IS<インフィニット・ストラトス> ~あの鳥のように…~    作:金髪のグゥレイトゥ!

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第27話「忍び寄る予兆」

 

ミコトの漂流騒動から時間が過ぎ、現在七時半。大広間を三つ繋げた大宴会場で、俺達IS学園一年生一同は賑やかに夕食を取っていた。

 

「…なるほど、皆何やら疲れ切った顔をしていたのはそんな理由があったのか」

「ああ、おかげで俺もへとへとだよ」

 

昼の話を聞いた俺の隣に座って食事を摂っている箒は、疲れの色が濃い同級生達の顔を見渡して納得だと言って呆れている。結局、箒は海に出て来なかった。もしかして水着用意して無かったのか?日曜日の時だって街に居なかったし。

 

「箒はその頃どうしてたんだ?皆、海に出てきたのにさ。水着忘れたのか?」

「違う!『あの人』から逃げ回っていたんだ!」

 

箒が物凄い剣幕で否定する。『あの人』…ああ、束さんか。なんていうか、その…お気の毒に…。話を聞かなくてもどんな壮絶な追いかけっこだったか想像が出来る。本当にご愁傷さまである。

 

「そ、そうか…。ま、まぁそう気を落とすなって!夏休みになれば海なんて幾らでもいけるんだしさ!」

「別に海に行きたかった訳じゃ…む?」

 

箒は何か気になる物でも見つけたのか、話すのを中断しじーっと何処かを眺めはじめた。何だ何だ?何が如何した?

 

「どうかしたのか?」

「……いや、ミコトの様子が少し、な」

 

「ぅー…」

 

何だ。箒が見てたのはミコトだったのか。箒の視線を辿れば向かいの席にミコトが食事に手をつけていない状態でぼーっと眺めていた。隣の空いてる席はのほほんさんか?どうやら今は退席してるみたいだ。

 

「ああ、そう言えばミコトって和食が苦手だったよな」

 

だが哀しきかな、この旅館は完全に和風なので和食しか食事は用意されて無いのだ。貴重な体験だと思って諦めてくれ。まぁ、好き嫌いを減らす良い機会だと思えばいいんじゃないか?

 

「……あれはそうなのか?そんなんじゃない気がするんだが」

 

どうも納得がいかない様子でミコトを見る箒。一体何が気になって―――ん?今、ミコトの頭がフラつかなかったか?

疲れてるのだろうか?何だかんだ言ってミコトも海でははしゃいでいたみたいだし、疲れて睡魔が襲って来たのかもしれないな。ほら、今だってうつらうつらってな感じで……。

 

「随分と寝むそうだなぁ。ミコトの奴…」

「いや、違う。――――いかん!」

「――――――…え?」

 

突然、箒は立ち上がると御膳を撥ね飛ばしミコトへと駈け寄る。俺は一体何が起きたのか状況を理解まま箒の行動をただ眺めるだけ。そして、箒がミコトへと手を伸ばそうとした時、俺は漸くそれに気付く。力無く地面に崩れ落ちるミコトの姿を…。

 

ドサッ…。

 

「ミコトっ!?」

「きゃあああああっ!?」

 

ミコトが床に倒れた瞬間、大宴会場に悲鳴が沸きあがった…。

 

「ミコトちゃん!?ミコトちゃんどうしたの!?」

「誰か先生呼んできて!早く!」

 

あっという間にミコトを囲う様にして群がり出す女子達。ある一人の女子が先生を呼ぶように声を上げるが、既に誰かが廊下に飛び出していた。襖の隙間から見えた走り去って行くあの銀髪…恐らくラウラだ。先生を呼びに言ってくれたのか。流石に行動が速い。先生の事はラウラに任せよう。それよりも今は―――。

群がる女子を掻き分けその輪の中心で、女子達の安否を心配する視線を浴びながら箒に介抱を受けているミコトへと駈け寄る。

 

「ミコト!?大丈夫か!?おいっ!?」

「はぁ…はぁ…っ」

「…凄い熱だ。疲れによる物じゃないぞこれは」

 

おいおい嘘だろ…。昼間までは全然元気だったじゃないか!?

箒の腕の中で気を失っているミコトは、荒い息遣いで顔を赤く染めて大量の汗をおでこに浮かべていた…。尋常じゃない。風邪とかそんなんじゃないぞこれは…!

 

「一夏!―――なんなのよこれ!?」

「ミコトさんっ!?どうしましたの!?」

「何があったの!?一夏!?」

 

騒ぎを聞きつけて鈴やセシリア、シャルロット達も女子を掻き分けて此処へやって来ると、ミコトの姿を見て言葉を失い慌てミコトへ駈け寄る。

 

「…っ!凄い熱!?昼間は全然体調が悪い様には見えませんでしたのに!?」

「これ、医者に連れてった方が良いんじゃない?あきらかに普通じゃないわよ!?」

 

んな事は分かってる!今はそれどころじゃないだろ!?

