IS<インフィニット・ストラトス> ~あの鳥のように…~    作:金髪のグゥレイトゥ!

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第54話「それぞれの日常 3 」

 

「あ゛ぁ~……」

 

朝から気が滅入るうめき声に、朝食を摂っていた皆の箸がピタリと止まり、その声の発生源に視線を向ける。

 

「……如何したんだよ、鈴?朝っぱらからそんな声出して」

「本国からねぇ…候補生管理官が来るのよぉ……しかも今日…」

「あらまあ、それはお気の毒に」

 

セシリアが嘘偽りなく心底から同情する眼差しで鈴を見る。その眼差しはまるで明日の食事には食卓に並ぶ家畜に向けられるそれだったが。えっ、何?候補生管理官ってそんなに毛嫌いされるような人間なのか?

 

「それにしても突然ですわね。何かありましたの?」

「間に合わないって聞いてた高機動パッケージを届けにこっちに来るんだってさぁ~…やだぁ~…放課後になってほしくない~…」

 

今からもう放課後のことを考えて鈴はテーブルに突っ伏する。気が早いと言うか……それだけその管理官が嫌いらしい。

 

「何をそんなに嫌がるのだ?」

 

さっきから二人の管理官を嫌っている様子を見て箒は疑問に思ったのだろう、俺も箒と同意見である。

 

「アンタは国からISを支給されてないから分からないかもね。ISは国の財産みたいなものだから、専用機を支給される代表や候補生には管理官が付けられるのよ。そいつがまた融通が利かないうえにうるさくってさぁ…」

「やっぱりどの国も似たようなモノなんですのね。わたくしも似た様なものですわ。此方の要求なんて一つも聞いてくれないんですもの」

 

そう二人で愚痴を洩らしていると、そこにラウラが話に加わる。

 

「ISは子供の玩具じゃないんだ、厳重に管理されて当然だろう。そもそもこの学園の連中はそういう感覚の奴らが多過ぎる」

 

叱るように言うと、フォークで突き刺したソーセージを齧り、カリッと食欲をそそる心地良い音が響かせる。

ラウラの言う通りISは兵器だ。戦略が戦術に覆される程に一機の有する力は強大で、よからぬことを考える人間がISを持てば大変なことになるだろう。そう、学園祭でオータムと名乗ったあの女のように…。

 

「………まあ、私も管理官にはあまり良い思い出は無いがな」

 

抑えているつもりなんだろうけど、その滲み出る怒気は全然抑えられてない。ふとラウラの手元を見れば、手に持っていた金属製のフォークが尋常じゃない握力でぐにゃりと曲がってしまって、それを見たミコトを除いた皆はドン引きである。

 

「ラ、ラウラもその候補生管理官って人が嫌いなのか?」

「管理官と言うより私の場合は上官だな。……いや、アレを上官と言うのも可笑しいか。あんなものを上官と呼べば、私だけでなく隊の部下達の尊厳に関わる」

 

語れば語る程ラウラの表情から怒りの色が濃くなり、ピリピリと肌に伝わる殺気に爽やかな朝食は一気に殺伐とした空間へと変貌してしまう。

 

「ツーマンセルトーナメントで起こった騒動の仕掛け人と思われる人物。それが私の管理官だった。簡単に座れる地位でもないのだが……さて、どうやって潜り込んで、誰が手引きしたのやら」

 

ちょっ、おま!?こんなところで何言い出してんだ!?

