モブ「西木野さんこれお願い。」
真姫「ん、わかったわ。そこに置いといて。」
シロ「……」
無言で真姫の前に置かれたプリントを取っていく。
真姫「白夜。」
シロ「何?」
真姫「……なんでもない。」
シロ「そうか。ハンコもらってくる。」
ここ最近μ'sのメンバーに気を使われている。気を使うことはいいことではない。気をつかう本人も使われる側も良い気分にはならないからだ。だからと言ってやめてといえるものじゃない。なんともまどろっこしいものだ。
凛「ねぇ、シロ君。」
シロ「何?」
凛「今日、…遊びに行かない?ほら、μ'sの練習も休みだし、文化祭の準備が終わってからでもね。」
凛は見た目バカっぽいし実際バカなんだけど、意外に物事を考えてる。その証拠に何か明確な意思があるときは猫語にならない。何か考えがあって俺を誘ってるのだろう。
シロ「ああ、いいよ。」
凛「本当!なら、放課後ね!ちゃんと来るんだよ。待ってるにゃ。」
久しぶりに会話した気がする。あれ以降ずっと機械的な応答しかしてなかったから。考えを示すのは久しぶりだ。
ーーー
シロ「どこ行くの?」
凛「とにかく先ずは街に出るにゃ。」
シロ「じゃあ何するの?」
凛「ラーメン食べて、はしごして、それで行きつけのお店を紹介するにゃ。」
シロ「全部ラーメンじゃねえか。」
凛「嘘だにゃ。そうだね。ス○2やるにゃ。」
シロ「ああ、いいよ。」
凛「ん、なんかシロ君ぽくないにゃ。」
シロ「何言ってんだ。俺の中は城田白夜100%でできてる。まあ俺は俺だよ。」
凛「なんかいつもの薄ら寒いギャグがいつもより数倍寒いにゃ。」
シロ「凛、お前…。」
その後にふざけんなよとか続けるつもりだったがそこで言葉を切った。というのも相手からしたら俺の方がふざけんなよだろう。海未先輩以外のメンバーも気を遣っているところ見るときっと話したんだろう。なら、凛の耳にも入っているはず。ならば俺にそんなことをいう権利はない。
シロ「そうかもな。ラーメンだっけ、ス○2だっけ。どっち先かは知らんけど行こうぜ。」
凛「う、うん。」
ーーー
凛「シロ君弱すぎるにゃ。」
シロ「凛が強すぎるだけだろ。」
凛「シロ君の攻撃がワンパターンすぎるんだにゃ。」
シロ「それが俺なりのやり方だからな。」
凛「もう少し攻撃に変化入れたり、他の人の攻撃を参考にしたほうがいいにゃ。」
シロ「自分の流派を貫くんで気にしない。」
凛「シロ君ってゲーム以外でもそうだよね。」
この時の凛の顔はどこか優しく声は諭すようだった。
確かにそうだ。いつも自分の意見を押し通してきた。絵里先輩を説得する時、体育祭、夏休み最後のライブ、他にも自分の意見を押し通してことを進めた。俺にはこのやり方しかない。というよりも、もし他の意見と交わってしまったら自分が自分で無くなるんじゃないかと恐怖した。だから、間違っていることでも固辞し強がった。
シロ「性格だから仕方ないだろ。」
そうだ、性格だから仕方ない。今更変えれるものではない。
凛「そうかな。それは性格じゃないと思う。意地を張って自分を認めてもらおうとしてるだけだよ。」
シロ「そんなことねえよ。これは性格だ。今に始まったことじゃない。」
凛「じゃあ、昔から意地を張り続けてきたんだね。でも、誰にも認めてもらえなかった。」
シロ「だからちげぇよ。」
凛「違くないよ!そうじゃなかったら、なんであんなやり方するの!」
シロ「それは…。」
言葉に詰まった。どうしてもこの先の言葉が出てこない。だが黙ってしまえば凛の意見を認めることになってしまう。何か、言わなくては。
シロ「あのやり方しか知らないんだよ。」
凛「そう…なんだ。今日はありがとね楽しかったにゃ。じゃあ、また明日。」