 

「無理に動かしたら駄目!身体を寝かしてあげないと!」

「ああ!……誰か!厨房に行って氷貰って来てくれ!あと座布団を!布団代わりにしてその上に寝かせる!」

「う、うん!わかった!貰ってくる!」

「コレ!この座布団使って!」

「わ、私のも!」

 

周りの女子達にそう指示を出し急いで座布団を掻き集めさせると、畳みの上に敷かれた座布団にミコトを寝かせる。と、そんな時だ。彼女が、ミコトの一番の友達が戻って来たのは…。

 

「みこちー!フォーク貰って来……………ぇ?」

 

元気良く開かれて襖から登場したのほほんさんは、弱りきったミコトを見て言葉を失い…―――。

 

ちゃりーん…。

 

箸に慣れないミコトのために持って来たフォークが手から零れ落ちた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第27話「忍び寄る予兆」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――Side 織斑一夏

 

 

あの後、直ぐに千冬姉と山田先生が駆けつけてミコトは山田先生の部屋に運ばれた。今は容態も落ち着き。あれだけ高かった熱も今ではすっかりと引いて平熱よりもやや高めの状態に、荒かった呼吸も今は整った寝息となってミコトはすやすやと山田先生の布団の中で眠りについている。

 

「…はしゃぎすぎて疲れが出たのだろう。臨海学校中は安静だな」

 

千冬姉はそっと手でミコトのおでこに浮かぶ汗を拭うと、ミコトを起こさない様に静かに立ち上がりミコトが心配で部屋までついて来ていた俺達へと振り返る。

 

「お前達はもう戻れ。明日から本格的に実習だぞ」

「でも…」

 

高熱で寝込んでいるミコトを放って部屋に戻るのは…。

 

「オリヴィアさんは私が看病しますから大丈夫ですよ。それより、織斑君達は明日があるんですから。疲れを残して織斑君達も倒れたりなんかしたら大変です」

 

山田先生が俺達を安心させるようにそう微笑む。しかし、ミコトのあの普通じゃない様子を目にしたらどうしても安心なんて出来はしなかった。

 

「織斑先生。ミコトのあれは…」

「単なる疲れによる物だ。元々、ミコトは身体が弱いからな」

 

千冬姉は頑として疲労による物だと言い張る。そうなのか?本当にあれは唯の疲労によって起こった物なのか?疲れただけであんな…。

 

「しかし、あの様子は…」

「篠ノ之。私は部屋に戻れと言ったぞ?早く部屋に戻れ」

「……っ」

 

それは指示ではなく命令だった。有無を言わせないその眼光に箒はただ押し黙る。そして、それは俺達も同じだった。唯、千冬姉に従い部屋を出ていくしかなかった…。――――一人だけを除けば。

 

「…………」

「…のほほんさん?どうしたんだ?」

 

俺達が退出していく中、のほほんさんだけ顔を俯いたままそこから動こうとはしない。

 

「………私の……ぃだ」

「……本音さん?」

 

のほほんさんが震える声でボソリと何やら呟き、立ち去ろうとしていた皆も振り返り視線がのほほんさんへと集まる。

 

「私の所為だ…。私がちゃんと見てなかったから…私が…っ!」

「のほほんさんは悪くないって。誰も気付けなかったんだし…」

 

そもそも千冬姉が言うにはミコトはそういう体質なんだ。誰が悪いなんてありはしない。ただ運が悪かったとしか言えないんだ。けれど、のほほんさんはそれでも自分が許せないのか、俺の言葉を否定するようにぶんぶんと頭を振り瞳に涙を浮かべる…。

 

「違う!違うの!分かってた!私、こうなるの分かってたの!それなのに…っ!」

 

…こうなるのが分かってた?一体、のほほんさんは何を知ってるって言うんだ?

 

「ちょっと、本音。分かってたって一体…――――って!本音!?」

「本音さん!?何処に行きますのっ!?」

 

鈴がそう問い詰めようとしたその瞬間、どんっ!と鈴を押し退けてのほほんさんは部屋から飛び出して行ったしまう。俺達は慌ててその後を追おうとするが―――。

 

「追うな。放っておけ」

「千冬姉!?」

「…納得がいきません。ミコトの事もそうですが、本音を放っておけだなんて」

「………」

 

千冬姉は固く口を閉ざし何も語らない。シャルロットの疑問に答えるつもりは無いと言う事か…。

 

「貴女方は何を隠しているんです?本音は何を知っているんですか!?」

「篠ノ之。前にも言った筈だ」

「…ミコトの詮索はするな、ですか」

「そう言う事だ。お前達の為にも、オリヴィアの為にも、な」

 

千冬姉の言葉に何かが切れた…。

 

――――…ざけんな。

 

「何がミコトの為だよ…。ミコトの事を、友達の事を知ろうとしないのが何でミコトの為になるんだよ!?」

 

千冬姉が何を隠してるかは知らない。でも友達って言うのはそんなんじゃないだろ!?互いに理解し合えるのが友達ってやつじゃないのかよ!?

