神樹館の転入生【凍結】   作:黑羽焔

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小説第2話前半、コミック版第3話の内容。

主人公が勇者3人と友達になります。


第4話

「なんなんだ……この光景は……」

 

勇が目を開けるといつの間にか知らない光景がそこにあった……。

一言でいえば燃え盛るように真っ赤な大地。

勇は自分を見てみると浮いていることに気付いた。

 

「夢だよなこれ……微妙に透けてるし」

 

さらに身体は幽霊のように透けているようだ。

 

地上を見ると、一言でいえば地獄といっていいような戦場のような景観が広がっている。その戦場では戦闘装束を身に着けた少女たちが『異形のもの』たちと戦っていた……、その多くは涙と血であふれ、中には力尽きている者、もうすでに事切れている者、傷付きながらも戦い続ける者と救われの無い様な光景が広がっていた。

 

その一団に大型の『異形のもの』が今しがた砲撃を仕掛けようとしていた。

 

「危ない!」

 

勇がそう叫ぶと、身の丈をはるかに超える巨大な鋼の両腕を装備し桃色の衣装を纏った女の人が

大型の『異形のもの』を殴り倒した。

 

「諦めちゃ駄目!■■は■■■■諦めないだよ!」

 

桃色髪の女の人がそういうと先導するかのように再び飛翔、既に戦闘中の5つの閃光と合流し大型の異形のものに殴りかかった。

 

そのぶつかった際の強烈な閃光に勇は飲み込まれた……。

 

―――――――――――

 

(pipipipi)

 

「(……ん)なんだったんだあの夢…」

 

勇がアラームを止め目を覚ました。寝ぼけ眼であたりを見ると自分の部屋であり、

現実だということを実感した。

 

「変な夢だったけどあんまり思い出せないや…AM7:00か。いつも通りの時間だし起きよ」

 

何故か、夢の内容はきれいさっぱり忘れていた。

布団から出ると身支度をし、終わると居間で始の作った朝食を食べながら、

 

「君の事だから心配はないと思うけど、早めに…」

「友人やら知り合い作って、学校に早めなじめでしょ。大丈夫、そこらはそつなくやるよ」

 

心配性の後見人である始の話を受け流し、

 

「近所の子、銀ちゃんだっけ?彼女と一緒に行けば?」

「まだそこまで仲良くなってないし、突然行ってもどうかと思うよ…」

 

等とたわいのない事を話し、

 

「いってきます」

 

時間に余裕をもって学校へと向かった。

 

‐数分後‐

「へぅ。まず~い、遅刻遅刻!!」

紺野家近所にある三ノ輪家から銀が学校へ向け出発したのであった。

 

――――――――――

 

‐放課後‐

「とーちゃく!」

 

須美・園子・銀は戦闘の祝勝会みたいなもののために、勇は昨日須美・園子に誘われたのもあってか四国中の人たちの拠り所である巨大ショッピングモール・イネスを訪れていた。

 

「イネス!それは砂漠に現れる強大なオアシス…!」

 

「オアシスって…そこまで…」

「あはは…」

「銀、なんかご機嫌みたいだね」

 

銀のテンションの高さに、3人は三者三様の様子を見せた。

 

「乃木さん、鷲尾さん、勇!今日はイネスマニアの私がしっかりエスコートしてあげるからね!ささっ、ついてきて」

 

銀は先導して店内へと入っていき、3人もそれに続いた。

 

「う~ん、やっぱし制服のままで買い食いなんて落ち着かないよぉ~」

 

店内に入ると園子がこういう事に慣れていないのか落ち着かない様子だ。そこへ須美・銀はフォローを入れた。

 

「そのっち。私たちの学校(神樹館)では4年生を超えれば制服での買い物は許可されている。節度ある行動を心がければ下校中でも大丈夫よ」

「鷲尾さんの言う通り!10歳にもなったんだったらお金の使い方も知っとかないと!」

 

「でも、買い物に関しても厳密に決められている学校なんてさすが名門といわれることだね」

「そうなの?」

 

