女体化☆チーレム~変態スキルで学園無双!~   作:どるふべるぐ

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あら不思議。短くしようとしたら長くなった。
これが三人称の恐ろしさかビックリ。
もう一人の主人公がメインの今回。いつもより長めでお送りします。



『とあるリア充のファーストキス→ざまぁwww』

 雨宮雪兎(あまみやゆきと)――《学園》において、その少年の名を知らぬ者はいないだろう。

 教職員ではなく学生による自治を是とする《学園》。その内政面において絶大な権力と権限を有する生徒会の書記にして、戦闘系学科における上位十人の一人。

 容姿端麗にして文武両道。特に戦闘面において稀有な才能を発揮し、自在に氷を操る氷魔術の腕は学園において並ぶ者無しとまで言われる天才である。

 だが、彼が有名な真の理由はそこではない。

 それは、彼が学園一の――

 

 

 

 うららかな春の日差しが降り注ぐ、心地よい朝。

 抜けるような青い空に鮮やかな花びらが舞い、満開の桜が彩る学園校舎へと続く通学路。

 道の両側を詰め尽くす桜並木が美しいそこは、登校する生徒達の活気で満ちていた。

 

 並んで談笑する人間の男女の隣で寝不足らしい人狼が大欠伸し、一見して鋼鉄の虫にも見える多脚車両で爆走する超科学課の生徒を超能力課の生徒が慌ててテレポートで避け、一歩歩く度に地を揺らす巨人の肩では恋人らしい小人が優雅に寝転がっている。人種どころか種族まで異なる多種多様な生徒達が共に登校するその光景は、まさに《学園》ならではのものだ。

 話し声、笑い声、呑気な欠伸に慌てた悲鳴。様々な声と音が奏でる朝の喧騒は、だが三人の男女が現れた瞬間――

 

「「「――――ッ」」」

 

 ピタリと、止んだ。

 水を打ったような、誰もが息を飲み言葉を無くした――静寂。

 歩いていた者は立ち止り、気配を感じた物は振り返り、この場に居る全て生徒の眼差しが、その三人に向けられる。

 美しい三人だ。少年を挟み、左右に二人の花の様な少女が並ぶその姿に、誰もが溜息をつき、その眼差しが熱く熱を帯びた。

 

「見て。雨宮兄妹よ」

「学園トップクラスの美男美女。絵になるわぁ……」

「あれで成績もトップクラス。おまけに全員生徒会メンバーとか完璧すぎるよねぇ」

「生まれが違うんでしょ?なんたって水系戦闘魔術の名門雨宮家の次期当主だし」

「でも雪兎様は養子だって噂よ」

「じゃあ正真正銘の才能か。はぁ……同じ戦闘魔術科としちゃあまりの差に自身無くすわ」

「でも仕方ないでしょ。なんたって雪兎様だし」

「だよねぇ~~だって……」

 

 中央の少年を女子達が熱っぽく見つめる横で、男子は左右の少女達に見惚れている。

 

「霧花さんと雫花さん。今日もお美しい……」

「あんな二人を侍らせ両手に花でおまけに血が繋がって無いとか……グギギギギ羨まし過ぐるッ」

「気持ちは分かるが落ち着け。だって仕方ないだろ。なんたって雪兎さんだし」

「だよなぁ~~だって……」

 

 そして諦めと羨望の溜息と共に、全員の想いが一つとなった。

 

「「――学園一のモテキャラだし」」

 

「しっかたないよね~~」と頷き合うギャラリー達を、少年の右側に立つ少女は優雅な頬笑みを浮かべて眺めていた。

 

「ふふっ。見て下さいお兄様。誰もがお兄様に見惚れていますわ」

 

 少年の右腕に華奢な腕を絡め、小鳥の様に可憐な声で語りかける少女の名は雨宮雫花(あまみしずか)

 細く華奢な手足に、胸元を大きなリボンで飾った魔術学科の制服が良く似合う均等の取れたスタイル。小さな頭の左右で括った流れる黒髪を揺らし、煌く朝露の様な青い瞳を少年に向けるその美貌は、彼への溢れんばかりの好意に輝いていた。

 が、それに答える声はと言うと、不機嫌を隠そうともしない冷たい言葉だった。

 

「……どうでもいい」

「あらあら雪兎君。せっかく皆が熱い視線を送っているのだから笑顔の一つでも返してあげたら?きっと女の子達は大喜びよ」

 

 そうからかうように言うのは、左側に立つ艶やかな少女――雨宮霧花(あまみやきりか)

