
「2人共気を付けてね~」
「あいあい~」
side out
―――――――――――
――― 勇と銀が神社へと向かいはじめた同時刻
side:須美
先生やみんなに言われて夏祭りに行くことになったけど、
「……いいのかしら、お祭りで遊んで」
あれから1か月経ってもバーテックスが来ないのは幸いだけど、こんなことをしててもいいのかしら……。
「そんなことを言ってても、わっしーってば、浴衣着てきてるしさ~本当はノリノリなんでしょ~」
「親に着せられたのよ……」
私は水色で様々な色の菊、そのっちは薄めの紫でバラの花をあしらった柄の浴衣姿で神社までの道程を歩いている。銀と勇君はちょうど神社とは反対側の方角から来るみたいだから現地で落ち合うことになってるわ。
「来たらその時だよ。わっしーはちょっとお役目で気を張り過ぎなんだよ~。ミノさんやいさみんも気にしてたよ」
「う…」
ここ最近、そのっちがさらに鋭くなったような気がする。
訓練もあってか合間に近場に出かける事しかしてなかったから、……実は今日のお祭りに行けるのはうれしかったりもする…うん、自分に素直になろう。
「……今日はそのっちやみんなと思いっきり楽しむとするわ」
「うんうん、それがいいよ~。ところでわっしー、ちょっとくるくる回ってみて」
え、こうかしら?
「うん、お人形さんみたいでかわいい~。シャッターチャンス♪」
そのっちは私の浴衣姿を撮ろうと、ワタワタと携帯端末を取り出す。こら、撮影は禁止よ!
「いいもん~私の携帯だもん。待ち受けにしちゃうよ~」
「そういうなら、そのっちも私の待ち受けにしちゃうわよ」
と、こんな感じではしゃぎながら神社へと向かっているとそのっちが思い出したかのように口を開いた。
「……そういえば、ミノさんのトラブル体質大丈夫かな。人多いし」
「……最近、勇君のおかげか影を潜めて忘れてたけど、こう人も多いんじゃ」
銀のトラブル体質の事を思い出す私達、勇君大丈夫かなと思っていると着信音が鳴り、携帯端末を取り出すとメールが入っていた。
《送信者:紺野勇
タイトル:トラブル発生
内容:銀が迷子の子を発見したので、運営本部に送ってからそっちに向かう》
…噂をしていたら事が起きてしまったわ。
「あはは~。いさみんでもこの人だかりでのトラブル回避は無理かぁ」
これはゆっくり行ってもよさそうかな。そのっち色々見て回ってから集合場所へ向かいましょ。
「は~い♪」
side out
―――――――――――
side:勇
「凄い人だかりだね。前に住んでいたところじゃあこんなにはいなかったよ」
「うん、ここら辺では一番大きいお祭りだからさ。離れた地域や街の人を合わせたらそれは凄い人数なんだ」
神社の境内に近づくたびに人が増え、活気で賑わっているのがよく分かる。僕はこの辺りを熟知している銀の案内でそこら辺を見て周りながら須美・園子との待ち合わせ場所へと向かっていると、
「ん?」
「どうしたの銀?」
「あそこ…」
僕は銀の指差したところを見ると、黄色の短髪で前の横らへんを2か所まとめ、アクセントに花飾りをつけ緑色の浴衣を着た背の低い女の子がキョロキョロとあたりを見回していた。歳は僕らと同じか1~2程年下かな?
