女体化☆チーレム~変態スキルで学園無双!~ 作:どるふべるぐ
俺のイギリス料理に対する最初の思い出は、ロンドンで父ちゃんが買ってきた料理を泣きながら食ってた記憶だ。
『息子よ。今日の飯も屋台で買ってきたフッシュアンドチップスとフライドチキンだ。さあたっぷり食べるがいい!』
『(しくしく……)不味いよぅ不味いよぅ。何でイギリス料理はこんなに不味いんだよぅ』ふ
『贅沢言うな馬鹿もん! さあ泣いてないでしっかり味わうんだ』
『このフィッシュ&チップス、タすルタルソースは水っぽいし油がギトギトだよぅ。このフライドチキンも何でこんなに焼いてあるのさぁ。これじゃあお肉が硬くなって食べにくいよぅ昔は世界最強帝国で科学と文化の最先端をいってたのに何で料理文化だけは不味いままなんだよぅ』
『子供のくせにものすごい説明口調の食レポとはやるな息子よ! だがお残しは許さんぞ!』
『ふえぇ……。もぅ屋台の料理はやだよぅ。たまにはちゃんとしたレストランで食べたいよう』
『だから贅沢言うなというに! 父ちゃんだってスポーツ賭博に負けて有り金ほぼ全てを失った悲しみを堪えて粗食に耐えているんだ。お前も男なら我慢して食え!』
『それって結局自業自得じゃないかよぅ! 父ちゃんのダメ人間振りに僕まで巻き込まないでよおお(泣)』
『うるさい泣くな! それに安心しろ息子よ。明日の賭けには絶対に勝つ! たとえ倍率は低くとも確実に勝てるチームに賭けたから負ける事はないはずだ!』
『馬鹿あああああ真面目に仕事しようよ馬鹿あああああ!!』
『ええい黙れい! 仕事なんてしてる暇があるのなら俺は少しでも夢を追うことに使う! やりたいことをやらずに何の人生か! 俺はこのイギリスで夢を叶えるのだ!』
『(ぐすっ……)夢ってなんだよぅ?』
『大富豪になってイギリス美女ハーレムを作るのだ!』
『馬鹿あああああ夢追い馬鹿ああああああ!!』
『明日の試合は奇跡でも起こらん限りあのチームが勝つから、明日からは買った金でレストランにでもなんでも連れてってやる。安心しろ絶対負けはせん。息子よ、俺を信じろ!』
次の日に食った屋台飯は涙の味がした。
そしてそれから色々あって、父ちゃんと別れてオヤジに引き取られた後。ある日の夕食にイギリス料理を出され、すっかりトラウマになっていた俺は食べることを拒否しつつ涙ながらにこのエピソードを話した――らオヤジに怒られた。
『お馬鹿たん!(びびびびびびび!)』
『痛え!? 何で水木漫画みたいな残像を伴う連続ビンタすんだよ!?』
『いいかね葛人君! これが、この不味さこそがイギリス栄光の歴史の原動力なのだよ!』
『いや意味わかんねぇよ』
『イギリス人は神話の時代より侵略と戦争を繰り返してきた、何故か! それは少しでも美味い飯が食べたかったからなのだよ!』
『な、なんだってー!』
『イギリスの宿命のライバルはどこかね?』
『そりゃフランス……はっ、美食の国だ!!』
『その通り! 昔仕事でフランス攻めに参加した事があるがね。その時の兵士達の合言葉は《金よりも女よりもまず食い物を奪え! 食材と技術を奪って俺らの食文化を少しでも改善するために!》だった。負けて壮絶に不味い糧食で飢えをしのがねばならん苦しさに比べれば、幾万の敵など恐れるに足りん! というか美味い飯食ってる奴らにだけは負けたくなかったんだよ!』
『要するにただの嫉妬じゃねえか!』