 

「一夏、落ち着いて。あんまり大きな声を出すとミコトが起きちゃうよ…」

「………くそっ」

 

シャルロットにそう言われて頭に血が昇り忘れかけていたミコトの存在を思い出し自制する。そこへ千冬姉は蔑むかのように俺達を見下し、フッと冷笑を溢した…。

 

「何でも聞けば答えて貰える。知っても自分が背負い切れなければ子供だからと大人に押し付けて逃げる。餓鬼は気楽で良いな」

 

『――――なっ!?』

 

その言葉に俺達は絶句する。

 

「お、織斑先生。少し言い過ぎじゃ…」

「甘くすればつけ上がる。少し力を与えてやれば自惚れる。餓鬼にはこれぐらいが丁度良い」

「――っ!さっきから聞いてれば餓鬼餓鬼って!何?大人がそんなに偉い訳!?」

 

罵倒され続け、ついに怒りが限界に達した鈴が千冬姉に噛みつく。

 

「ああ、責任を背負えない者程ウザイ物は無いからな」

「オルコット家の当主であるわたくしに対してその様なもの言い。許す事は出来ませんわね」

「政府に程良く利用されているだけだろう?」

「なん…ですって!?」

「お、落ち着いてよ二人とも!?」

 

みるみる顔を赤く染め、怒りに震えるセシリア。鈴に続いてセシリアも爆発するのは目に見えていたが、それをシャルロットが慌てて制する。無論、千冬姉を見る目は敵意に満ちてはいたが…。箒もそうだ。無言を突き通してはいるがその瞳に映る感情は明らかに千冬に対して怒りを示していた。

 

「気に喰わない事があれば直ぐに感情を爆発させる。そんな餓鬼と話す程私は暇じゃない。とっとと失せろ」

「千冬「失せろと言ったぞ?それとも、強制的に眠らされたいか?」…っ!わかったよ」

 

これ以上何を言っても無駄か。そう悟った俺は千冬姉の言う通りに荒ぶる鈴達を連れて退室するのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

――――Side 織斑千冬

 

 

「…良かったんですか?あれで?」

 

一夏達が退室した後、山田君が罪悪感に耐えかねて困惑した表情で私に訊ねてくる。

 

「アイツ等はまだ子供だ。子供に責任を…オリヴィアの一生を背負えるとは到底思えん。それに、事実を知って普段通りに生活を送れると思うか?」

「………無理、でしょうね」

 

そう、無理だ。アイツ等にミコトの人生と言う重圧を背負う事も、自分を偽るなんて器用な真似も出来る訳が無い。事実を知ればその行き場の無い感情を分かりやすい悪へと向けるだろう。そして、それは今の生活の崩壊を意味する。

 

「しかし、布仏はそれでも笑っている。事実と向き合いながらも、自らの責務を果たしている…大した奴だよ。まだ幼さが目立つ所はあるが、私は布仏を評価している」

「そうですね。私も布仏さんは良くやっていると思います。護衛の方も思いの外しっかりとこなせてますし、監視の方も今回は不測の事態でしたから彼女に非は無いかと」

 

確かに、水着のセンスはどうあれ紫外線等の対処は完璧にされていた。非の打ちどころが無い程に。本人はそう思ってはいない様だが。

 

「不測の事態…か。どうだかな」

「織斑先生…?」

 

ギリシャから日本へ無理な航行。急な環境の変化。慣れぬ学園生活。クラス対抗を始めとする騒動。どれもミコトの身体に重い負担となっている。寧ろこうなるのは分かりきっていたと言うべきではないのか?

 

「……何でもない。オリヴィアの事は任せた。私は用事があるのでな」

「布仏さんの所ですか?」

「…それもあるが本命は別だ。一体『あの馬鹿』は何処をうろついているのやら…」

 

歩く『人間災害』を放置するのは色々と危険すぎる。とりあえず昼間の様にもう一度気絶させて地面に埋めておかなければ…。オリヴィアの事についても確認しておきたい事もあるし、布仏の事もあるからな…。

 

「あの、織斑先生…」

「何だ?まだ何かあるのか?」

 

部屋から出ようとしたところを山田君に呼び止められ振り返る。

 

「事実を知らされずに終わる偽りだらけの一生に意味はあるんでしょうか…?」

「…………」

 

その問いに答えず私は無言で部屋を出た。答えられる筈もない。人生の意味など、本人にしか分からないのだから…―――。

 

 

 

 

 

 

――――Side 布仏本音

 

 

「グスッ…ごめんね。ごめんねみこちー…」

 

旅館から離れた森の木陰に隠れ、私はみこちーに謝り続ける。何度も、何度も、只管に懺悔を繰り返す…。

知っていた筈なのに。みこちーが身体が弱いのは知っていた筈なのに。避けられた筈だ、この事態は。なのに…避けられなかった。完全に私のミスだ。私がみこちーを苦しめたんだ!