 雫花の姉である彼女は妹と同じ黒髪碧眼だが、こちらは制服越しにも分かる豊満な胸が目を奪う大人びたスタイル。艶やかでどこかミステリアスなその美貌は、楽しげな微笑を少年に向けていた。

 対して

 

「……下らん」

 

 彼、学園一のモテキャラたる雨宮雪兎は心底からの溜息と共に答えたのだった。

 だが、彼はそんな表情すらも美しい。

 均整の取れたスラリとした痩身。線は細くともその手足は弛まぬ鍛錬で程良く引き締まり、端正に整ったその顔は怖気すら感じるほどに美しく――そして冷たい。まるで一流の彫刻家がその全てを以って氷から作り上げたのではないかとすら思えるほどの美貌。極寒の雪原の如き青みがかった銀の髪と赤い瞳が、冷たく澄んだ氷の刃のような眼差しで周囲を見た。

 

「はぅわぁ!?今アタシ目が合っちゃった!」

「羨ましい!その目玉を私のと交換しなさい!」

「雪兎様ー!次はワタクシをご覧になってー!」

「いいえ私よ!ゆううぅぅぅきぃぃとぉぉさまぁぁぁ!!」

 

 途端に湧き上がる歓声と嬌声。

 こちらに手を振り、中には注目されるために服まで脱ぎ出した者までいるその光景に、雪兎は忌々しげに眉を顰め凍りつくような声で

 

「少しは黙れよ貴様ら。卑しくも文明人の端くれならば獣のように騒がず口を紡げ。それが出来ないと言うのなら……」

 

 吐き捨てた。

 

「――お前らは人間以下の畜生だ。豚どもが」

 

 そして、全てが凍った。

 誰もがその罵倒に声を無くし、侮蔑の眼差しに胸を貫かれた。

 時すらも凍りついたかのような静寂がこの場を満たし、それをもたらした雪兎がフンと鼻を鳴らした――その瞬間。

 

「「「ブヒイイイイイイイイイイイイイイイ!!」」」」

 

 正に豚の様な歓声が、爆発した。

 

「クール系毒舌イケメンの生罵倒キターーー❤!」

「その侮蔑の眼差しがアタシのハートを撃ち抜くのおおお!!」

「もっともっと罵ってええええええ!」

「胸と『ピーー』がキュンキュンしちゃうううう!!」

「堪らんでブヒイイイイイイイ!!」

 

 それはまさに地に轟き天に木霊するブッヒブヒの大歓声。

 あまりの興奮に転げ回り涙を流し、挙句の果てには失禁する者すら現れる萌え豚軍団と化した生徒達を前に、雪兎は憂鬱極まれりといった顔で頭を抱えた。

 

「前言撤回する。貴様らは豚以下だ……」

 

 その呟きにまたも大歓声が上がり、彼は盛大な溜息をつく。

 

「毎度の事ながら何なんだこれは……」

「仕方ありませんよお兄様。だってお兄様なんですもの♪」

 

 そんな兄に、雫花は誇らしげにリボンで隠れた胸を張り、うっとりと頬を染めて言った。

 

「その怖気立つ程の美しさ。触れればたちまち切れそうな凛とした佇まい。これを前に魅了されない女子なんていません!」

 

 陶然と語りながら彼の腕に更に抱きつき、頬ずりまで始める雫花さん。

 

「そしてそんなお兄様の最もお傍に居られる義妹故の特権。嗚呼っ。感じますわ私に突き刺さる無数の嫉妬の眼差しが!ふっふっふ良いわ良いですわこの優越感!さあ有象無象の雌犬ども。もっと私を嫉妬なさい!」

 

 青い目をヤヴァい感じに光らせ高笑いまで始めた義妹に雪兎兄さんは一言。

 

「離れろ愚妹」

「ひゃうん!?」

 

 かくて生理的嫌悪に思わず腕を振り払うと雫花はあっさり転倒し、路面に潰れたカエルよろしく横たわった。

 流石にやりすぎたかと雪兎が手を差し伸べようとしたところで……

 

「酷いですわお兄様……でもこんな扱いも気持ちいいのでこのまま踏んで下さい!」

 

 差し出した手を即行で引っ込めそのまま歩き出した。

 

「ああっ待って下さいましお兄様っ!私NTRと放置プレイだけは嫌ですのよーー!」

 

 そんな戯言が聞こえるが完全無視で歩く彼に、片側からクスクスと楽しげな忍び笑いがかけられる。

 

