………………あれ?ここは?確か狼との戦闘で俺は…………って狼は!?
周りを見ようとすると体が動かなかった――否、動けなかった。怪訝に思い、顔だけを動かす。…すると俺の目の前に女神さんの顔がドアップで写っていた。
………つか近い!近いよ、女神さん!
そう思いながら女神さんの寝顔を考察する。まだ幼い顔。ふっくらとした頬にぷっくりとしている唇、髪は白に限りなく近い銀髪にほんの少し赤みが掛かっている。目の色は紫の様な、黒の様な色。多分、10人中10人が可愛いと言えるぐらいの顔だろう。
抜け出そうとすると今まで眠っていた女神さんが起きた。
「…………んぅ……うん?…あぁ!よかった!」
「……うん、何がよかったのかは分かんないが、まずはどいてくんない?」
俺がそう言うと女神さんは今の状況を理解したのか、顔を真っ赤にしながら後ずさりした。……………なんか悪い事した?泣くよ?泣いちゃうよ?もうすでに涙が出かかってるけど…(/_・、)
「え、えっと……これは…その……」
女神さんの様子から悪いことはしていないようだ。……………よかったわーー。………でも何で女神さんは顔を赤くしているんだろう?不思議だ。
「……一回落ち着いて、女神さん。落ち着いてからでいいから」
「あ、は、はい」
深呼吸をして気持ちを落ち着ける女神さん。しばらく経って、やっと落ち着いた女神さんが俺に問いかけてきた。
「すみません。もう大丈夫です…………ふぅ。まずは助けてくれてありがとうございます。あなたが助けてくれたから私は今ここにいます。本当にありがとう」
「いんや、別にいいさ。人が困っていたら助けるのが俺の信条。ただの偽善。つーわけで、お礼とかは別にいいさ。……それに、これから一緒に旅するんだから。……それよりもさっきは悪かった。あんな事言っちゃって……」
「そ、そんなことありません。こっちこそ我が侭言ってしまってごめんなさい…………」
なんかこのまま行くとエンドレスになりそう。
「まぁ別に我が侭を言ってはダメなんてことはないけど、適度にな……。………よし、んじゃあこの件はこれでお終い!そんでさぁ、あの狼ってどうなったんだ?」
「へ?………あ、あぁ…それなら彼処(あそこ)で気絶してますよ」
おいおい、あれ喰らって気絶だけとか………化け物ですね。そしてそれに勝った俺は何?
「怪物じゃないでしょうか?」
「おいこら、何勝手に人の思考を読み取ってんだこら。……………それよりもこいつどうすんの?食うか?不味そうだけどな…」
このまま放っておくのもいいんだけど、なんか嫌だ。理由は不明。
「う〜〜〜ん、そうですねぇ……………!!そうですそうです!それだったらこの狼を使い魔にしてしまいましょう!仲間が出来て護衛が出来る。まさに一石二鳥じゃないですか!」
一瞬沈黙したのも束の間、女神さんは名案とばかりに声を立て、今しがた考えついた感バリバリの案を言ってくる。
「…………でもさぁ、使い魔ってどうやって作んの?」
「それはですねぇ………」
方法を言い掛けて固まる女神さん。
「どうしたの?やっぱ無理?」
「いえ、そうじゃなくてですね………使い魔の作り方には2通りの作り方があるんですよ。1つは死体を使って使い魔にする方法。これは死ぬ寸前か、死んだ直後の動物を使います。そしてもう1つは任意での契約。これはお互いが認め合って初めて出来る事です。基本こういった魔物とかは滅多に人に懐かないので2つ目は稀ですね。………………それで、この魔物は気絶しているだけで弱ってはいないので、殺すか、互いの任意での契約のどっちかになりますね。…しかし、さっきも言ったと思いますが、後者のほうは稀ですのでまず無理だと思います」
ふむ……どうしようか。まず殺すという選択は無くていいな。殺すの嫌だし。…となると、残った任意での契約か…。…………ってあれ?
「それだけしか方法がないのに加えて、死にそうにもない。そして極めつけは任意は稀と
…………どうやって契約しろと?」
あれか?‘お前ならできる!’的な感じ?
