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『願はくは花の下にて春死なん
そのきさらぎの望月のころ』
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東方永霊抄 ~toho eireisyo~
Act.1『行方不明者』
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まるで中世ヨーロッパを彷彿とさせるような豪華ながらも洗練された部屋の中央、アンティーク調に仕上がった見るからにふかふかそうなソファに、白黒のコントラストが印象的な普通の魔法使い、霧雨魔理沙が勢いよくその体重を預けた。
バフッ
「ふぃ~っ、今日も疲れたんだぜ……」
「もう、あんた達は一体何日ぶっ続けで宴会を繰り広げるつもりなのかしら?あんたをわざわざ私の家に泊める気苦労も考えなさいよね…!」
七色の人形使いことアリス・マーガトロイドはそう言いながら、近くの椅子に腰を下ろした。
壁に掛けてある時計が示す時刻はAM2:30を少し過ぎた頃。魔理沙は最近毎日この時間まで博麗神社で宴会に勤しみ、夜には危険な妖怪が出没する魔法の森の奥に位置する自らの家まで帰ることができず、宴会が終わるとアリスの家のお世話になっていた。
魔理沙は見るからに巨大な帽子をソファに置きながら、とびっきりの笑顔を見せた。
「いや~悪い悪い、アリスには本当に感謝してるんだぜ!」
「はぁ…全く、とってつけたように感謝の意を表すのは本当に上手いんだから───いつも通り、お風呂は沸かしてあるわ。早く綺麗にしてらっしゃい」
「おぅ!サンキュー!」
そう言って、魔理沙は風呂場のある方へと向かっていった。
アリスはふと壁に掛かっているカレンダーに目をやる。
今日の日付は───3月31日。最近はこれといった異変もなく、幻想郷全体が新たな春の息吹に包まれ、各地で宴会が催されていた。
その中でも最も規模が大きいのが、我らが幻想郷の素敵な巫女こと博麗霊夢が幹事を務めているものだ。少なくとも毎日30人以上は集まっているという話だ。勿論毎日そんな人数の胃袋を満たすような大量の食事をあの守銭奴巫女が用意できるはずもなく、毎度のことながら、裏では紫が手を引いているに違いない───私ったら、とてつもなくどうでもいい考察を繰り広げてるわね………
アリスは視線を動かし、カレンダーの下の戸棚の上に飾ってある額縁をなにげなく見た。
中に収まっている写真には、博麗霊夢、霧雨魔理沙、そしてアリス・マーガトロイドの3人が博麗神社を背に、仲むつまじく映っていた。
「宴会が始まって……1週間は経ったかしら…………
………
………私も、見栄なんか張らずに顔出しとけば良かったかなぁ………」
考えてみれば、アリスは最近魔理沙以外の幻想郷の住人と顔を合わせることが少なくなっていた。まあこれと言った理由もないし、魔理沙と会う前から大して変わってないし、別にいいけど───
───なにかしら?この、胸が締め付けられるような、深い水底に沈んでいくような感覚は───
アリスが少し感慨に耽っていたその時
フオォォォォォ───
「わっ!?な、なによっ突然!?」
突然空気を震動させるような深い音がアリスの耳に届いた。
アリスは訝しげな表情を浮かべながら、玄関の方を見つめる。音こそ小さくなったものの、さっきの音は継続的に……いや、不定期ながらも、確実に増えていっている。
「全く、こんな時間に騒ぎ立てて…どんだけ非常識なやつなのよっ」
独り言のように呟くと、アリスは席を立つ。
そして玄関のほうに歩み寄っていく。この時アリスは室内の温度が少し下がったかのような肌寒さを覚えたが、別段気にすることはなかった。
「ちょっと、真夜中に騒がないでくれる!?」
そう言いながら、アンティーク調の模様を施された玄関のドアの取手に手を掛けた。
「アリスー、いま上がったぜー」
魔理沙はアリスに貸してもらったパジャマ姿でリビングに戻ってきた。そう言えば、パジャマ姿になると心なしかアリスが頬を染める気がするが……どうでもいいぜ。