シロ「また明日。」
ーーー
蒲田「今日は居残りでの文化祭準備は控えてくれ。私の諸事情がある。」
マジか、時間はあるが時間をかけるに越したことはない。それに。
凛「シロ君先に部室行っといてほしいにゃ。」
シロ「なんで?」
凛「凛とかよちんはセリフの合わせがあるにゃ。真姫ちゃんは作曲するために1人にして欲しいらしいにゃ。」
シロ「うーん、わかった。ちゃんと来いよ。」
1人で行くのはなかなかに厳しい。いつも通り受け答えだけすればいいか。
ーーー
シロ「こんにちは。」
部室に入るとみんなが驚いた顔でこちらを見てる。
シロ「どうしたんですか?」
絵里「いや、来ないと思ってたから。」
シロ「部活に来たって問題ないでしょう。」
絵里「そうだけど。」
海未「他の3人は?」
海未先輩はいつもより数段低い声、鋭い口調で聞いてくる。怒っているのだろう。まあ、それも予想できている。いつもと変わらない口調で答えよう。
シロ「真姫は作曲。凛と花陽は文化祭で劇をやるのでそれのセリフ合わせです。」
海未「そうですか。」
シロ「さあ、練習しましょ。文化祭まで時間ないですよ。」
絵里「え、ええ。」
これでいい。いつも通り生活して相手に無理な気遣いをさせずにフェードアウトする。俺ってば優しいのね。脳内のボケは健在のようだ。
ーーー
練習も終わりあとは家に帰るだけ。家に帰るまでが練習です。
穂乃果「疲れた〜。」
ことり「そ、そうだね。今日はバイトがあるから先に行くね。」
穂乃果「そうなの?じゃあね、また明日。」
ん?なんか変だな。まあ、もう俺には関係ないか。
「………」
誰も口を開こうとしない、誰も。
そのまま足だけは進み皆違う方向へ帰っていく。その中で俺と穂乃果先輩と海未先輩と絵里先輩は同じ方向なのでいつも通りの道を通り帰って行く。いつもと違うのは誰も口を開かないこと気を使われているのだろう。
穂乃果「そうだ!ねぇ、クレープ食べよ。」
ようやく穂乃果先輩が口を開く。無言に耐えられないのか気を使ったのかどちらかはわからないが助かった。
シロ「俺はいいですよ。」
穂乃果「海未ちゃんと絵里ちゃんは?」
絵里「私もいいけど。」
海未「私は日舞の練習があるので帰ります。」
穂乃果「…そっか。また今度ね。」
海未先輩は足早にその場を去っていく。まあ、俺が行くのに来るわけはないか。
穂乃果「じゃあ、行こっか。」
ーーー
ふう、なんで気を使われているはずなのにパシられなくちゃいけないの?天性のパシリの才があるらしい。これで神候補の戦いに巻き込まれても即死は無くなった。まあ、能力はわからんけど。
シロ「お二方どうぞ。」
絵里「どうも。」
穂乃果「ありがとう。」
絵里「ねぇ、シロ。退学って本当?」
シロ「ええ、文化祭が終わったらそうする予定です。」
絵里「もしかしたら間違いなんじゃないかと思ってたけど、本当なのね。」
シロ「もしかしたら冬まで伸びるかもしれないですけど。」
2人の顔がパッと顔が明るくなる。
穂乃果「本当⁉︎なら、冬まで一緒に」
穂乃果先輩の言葉を潰すかのように会話を進める。
シロ「俺は嫌です。」
穂乃果「えっ、なんで?」
シロ「海未先輩にも言いましたが、そこまでしてこの場所に居たくないんです。」
さっきとは打って変わり2人の顔が暗くなる。
穂乃果「それ、本当?」
シロ「ええ。」
穂乃果「なんで、なんで、そんなこというの?」
穂乃果先輩の目から涙が溢れる。今まで友達だった人に突然裏切られればそうなるのも当然だ。昔の俺もそうだった。裏切られることは何よりも辛い馬鹿にされる、いじめられる、ボコボコになるまで殴られる。そんなことよりも数倍辛い。その痛みは十分すぎるほどに知っている。だからそれを避けるためにも俺はここから離れたい。