『この戦いに勝って美味い飯を食いたいという想いが兵士たちを突き動かし、あらゆる戦いを制して勝利を得たのだ。そして薄味なんてもう嫌だと香辛料を求め海を渡り大航海時代の幕を開いた。すなわちこの不味さがッ、とにかく美味い物を食べたいというその願いがッ、夢がッ、イギリスを躍進させ世界の頂点に立たせたのだ!』
『めちゃくちゃだけど何故か否定できねえだと!?』
『故に噛みしめ味わいたまえ! この不味さこそがイギリスの栄光! イギリスの歴史! イギリスそのものなのだ!』
『だからこそのこの壮大な不味さか! 常に美味を求めてきたイギリスの魂を忘れないために、あえて21世紀でも不味いままにしてるんだな!』
『その通り! けして味音痴なわけでも料理下手でもないんだ。あえて彼らはこうしているのだよ!』
『そんなことも知らずに、俺は……ッ。――食うよオヤジ! 俺はこの不味さを、全力で味わうぜ!!』
その時から、イギリス料理は俺の好物になった。
だから、知恵と努力でイジメに勝ちクラス全員と友達になった後、飯を食うべく食堂を探してぶらついてたらイギリス料理の食堂を見つけた時、俺は迷わず入ったのだ。
そう言えば久しく味わってなかったイギリス料理を食える事に胸を高鳴らせ、そして注文したフィッシュ&チップスに食らいつき――ブチギレた。
「これがイギリス料理だとふっざけんなおおおおおお!!」
爆発した怒声は食堂に轟き、楽し気に昼食をとる生徒達の喧騒を一瞬でかき消し沈黙させた。
なんだなんだと驚き戸惑う無数の目が向けられるが、んなことは構わず俺は厨房で鍋をふるっていた食堂のおばちゃん――何故か筋骨隆々のずんぐりむっくりで髭が生えていた――に詰め寄る。
「この料理を作ったのは誰だ!」
「……アタシだよ。何だいアタシの料理に何か文句でもあんのかい?」
海原●山ばりの剣幕で怒鳴りつけると、野太い声で返す肝っ玉髭おばちゃん。
「こちとらドワーフだよ。鍛冶からは引退したけど手先の器用さは一級品さ。料理の腕もね。そのアタシの料理が気に食わないってのかい?」
「気に食うも食わねえも糞食らえだ! こんなもんがイギリス料理の訳ねえだろ!」
「……言うじゃないか餓鬼んちょ。それじゃあ聞かせてもらおうか? 何が気に食わないのかをね」
「おういいぜ耳かっぼじって聞きやがれ。それはなぁ――」
「――何を、している?」
骨の髄まで凍えるような冷たい声が、俺の台詞を断ち斬った。
背後からかけられたそれが誰のものかなど、振り返るまでもなくわかる。
この忌々しいくも美しいイケメンボイスと、凍り付くような殺気は忘れたくても忘れるものか。
「……見りゃ分かんだろ? このイギリス料理のパチモンにクレームつけてるとこだよ」
だから邪魔すんなと言外に込めて振り返ると、そこにはやはり見るも忌々しい青みがかった銀髪のイケメンフェイスが、赤い瞳を吊り上げて睨み付けていた。
「また貴様か――下司葛人」
「そりゃこっちの台詞だぜ――雨宮雪兎」
互いに名を呼び合い、向かい合う。
バチバチと音が鳴りそうなほどに鋭い視線が交錯するが、メンチの切り合いなら負けやしねえぞ。
かくて壮絶に睨み合う俺達。その周囲には、平和な食事時に始まった騒動を見ようと人外異形の群衆が集まってきた。
「「「きゃーー雪兎さまーーー❤」」」
そして超絶ド級のイケメン登場にギャラリー――特に女共――は黄色い声を上げる。
「生雪兎様キターー(≧▽≦)――!」
「この目でミターー(≧◇≦)ーー!」
「ねえねえ雪兎様と睨み合ってる人ってあの……」
「そうそうあの……」
「「雪兎様を押し倒したホモ!!」」
オーケーさてはテメェらホモが好きだなそうなんだな!!