 

「ごめんね…ぐすっ」

 

Pruuuuuuu…

 

静寂が支配する森に携帯の音が鳴り響く。私の携帯だ。

 

「…はい。もしもし?」

 

『本音?山田先生からミコトちゃんが倒れたって連絡があったんだけど―――泣いてるの?』

 

受話口から聞こえてきたのはお姉ちゃんの声だ。いつもは冷静なその声も今は若干焦りが籠ってる。きっと、みこちーが倒れたからだ…。

 

「ぐすっ…お゛ねぇちゃん゛!みこちーがぁ!」

 

『分かってる。分かってるから。泣かないで…』

 

「ひっく…でもぉ…っ!」

 

任されたのに。みこちーを任されたのに…っ。

 

『貴女は悪くないわ。万全を尽くした』

 

「それでも…それでもみこちーは倒れたもん!私もせいだもんっ!」

 

『本音…』

 

どうしよう?このままみこちーが目を覚まさないなんて事になったら私…。

 

『はいはいもしも~し?本音ちゃん聞こえてる?』

 

「ぐすっ……おじょうさま?」

 

お姉ちゃんの声とは違う明るい女の人の声。おじょうさまの声だ。たぶんお姉ちゃんと変ったんだと思う。

 

「おじょうさま。ごめんなさい。みこちーが…」

 

『うん。話は山田先生から聞いてる。せっかくの臨海学校が台無しになっちゃったわね…。でも、自分を責めちゃ駄目よ?』

 

「でも!私が―――!」

 

『貴女が泣いてミコトちゃんが元気になるの?違うでしょ?貴女は、貴女の役割を果たしなさい。布仏家の人間として』

 

声から優しさが、温もりが消えて、鋭い言葉が受話口から私の耳を突く。今、受話口の向こう側に居るのは身内としてではなく主としての更識 楯無だった…。

 

『………遅かれ早かれこうなるのは分かりきっていた。ただ、予定より早かっただけ。違う?』

 

「それ、は………」

 

あくまで想定されていたタイムリミットは何事もなければの話。でも、入学から想定外のアクシデントは続きっぱなしで……。

 

『辛いかもしれないけど、ミコトちゃんは―――――』

 

「やめて…やめてよぅ…ひっく…グスッ…」

 

そこから先の言葉を、私はいやいやと首を振って拒絶する。聞きたくない。そこ先の言葉だけは…。

 

聞きたくない。聞きたくないよぅ…。

 

「いやだ。いやだよぅ…」

 

『(…今は、何を言っても無駄みたいね)…本音ちゃん。もう一度考えてみてね?何で私がミコトちゃんの監視を貴女に任せたのか。貴女が何をすべきなのか…』

 

おじょうさまはそう言い残し電話は切れる。

 

「私の…すべきこと…?」

 

決まってる。みこちーを守ることが私の…―――。

 

「……ちがう」

 

おじょうさまもお姉ちゃんも私に護衛なんてはなから期待していない。そもそも力の無い私にみこちーを守るなんて出来る訳が無い。そんな私にせいぜい出来る事なんて―――。

 

「私に…出来る事なんて…」

 

できる…こと…なんて―――。

 

「笑ってることしか…ないよ…」

 

戦う力なんて、ない。だったら…最後までみこちーの傍に居て、みこちーが笑ってられる様に笑ってあげることくらいしか私には出来る事なんて無い…。

 

「………辛いなぁ」

 

本当に……辛いよ…。

 

「いやーあはははー♪」

「………?」

 

人気の無い森の中、あまりにも場違いで雰囲気ぶち壊しな陽気な女の人の笑い声が聞こえてくる。誰だろう?同級生の子かな?とりあえずぐしぐしと涙を拭っておく、泣かれてるとこ見られたくないもん…。

 

「いやいや死ぬかと思ったよー!流石ちーちゃん!首を180°捻じ曲げて地中に埋めるとか容赦無いね!しかも人気の無い森の中!まるで死体を隠してるみたいだね!死体遺棄事件とか初めて体験したよ!」

 

…同級生の子かと思ってたら何か変な人が来た。可愛らしいウサミミとエプロンドレスは泥だらけで、しかも何か凄い事言ってる…。

 

「あれ?死体遺棄って私死んでないから死体遺棄事件じゃないよね?じゃあ、殺人未遂事件だぁ!いやー、それでも初体験だけどね!」

 