 

「ラ、ラウラ!?そんなこと此処で言っちゃ…」

 

慌ててシャルロットがラウラを止めに入る。

 

「心配するな。私に怯えて皆このテーブルから離れた場所で食事を摂っているし、聞き耳を立てている奴も居ない」

 

確かに周りを見渡してみれば、皆俺達が居るテーブルを避ける様に離れた場所で朝食を食べていた。これなら話を聞かれる心配は無いだろうけど、その気遣いを一緒に食事をしている俺達にも向けて欲しい…。

 

「ラウラ。ごはん食べてる時、こわい顔、ダメ」

「む、すまん。どうも奴のことを思い出すと冷静さを欠けてしまう」

 

恨み骨髄といったところだろうか。

ミコトに注意されて申し訳無さそうにラウラは謝罪してこの話はこれで終わりとなる。しかし、ラウラの管理官があの事件の黒幕だったとは…朝からとんでもないことを聞かされてしまった。

 

「ごちそうさまでした」

 

空となった皿の前で手を合わせてごちそうさまをするミコト。

 

「お、今日は食べ終わるのが速いなミコト」

「ん。今日は、いつもより少なめだから」

 

それは大丈夫なのか?もともと多いとは言えない食事の量を、さらに減らすとなると心配になって来るんだが…。そう思ったのは俺だけじゃ無いらしく。

 

「えっ!?体調が悪いのー?みこちー?」

 

ガタンッと椅子を倒して立ち上がったのほほんさんが、テーブルに身を乗り出してミコト顔を覗き込む。俺ものほほんさんに見習ってミコトの顔色を窺うが、別に体調が悪そうには見えなかった。

 

「大丈夫。おなか、空かないだけ」

「ほんとー?」

「ん」

 

心配そうにするのほほんさんにミコトは頷く。

 

「体調が優れない時は直ぐに言うんだぞ?ミコト」

「そうだよ?ミコト。辛かったら言ってよね?」

「むー…大丈夫なのに」

 

俺達は純粋に心配しているだけなのだが、ミコトにとっては自分は大丈夫だと言っているのに皆に信じてもらえず、まるで自分が嘘をついてる様に思われていると勘違いしたのだろう。不満そうに頬を膨らませている。

 

「し、信じてない訳じゃないんですのよ?わたくし達はただ心配で…」

「……ぷいっ」

「ああっ!?拗ねないでくださいな!?」

 

拗ねて顔を背けてしまったミコトに若干涙目でうろたえてしまうセシリア。その姿は溺愛する娘の反抗期に戸惑う母そのものである。

 

「あはは、また始まったね」

「セシリアママも過保護なんだから…」

「そうからかうものではないぞ?……ぷっくく」

「そう言うしののんだって笑ってるよー?」

 

なんて言うかもう当たり前の光景だよなぁ。最初は嫌がっていたけど、今じゃ周りからからかわれても満更じゃない反応を見せる様になったし、もう『セシリアママ』はクラスの公認も同然だし…。

 

「…………」

「…ん?」

 

皆が騒いでいる中、一人黙ってじっと真剣な表情でミコトを見ているラウラに気付く。

 

「ラウラ?どうかしたのか?」

「……いや、またお菓子でも食べ過ぎたのだろうと思ってな。まったく、ミコトの間食癖にも困ったものだ。ルームメイトが本音だから仕方が無いことなのかもしれんが」

 

俺が話しかけた途端に険しい表情は薄れ、ラウラは苦笑を浮かべる。

 

「え?あ、ああうん。そうだな」

 

明らかに誤魔化されたのだが…。

 

「なあ、ラウ―――」

「貴様等!騒いでないでさっさと朝食を済ませろ!遅刻なんぞしたら容赦しないからな!」

 

気になって訊ねようとしたところに、食堂に響き渡った千冬姉の怒声によってその言葉は遮られ、俺が抱いた疑念をラウラから問いただす事はできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第54話「それぞれの日常 3 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――Side 凰鈴音

 

 

「はぁ……」

 

ISスーツに着替え終えたアタシはロッカーに手をついて、今日何度目か分からない重い溜息を吐く…。

ついにやって来てしまった放課後の時間。高機動パッケージ『風』の試運転を第四アリーナで行うと言う事なのだが、その第四アリーナに行けばあの堅物ツリ目管理官が待ち構えている。それ考えると足がまるで鉛になったかのように重く感じてしまう。

 

「なんで来るかなぁ…パッケージだけ本国から送ってくれればいいのに…」

 