「まさか雪兎様を襲いに来たのかしら性的に」
「きっとそうよ違いないわリベンジしに来たのよ性的に」
「ウホ! どうスルのか見ものだわぁ性的に❤」
はいちょっと黙ろうね色ボケガールズ。でないとお仕置きしちゃうぞ性的に。
そんな単眼複眼問わず全ての瞳をハートにする女生徒共が熱視線を送る中、当の雪兎は全く気にせず食堂の髭おばちゃんに「後は生徒会に任せてくれ」とクールに言って厨房に下がらせていた。……っておいコラ待てや。一体勝手に何をしてくれますかこのイケメン野郎は。
「朝の続きをしたいってんならちょっと待ってろ。今はこのいんちきイギリス飯に文句を言ってやらにゃならんのだ邪魔すんな」
「転入早々騒ぎを起こしただけでは飽き足らず、今度は食堂に難癖か。つくづく見下げ果てた男だな」
「おうおう好きなだけ見下げ果てるがいいぜ。だがなこれだけは言わせてもらう。こんなのは断じてイギリス料理じゃねえ!」
叫び、食いかけのフィッシュ&チップスを雪兎の眼前に突き出した。
「……美味そうなフィッシュ&チップスだが?」
うんそうだね。カリッと揚げた狐色の衣に包まれた白身魚とホクホクのジャガイモ。そこに濃厚なタルタルソースがかかって実に美味そう――だ・け・ど!
「美味いフィッシュ&チップスなんざイギリス料理じゃねえんだよ!」
「……貴様は何を言っている?」
俺の魂の叫びに対し、理解不能とばかりに眉を顰める銀髪イケメン野郎。
うーっわコイツ分かってない。なんにも分かってねえよオイ。
「イギリス料理ってのはなぁ、不味いもんなんだよ! むしろ不味さこそがイギリス料理の売りなんだよ! 日本でいう青汁みたいなもんだ。いいかもし青汁飲んで普通に美味かったら『これじゃない』って思うだろ。つまりそういうことだよ!」
「どういうことだ……?」
うぉう。懇切丁寧に説明してやったのに『ピー』を見るような目を向けてきやがった。
「いや分かるだろ分かれよこの想い!」
「分からんし分かる気も無い。今分かるとすれば、――それは貴様を一刻も早く黙らせなければならないという事だけだ」
取り付く島もない態度に思わず詰め寄るも、バッサリ切り捨てられる。あげく「ホモが振られたわ!」「ざまあwww」とかギャラリー共が嗤いやがるもんだから、流石の俺もムカッ腹が立った。
「だーくっそこのクール石頭が話にならねえ! なら手前も実際に食ってこの味を確かめてみろや!」
論より証拠。無理やりにでも味合わせてやろうと、奴の口めがけてフィッシュ&チップスを突き入れ――ようとした瞬間、どこからか飛んできた水玉が俺の手に直撃し、持っていたフィッシュ&チップスを爆発四散させた。
「フィッシュ&ちぃぃぃぃぃぃっぷス!?」
ナムアミダブツ。哀れぐちゃぐちゃのイギリス伝統オートミール風に!!
「――汚らわしい手で、お兄様に触れないでもらえますか」
フッシュ&チップスの無残な最期に絶叫する俺に、そんな鈴のように可憐ながらも侮蔑と嫌悪をこれでもかと滲ませた声がかけられた。
思わず目を向けるとその主、もったいないお化けも激怒する鬼畜外道のフィッシュ&チップス殺害犯――黒髪ツインテールと煌めく水面のような碧眼の美少女……どっかで見た事ある気がするけど誰だっけこいつ? が、ゴミ虫を見る目で俺を睨んでやがった。
「お兄様の唇だけなく胃袋まで凌辱する気ですか……。穢れ無きお兄様を性的に汚したい気持はわかりますが、私とお姉様以外の何人たりともお兄様を汚すことは許しません性的に!」
あらやだ発言がブラコン全開の上に変態的。態度も見た目も高飛車っぽくてなんつーの、ソフトS系ツインテお嬢様キャラだなこりゃ。
あ、思い出した。
「朝の近親相関係の変態じゃねえか」
「だ・れ・が・変態ですの!」
「お・ま・え・だ・よ! ブラコンツインテール!」
ツインテールを逆立てるブラコン――あーやっぱ名前思い出せんわ――に怒りを込めて言い返すと、奴は青色目玉を吊り上げた。
「失礼ですわねあなたこそ巨乳狂いの変態のくせに! 私のは穢れ無き兄妹愛。すなわち純愛です!」
「ハッ、変態は皆そう言うよな! 何でもかんでも愛で正当化できんのなら世界から性犯罪者はいなくなるっつーの!」
言った瞬間、四方八方からの「お前が言うな」という視線が突き刺さって止まらないが構うものか。
「――ん? いや待てよお前らがいるってことは、まさかあの人も……ッ!?」
とくれば探せ! あの素晴らしき乳を!