銀の事だろう多分いつもの調子ならあの子のこと放っておけずすぐにでも行動を起こしそうだ。僕はそう思うとすぐさま女の子の方へと車椅子を動かした。
「勇?」
「放ってはおけないんでしょ。こういう時こそ頼ってよ」
僕は車いすを押して女の子の下へ向かった。女の子はきょとんとこちらの方を見ている。
「よ、どうしたんだい?」
銀はいつもの砕けた感じで女の子に挨拶をする。女の子はぱちくりとしてたが意を決して、
「家族と一緒に来てたんですけど、いったん分かれて…お姉ちゃんと一緒に色々見て回ってたんですけど、いつの間にかはぐれちゃってて……」
「そっか~。それじゃあ一緒に探そうかな」
「え?あのう…」
事情を説明した女の子は銀の車椅子姿を見て断ろうとする。でもね僕もこういうのはぼおっておけない性分だから、っとその前に須美にメール送信っと。
「心配はいらないよ、連れもそれ承知してるし。そうじゃなくてもほっとけないからね」
「とりあえず運営のとこに向かった方がいいかな。こう混みあってるならかえって見つかりそうにないや」
「あ、はい…それじゃあ…」
女の子は事情を聞いた銀と勇の善意を受け、一緒にお姉ちゃんを探そうとしたが、
side out
No side
「樹ぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」
「あ、お姉ちゃん!」
女の子の姉とらしき黄色の長めの髪をシュシュで2つのテールにした背の高い子が走り込んできた。
浴衣の色も髪と同じ黄色を着ている。しかし浴衣なのに相当な速度だ。女の子は自分の場所を示すかのようにブンブンと手を振っている。
「大丈夫だった!?いつの間にはぐれたから心配で」
「お姉ちゃん、心配し過ぎだよぉ」
女の子の名前は樹という子らしい。姉らしき人が樹に抱きしめ無事だと解ると、何故か勇を睨みつけ。
「ちょっとあんた!車椅子の彼女連れなのに人様の妹に手を出そうなんていい度胸してるわね!」
樹の姉は勇にくってかかってきた。勇は冷静に説得しようとしたが、
「あの、そういうつ…「ワッツ!?彼女///」銀!」
ただの友達と言おうとしたが銀が『彼女』という言葉に反応し顔を赤くする。それを見た姉の燃え上がる怒りの炎に油を注ぐような結果になってしまった。
「しらばくれやがってーこのや…「お…お姉ちゃん!この人たちは」え?」
‐事情説明中‐
「本当にっごめん!」
「そんなに頭下げなくたって大丈夫ですって、勘違いから起きた事ですし」
樹の姉が頭を下げ謝ってきた。それを勇はなだめた。
「アンタのお姉ちゃん…いつもこんな調子なのかな」
「あはは…すみません」
わだかまりが解けて地が固まったのか4人は一緒に祭の境内の本会場へと歩を進めていた。
姉がここでふと思い出したかのように、
「そういえば、ちゃんと名乗ってなかったわね。あたしは『
「い…『
「僕は『紺野勇』。こっちが同級生の」
「『三ノ輪銀』だ」
話の流れで自然に自己紹介をした。
「そういや、風さん姉妹はこの辺じゃあ見ないけど地元の人ではなさそうだね」
「そうよ。夏休みを利用して両親がいるこの街に遊びに来たの」
「いつもお仕事で忙しいから…今日は楽しみだったの」
「そっか~」
銀の質問を皮切りに、気さくでさばさばとした性格という共通点があるのか銀と風はいつの間にか意気投合していた。人見知りも激しい樹もこの事で幾分か警戒心が解け話に混ざる。
「ところでさ、2人って出来てるわけ?さっきあたしの言った事になんか脈ありのようだったし」
「…そうじゃないですよ。ただの友達ですよ」
「そ…そうだね」
少し銀の気分が沈んだように見た風は、