そんな体験する人なんて滅多に居ないと思うけど…。

この人一体何なんだろう?いきなり現れて…。この辺り一体はIS学園の貸し切りで関係者以外は立ち入り禁止になってる筈なんだけど…。学園の関係者なのかな?でも、とてもそうには…。

 

「むむむ?しかし此処は何処だろー?私の記憶が確かならば、私は旅館に居た筈なんだけどなー。真っ暗で分からないや」

 

どうしよう。先生を呼んだ方が良いのかな。いやそれよりも警察を呼んだ方が良い気がするよ。死体遺棄とか殺人未遂とか言ってるし…。

 

「おお!村人Aはっけーん!」

 

うわ。見つかっちゃったよー…。

私と目があったウサミミの人はガサガサと草木を掻き分けてこっちに向かってやって来る。

 

「やーやー!村人A!此処が何処だか説明してくれないかなー?ほらほら!『ここは、○○の村です』っていつものやつお願い!」

「NPCになった覚えはないんだけどな…。あと、ここは旅館の裏にある森だよ?」

「なんと!?現場から離れて無い所に埋めるだなんて二流も良い所だよ。ちーちゃんらしくないなぁ」

 

ちーちゃんって誰かな?聞く限り凄く怖そうな人なんだけど。

 

「世界の覇者。ブリュンヒルデがそんなんじゃいけないと思うな!うんうん!」

 

身内だったーっ!?…あ、でも凄く納得してる自分がいる。

 

「あ、あの…」

「うん?何かな?私は君に用は無いんだけど?」

 

あ、この人私と同じ匂いがするよ。我が道を往くって感じの。…ってそうじゃなくて。

 

「織斑先生の知り合いなんですか?」

「知り合いなんてとんでもなーい!私とちーちゃんはベストフレンド!親友なんだから!月が輝くには太陽に照らされなくてはならない。つまり私とちーちゃんは太陽と月みたいな関係なのだ!」

 

説明が厨二臭いなぁ…。

 

「ということは、学園の関係者…?」

「んー?学園の関係者って言えばそうなのかなー?ISの開発者だからねー。うん、そうだね!関係者だよ!」

 

…今何かとんでもない事言ったよね?絶対言ったよね!?

 

「ISの開発者って…え、ええーっ!?」

「何突然大声出しちゃってくれてるわけ?失礼な奴だな君は」

「だ、だってISの開発者って言ったら…」

「そうだよー!何を隠そう私が天才の束さんなのだー!で、話はもう終わり?じゃあバイバイさよならまた明日!」

「あ、あの!」

 

無意識に私は立ち去ろうとする彼女を呼び止めていた。

何故そうしたのかは私にもわからない。もしかしたらみこちーが倒れたことで弱った心が、藁にも縋る想いでこの様な行動をとらせたのかもしれない。

 

ISを生み出した世紀の大天才。もしかしたら彼女なら私の親友を救えるかもしれない…と。

 

馬鹿な考えだ。甘い考えだ。あまりにもご都合的過ぎる。彼女は科学者だって医者ではない。そんなこと誰だって分かる事だと言うのに、それを判断するだけの余裕は今の私には有りはしなかった。

 

私に呼び止められてピタリと身体を止めると、不満そうな顔でこちらを振り向く。

 

「む~!何なんだお前は~!さっきから邪魔ばっかりして~!」

「あっ……え、えと、その…篠ノ之博士は医療の方も他の人達と比べて優れてるのかなーって…あ、あははー」

 

うぅ、形振り構ってられないからって我ながら苦しい話題の振り方だよぅ。目の前の人も何言ってんだコイツ?みたいな顔してるしぃ…。

 

「何を言い出すかと思えば本当に何なのかな君は?まぁ、大天才の束さんにかかればどんな難病でもちょちょいのちょいだけどね!どうだー?驚いたかー?はい、これで満足?」

 

―――――っ!?治せるんだ!

 

私はそれを聞いて絶望しか無い暗闇に希望の光が差し喜びに震え。そして、目の前の人に凄い勢いで頭を下げてお願いする。

 

「お願いします!みこちーを助けて下さい!」

「はぁ?誰だよ君は?何で君なんかのお願いを聞かなきゃなんないの?それに、みこちーって誰?」

 

心底ウザそうに冷たい言葉が突き刺さる。返って来たのは明確な拒絶。さっきまでの態度もあまり人付き合いでは褒められた物じゃなかったけど、今度のはもうそう言うレベルじゃなかった。一方的な拒絶。交渉の余地なんて一切感じさせない絶対の壁。それでも、それでも私は譲れなかった。頭を下げるのを止めなかった。

 

「ミコト・オリヴィア。私の大切な友達なんです!お願いします!お願いします!」

「知らないよそんなの。私には関係ないし興味なしだよ………あれれ?ミコト・オリヴィア?………あーーっ!ちびちーちゃんの事かぁ!」

 

ぽむと手を叩いてぴこぴこと頭上のウサミミが激しく動く。技術者としてあのウサミミはとても興味深いけど今はそれどころじゃないので置いておく。

 

「ちびちー?え、えっと…みこちーを知ってるの!?」

「うん。知ってるよー」

「な、なら!」

「でも嫌」

「―――――…ぇ?」

 

キッパリとした拒絶の言葉。その言葉に私は何が何だか分からなくなった。…何で?どうして?知り合いなのに?何で助けてくれないの?