「相変わらずモテモテねえ」

「迷惑極まる」

「あらあら。そんな態度じゃいつまで経っても彼女は出来ないわよ?」

「必要無い。……愛だの恋だの、下らん物に興味は無いよ。――生徒会としての使命を果たす。僕が求めるのはそれだけだ」

 

 何者も触れさせぬ氷の様に固く冷たいその声に、霧花は「あらそう」と呟き小さく肩をすくめた――その時。

 

「もう一度言ってみろやコラぁ!!」

 

 突如轟いた怒声が、穏やかな朝の空気を破壊した。

 

「なんだ……?」

 

 声のした方向に目を向けると、そこには向かい合う数人の生徒たちの姿があった。

 二つのグループに分かれて互いを睨み合う彼らは一様に殺気立ち、一目でわかるほど穏やかならざる空気を放っている。

 その制服を見て、霧花はふむと呟いた。

 

「あれは超能力系学科と魔術系学科の生徒達のようね」

 

 そう語る彼女の見つめる中、眼鏡をかけた超能力系学科の生徒が見下すような目で口を開いた。

 

「一度言っただけでは分かりませんか?あなた達はもう時代遅れだと言ったんですよ魔術師さん」

「なんだと!」

 

 その言葉に色めき立つ魔術系生徒達を嘲るように、彼はさらに続ける。

 

「使う度に一々長ったらしい呪文を唱えたり、代償やら供物を捧げる『魔術』などといったコストのかかる非効率的な技術はこれからの時代に不要。所詮は未覚醒者の手品もどき。念動?空間転移?空中飛行?そんなもの我々覚醒した優性種ならばただの一瞬で行える。あなた達など、この世界には必要ないのですよ!」

「手前……ッ!言うじゃねえか魔力無しがッ。碌に魔術も使えねえ劣等の分際で、世界の真理に最も近き高位者たる魔術師にその言い様。覚悟はできてんだろうな!!」

 

 互いに己こそ高等だと言い、互いを見下しあう彼らはもはや一瞬即発であった。

 それを遠巻きに見る者達が眉を顰め口々に囁き合う。

 

「超能力者と魔術師達がまたやってるよ……」

「どっちも普段からお高くとまってるからヤな感じだよね」

「そうそう。俺はお前らとは違うんですってオーラ出してるし」

「でもここ最近こんな事が多くなってない?前までは内心はどうあれここまで酷くなかったけど……」

「去年の終わり頃からだよね。学園の空気が悪くなったって言うか……違う学科同士がギスギスしてきたのって……」

「それって、やっぱり生徒会がああなったから――」

 

 そんな彼らが見つめる中――

 

「覚悟?あなた達を捻り潰す覚悟ならとうに完了していますよ」

「――ッ!ああ今俺も手前をブチ殺す覚悟が出来た所だ!」

 

 超能力者がすっと掲げた掌の周囲の空間が歪み、魔術師の全身から荒ぶる魔力が噴き上がり、戦いの幕が切って落とされようとしたまさにその時

 

「――やめろ馬鹿共が」

 

 凍えた怒気を孕んだ声が、それを止めさせた。

 

「「――ッッ!?」」

 

 そして全てを凍てつかせるかの如き殺気が向かい合う彼らを飲み込み、怖気と共にその動きを止める。誰もが気圧され、高まっていた闘気すらも凍りついたその場所に、蒼銀の髪を靡かせ彼は現れた。

 

「雨宮、雪兎……ッ!?」

 

 戦闘魔術科における最強格の一人にして現生徒会書記の轟く名を、超能力者、魔術師双方が震える畏怖を籠めて呟く。その思わぬ登場に驚愕する彼らの姿を赤い瞳で睥睨し、雪兎は厳しい声で告げた。

 

「学園内での私闘は禁じられている。今すぐ睨み合いをやめて即刻立ち去れ。……さもなくば、力ずくで止める事になるぞ?」

 

 最後に一瞬だけ殺気を高めたその言葉に、同じ魔術師としてその恐ろしさを知る魔術科生徒達は「くっ……」と慄き、渋々ながらも高めていた魔力を霧散させ戦闘態勢を解いた。だが、その一方で超能力生徒達は今だ戦闘態勢を解かず、割り込んできた雪兎を忌々しげに睨みつける。

 