瞬間、俺は全神経を研ぎ澄ませ周囲のおっぱい反応を探った。
まず視覚をもって全方位を見まわし、ギャラリーの中から88センチ以上のおっぱいホルダー15名を発見――だが求めるはこれに非ず! 続いては触覚。乳揺れによる空気の振動を肌で確認――いる! 90オーバーのホルダーが! ならば最後は聴覚をもって
「死角から鳴り響く乳揺れ音を聞き取れば――いたああああ!!」
並んで立つ雪兎とブラコンツインテの背後、俺からはちょうど死角になる位置にいました乳の反応こそすなわち、忘れもしないアダルトな大人の魅力あふるる美巨乳の――
「霧花さん!」
流れる黒髪にミステリアスな青の瞳。霧の中に咲く艶やかな花のごとき巨乳美少女――我が愛しのクールビューティー雨宮霧花さんを発見した!
「き・り・か・すわああああああん❤」
運命の再会キタコレ!
高鳴る胸のリズムに乗って、俺は軽やかに彼女の下へ駆け寄り「ふきゃ!?」足元に跪いた。なおその際、進路上にいた名も知らぬツインテを跳ね飛ばしたが巨乳様の前では些細な事だ。
「嗚呼、霧花さん。再びお会いするこの時を、朝も夜も寝ても覚めても一日千秋お待ちしていました」
「……会ったのは今朝が初めてでしょう。私はできれば会いたくなかったけど、運命はいつでもままならぬものね」
白く麗しきその手を取り、イタリア仕込みの伊達男ポーズで語りかけるも、霧花さんは物憂げにため息をつく、だがそんなお顔も美しい。
「こうしてまた会ったのも運命の導き。改めましてどうかこの俺と付き合ってはもらえないでしょうか」
言葉と瞳に想いを込めて、情熱的に口説く。すると霧花さんは見惚れるほどに艶やかな微笑を浮かべて……
「嫌よ❤」
美しくも冷ややかな声で切り捨てられました。けど俺は諦めないもん!
「ではお友達からでも! 二人で熱く濃厚な友情を育みましょう性的に!」
「それは単なるセックスフレンドよね」
「セックスから始まる恋があっても良いじゃないですか! 友情から変わる愛情とかロマンチックが止まりませんよ!」
「何を言っているのかよく分からないけれど、想いの強さだけは伝わったわ」
「ではその答えはッ?」
ワンチャンの望みを抱き問いかける俺に、二度目のクールスマイルを浮かべて
「ごめんなさい」
「ですよねえええええええええ!!」
うんそんな予感はしてたさ! でもやっぱりこれほど素晴らしき乳を諦めるなんて俺には出来ん。今が駄目なら日を改めて何度でもアタックを――
「――だって、私にはもう婚約者がいるもの」
…………え?