「ふふ~ん。(樹ちょっと)」
「(わかったよ。お姉ちゃん)」
思いつきにより樹と共に勇が押している車椅子ごと銀を引き離し小声でひそひそと話し始めた。
「(銀さん、本当のところはどうなんですか)」
「(実はと言うと、気になっている…いや、好きかな……)」
「(銀は完全に脈ありっていったとこね。と、なるとあっちはまだまだみたいね)」
「……いったい何を話したんだ?」
「「「何でもないよ!」わ!」ですよ!」
気付くと4人は境内の屋台が集まるエリアへと入っていた。勇・銀は須美・園子、犬吠崎姉妹は両親との集合場所の近くである。
「ここら辺に友達と合流して風さんと樹ちゃんとも一緒に回りたかったんだけど、親御さんと合流か…」
「ごめんね。いつもいないから樹には出来れば親と一緒にいさせたかったの…寂しい思いをさせてるから」
姉妹の姿を見かけたのか、2人の両親が手を振りながら駆け寄ってくる。
「それじゃあ、僕たちはこれで」
「じゃあね~風さん、樹」
「案内ありがとうね」
「お世話になりました~」
勇と銀は姉妹と別れ、須美・園子との集合場所へと行ってしまった。その後ろ姿を見た姉妹の両親は呟いた。
「(あの2人…)」
「(1人は勇者の子ね。もう1人はイレギュラーな勇者と聞いたけど)」
――――――――――
風と樹と別れた勇と銀は、須美と園子と合流した。須美・園子の2人はある程度回っていたのか両手に色々荷物を抱えていた。
「ごめんごめん、待たせたかな?」
「ううん、意外と早かったわね」
「幸いすぐに解決したけど、迷子の子とその付添の人の目的地が同じだったから一緒に来たんだ」
「なるほどね~。まあいいや、それよりも早くいこ~」
「はぐれないでよそのっち。さっき人ごみに流されかけたから」
「うん…ねえ、わっしーはぐれないようにまた握ってくれるかな」
園子のお願いに須美は微笑みその手を握る。
「お~お熱い事で。アタシらも行こうか勇」
「だね」
勇も車椅子を押し、合流した4人は屋台を回ることにした。
ここからは4人がどんな店を回るのかその様子を語るとする。
・射的にて
「痛て、おじさんは景品じゃないぞ」
「はわわ~ごめんなさい~。うぅ~全然当たらないよ」
「あはは、園子らしいや。ってアタシも人の事言えないけど……」
銀と園子はお目当ての商品を狙っていたが全くとれずに苦戦していた。
「そのっち、ちょっとやってみてもいいかな。あのオオアリクイを狙えばいいのね」
「わっしー、お願い。あとあれはアルマジロだよ~」
須美は1発目は外すも、コルク銃の着弾点を把握し2発目で見事に命中。ぬいぐるみを落とした。
「無事にとれてよかったわ。はい、そのっち」
「さすが弓兵。ありがと、わっしー」
「銀はどれが欲しいのかな?」
「勇もやるのか。アタシはあれが欲しいんだけど」
銀が指差したのは小物を詰め合わせた箱であった。他の景品より重いのか支えとなっている積み木の上にのっており、それに当ててバランスを崩させて落としても獲得できるようだ。
「何が入ってるかが気になるんだけど当てても全然落ちないんだ」
「積み木もそれなりに重いからね。ちょっとやそっとで揺らしても落とせないようにしてあるよ。あと、2丁以上銃使うのやら他の人と同時に狙うのはなしね」
「ちょっとずるいよ~おっちゃん」
「なるほどね。(あくまで1発じゃあ駄目ですぐに揺れは治まるけど…)銀あと何発?」
「3発かな」
「十分!」
1発目は的が大きいのもあってか商品の下の積み木に命中させる。箱は揺れるが落ちる気配は全くない。その瞬間勇がとった行動は、
――― キュ…ガシャコン…パンッ!…キュ…ガシャコン…パンッ!