「生徒会書記とはいえ未覚醒者風情が誰に命じているんですか?」

「……なんだと?」

「たかが未覚醒者の言う事など従う必要は無いと言っているんですよ!生徒会?それがなんですか?今や主要メンバーを失い没落したも同然でしょう?」

「…………ッ」

「そもそも魔術師などを会長にしたのが間違いだったのです。超能力者ならこうはならなかった。少なくとも任期半ばで自分の無能のせいで死――」

 

 瞬間、彼らの全身が凍りついた。

 否、そう思わせるほどの寒気が全身を貫き、それが絶対零度の殺気だと気付いた時、彼らは、凍った刃のごとき声を聞いた。

 

「よく分かった『力ずく』だなそれが望みか。ならばいいだろう……」

 

 その主は煮えたつ憤怒と凍てつく殺意に蒼銀の髪を逆立て、一片の慈悲も無い凍える赤瞳で彼らを睨み、命じる。

 

「貴様ら全員――凍れ」

 

 その言葉に誰もが息を飲んだ、瞬間――。

 

「ッこの未覚醒者が!」

 

 まるで恐れを振り払うかのように叫んだ一人が雪兎に向かって手を掲げ、その掌の周囲が歪んだ。

 

「――ッ!」

 

 ゾクッと悪寒を感じ飛びのいた雪兎の背後で、そこにいた魔術科生徒の一人が見えない何かに噴きとばされた。何かに衝突したかのようにド派手に吹き飛んだ彼は、そのままギャラリーの中に飛び込み彼らを盛大に巻き込んで停止。白目をむいたその顔に意識は無く、所々に出来た生傷が衝撃の凄まじさを物語る。

 これぞ手を触れずに物を動かす最も代表的な超能力。

 

念動力(サイコキネシス)か……」

「ご名答。基本的な超能力ですが人一人くらいなら楽に吹き飛ばせますよ。こんなふうにねえ!!」

 

 叫ぶその声に応じて、周囲の仲間達も次々と掌を向けてきた。

 そして一斉に放たれた念動の嵐は、衝撃で路面を割り破片を巻き上げ木々をなぎ倒す凄まじき大破壊を引き起こす。が、その破壊の中に蒼銀の少年の姿は無かった。

 

「避けた!?念動は見えないはずですよ!?」

「音は聞こえず姿は見えず。だが殺気でどこを狙うか丸わかりだ馬鹿が」

 

 殺気の集中を感じた瞬間に地を蹴り、見えざる念動の攻撃範囲をいち早く避けた彼は手近な一人へと接近する。

 そして

 

「ぐはっ!?」

 

 突然の接近に対処できず、懐に飛び込まれた一人が苦悶の声と共に崩れ落ちた。

 足下に倒れたそれを冷たく見下ろす雪兎の手には、鋭くも美しい透き通る氷の剣が握られていた。その凍える凶器に、眼鏡の超能力生徒が目を剥き驚きの声を上げる。

 

「《氷剣》!?まさか接近するあの一瞬で構築したんですか!そんな、だって呪文詠唱は……ッ」

「この程度は呪文を唱えるまでも無く無詠唱で構築できる。まさか俺が一々詠唱するとでも思ったか超能力者?」

「き、さまぁ……ッ」

 

 明らかな嘲りを籠めたその言葉に、超能力生徒達は怒りの声を上げ

 

「貴様らが嗤う未覚醒者の手品もどき。とくと味わえ」

 

 その顔に更に笑みを深めた雪兎は再び地を蹴った。

 

「いけません!早くそいつを……ッ」

「遅い!」

 

 響く声と共に、氷の刃が白銀の軌跡を描き新たな獲物に振るわれた。

 その刀身は刃引きされているが、そこに籠められた力は一切の手加減無く、彼を狙おうとしていた男子生徒を一撃で叩きのめす。続いてその隣にいたもう一人を返す刀で打ちすえて、不意を突こうと背後にテレポートしてきた一人は気配を感じた時点で視認すらせず裏拳を叩き込んだ。かくて一瞬のうちに三人を地に沈めた雪兎は、更なる武威を振るわんと次なる相手に斬りかかる。

 

 無論、彼を取り囲む超能力生徒達も念動を放ち反撃するが、その総てを美しさすら感じるほどに無駄の無い動きでかわし、その手の氷剣で次々と倒していく。

 それはまさに圧倒的な力の差が描く一体多数の蹂躙劇。

 見る魔に数を減らしていく仲間達を前に、リーダー格の眼鏡の生徒が声を上げる。

 

「全員構えなさい。こうなれば一気に勝負をかけますよ!――そちらが氷ならば、これはどうです!」

 