 

「ど、どうして…?」

「だって無駄じゃん。私完璧主義者なんだよね。自ら手掛ける『作品』は完璧じゃないと気が済まないんだぁ。それに、どうせすぐ死んじゃうんだし無駄な事しても意味無いでしょ?」

 

無駄?今、無駄って言ったの?この人…。みこちーを助けるのが無駄…?

みこちーにとって、例え僅かな延命でもそれがどれだけ価値があるのかこの人は分かってるの?その僅かな時間。ほんの少しの時間さえあればみこちーがどれだけ幸せか…?それだけの事が分からないのこの人は…。

 

「あの子は面白くはあるよ?でもそれだけなんだよねー。代えのきくオモチャってやつかな?飽きたらポイって捨てちゃうの」

 

おも…ちゃ…?みこちーがオモチャ?分からない。この人が何を言ってるのかワカラナイ。

 

「みこちーは………みこちーはオモチャなんかじゃないもん!」

「ふーん。でも、それは君の価値観だよね?私は違うし。あの子が死んでも少し勿体なかったかな?程度でしか無いから」

 

少し勿体なかったって……。

くらりと意識が遠のきそうになるのを地面を踏ん張って何とか耐える。

 

「貴女…サイテーだ!何で…どうしてそんな酷いことが平然と言えるの!?」

「はぁ?訳わかんないし。私にとってあの子は所詮面白いモルモット程度なの。モルモットに真剣になるなんて逆に信じられないんですけど?」

「――――――――!?」

 

モルモット…。みこちーがモルモット…?

同じだ。この人はみこちーを作った人達と同じだ。みこちーを人として見てない。唯の道具としてしか見てない。みこちーが生きてると思って無いんだ…。

 

「第一さ、スイッチ一つで大量生産出来るのをオモチャと言わないでなんて言うの?そんなに惜しいのなら新しいの作れば良いじゃん。理解不能だよ」

 

そういう問題じゃない。どうしてそれが分からないの?分かってくれないの?

 

「みこちーに…代わりなんて居ないもん!みこちーは一人だけなんだからぁ!」

「一人しか、ねぇ。ま、確かに幾つもの偶然が重なって出来た失敗作だしそうかもしれないね?でも、ちーちゃんのコピーでしかないじゃん。笑えちゃうよね。クローンならあの完璧な存在を再現出来るって思えちゃうんだから。不愉快極まりないよまったく」

 

…うるさい。ウルサイウルサイウルサイウルサイウルサイウルサイウルサイウルサイ!

全てを見下したようなその態度が気に喰わない。吐き出される言葉が癪に障る。この人の成す事全てが腹立たしい。

 

「みこちーは……みこちーはみこちーだ!例えあの人のクローンでもみこちーはみこちーなんだ!代わりも無い!他の人でも無い!世界でたった一人しかいないんだ!」

「うわ、駄々こね始めたよ。現実から目を逸らすなんて見苦しいね。諦めなよ、試合はもう終了だよ?」

 

―――…ふざけないで!

 

人の気も知らないで…。現実から目を逸らす?それが出来たらどれだけ幸せか分かってるの?現実から目を逸らしてただ笑っていられたらどんなに幸せか…。

 

「貴女に…貴女に何が――――!」

 

早まるな。相手は世界中の国家が欲している天才。危害でも加えれば大問題となり、おじょうさまの邪魔になってしまう。それは布仏の者として断じてやっていけない事だ。でも、溜まりに溜まった感情は理性を喰い破り、暴発したその感情は目の前に居る女へと向けられる。…その瞬間――――。

 

「もうそこまでにしておけ。それには人の常識なんて通用せんからな」

「むむ!?この声は!?」

 

―――静まり返る森の中に凛とした女の人の声が響き渡り、伸ばそうとした手がピタリと止まった…。

 

「織斑…先生…」

「此処に居たのか。まさか、そこの馬鹿と一緒だとは思いもしなかったが」

 

暗闇の奥から現れたのは織斑先生だった。そのもの言いからして私を探してたみたいだけど、どうして私なんか…。

 

「束。私の教え子を苛めるのはやめろ。お前と違ってこいつは繊細なのでな」

「むー。ちーちゃんがそんなに優しくするなんて。ちーちゃんはこんなのが好みなのかな!?ひどい!私の方がおっぱい大きいのに!私とは遊びだったんだね!」

「五月蠅い黙れ」

 

鋭い蹴りがあの女に突き刺さり女は綺麗な放物線を描いて宙を舞い、茂みに頭から突っ込んだ。運動神経が悪い私でも分かる。あれは人を殺せるレベルの蹴りだ。

 

「流石ちーちゃん!常人ならあばらが何本か逝っちゃってるよ!」

 

それでへーぜんとしてられるこの人は本当に科学者…?