そうはいかないことぐらい自分でも分かってるけど、そんな子供染みた我儘を言いたくなるぐらいに、あの候補生管理官が苦手なのだ。

 

「―――っと、いけない!遅れるとまた小言言われちゃう!」

 

バタンと乱暴にロッカーの扉を閉めると、アタシは慌ててロッカールームから出てアリーナへ急いだ。

 

 

 

 

「遅いですよ、凰・鈴音代表候補生。本日の教習課程はもう随分前に終了していた筈です。着替えるだけにどれだけ時間を掛けているのです?」

「す、すみません……」

 

アリーナで待ち構えていた、ピリピリと苛立った雰囲気を纏い、切れ目に鋭いエッジの眼鏡をかけ、ばっちりとスーツを着こなした女性に、アタシは若干ビクつきながらも謝罪する。

目の前に居るこの女性の名前は楊 麗々(ヤン レイレイ)候補生管理官。アタシの管理官を務めている人だ。

 

「時間が押しています。早速、実装と量子変換、それに試運転を開始します。準備を始めなさい」

「ぐっ………は、はい」

 

人が謝っているのにも関わらず、この管理官は私を見向きもしないで背を向けて歩きだす。イラッときたが此処はアタシに非があるので、怒りをぐっと我慢して楊候補生管理官の指示に従い準備に取り掛かった。

 

「高機動パッケージの主な変更点は、増設されたスラスター4基、衝撃砲の出力を落として砲弾が拡散タイプの近距離仕様に変わったこの2つです。操縦の際はそれを考慮して運用して下さい」

「了解」

 

管理官の説明を、量子変換とハイパーセンサーに表示されるパラメーターチェックを行いながら返事を返す。

やっぱり、スラスタ―に出力を回すために、武装の方の出力がだいぶ落ちてるわね。主砲の火力が落ちて決定打が欠けるとなると、火力不足で専用機持ちの中じゃ結構不利かも…。

 

「キャノンボール・ファスト当日には、本国から軍や企業の重鎮の方々もお見えになります。無様な結果は出さない様に」

 

余計なプレッシャーをかけてこないでよぉ、もう…。

 

正直、あの面子でレースをすればアタシは最下位を争う形になる可能性は高いのだ。一位はまずミコトが居るから無理。2位も高機動の白式と紅椿の二機で争う事になると思う。というか、今回ばかりは相手が悪い。もし白式の前に出たならば、『雪華』の突撃槍モードで跳ねられてそれで終了なのだ。箒の方は紅椿の操縦に慣れていないようなので、まだやりようはあるかもと思われるかもしれないけど……。

 

純粋にマシンスペックの差がなぁ…。

 

流石はあの篠ノ之束が手掛けた機体。操縦者の技量を補う性能を持ち合わせている。それはスペック差を見比べるのが馬鹿馬鹿しくなる程に。……あ、やっぱり上位3位に喰い込むのは無理かも…。

 

「ぜ、善処します」

「そんなものは求めていません。此方の要望通りの結果を示しなさい」

 

簡単に言ってくれるわね、ほんと…。

 

―――と、そこで高機動パッケージの量子変換が完了する。

 

「さて、準備は整いましたか?なら試運転を………おや?」

 

あちらでもそれを確認したのか、すぐさま試運転に取り掛かる様に指示を出そうとしたのだが、アリーナのゲートにひょこひょことやって来た、生徒に気付いて中断して、やって来たそれに声を大きく上げて呼び掛けた。

 

「一般生徒ですか?独占する様で申し訳ありませんが、今は我々が使用していますので、別のアリーナに移動してはいただけないでしょうか?」

「ん?」

 

声をかけられてこちらを振り向く生徒。

小柄な体に揺れる白い髪。もうお分かりだろう。やって来た生徒と言うのはミコトだった。ミコトは立ち去る様に言われたにもかかわらず、何故かこちらに向かってひょこひょこと歩いてくる。

 

「鈴」

「いや、アンタなんで此処にいんのよ?てか、何でこっちに来にきたし…」

「散歩中。鈴みつけたから来てみた」

「あ、そう…」

 

