『現実は残酷だ。』
どこかで聞いたことのあるこの言葉。誰が言っていたかは思い出せないが、とにかく耳に残った。この言葉は真実だ。常に現実は残酷で非情だ。そこに生きている俺らの意思に関係なく物事を進めていき、結果を残す。この結果に何度苦しめられたことか。この残酷で非情な現実がまた俺に牙を剥く。
モブ「西木野さんこれお願い。」
真姫「ん、わかったわ。そこに置いといて。」
シロ「それもらうぞ。」
真姫「ん、わかったわ。」
2日前からこの繰り返しである。あの演説によりクラスからのヘイトを集めてしまったので誰も俺に口を聞こうとしない。
シロ「嫌われたもんだな。もともと好かれてはいなかったけど。」
真姫「あんなスピーチすれば当然でしょ。」
シロ「そのおかげであいつらが仕事してるんだろ。感謝して欲しいもんだ。」
凛「シロ君のやり方が姑息すぎてわからないんだにゃ。」
シロ「ほう、俺のやり方がわかってくるとは中々成長したな。」
凛「上から目線が腹立つにゃ。」
シロ「前にも言ったろ。位が上なの。」
真姫「なのに仕事はしっかりやるのね。」
シロ「俺が仕事しないとあのスピーチの意味がなくなるからな。俺が仕事をしてなければ周りの奴らは働かなくなるから俺は働きづめなければならない。よって働かない上司のいる職場は働かなくていい。」
凛「かっこいいような、かっこ悪いような。」
花陽「凛ちゃん衣装の採寸するから来て〜。」
凛「今行くにゃ。」
真姫「確か、凛がお姫さまで花陽が王様よね。」
シロ「お姫様というより王の娘な。」
真姫「お姫様と違うの?」
シロ「ほぼあってるんだが、これ近親相姦なんだよ。」
真姫「えっ。」
シロ「まあ、そうなるよな。簡単に言うと王様が毎日のように女を買って殺してを繰り返すからそれを見かねた娘のシェヘラザードがそれを止める物語なんだよ。」
真姫「私が知ってるやつとは違うわね。」
シロ「某所にあるネズミの王国のアラジンの影響が強いからな。だからこれをやるってなった時には驚いたよ。」
真姫「そっち方だったんじゃないの?」
シロ「発案者から台本借りたんだよ。そしたら千夜一夜物語の方だった。」
真姫「マニアックな趣味ね。」
シロ「そうだな。終わった書類持ってくから。」
千夜一夜物語まあ、俗に言うアラビアンナイトだ。この物語は先程も言った通り残虐な王のシャー王が毎夜毎夜女性を買い、一夜を共にし朝が来ると買った女性を殺すのだ。それを見かねた娘のシェヘラザードは自分が王の嫁となり毎夜毎夜面白い話を聞かせて「この続きはまた明日」と言い次の日を迎える。王はその話が気になりシェヘラザードを殺さないで1日を共にする。そしてそれが千夜と一夜迎えたという。お話が終わった時には王は人を殺す気が無くなって改心したという話だ。
なんともこれは運命なのか今の自分にそっくりだ。違うところは残虐の王は決して俺の存在を許しはしない。最後の夜にきっちりと殺すのだ。
シロ「真姫ハンコもらってきたぞ。」
真姫「ねえ、白夜。部活の子達もう返してもいいかしら?」
シロ「まあ、いいんじゃね。そろそろだれてくる頃だし。あとは俺らと残ってくれる奴らでやれるところまでやろう。」
真姫「わかったわ。じゃあ伝えてくる。」
仕事のペース的には十分問題ないだろう。あとは出演者次第だ。こればっかは俺にはどうしようもできん。現場は現場にまかせよう。
絵里「五分休憩しましょうか。」
凛「かよちん、セリフ合わせするにゃ。」
花陽「ちょっと待ってて。」
今のうちに伝えとくか。
シロ「花陽ごめんな。王様役なんてやらせて。」
花陽「シロ君なんで謝るの?」
シロ「そりゃあ王様の役をやらせるように推薦したからだよ。」
花陽「ううん、全然気にしてないよ。凛ちゃんと一緒にできるからむしろ嬉しいよ。」
シロ「そうか。」
花陽「言いそびれちゃったけどシロ君に言いたいことがあったんだ。」
シロ「なに?」
花陽「凛ちゃんの件ありがとね。それとこれからも凛ちゃんのそばに居てあげてね。」
シロ「それは……花陽の仕事だな。俺はあいつについていることができないから。頼むよ。花陽。」
花陽「シロ君、どうしたの?」
凛「かよちん早く〜!」
シロ「ほら、呼んでんぞ。」
花陽「今行くよ。文化祭頑張ろうね。」
シロ「ああ。」
シェヘラザードの話はもう少しで終わる。最後の夜は近い。
希「シロっち、理事長が呼んでたで。」
シロ「……今行きます。」
ーーー
理事長室までの道が遠い。さして距離はないのに遠く感じる。体感時間では、もう何分歩いているかはわからない。そんな感じだ。