けれど織斑先生はそんなの気にもしないで目の前の非常識な存在を完全にスルーして話を続ける。

 

「布仏。オリヴィアの件だが、あれはお前が気負う事ではない。気にするな。責任と言うのであれば、それは私が負うべき物なのだからな」

「……先生?」

「私はさながら背景ですぜ」

 

…五月蠅いのは放っておこう。あ、織斑先生が足元に転がってた拳サイズの石ころをあの人に向かってぶん投げた。

 

「ミコト・オリヴィアを託されたのは私だ。本来ならあれは私が監督しなければならなかったのをお前に押し付けた。むしろ私はお前に感謝しているくらいだ」

「私に感謝…?」

「………私もまともな学生生活を送っていなかったからな。私がお前の役目を務めたところで、オリヴィアにとって価値のある日常は送れなかっただろう」

 

そう言えばおりむーから聞いたけど、おりむーのお父さんとお母さんは物心ついた時から居なくておりむーのお姉ちゃんである織斑先生が女手一つで生活を支えてたんだっけ…。それなら学生生活を楽しんでなんかいられないよね…。

 

「だから、お前には感謝している。あの輪の中心にオリヴィアが居られるのはお前のおかげだ」

「私は…ただ笑ってるだけですよ…」

「確かにそれだけだ。だが、難しいんだよ、それが…。更識がお前にオリヴィアを任せたのは、お前ならそれが出来ると思ったからだ。お前にしか出来ないと思ったからだ」

 

私にしか…。

 

「常人なら潰れている。過酷な現実に向き合ってなお笑えるのはどれ程難しいか分かるか?仲が良ければなおのこと…。それでも、お前は笑えている。オリヴィアのためにな」

「それしか出来ませんから…」

「それだけで良い。オリヴィアの傍で笑っているのがお前の務めだ。今回の事でお前に責はない。良いな?」

 

責任は無いと言われても納得は出来ない。今回の事は私に責任があるのは事実なんだ。それを気にするなと言うのは無理がある。無理があるけど…。

 

何時までもへこんでたって仕方が無いよね…?

 

これで笑えなくなったりしたらそれこそ本末転倒なんだ。先生やおじょうさまが言う笑ってる事が私の務めなら、私は笑ってなくちゃいけないから…。だから…。

 

「…………分かりました」

「そうか。なら、部屋に戻れ。もう就寝時間はとうに過ぎているぞ」

「…はい!おやみなさい!先生!」

 

くるりと身を翻し旅館へと私は駆けていく。

悩みが解消した訳でも、問題が解決した訳でもない。けれど、気は楽になった。そして、私のすべき事も思い出した。笑っていよう。泣くのは最後の時だけ。その時を迎えるまではずっと笑っていよう。みこちーのために…。

 

 

 

 

 

 

――――Side 織斑千冬

 

 

「……

行ったか」

 

布仏が去っていった方角を眺めながらそうぽつりと呟く。

 

「何でこんな面倒なことするのかな?別にあの子の前でもかまわないでしょ?」

「五月蠅い」

 

そもそもお前と一緒に居ること自体が想定外だったんだ。でなければこんな面倒な事するか。…それに、此処から先の事は布仏には聞かせる訳にはいかないからな。

 

「それで、本題に入るが…」

「ちびちーちゃんの事だね?そうだねー。確かな事は実際に調べてみないと分からないけど、この数ヶ月間の身体の負担から考えて―――

 

 

 

 

―――余命、一年ってとこかな?」

 

 

 

 

 

 

 

――――Side 布仏本音

 

 

「あちゃー…、来た時はただ夢中で走ってたから良く覚えてないけど、足もとがでこぼこで歩き辛い上に結構旅館から離れてるよー」

 

織斑先生には悪いことをしたなぁ。わざわざこんな所にまで探して来てくれるなんて。やっぱり織斑先生は生徒想いの良い先生だよー。女子生徒からの人気は名声や憧れだけで得た人気じゃないってことだねー。

 

「それはそうと早く旅館に戻らないと…。皆心配してるよね?」

 

あんな場面で飛び出しちゃったんだもん。おりむー達は優しいから絶対心配してるよー。それに、気が動転して口を滑らしちゃったし…。

 

「あ~、どうしよう?誤魔化すの大変そうだよー!」

「その心配は不要だ」

「ひゃいっ!?」

 

突然現れた冷たい声にぴょんと跳ね上がる。

 

「…どうした?」

 

木の陰からぬっとボーデヴィッヒさんが生えてきて奇声を上げた私を見て眉を顰める。む~!何かなその表情は!?驚かしておいて悪びれもしないで~!