「え〜〜〜っとですね…………いや、ほら!任意だって可能性は低いですけど0%って訳じゃないですし……」
なんか言いよどんでいる。何も考えずに言ったせいだな。
そして2人で言い合っていると狼が気絶していた所からガサゴソという音が聞こえてきた。
「…………グルゥ……?(こ、ここは?)」
「おぉ、やっと起きたか」
気絶していた狼が目覚め、俺が話しかけると一気に警戒心を強め俺たちから7mほどの距離を保った………が、俺の顔を見ると急に警戒を緩めその場に座った。
「ど、どうした?」
「グルルルルル(いや、我が一族には負けたら勝ったやつに従わなければならないのだ。…………とまぁ、お前に言っても仕方がないか)」
「いや、言葉解るからね?しっかりと聞こえてるから」
俺がそう言うと狼は驚いた顔になり――てか狼の驚いた顔なんてあるんだ――何か考え込み始めた。
「ねぇ、女神さん女神さん」
「なんだい……え〜と………のび太君」
「いや、ちょ!………前にも同じような事やった上に言葉に詰まった挙げ句、出てきた言葉がよりにもよってのび太なんだよ!!」
「特に意味はない。やったことに反省もしていなければ後悔もしていない」
「いや!そこはせめて反省だけでもしてよ!報われないよ!?主に俺が!」
「…………あなたは生涯報われることは、ほんのちょびっと無いことも無いでしょう」
「いちいちややこしい言い方すんな!後、なんでほんのちょびっとだけ残ってるの!?そこは0とか皆無とか言おうよ!?そのちょびっとのせいで希望を持っちまってる俺がいるんだよ!可能性はほぼ皆無のはずなのに!」
「話を脱線させないでください。……まったく」
「いや!誰が脱線させたよ!?「あなたです」……えぇ〜〜。………………もう……いいです。はい」
話をめっさ脱線した挙句に話そうと思ったことが何一つとして話せていない。
…………なぜ?なんか女神さんと話していると必ず脱線するような気がする。と思考に耽(ふけ)っていると考えがが纏(まと)まったのか、狼がこちらを向いて何か言いたげな表情をしている。
「どうかしたか?」
「グル(いやな、少し頼み事があるのだが…)」
「どうした?言ってみ、このお兄さんに!さぁ!」
「そんなこと言ってるから狼が少し引いてますよ?」
「Why!?何故だ!決まったと思ったのに!!………sit!」
何故なんだ!世界はいつもこんな理不尽じゃ無かったはずなのに……!!」
「聞こえてますよ。割と最初の方から」
「うっわ、はっず!声が漏れてたとか…………こっち見ないで!」
「グゥ……(いや、あの、話を聞いて)」
おっと、またまた脱線してしまった。
「ゴメ。……それで?何だっけ?」
「グル(お前に頼み事があるんだ)」
「………で?続きをどぞ」
「グルル(私と使い魔契約をしてはくれないだろうか)」
あぁ、契約か、契約ってええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!??
契約ってあの契約だよね!?しかも使い魔!?何で!?この状況に俺が付いていけない!
「え、えっと……そ、そう!……ほら、何で俺なんかと契約を?こう言っちゃあ何だけど、俺よりもいい人なんて世界中にいると思うぜ?」
「グルウ?(ん?……まさかとは思うが、お前はここがどこだか知らんのか?)」
ここ?異世界にある森じゃないの?
女神さんにここがどこだかを聞いてみると、女神さんも分からないようだ。……まぁ適当に転移したんだから当たり前か。
狼は俺の表情からここがどこだか分からないことを悟り、心底驚いた様子だ。
「……それで?ここってどこなの?」
「グルルル(ここは魔界にある樹海の奥深くだな。奥深い故に、ここには魔物も滅多に来ない。ましてや人間なんて数百年に一人か二人しか来ない)」
な、何だって!?Σ(゜□゜;)
女神さんは不思議そうな顔をしてる。
つかそんな所に何転移してんだよ女神さん!後、魔物が滅多に来ない場所にいるお前は何なんだと言いたい事は色々あるが、この狼が使い魔契約を望んだ理由の一部が分かったような気がした。
「まぁそう言う事なら納得はできる。だけど、理由はそれだけ?」
「グルル(至極簡単。私と話せるからな)」
…………うん、とっても分かりやすい説明をありがとう。
とどのつまり、だ…………ただ単に寂しかったんだね。でもよく考えたら自然か。数百年の間、話し相手がまったくいないんだから。俺だったら……発狂する――――イメージが沸かないな、うん。なんか俺だったら意気揚々として狩に出かけたりしてEnjoy lifeを過ごしそうな気がする。
「……ん、それじゃあ使い魔契約するか」
「グル(あぁ、よろしく頼む)」
「いやいや、少し待ってください。私は何も理解できていません。どんな経緯で使い魔契約をするに当たったか説明を要求します」
……あぁ、女神さんって動物の声聞こえないんだな。
そこから少し時間をとって、女神さんに説明をし、狼と使い魔契約をした。
…………契約の描写が面倒だからやらなかったなんてことは無いからな?本当に、本当だぞ!
……因みに、狼の種族は神狼(フェンリル)でした。