いま、なんだかおかしなセリフがきこえたなぁ。
「………え?」
「だから、悪いけどあなたの気持ちには応えられないの。ごめんなさいね」
いやいやそんなちっとも悪く思ってない素敵な笑顔を向けられても……え……いやちょ待って。
「こんやくしゃ?」
「ええ婚約者♪」
「嘘だああああああああああああああ!?」
信じたくもない絶望の事実にルーク=ス●イウォーカーばりに絶叫する俺に対して、霧花さんはにっこりと、それはもういっそ死神めいた笑顔で、『そいつ』に悪戯気な眼差しを向けた。
「嘘じゃないわよ。――ね。雪兎君」
俺達のやり取りを、苦虫を噛み潰したような顔で眺めていた、雨宮雪兎に。
「…………え?」
んん? あれ? えーっと……。
「婚約してんの?」
「ええそうよ」
「……ああ。そうだ」
二人を指さしつつ問うと、霧花さんは柔らかに微笑みながら、雪兎はやや硬い声で肯定した。……けどおいちょっと待て。
「なあおいツインテール」
俺は床に倒れているブラコンツインテールの髪を掴んで引っ張り上げた。
「痛たた!? な、何をなさいますのいきなり!」
両サイドの髪を真上に引っ張られ、ウルトラ怪獣ツインテールみたいになったそいつがキャンキャン文句を言うがガン無視して問いかける。
「おいお前らって兄妹だよな」
「ええそうですわよ。血は繋がってませんけれど、血よりも濃い兄妹愛で繋がった家族ですわ」
「でも婚約してんの? 血は繋がってないけど兄妹なのにケッコンカッコカリとか何そのギャルゲ設定」
「……別に珍しい事ではありませんわ。魔術の家系は血筋も重要。純度を保つために近親婚をするのも名家ではままある事。そして私たちの一族は水系魔術の大家。その中でも最高の才を持つ霧花お姉様の婿に、属性的に近い氷系魔術の一族である雪兎お兄様を選ぶのも………おかしい事ではありませんのよ」
語るその澄んだ声が、僅かに沈んだような気がしたのは気のせいか……いやんな事はどうでもいいや。背景も知ったしこいつにゃもう用は無え。
とくれば俺は用済みのツインテールを放り捨てて「だからなんですのこの扱いは!?」本人に突撃した。
「おいこら雪兎。……テメェに一つ、聞かなきゃならねえ事がある」
「……何だ?」
声を落とし、瞳を静かに燃やし言う俺に、対峙する雪兎もまた鋭い眼差しで応じる。
自然と高まる緊張感。張りつめる空気の変化を感じたのか、周囲のギャラリーたちもざわめきを止めて、固唾を飲み俺達を見つめていた。
そして、俺はゆっくりと口を開き、今問うべきただ一つの質問をぶつけた。
「――で、何発ヤったんだ?」
瞬間、時が止まったような気がしたがまあ気のせいだろう。
「「「……………」」」
何故か全員ポカンとしているが意味が分からないな。
それからしばらく沈黙の時が流れた後、雪兎がようやく我に返った。
「な、な、何を言ってるか貴様は!?」
したら怒鳴られた。ますます意味分からん。
「あ? 惚れた女に男がいたらまず気になんのはそこだろうが」
「ふざけるな! 何を馬鹿なことを――」
「あー確かに……」
「そりゃ気になるよな」
「俺NTR属性だから必ずチェックするわ」
ほらギャラリーの男共もちらほら頷いてるだろ。つーわけではよ言えやイケメン野郎。
「で、どうなんだよ? テメェは何回あの乳を揉んだり吸ったり挟んだりしたんだ?」
「揉ん――!?」
俺の言葉に絶句した雪兎は思わず、本当についという感じで、傍らに立つ霧花さんの胸元へと目を向け――ハッと我に返り慌てて顔を背けた。けどその頬はしっかり赤く染まっていたのは言い逃れできんぞ。
「いや照れんでいいから答えなさいよ。何回あの美巨乳を堪能したんですか言いなさい。ジェラシーを力に変えてぶん殴ってやっから」
「――ッ。戯けた事を言うな! 僕は義姉さんにその……そんな行為をした事は無い!!」
「はっはっは何を言ってるのかねこのクソイケメンは。つくならもっとましな嘘をつきやがれ」
「だから、嘘じゃないと言っているだろう!」