なんて言うか、アンタらしいわ…。

 

「凰・鈴音候補生。彼女は貴女の知り合いですか?」

「あ、はい!アタシの友達です」

「ん。ミコト・オリヴィア。鈴の友達」

 

ミコトの名前を聞いて、楊候補生管理官はつり上がった目がピクリと反応する。

 

「………ミコト・オリヴィア?」

「ん」

 

訝しげに呟いた管理官の言葉にミコトは頷く。

 

「………貴女が例の…」

「?」

 

意味の分からない言葉にミコトは首を傾げる。

この口ぶりから察するに、管理官はミコトの素性を知っている…?アタシ達はミコトの詮索を禁じられている筈なのに、どうして本国に居るこの人が?ミコトがアタシと同じ国の出身とか?確かに顔立ちは東洋系だけど、やっぱりそれは考えづらいし…。

 

「ミコト・オリヴィアさん。先程も申しましたように、今から新装備の試運転を行うので、用が無いのでしたら早急に立ち去っていただきたいのですが?」

「見てちゃ、だめ?」

「私にこの施設を独占する権限はありませんが、キャノンボール・ファストに備えて此方の手札を明かすのは避けたいのは当然の事。ご理解していただけますか?」

「……ん。わかった」

 

不服そうではあったが、アタシも手を合わせてお願いしているのを見ると、ミコトはしぶしぶ承諾してくるりと身体を翻して出口に向かって歩いていく。

―――けれど、途中で立ち止まって、ミコトはこちらを振り返る。

 

「……鈴」

「? なに?まだ何か用があるの?」

 

さっきから隣にいる管理官が何時にも増してピリピリしてるから怖いんだけど…。

 

「晩御飯は一緒に食べる」

「……ぷっ、はいはい。てか、いつもそうしてるじゃないの」

「ん」

 

少し不貞腐れてぎみに言ってるミコトに、アタシは苦笑をしながら承諾すると、ミコトは満足そうに今度こそアリーナを出て行った。

すると、ミコトの姿が見えなくなったところに管理官が何やら険しい表情を浮かべて話しかけてくる。

 

「……随分と仲がよろしいのですね」

「え?ま、まあ、見ての通り裏表の無い子ですから。こっちも自然と仲良くなったという感じで…」

「そうですか…」

 

アタシの返答に管理官は更に表情を険しくさせる。

そんな管理官をアタシは不審に思っていると、突然管理官はとんでもない言葉を突き付けてきた。

 

「凰 鈴音代表候補生。忠告しておきます。あの少女に関わるのはやめなさい」

 

ブチッ…!

 

アタシの中で何かが音を立ててキレた。

 

「アタシの交友関係まで管理される筋合いはないんですけど?」

 

殴り倒したい衝動を歯を食い縛って抑え込む。立ち場の関係とかが無ければ、確実にその衝動に身を任せてボコボコにしていたことだろう。

それだけ今の発言はアタシにとって許せない物だった。喰ってかかるのはせめてもの反抗である。

 

「……忠告はしました。私の忠告を無視するなら、必ず貴女は後悔することになるでしょうね」

「ふんっ!」

 

…その後、予定通りに新装備の試運転は行われた。作業中は一切会話など有りはしなかった。もともと必要以上に話す人ではなかったが、いつも以上に口数が少なく、ただ黙々と機体の調子を確認し、黙々とデータを収集する。ときどき事務的な問答をするだけで、試運転はほぼ無言で行われて終了したのだった。

データを回収した管理官は用件を済ませると、早々に本国へと帰って行った。彼女が居なくなった後、アタシはぽつんと誰も居ないアリーナの隅で座り込んでたそがれる。

誰もいないアリーナはとても静かで、その静寂の中でアタシの頭の中にはあの時の楊候補生管理官の言葉が、何度も、何度も、繰り返し響いていた……。

 

―――私の忠告を無視するなら、必ず貴女は後悔することになるでしょうね。

 

ギリッ!奥歯が鳴る。静まり返っている所為でその音はやけに大きく響いた…。

 

 

 

 

「……えっ、ミコト!?」

「ん。鈴、遅い」

 

制服に着替え終えてアリーナを出ると、ゲートに寄りかかってアタシが出てくるのを待っていたミコトを見てアタシは驚く。

まさか…あれからずっと外で待ってたの?軽く2時間以上は経ってるってるわよ!?