 そう叫んだ彼が掲げた掌が赤く輝き、熱く燃える炎の塊が出現した。

 

発火能力(パイロキネシス)。多芸さだけは大したものだな」

 

 その新たな攻撃にも余裕を崩さず、発射に合わせ避けようとしたその足は、だが突如路面から飛び出た力強い腕に掴まれた。

 

「――ッ!?」

 

 驚きつつ目を向けると、路面から上半身を出現させ決して放さぬとばかりに足を掴む男子生徒と目が合う。

 

「透過……いや同化能力か!」

「その通り!そしてよくやりました。これであなたはもう避けられない!」

 

 勝ち誇る声と共に、その掌から炎弾が放たれた。

 そして同じように構えていた仲間達の手からも次々と炎弾が放たれ、計十を超える灼熱の炎が大気を焼いて雪兎に迫る。

 

「灰燼になりなさい!」

 

 そして、爆発が巻き起こった。

 爆炎を上げ、轟音轟き空気を震わせる大爆発が雪兎を飲み込み、炎が彼の総てを覆い尽くす。

 

「いやああああああああ!!」

「雪兎さまああああああ!!」

 

 その光景に周囲のギャラリーからは悲鳴が上がり、何人かが無残な焼死体を想像して目を背けた。

 

「ふ、ふふふあははははは!思い知りましたか!未覚醒者の分際で我々覚醒者に刃向うからそうなるんですよ。たかが魔術師など所詮は――」

 

 ようやく得た勝利に得意絶頂で高笑いをする眼鏡の生徒の笑みは、だが次の瞬間、炎の中から響く冷たい声で凍りついた。

 

「――所詮は超能力者の手品もどき。この程度の炎で僕を焼けるとでも思ったか?」

「その……声はッ!?」

 

 在りえざる声。たった今死んだはずのそれに驚愕し、目を見開く彼の前で燃え盛っていた炎が掻き消え、そして現れたのは――

 

「雨宮、雪兎ぉ!?」

 

 青く煌く氷の楯に守られた、蒼銀の少年だった。

 彼の前には氷で作られた楯が浮遊し、その冷気で以って主を守護し一切の火気を遮断している。そしてその向こうに悠然と立つ雪兎は、愕然と言葉を無くす超能力生徒達を冷たく嘲る笑みを浮かべた。

 

「どうした何を驚く?こんなチンケな火の粉で僕を焼けんのは当然のことだろう」

「く……ッ」

「僕の《氷楯》を溶かす気ならあと一万発は撃ってこい。……もっとも、後一発撃てるかどうかも怪しいがな」

 

 その言葉に答えるかのように、超能力生徒たちの何人かが突如苦しげに頭を抑え膝をつき、倒れる者まで現れた。その顔は一様に青ざめ、鼻血を流す者までいる。

 

「《超能力者》人間の脳の未覚醒部分。本来ならば機能していない領域が覚醒した事により、そこに眠っていた人間の秘めた力を操る者達。だがそれは常人よりも遥かに体機能を稼働させるため消費するエネルギーと負荷もまた莫大。長期戦にはお世辞にもむかん貴様らにはもはや何もできん」

 

 そう語る雪兎の身体から莫大な魔力が――凍てつき全てを凍らせるかのような極低温の力が噴き上がり、現れた白銀の光が中空に魔法陣を描いた。それは徐々にその輝きを増しつつ内部に膨大な魔力を集めていく。どこか砲口を思わせるそれを前に、彼らは恐怖と共に直感した。

 

 来る。今すぐにどうにかしないと、俺達を一撃で終わらせる何かが放たれる!

 

「な、何をしているのです!そいつを取り押さえなさい」

 

 恐怖のあまり、雪兎の足元で地面と同化している仲間に金切り声で命じるも、彼は動かない。その様子に更に怒鳴りつけようとして、気付いた。

 

「こ、凍っている!?」

「鬱陶しかったのでな。一足先に黙らせた。何気にするな、お前も間もなくこうなる」

「ひ、ひいいいいいいいい!?」

 

 そして、白銀の魔法陣がその輝きを増し――

 

「――お前ら全員、頭を冷やせ!」

 

 裁きの声と共に、銀光が放たれ全ての敵を飲み込んだ。

 輝く絶対零度の奔流は一人も逃さず超能力生徒達を蹂躙し、何もかもを凍てつかせる。

 そして光が消えた時、そこには――

 

「氷系封印拘束魔術――《氷結牢》」

 

 その中に氷漬けの生徒達を閉じ込めた、巨大な氷の塊が在った。

 