勇が神樹館で決められていることに率直な感想を言う。

 

「いさみんってここ来る前は買い物に関してはどんな感じだったの?」

「ほんとに地方の学校だったから、特にこういうのに学校からの規定はなかったなあ。家庭によってそれぞれだったみたい。僕の場合はちゃんとやれているのが認められてたようでお小遣いの範囲で許可されてたな」

 

名門校では厳密に決められている事が多いが、地方はそういうのには意外と緩いのが特徴だ。そのかわりに当人のモラルが問われるため家庭によるばらつきが多い。勇の家庭では当人の意識が高いのか自分でやりくりできるほどしっかりしているようだ。

 

「それにこういう大きなところは本当に初めてだよ。地方のモールも大きかったけど、それの倍以上はあるよ」

「ふっふっふ。それなら3人共すぐにイネス好きになるようにしてやろう。まずはアタシイチオシのこの店だ」

 

銀が最初に案内してくれたのはフードコートのジェラードショップだ。4人はそれぞれ注文をし出来上がるまで他愛のない話をしていた。

 

――――――――――

 

「どう、どう?ここのジェラード、イネスマニアのアタシ、イチオシなんだ」

 

「最高だよ、最高だよミノさん!」

「……こんなにおいしいなんて…私の信念が揺らいでしまった。このジェラードのほろ苦抹茶とあんこの甘さの調和がここまで絶妙だなんて……」

「うん、おいしいな。ミルクが濃厚だけどしつこくないからいくらでもいける」

 

3人が頼んだジェラードは、須美が宇治金時味、園子がメロン味、勇はバニラ味である。園子は家柄でお嬢様のような扱いだったのかこういうのを発見し感動している。おやつは和菓子かところてん派の須美はこういうものを認めざろう得なくなり素直に味わうことにした。勇はこういう甘いのは大好物で黙々と食べることに夢中だ。

 

「意外だなあ。男の子なのに甘い物好きなのか」

「男の子でも甘い物には目ない人は結構いると思うよ。僕もそんな分類だし」

 

そんな美味しそうに食べる事に夢中な勇の横では、宇治金時味のジェラードに興味を示した園子があーんと口を開け須美はそれを口へ運び、そのお返しに今度は園子が須美へとメロン味のジェラードを食べさせてあげていた。

 

厳格な家で育っていた須美は思考がフリーズ気味でこれでいいのかと思っていた。

 

「…メロン味も…おいしい」

「宇治金時味もおいしいよぉ~」

 

「ふふん、確かに宇治金時もメロンもシンプルなバニラ味も最高だよ」

 

そう言いつつ、銀は自らのもっていた薄茶色のジェラードを3人に見せた。

 

「でもねフードコートで最強はこれだ!」

「なにこれ?」

「しょうゆ味のジェラード。アタシのイチオシなんだ。ちょっと食べてみて」

 

3人は銀の勧めもあってかしょうゆ味のジェラードという珍品?デザートを一口食べてみた。

 

「うぅ~ん、なんだか難しい味だねえ」

「いい味だけど大人向きかもしれないわね」

「僕も鷲尾さんと同じ意見かな思ったほどは悪くはないけど……」

 

3人はオススメしてくれた銀に配慮するようにそれぞれ感想を述べた。

 

「……。なんか…サーセンっした…」

 

銀のイチオシのしょうゆ味のジェラードはどうやら3人に好評は得られなかったようだ。

 

――――――――――

 

次はお金を使わないスポットを紹介するということでエレベーター乗り屋上へと登っていった。

 

「さ、到着ー!」

「「わぁっ~」」

「……すごいな」

 

屋上から見える景色はまさに絶景とも呼べるものであった。

 

「あの辺が私の家で、あそこが神樹館。遠くに見えるのが壁、あれが…」

 

須美は大体の場所を一つ一つ指差していくが、大橋の指差したところで言葉を詰まらせる。

 

「どうしたの?」

勇は首をかしげる。

 

(わっしーどうしたの?)