 

「アンタ、もしかしてずっと外で待ってたの!?」

「ん」

 

アタシの質問にミコトは頷き、アタシはそれに呆れる。

 

「あ、あんたねぇ…。晩御飯は一緒に食べるって言ってたあったでしょうに…」

「今日は、鈴といっしょにいたい気分だった」

 

ああ、そうだった。このちびっ子はこういう性格だったんだ…。一度決めた事は絶対に曲げないって言う…。

 

「ああもうっ!ほら、寮に戻るわよ!」

 

強引にミコトの手を掴み、ズンズンと寮に向かって歩きだす。

 

「ったく、最近は夕方から冷え込む様になってきたんだから、こういうのはやめなさいよね。あんた身体弱いんだから」

「だいじょうぶだ、もんだいな―――」

「あるのよ!この馬鹿っ!」

 

ぺしんっと頭を叩く。どうしてこの子はこうも自分に関しては無頓着なんだろう。おかげで見てるこっちがハラハラさせられるわよ、まったく…。

 

「むぅ…」

「不満そうにしてもダメよ。セシリアに言い付けてやるんだから」

 

似たようなこと前にもあったらしいし、その時もセシリアが注意したんだから、これは当然の罰だと判断する。といっても、このちびっ子は懲りないでまた同じことをやらかすと思うけど。

 

「オワタ」

「はいはいオワタオワタ」

 

テキトーに聞き流して相槌をうちつつ、寮へ続く道を歩く。

てか、最近になってミコトが言っていることの意味が分かるようになってきてる自分が嫌になるんですけど。

 

「セシリア、怒るとこわい」

「そりゃ怒ってるんだからこわくて当然でしょ」

 

セシリアの奴、普段はミコトに檄甘だけどね。

 

「……まっ、アタシのために待っててくれたのは嬉しかったから今回は勘弁してあげる。でも、少しは自分のことも心配しなさい。わかった?」

「ん~」

 

全然分かってないわねコイツ…。

 

「……やっぱり言いつけてやろうかしら」

「! 鈴、一度言ったことは守るべき、そうするべき」

 

とても言いつけを守らない人間が言う言葉じゃないわよねそれ。とりあえず躾けとしてミコトの両頬を引っぱっておく。

 

「いひゃい…」

「反・省・し・ろ!」

「あぃ…」

 

涙目でコクコクと頷くミコトを見て、アタシはぱっと頬を引っ張る手を離した。

 

「うぅ~…鈴も、怒るとこわい…」

「怒ってるんだから当たり前」

 

ヒリヒリと痛む両頬を押さえながら、目に涙を滲ませて恨めしそうにこっちを見上げてくるミコトだったが、アタシは全然気にも止めずにキッパリと言い放ってやる。

 

「う゛~っ…う゛~~っ!」

「………プッ、あはは!」

 

ちょっと紅くなった頬を膨らませているミコトが可笑しくて、不覚にも吹き出してしまう。

 

本当にこの子は…。アタシ達と同い年だなんて信じられないわね。

 

「笑うのは、ひどい」

「あはは!ごめんごめ―――」

 

―――私の忠告を無視するなら、必ず貴女は後悔することになるでしょうね。

 

「………」

「? 鈴?」

 

突然黙りこむアタシをミコトは不思議そうに見上げる。

 

「………ううん、なんでもない。ほら、何時までもむくれてないで帰るわよ?」

「ん」

 

後悔なんてするもんですか。アタシはミコトの友達なんだから…!

 

そんな想いを胸に抱いて、アタシはミコトと一緒に寮へと戻るのだった。

 

 

 

 

 

 


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