「なぬ!?」
「早っ!!」
左手ですぐ弾を詰め、右手で撃鉄をおこす。勇の早業で銃はすぐ撃てるようになり揺れが治まりきる前に2発目を発射。箱はさらに揺れる。すかさず3発目を発射すると重みに耐えきれず積み木は倒れ箱は落ちた。
「やるな少年。ほらよ」
「ふぅ…ほら、銀」
「あ、ありがとう勇」
・屋台といったら食べ物
「うん、意外と美味しいわ」
「あぁぁ。この味、美味しい~」
「こら!私が買ったのに」
「はむ…むぐむぐ。くー、やっぱしお祭りはタコ焼き食べないとしまらないぜ」
「ベビーカステラか…うん、程よい甘さでふわふわしてて…はじめて食べたけど何個でもいけるな。
……これも中々うまいな…」
須美が買った綿飴に園子までかぶりつく、食べていた園子だったがもっと欲しくなったのか綿飴の屋台をちらちらと見る。須美は園子を促し屋台に向かわせそれを見守っていた。その様子が可愛らしかったのか綿飴屋に人が集まる。
銀はとにかく片っ端から屋台の食べ物を買い食べている。その食べっぷりに惹かれた人たちが屋台に集まってきた。
勇はこのような場はあまり参加していなかったのか気になったものを買って食べる。その評価を聞いて興味をもった人たちが買っていく。
いつの間にか店の売り上げに貢献してしまっていたようだ。
・金魚すくいとカラーひよこ
「あぁ…意外と力加減が難しいわね」
「わっしー、あのでっかいの狙ってるのかな。こうやるんだよ…」
金魚すくいではためしに須美がやってみると紙が破けてしまう一方で、園子が優雅な手つきで金魚を掬い取っていた。
「ほえ~…」
「園子こういうの得意だよなあ…まるで神業だ」
「えっへん。はい、わっしーにプレゼント。ぬいぐるみのお返しだよ~」
「ありがとう。そのっち」
勇と銀は園子の鮮やかな手つきについ見惚れてしまった。園子は須美に金魚の入ったビニール袋を手渡す。
「これなら他の屋台も楽勝かもな」
「かもね。それだとあっちの方にもいってみる?」
「えぇ。…あら、そのっち?」
「うわぁ~~~。こ、この可愛さは凶悪だよ~~~」
次に向かうとこを決めようとした3人だったが、園子がカラーひよこに心奪われふらふらと屋台に寄っていた。目を輝かせながら気に入ったひよこを手のひらにのせる。
「可愛いやつめ。ほれ貸してみろ」
それを見た銀がひよこを受け取ると、園子の頭に乗せた。
「はぅ~~~、ずっと頭に乗せてずっと一緒にいたくなっちゃうよ~♪はにゃ~ん」
「そのっち、メロメロだわ……」
「なんだか微笑ましい光景だね」
その様子を須美・勇が微笑ましく見守る。その様子を見たひよこ屋の店主が、
「嬢ちゃんたちちょっとこれは絵になるねえ。それならこれはいかがかな」
『ひよこを乗せて写真を撮ります』というものをすすめてきた。
「始めたのはいいんだがどんなのかわからないのか撮りたがる人がいなくってねぇ…」
「わっしー、ミノさんーやろう、やろうよ~」
「…やっぱし恥ずかしいわ」
「何言ってるんだよ須美ー。そんな格好になってんのにさー」
「ぴよ…ぴーよ。ぴよぴよぴよ~♪」
「それではお三方撮りますよ~」
ひよこ屋の店主がデジカメで3人を撮る。画になっているのは、たくさんのひよこを乗せ、まさに『ひよこだらけ』と表現できる須美・園子・銀であった。特に園子はトリップ状態ともいえる心ここに在らずまでになってしまっている。
3人共美少女といもいえるレベルとひよこの可愛さによって、
「(い…いけない。これは…画になりすぎて破壊力がありすぎでしょ)」
「あらあら、本当に可愛らしい事」
「萌える…萌えてしまう……」
「うは。これは流行る」
一般の人たちの注目を浴び人だかりができいた。そんな中、勇はひよこを乗せた3人の可愛さに悶絶していた。
あまりにも注目ぶりで、店の撮影サービスが好評となりお礼として4人に撮影した写真のデータがただで送られた。
――――――――――
side:勇
ふぅ。結構な数を回ったが、ここまで楽しめるのは滅多にないからみんなしてはしゃいじゃったな。でも、最後は……、
「さあ、職人芸をしかと見届けましょう」
「うわぁ~。やっぱしすげぇっ~なあ」
「連発きたぁ~お腹に響くぞ~」