それはまるで、咆哮のような否定。白皙の美貌を怒りと羞恥で赤く染めた雪兎の瞳には、偽りの影は微塵も無かった。それはつまり――。
「……マヂで?」
「当たり前だ! そ、そういう事は正式に夫婦になってからする事だろうが!」
「え? じゃあ何、今まであの乳を揉みもせずにほっといてんの?」
「ああそうだ! 僕たちの関係はあくまでも清く健全。貴様が邪推するような汚れた物では――」
「こんの馬鹿チン!」
次の瞬間、俺は戯言を吐くイケメン野郎をぶん殴っていた。
「ぐはっ!? ……貴様いきなり何をッ」
「黙れい馬鹿なヘナチン略して馬鹿チンが! テメェあの乳を前にして放置してるとか、それでも金玉付いてんのか!」
爆発する怒りは止まること無く、俺は雪兎の胸ぐらを掴んで叩きつける。
「いいか! おっぱいってのは生き物なんだよ! 愛を注いで刺激を与え育んでいくもんなんだ。そうして乳はより素晴らしい巨乳へと成長する。子を産み育てるように、夫婦ってのは乳もまた育てていくもんだ。それが夫の、恋人の義務なんだよ。だが雪兎、テメェはそれをしなかった。――それはなあ、全ての乳への冒涜だ!」
まさしく火が付いた。ああうんこれはひっさびさにマジにキたわ。
血管がブチ切れるんじゃねえかってくらいに、俺は頭にキていた。
だってこいつは、俺の譲れないモンを全力で踏みにじりやがったんだ。
「好きなんだろヤりてえんだろ! だったら揉んで愛してやれよ! それが出来ねえなら――テメェに霧花さんの恋人である資格は無え!!」
「――――――ッッッ!!!!」
その瞬間、雪兎の表情が凍り付いた。
見えざる衝撃を受けたかのように強張り、絶句する。
やがて――
「……しろ」
「あ?」
震える唇から漏れた、囁きにも満たない微かな声が、
「――訂正しろ!!」
怒号となって、溢れ出た。
「その言葉を、今すぐ訂正しろッ!」
「断る! 何度でも言ってやるぜ、テメェに霧花さんの隣に立つ資格は無え!」
「…………ッ黙れぇ!!」
ぶつかり合う俺達二人の怒りが空気を震わせる。
その激しさを肌で感じたのか、ギャラリー共も不安げにざわつき始めた。
「おい雪兎さんマジでキレてるぜ……」
「あの転校生死ぬぞ!?」
「いや俺達も危ねえんじゃないか。もしこんな屋内で雪兎さんが本気で暴れたら……」
口々に囁き合い顔を青くする彼らの傍らでは、そいうや今だに名も知らんツインテが憂いのある眼差しを義兄に向けている。
「お兄様……」
「…………」
霧花さんは何を思うのか。底の見えぬ水面めいた瞳で、ただ静かに義弟を見つめていた。
姉妹の前で、激昂する雪兎は叫び続ける。
俺もまたそれに応じるため、更に口を開こうとした、瞬間――
「――教育的拳骨☆」
凄まじい衝撃が、俺達の脳天に直撃した。
「――ふごっ!?」
「――がっ!?」
あまりの痛みと衝撃に頭が真っ白になり、涙で潤んだ視界にはあら綺麗なキラキラ星。
堪らず雪兎の胸倉から手を離し、二人揃ってジンジン痛む頭を押さえ悶絶していると――
「うんうん男と男の喧嘩はまさに青春の華。だけど場所は選ぼうね」
そんな、この場の空気にそぐわんぽやぽやした声と共に周囲の人垣が割れ、ゆるふわウェーブのかかった金髪を揺らし、眼鏡の奥で底知れぬ瞳を笑みの形にした巨乳美女――学園長が現れた。
学園長は目を丸くする俺達を、虎目石を思わせる黄金色の瞳で眺めつつ、唇を開く。
「やあ葛人君。食堂で面白い騒ぎが起こっているらしいから来てみたけど……転入早々やらかしてるようだね。元気があって大変結構だよ」
で・も。
「もう一度言うけど、場所は選ぼうね。敷地内での私闘は原則禁止。学生なら、校則は守らないと……ね?」
瞬間、俺の総身は凄まじい怖気に凍りついた。
「――ッッッ!!!!」
それは俺だけではなく、隣の雪兎もまた全身を硬直させ、その額には冷たい汗が滲んでいる。
これは――恐怖だ。
己を超越した者。圧倒的な強者に対して弱者が抱く、猫を前にした鼠の恐怖。
華奢な体から発せられる、対峙するだけで押し潰されるかのような、重圧。