(そういえば敵に関する事は教えちゃ駄目って大赦から言われてるわね)

(そっか。勇はアタシらの戦いの事は知らないからな。お役目のことは聞いてるからそれで誤魔化そう)

 

小声で3人は話し合い、一般人の勇がいるという事なので誤魔化すことにした。

 

「私らがお役目をこなす時の場所」

「またあそこでやることになるんだとうねえ」

「うん」

「そうなんだ」

 

勇は実は須美たちが『敵』と戦っていることは知っているが、一般の人にばらすのは禁止されて

いるので彼女たちに合わせることにした。

 

「にしても、イネスでこんな景色が見れるなんて、思わなかったわ」

「二人共イネスにはあまり来ない系なの?」

「そうね。あまり行こうとも思わなかったわ」

「私はイネスに行くこと自体が家で禁止されてたんだ~。最近になってやっと許可が出たよぉ~」

 

などと3人は話にのめり込んでしまい、勇は蚊帳の外になってしまう。彼は、今は話に割り込むべきではないと聞き手にまわり彼女らの和気藹々な光景を眺めていた。話の輪では受け手になることが多い彼だが、こういうのは嫌いではない。そして、須美と園子がいつの間にか仲良くなっていた模様を見た銀はすかさず自らも『ダチコー』になろうと切り出し、3人はただのクラスメイトから友達へとなった。

 

「……3人共かなり楽しそうだけど、随分仲良くなったね」

 

「えぇ。私たちが顔を合わせるようになったのはこのクラスになってからだから」

「私は元からお話したかったけど、なんか機会がなかったんだよね~」

「2人とは席離れてたし、専ら体動かして遊んでたからね」

 

3人がこれまで仲良くできなかったのは、そういう切欠みたいなものがなかったのもあると勇は認識した。

 

ここで話を変えようと銀は勇に、

 

「ねえ、勇もさ一緒に同じテーブルで食事もしたし、アタシらとも仲良くしてくれないかな」

「いさみんも友達になろうよぉ~」

「私もお願いしようかしら」

 

転入してきたばかりでこちらの地方の友人と呼べる存在はいない。知っている人が増えるのは悪い事でもない、むしろ良い方だろう。

 

「僕でいいなら」

 

「それなら、私の事は須美って呼んでいいわよ」

「私も乃木じゃなくて名前で呼んでほしいかなぁ~」

 

「わかった。改めて宜しく頼むよ。須美、園子、銀」

「「よろしくね。勇君」いさみん」

 

「なんか勇。ちょっと堅苦しいなあ」

「…女の子にこの喋り方は一種の癖みたいなものだから、直すのに若干時間かかるかも」

 

堅苦しい挨拶に突っ込んだ銀だったが、ここで3人の前に向き直り、

「それじゃあ、シクヨロ!須美、園子、勇、マイ、フレンド!」

と友達の紹介を締めた。

 

その後、4人は色々と話しながらそれぞれ帰路についた。銀は勇が自宅の近所に引っ越してきたことを知ったのはまた別の話である。




以下、茶番。休み時間中の会話
「おいぃ、転入生。本当に銀ちゃんとはなにもないんだな」

「う…うん、引っ越しの散策で偶然会っただけだし」

「……まあ正直に言ったから許す」

(ひとまずは安心かな)

「だが、銀ちゃんがとられても文句はなしだ!振り向いたやつが勝ちというのが俺らの暗黙の決まりなのだ!」

リーダー格?らしき男子の号令でクラスほぼすべての男子が頷く。

(やっぱ普通じゃなかった!そしてなんかの加入確定的だし!)

「転入生…悪いがここの男子は大体こういうものなんだ」

「……そうなのか(この人もなんか同じ苦労してそう)」

最後に話してくれた男子だが、気が合ったせいなのか勇と意気投合したそうな。

――――――――――

この時点での勇者3人は、主人公が転入生という珍しい立場もあってかどちらかといえば男友達感覚ということにしているのでそこらへんうまく描けているかが心配です。

次話では……勇者3人が主人公の秘密を知る…と思います。
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