「アリスー、……アリス?」
だが、何度呼んでもアリスが姿を現す気配はない。
魔理沙は顎をさすり、あっと思い付いたかのように顔を上げた。
「かくれんぼしたいなら私は丁重にお断りするぜ」
………まあ、そんなわけないか………
「───本当にいないのか………?」
流石の魔理沙でも、少しばかり心配になって来た。
ふと時計を見るとAM3:15。普通の感覚ならとっくに夢の中にいる時間帯だ。まあ、幻想郷に普通のやつなんていないが。
魔理沙はふと玄関の方を見る。よく見ると、私とアリスが部屋に入ってからアリスが閉めていたはずの鍵が開いている。
「………外か…?」
魔理沙はそう言って、風呂上がりのせいか肌寒さを感じながら玄関に歩み寄った。
「アーリースー、ふた開けっぱだから風呂冷めるぞー」
そんなことを言いながら、玄関のドアをそっと開いた。
魔理沙の予想通り、開け隙間から冷たい夜風が流れるように入ってきた。
「うわぁ、やっぱり寒いぜ……
……うん、ほっといても帰ってくる、私はそう信じるぜ」
魔理沙は家から出たくない一心で、アリスは勝手に帰ってくると決め込み、玄関のドアを閉めようとした。
その時信じられないことが起こった。
ガシッ
「うわっ!?」
突然真っ白な手が、閉めようとしたドアの隙間に入り込んできた。魔理沙は余りに突然の出来事に一瞬力が緩んでしまった。
その瞬間ドアは、手が入るほどから、外の様子が見えるまでに開けられてしまった。
「ちょっ、やば…っ」
その時魔理沙は、ドアの隙間から真っ白な手の持ち主を目撃した。
それは魔理沙が見たことがあるもの───確か、彼岸で小町に対岸に運んでもらうのを待っている幽霊に似ていた。
しかし、彼岸で見かける幽霊とは確実に違うものがあった。それは、まるでへばりついているかのような強烈なまでの殺気だった。
「うぐぅぅぅぅぅっっ!」
魔理沙は渾身の力を込めてドアを閉じようと引っ張った。幽霊のほうもかなりの怪力だったが、流石に手を蹴りあげられては魔理沙に敵うはずもなく、ヴウゥ…と声を出しながら手を引っ込めた。
魔理沙はその瞬間を見逃さずに一気にドアを閉めた。
「はぁっはぁっはぁっ────」
あがった息を整えながら、今自分に起きた事象を必死に理解しようとする。
なっなんだ今のは?
もうなんか見た感じ「THE 幽霊」だったが、まさかそんなまさかなぁ、ははは……
……いやでもアリスがいなくなってるし、あいつが連れ去ったとか有り得ないこともない…か?───
そこまで考えると、魔理沙は玄関の隣の窓に近付いた。
「そうだとしたら……ってか、今の状況からしてそれしか考えられないが───」
窓の取手に手を掛ける。
「あいつの隙を突いてスパークぶっぱなしてピチュらせないとな………」
魔理沙は指先に力を込め、窓を開けた。
そして次の瞬間、勢いよく窓を閉めた。
「……なん…えっ?今…何体いた……?」
魔理沙は自分が見た光景が信じられなかった。
それもそのはず、窓の外には、さっきドアに向かってきたやつも含めて大小様々な大きさの幽霊が、視界を埋め尽くさんばかりに浮遊していた。
(アリス───まさかあの幽霊たちに───)
魔理沙は、ただなにもすることが出来ずに、夜風に乗せて聞こえる、幽霊の発する響くような音を聞いて眠れない夜を過ごした。
幽霊がいなくなったと気付いたのは、朝日が山の尾根から顔を見せ始めた頃だった。
魔理沙は外に出た。そこには数多の幽霊が存在したことを示す散々に荒らされた木々や地面があるだけで、アリスがどこにいってしまったのかは、結局分からず仕舞いだった。
「これは久々の異変だぜ……そして、これまでで一番ヤバいやつだ───」
魔理沙はただならぬ思いで、博麗神社に続く道を急いだ。
どうでしたでしょうか?
初投稿ということで拙い部分もあったかと思いますが、最後まで読んで下さった皆様には感謝の気持ちでいっぱいです…!
次回からは皆様からのコメント等も合わせて、さらに面白い作品作りに邁進していきますので、次回作も宜しくお願いします!