シロ「それはみんなが優しすぎるからです。」
優しさは一種麻薬のようなものだ。優しさは鎮痛剤になり一人でいる時の痛みを和らげてくれる。だが、異常に強い中毒性を持ち自分の心を蝕んでいく。優しさに触れ続ければ優しさがない世界には耐えられなくなる。だから一刻も早くこの人たちの優しさから逃げてしまいたい。逃げないと、昔の自分には戻れない。昔の一人でいることが普通だった自分に。
シロ「もう、帰りますね。絵里先輩、穂乃果先輩を頼みます。」
早くこの場から去ろう。穂乃果先輩を泣かせたことがすごく心苦しい。あの顔を見ていたくなかった。
絵里「シロ!明日も部活来るわよね?」
シロ「まあ。」
簡素な答えだがこれでいい。早く帰って明日を迎えよう。
ーーー
蒲田「城田放課後来い。」
あんたは簡素すぎます。もうちょっと行きたくなるような装飾をして欲しいもんだ。
蒲田「君の欲しいものはなんだ?」
あんたは俺のお母さんか?サンタのプレゼントを聞くときもそんなことをそんなことを聞かれた気がする。
シロ「……特にないですね。」
考えてすぐにでてこなかったということは刺して欲しいものはないということだ。
蒲田「君は聖人かね?」
シロ「いや、普通の人間ですよ。それに欲しいものを与えられたらダメ人間になりますよ。」
蒲田「本当に君は偏ってる。」
シロ「どういう意味ですか?」
蒲田「欲しいものは自分で手に入れられるものだけではない。他人と手を取り合うことで初めて手に入れられるものもある。君はそれをこの学校で学ばなかったか?」
いやというほど学んだ。それは優しさや愛といったプラスのベクトルの感情だ。それは1人よりも多数の人間とでいる方が大きかったり、強かったりする。でもそれは麻薬だ。だからもう手は伸ばさない。
シロ「学びましたよ。」
蒲田「そうか。なら、それを欲しないのか?」
シロ「欲すればするほどなくなった時の反動が大きいので。」
蒲田「そこまで知っているのか。でもな、それでも欲するのが人間だ。」
シロ「…ドMですか?。」
蒲田「違うな。その痛み、その反動があって初めて自分がそこにいた存在証明になり、その人に愛されていた証にもなる。」
シロ「そういうもんなんですか?」
蒲田「そういうもんだ。さて、これから職員会議がある。部活にでも行きたまえ。」
自分の欲しいもの。
ーーー
シロ「こんにちは。」
海未「……こんにちは。」
なんで海未先輩しかいないのかね。気まずいでしょ。それにもし昨日のことを聞いたとしたらブチ切れもあり得る。心してかかろう。
シロ「海未先輩1人ですか?」
海未「私は作詞で残ってるだけです。みんなは練習に行きましたよ。」
シロ「わかりました。」
なら、屋上にいきますか。この部屋の居心地悪いし。
荷物を机に起き部室を出ようとすると背後から呼び止めるように声がする。
海未「シロは自分勝手すぎます。」
シロ「なんでです?」
海未「自分がよければ他人がどうなってもいいと思ってるところです。」
シロ「そうは思ってないんですけど。」
海未「じゃあ、なんで早期退学を申請したんですか?」
シロ「それは、俺のためだけじゃないですよ。むしろμ'sのことを思ってやったんですよ。」
海未「その心は?」
シロ「μ'sはもう立派なスクールアイドルです。アイドルが男と一緒にいたらまずいでしょ。それも女子高のアイドルですよ。悪評がつきやっぱり廃校ですなんて笑えない。」
とても言い訳じみていた。こんなことを気にするような人たちではないそんなことはわかっている。だが、こうでも言わないとわかってもらえないだろう。