同じ地の上に立っているはずなのに、まるで遥かな天の高みから見下ろされているように思える黄金色の瞳が、俺達に服従を命じていた。
だが、それでも――。
「……すんません学園長。こればっかりは聞くわけにいけませんわ」
譲れねえもんは、在る。
「へえ……」
「乳への愛を冒涜したこいつをブチのめさなけりゃ、俺におっぱい星人を名乗る資格は無えんスよ」
だから
「闘らせて下さい。――俺が俺であるために、ここで闘らなきゃ俺じゃねえ」
これだけは譲る訳にはいかん信念を瞳に込めて、学園長に伝えた。
学園長は静かにそれを聞き、眼鏡の奥に在る真意の読めない瞳を雪兎に向ける。
「雨宮雪兎君。『学園の秩序を守る生徒会の一人』。君はどうなのかな?」
問いかける眼差しは虎の爪にも似て、あらゆる偽りを切り裂くが如く雪兎を捉えた。
「僕、は……」
雪兎は、赤の瞳を揺らす。
彷徨う瞳はやがて霧花さんの顔を映し、次いで俺へと向けられた。
「僕は……ッ」
真っ直ぐ、こいつもまた男として決して譲れぬ怒りを込めて
「この男を、許せません」
俺の瞳と奴の瞳が、ぶつかり合う。
「ふぅん……。君たち二人とも、私に従う気は無いんだぁ……」
そんな俺達を眺める学園長が、甘く蕩ける毒のような声で呟いた――瞬間。
「――ぐうぅッ!?」
「――カ、ハッ!?」
圧が、増大した。それは血が凍り心臓を握りつぶされるかのような、それだけで人を殺せるほどの極大圧。
「いや……ちょっ……これ、きっつう……ッ」
あ、やべ。これ死ぬかも。
いや金髪巨乳様に殺されるのなら、おっぱい星人としてはむしろ本望か?
殺人的な圧の中、そんなどちらがおっぱい星人として正しいかなどと考える俺でした。
そして、学園長は――
「――じゃあ、闘っちゃおうか♪」
なんてお気楽な声と共に、ニッコリと笑ったのだった。
「「――へ?」」
次の瞬間、全身を押し潰さんばかりだった重圧がフっと消え去る。
息もできん程のそれから解放され、呆然とする俺達を前に、学園長は相も変わらずニコニコと微笑んでいた。
「ねえノイン。どこかいい場所はないかな?」
「そうですね……」
答える声は、俺たちのすぐ真横から生じた。
驚きとともに声の方に目を向ければ、そこには見覚えがありすぎて殺意が止まらん白髪の貧乳女がダークスーツを身にまとい立っていた。
一体何時からそこにいたのか。影のように気配を消して突然現れたこいつは、俺に一瞬「死ねばよかったのに何で生きてるんだ空気読んで死んどけクソガキ」という眼差しを向けた後、学園長に向き直る。てか俺達に拳骨くらわせたのってこいつじゃね?
「今日ならば午後四時から第一アリーナが空いていたはずです。そこならばいかがでしょうか?」
「オッケーじゃあそこにしよう。さっそく今から準備よろしくね」
「かしこまりました」
何だろう……。目の前で何かとんでもない事がトントン拍子で進んでいく予感がして止まらない。
「……えっと、学園長?」
「ん? 何かな葛人君」
「一体全体……何をしてんすか?」
突然の謎展開についていけず、俺は頭にでっかいハテナマークを浮かべ問いかけ、雪兎もまた、困惑の眼差しを向けていた。
問いかける二つの瞳に、学園長は悪戯っぽく笑う。
「言ったでしょー。『場所は選ぼうね』って。だから私が代わりに選んであげたの」
楽し気に、可憐に、まるで悪戯好きな猫のように。
「場所さえ選んでくれたら好きなだけやってくれていいんだよー。恋と喧嘩は青春の花。それを止めるほど私は無粋じゃないからねー」
「えーと……つまり……?」
そして学園長は俺達二人を指さし、こう言ったのだ。
「――やっちゃいなよ。
その黄金色の瞳を、まるで鼠を追い詰めた猫のように光らせて。
お久しぶりの最新話。
頭の中で考えていた話が実際に書いてみると文字数が膨らんで大変になるのはよくある事で、この物語も見事にそうです。なので本格的に物語が動くのは次からとなります。……たぶんね。
年内には投稿できるよう頑張りますので、期待しないでお待ちくださいね。