 

「どうした?じゃないよ!急に現れないでくれるかな!?ビックリするから!」

「む。それはすまなかった」

 

まったくだよ、もう…。

唯でさえこの子は声の温度?って言えばいいのかな?それが低いのにこんな人気の無い森でそんな登場のされ方なんてされたらビックリしちゃうよ…。

 

「それで?心配はいらないってどういう意味かなー?」

「教官が織斑達に詮索はするなと念を押しておいた。お前が滑らした言葉の意味を問いただされる事はあるまい」

「そっか…」

 

何から何までお世話になりっぱなしだなぁ…。

 

「それは別としてだ。私が此処に居るのはお前に言いたい事があったからだ」

「…何かな?私を笑いにでも来たの?」

 

そう卑屈混じりに訊いたけど、あの子は静かに首を振りそれを否定。

 

「いや、丁度良い機会だから言っておこうと思ってな…………すまなかった」

「―――………ほぇ?」

 

馬鹿にされると思っていたらいきなり深々と頭を下げられて謝られたでござる。

 

「え、えっと…?」

 

訳も知らず突然謝られて今の状況に困惑する私。何が一体どうしてこうなった…。

 

「お前にはちゃんと謝罪したかった。場の空気を悪くしないために私が行動を共にするのを反対などはしていないが、本当は嫌なのだろう?」

「…そうだね。否定しないよ。今でも私は君を許せてないから」

 

本音を隠そうともせずに真っ向からそう言い放つ。けれどそんな事は分かりきってたんだと思う。あの子はただ頷くだけだった。

 

「ああ、分かっている。真実を隠し続け、一人来るかどうか分からない明日に怯えながら過ごすお前には私の行ったことは絶対に許せなかっただろう」

「……………」

 

流石にこれには参った。まさか私の胸の奥に仕舞い込んでいる弱い部分を突いて来るなんて。事情を知る他の人ならともかく、人の情とかそう言うのに疎そうなこの子がそんな事を言って来るなんて…。

 

「な、何を言ってるのかな?」

 

この人だけには弱さを見せまいとちっぽけな対抗心で意地を張ってみせる。でも、そんな物はこの子にはお見通しの様だ。

 

「隠す必要はない。…私自身、明日が来るのが怖い」

「えっ?」

 

さっきもそうだったけど、驚きの連続だよ。この子は自分から弱さを見せてくるような子じゃないと思ってたから。

 

「だから、すまなかった。辛い想いをしているというのに、その上更にあのような事をしてしまって……本当にすまなかった。謝れば許してくれるとは思わない。逃げだと思われても仕方がないだろう。…それでも、すまない」

「…………ぁ」

 

また深く頭を下げて詫びてくる。何度も、何度も…。そして気付く。頭を下げていて私からはあの子の顔は見えないけど、月の光が反射して涙を零している事が…。

 

「ずるいね、君は」

「……そう思われても仕方がないな」

「うん。ずるいよ。『ラウっち』は…」

 

涙を流してる女の子を憎めなんて私には出来ないよ。それが、みこちーを大切に思っている人なら尚更だよ…。

 

「私は、何があってもミコトを守る。それが私の償いだ」

「やっぱりずるい。私はそんなこと出来ないよ」

 

少し不貞腐れた様に言ってみる。

 

「だが、私はあの日常を守る事は出来ない。教官もだ」

「………訊いてたの?」

「すまない。悪いとは思ったのだがな…」

 

ラウっちはほんと油断も隙もないよー…。

 

「………私はラウっちを許す事は出来ないよ。どんな理由でもみこちーを殺そうとしたから」

「ああ、分かっている」

「でも、ラウっちはみこちーの友達だよね?」

「……そうでありたい。ミコトが私を友と認めてくれるならそうでありたいと願っている」

 

………そっか。

 

「私からラウっちの友達になるのはたぶん無理。どうしても抵抗が出来ちゃうよ」

「………」

「でも、みこちーの友達なら仕方が無いよね?『友達の友達は友達』だもん」

「布仏…」

 

驚いた表情でラウっちは頭を上げてこちらを見上げてくる。私はそんなラウっちに微笑んで右手を差し出した。

 

「私はみこちーを守りたい。最後まで、みこちーの生活を…だから、私の友達になってくれるかな?」

 

差し出された右手を戸惑いながら見つめるラウっち。でも、ラウっちはやがて微笑むと―――。

 

「………私などで良ければ。喜んで」

 

―――私の手を握ってみこちー意外に見せた事が無い綺麗な笑顔で応えてくれた。

 

 

「私がみこちーの笑顔を守るよ」

「では、私がミコトの身を守ろう」

 

 

月の光に照らされる中、奇妙な友情はこうして交わされたのだった…――――。

 


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