扉についたがこの扉が重く開かない。というより開きたくない。開いてしまえば事実を知ってしまう。そうなればもう戻ることはできないだろう。でも、開けるしか道はない。重い扉を開くとことり先輩の親である理事長と担任の蒲田が立っていた。
雛子「その顔はわかっているのね。」
理事長の顔はとても暗くどこか申し訳なさそうにしている。そりゃあそうだろう。これから言う一言は嬉しい反面申し訳ない反面の二面性なんだろう。
シロ「夏休みの時に気づきましたんで言って構いませんよ。」
この言葉は城田白夜らしくない。いつもなら粋なジョークの1つでも入れるのだが、そんな余裕もない。
雛子「では、言います。説明会の調査結果。女子校としての存続が可能ということで、城田白夜あなたを退学処分とします。」
分かりきっていたことだ。だがみなまで言われると辛い。慣れていたはずなのに痛みに耐えれずに嘆きたくなる。
雛子「退学は冬休みを目処にしています。」
シロ「それの時期って変えれますか?」
雛子「冬休み以降にはできませんよ。」
シロ「そうじゃなくて早めることはできますか?」
雛子「…可能ですが。」
シロ「なら、文化祭終了と同時ぐらいでお願いしたいんですが。」
こういうのは早めに手を打つに限る。長引かせると辛くなるだけだ。
蒲田「それはダメだ。前に私が言ったこと覚えてるか?」
確かに前『君はもう少し人と関わるべきだ』と言われた覚えがある。それがどうしたと言うのだ。今は関係ないだろう。
シロ「それがどうしたと言うのですか?」
蒲田「君の退学を快く思うものがクラスにいるだろう。だが君の退学を快く思わないものもいる。君が一番よく見てきた人たちがどう思うと思う?」
シロ「そんなのわかったら苦労しませんよ。」
今までの人生でこれという答えを見つけられていない。どう頑張っても触れることができないものなのにどうして止めておこうと思うのか?それとも触れることができないから止めておこうとするのか?どうやっても見つからない。なので見つけることを諦めている。
雛子「1人で探して見つからないのなら協力して見つけてみなさい。あなたが見つけることができたのならその時点での退学を認めます。見つけられなかった場合は冬休みまでいてもらいます。」
蒲田「上からの指令だ拒否権はない。今までの君の功労に免じてヒントをやろう。人に甘えるといい。今まで自分一人で頑張ってきたんだ。そろそろ甘えてもだれも文句は言えんだろう。」
シロ「…わかりました。人海戦術を使おうと見つかりませんよそんなもん。では、失礼いたしました。」
ーーー
屋上に戻るのがつらいぜまったく。
海未「シロ。シロも今から部活ですか?」
シロ「まあ。海未先輩は今までどこへ?」
海未「弓道部の方へ顔を出してました。シロは?」
シロ「理事長とお話を。」
海未「どのような?」
この話をしていいのだろうか?存続が決まり文化祭のステージに影響が出るのは困る。だが隠していいものだろうか。
シロ「まだ確定じゃないですけど、存続が決まったそうです。」
海未「本当ですか!みんなに報告を、」
シロ「まだ公式発表ではないので、もしかしたら変更になるかもしれません。なのでここで教えて変わったら悲しいでしょう。だからまだ言わないほうがいいと思います。」
海未「そうですね。軽率な行動を取るところでした。でも、何故それをシロに言ったのでしょうか?」
シロ「それは俺が試験生だからですよ。」
海未「そ、それって。」
シロ「音ノ木坂は女子校としての存続が決定しました。なので男である俺はいてはならないんです。」
海未「も、もちろん少しぐらいは反抗しましたよね。」
シロ「しても決定は覆らない。」
海未「だからと言って何もしなくてどうするんですか⁉︎」
海未の声が静かな階段にこだました。その声が聞こえたのか屋上の方がうるさくなる。
シロ「そこまでして俺はここに居たくない。」
なぜこんなに心にもないことを言ったのだろうか。きっと動揺していたんだろう。
海未「シロ。」
頰に強い衝撃が走る。
海未「あなたは最低です。」
シロ「そうですね。」
自重気味に笑い階段を降りていった。
みんなの視線が俺から離れた時にようやく痛みがやって来る。
シロ「痛い。」
これは頰の痛みか心の痛みかわからなかった。だけどすごく痛いことはわかった。
現実は残酷だ。
シロの退学は前から決まっていたことなのですが、書くとなるとどう書けばいいか悩みますね。まだまだ続きますのでこれからもよろしくお願いします
次回「文化祭準備」