海未「それは、確かにそうですが。」
シロ「元々、俺のこの学校においての存在意義と先輩達の活動は相反していたんです。」
海未「じゃあ、なんで私たちの手伝いをしたんです?」
シロ「それは、」
それはきっと、誰かに必要とされたかったから。だから穂乃果先輩に頼まれた時断れなかった。人に必要とされたことが嬉しくて。
海未「シロ、本当はこの学校にいたいんじゃないんですか⁉︎」
シロ「……い。」
海未「今なんて?」
シロ「居たいに決まってるだろ!でも、一緒にいればいるほど別れるのが辛くなる!だから、早めに別れて距離を置いて、我慢しようって思ったんだよ!それなのに、なんで引き止めようとなんてするんだよ!」
海未「そんなの、一緒にいたいからに決まってるじゃないですか!」
シロ「ッ!」
やっぱりこの人たちは優しすぎる。そんなことを言われたら、依存したくなる。だけど依存してしまえば、もう。
「君の欲しいものはなんだ?」
その時ふと、さっき聞かれた問いが頭をよぎる。
「自分の欲しいもの」それは昔から変わらない。ずっと願っていた。だけど手に入れられなかった。他人が持っているのを妬んだことさえある。でも、いざ手を伸ばそうとしても怖くて尻込みしてしまう。きっと、それは今目の前にあるもので遠ざけようとしているものだ。手に入れてもいいのだろうか、手を伸ばしていいのだろうか。「自分の欲しいもの」それは形だけの友達なんかではなく、親友、友情、といった自分を痛みを教えてくれるもの。
俺は愛が欲しい。
シロ「居ても、いいんですか?」
か細い声、自分の今精一杯の声でそう聞いた。
海未「ええ、もちろん。」
シロ「この学校を退学した後も?」
海未「ええ、退学しても、大学に行ってもです。」
この答えを聞いて初めて救われた気がした。一人苦悩し、嘆き、諦めさえもした。だが、ようやくそれを手にすることができた。
蒲田「ようやく答えが出たようだな。」
扉から声がする。そこには先生が立っていた。
蒲田「さて、君はこの時点で早期退学の権利を手に入れたわけだが、どうする?」
シロ「先生答えわかってるのに聞いてるでしょ。」
蒲田「君の口から聞かないといけないからな。」
シロ「冬休みまで居させてもらいます。」
そう言うと先生は微笑み横を見た。それを合図に凛が先生の横を走り抜けこちらに飛び込んでくる。
凛「よがっだ〜。凛は凛はシロ君が○々〒〆2:%・3〆^」
シロ「は?なんて?って、おい!涙を俺の制服で拭くな!そして鼻をかむな!」
続いて他のメンバーがやってくる。
穂乃果「→21・÷6<→4:2:*:<5〆<÷」
シロ「穂乃果も何いってんのかわかんないから、落ち着け!そんで、希!ビデオを撮るな!」
希「いいやん、シロっちが泣くところとか見てみたいし。なあ、絵里ち。」
絵里「確かにそうね。ちょっとシロ泣いてみなさいよ。」
シロ「『泣いてみなさいよ』じゃねぇよ!絶対泣かないぞ。」
ことり「なら、私が泣かせてあげます。
シロ「こ、ことりさん。ちょっと待って。それはあかん死んじゃう。」
真姫「大丈夫よ。私のうちで見てあげるから。」
にこ「なら安心ね。ことり。」
ことり「は〜い。せ〜の。」
シェヘラザードの物語はまだ続くらしい、冬休みまでという短い期間だが、欲しかったものを手に余生を楽しむことが許された。さて、最後の夜までに何をしようか。
長い間空けてしまい申し訳ございません。ようやく書けました。ところどころに「俺ガイル」が入ってきてますね。
あと、この後も冬休みが終わるまで書き続けます。
次回「文化祭準備」前回は一個先の題名を書いてしまいました。今度こそ本当です。ではまた、次回に