夜空を彩る大輪の花…これぞ夏の風物詩である花火、これを見て治めるのが一番だね。今年はこうして彼女たちと見ることになるとは思わなかったが、不思議と悪い感じはしない…。
……あの時、僕がやらなければもしかしたらみんなで見られなかったかもしれない。だからこそ、これで良かったんだと思う。
「(今頃はあの姉妹もどこかで見ているんだろうなあ……)」
みんなで花火に見とれていたが、連発花火が最後だったのか花火のお時間が終わってしまった。
「…あぁ、終わっちゃった~」
「まあ、終わってしまったけどまた来年も来ればいいさ」
「うん!そのためにもまた頑張ろうね~」
「そうね……。今日はもう遅いし、また明日からの鍛錬頑張りましょ」
気付けばもう小学生である僕たちは帰る時間だ。明日からまたお役目のための鍛錬に戻る。…だけど、今この時はもう少しだけ今日の思い出を振り返ろう。……彼女たちと共にこの四国を守るために。
「最後にサ。勇のとってくれた景品開けてみようかな」
「うん、見たい~見たい~」
「私も気になるわ」
銀が僕のとった景品である箱を開ける。中身は…、
「…アクセサリーの詰め合わせね」
「う~ん、アタシには縁のないものかな」
「そんな事はないと思うよ~」
そうだよ、銀。特にほら、このヘアピンとか似合いそうなんだけど。他にも合いそうなのが多いしとっておきなよ。
「へ!?う~ん、勇がそういうならこれは貰っとこうかな」
「(やっぱりこうして見ると)」
「(なんだかお似合いの組み合わせ~)」
須美と園子はそんな僕らを見てなんか呟いていたけど何だったんだろう。
side out
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――――――――――
side:始
長らく忘れさられているようだが、勇の保護者である『紺野始』だ。今、私は大赦の懇親会へ参加している。
バーテックス関連で忙しい中開かれたのを近所の三ノ輪さんに誘われて来たものだ。
「春信君…こんなところにいていいのかね」
「……妹に振られましたもので…祭でやる事がないのでここに」
春信君またか…、妹さんの事はじっくり話した方がよくはないかね。
「やってるんですけど、妹がなにかとつけて構ってくれないんですよぉ~」
はぁ…、大赦始まって以来の天才といわれているのに妹の事になるとこうだ。
――― prrrr
ん、こんな時に電話がちょっと失礼するよ。
「もしもし」
《あぁ、始さん。『西園寺』だ》
『西園寺家』―――
大赦設立当初から勇者システムの開発を一手に担っている一族である。
「『西園寺』さん、どうなされました?また、システムの件ですか」
《いや、そっちの方はあとは最終調整のみだ。実は…》
「え?どういうことですか」
私は西園寺さんの言葉に耳を疑った。彼が語ったことは私ですらも十分衝撃を受ける程のものだ。
「どうしましたか?始さん」
「春信君、ちょうどよかった。実は…」
着信が切れたタイミングで来た春信君に事情を説明すると、彼も面を喰らったようで、
「……それが本当だったらマズイことなりますよ。輝実…御影さんは?」
まだ報告してない。今は、お忍びで来た政府の『あの人』の相手をしているからすぐに報告する。春信君は…、
「裏付けをとってきます。すぐにでも動かないと…」
「頼む!」
春信君はすぐに動き出した。……いったい、大赦内でなにが起こっているんだ…。
書きたい回だったためか、妙に筆が進んだ。
ここから裏のほうでは色々事が起こる予定。急展開も多いと思いますがなんとか最後まですすめてみせます。
以下、後書き
●ゲストキャラ
「結城友奈は勇者である」から犬吠崎姉妹出演。わしゆ時代では両親が大赦の職員という事で仕事が忙しい中こんな感じながらも両親と過ごしていたという設定。今作品では、銀のトラブル体質による驚異的なエンカウント率で出会ったということ設定である。
後々、オリ主と銀に関わる予定である。
●ひよこネタ
カラーひよこ屋が原作でもあったのと、一時期、ツイッターであったツイートネタを入れてみたかったため改変。
●勇のクイックリロード
昔作者がやろうとしたが出来なかったのを再現。
●春信
妹の事に関しては残念度倍増しである。