「風紀委員に引き渡されるまでしばらくそこで反省していろ。骨の髄までな」

 

 もはや指一本すら動かせない彼らの姿を一瞥し、雪兎がそう言った瞬間――

 

「「「雪兎様ああああああああああ!!」」」

 

 今までで最も大きな歓声が、爆発した。

 戦いを見守っていた幾人もの生徒達が拍手喝采し、口々に雪兎を讃えて歓声を送る。

 

「カッコ良かったああああ!」

「惚れ直しましたああああ!」

「流石は生徒会!」

「やっぱ生徒会メンバーって凄いんすね!」

 

 彼らの顔は感嘆と羨望に輝き、その誰もが雪兎を――生徒会を讃えていた。

 

「素敵ですお兄様!」

「生徒会の株をまた一つ上げられたわね」

 

 雫花と霧花の姉妹もまた、満面の笑みと微笑で彼を労う。

 そんな皆に、雪兎は声を張り上げ言った。

 

「諸君。これが生徒会だ!」

 

 それは天に響くほど高らかに、この場に居る全ての者に語りかける。

 

「たとえどんな苦境にあろうとも、常に全力を以って学園の秩序を守るのが俺達だ!」

 

 真っ直ぐな言葉に、揺るがぬ意志を籠めて

 

「僕達は負けん!たとえかけがえのない偉大な仲間を失おうとも、その遺志と願いを受け継ぎ僕達は戦い続ける!」

 

 弱体化しようとも、苦境に立たされようとも己はこう在るのだと

 

「この想いが、願いが在る限り――僕は、僕達はたとえ何者がこようとも、決して負けんのだ!」

 

 力の限りに、そう宣言した時――

 

 

 

「学園で最初に出会う運命の乳を揉む前に、死ねるかああああああ!」

 

 

 

 頭上から響いた、そんな叫び声を聞いた。

 

「……なに?」

 

 その声に、思わず頭上を仰ぎ見た雪兎は――

 

「おっぱい揉ませろちくしょおおおおおおお!!」

 

 とんでもなくアホな台詞を絶叫し、空から自分めがけて落ちてくる少年と目が合った。

 

「なん……だと……ッ!?」

 

 正に天から落ちてきた在り得ない事態に愕然と呟いた、次の瞬間

 

 

 

 どがばぎぐしゃ。

 

 

 

 雪兎は、それはもう凄まじい激突の衝撃を味わい意識を失ったのだった。

 

 

 ◇◇◇

 

 

「んぅ……ッ」

 

 横たわる路面の冷たい硬さと、圧し掛かる誰かの重みを感じながら、雪兎は意識を取り戻した。

 あまりの衝撃のせいか、目覚めてもなおどこか呆とする頭で五体の感触を確かめる。手……動く。足の感覚も……正常だ。どうやら気絶はしたものの、激突の瞬間咄嗟に《氷楯》を翳したことで致命傷は避けられたらしい。

 その事に安堵しつつ、ゆっくりと目を開いた雪兎が見た物は――倒れた己を組み敷くように圧し掛かる、謎の少年の顔だった。

 

「――ッ!!」

 

 それはどこか獣を思わせる顔だ。意識を失っているらしくその瞳は力無く閉じられているが、彫りの深い野性味のある顔立ちは、見る者にその内に在る強い意志を感じさせる。そんな顔が今、息のかかる距離、ともすれば後僅かに近づけば唇が触れてしまいそうなほどの距離に在る事に、雪兎は息を飲む。

 

「……誰だ?」

 

 間近で感じる少年の何かに気圧された雪兎がそう呟いた時、

 

「う、ぁ……」

 

 少年が意識を取り戻し、低く唸りその目を開いた。

 そして雪兎は、再び息を飲む。

 開かれたその瞳の、ぎらつく様な眼差しに。そこに宿る欲望の光に。

 

 一目見て思った。――こいつは己が欲望にのみ生きる者だと。

 

「貴様……は……」

 

 呆然と、見つめる雪兎の瞳を少年もまた呆と見つめ返す。

 そうして互いに見つめ合う二人。緊張と困惑に満ちたその時間が永遠に続くのではないかと雪兎が思った時――

 

「……よし犯ろう」

 

 

 突然、少年がそう呟き――雪兎の唇を奪った。

 

 

「…………?」

 

 奪った。

 

「…………!?」

 

 奪ったのだ。

 

「ふっ、ふむんぐんんんんん!?」

 

 あまりに在り得ない事態に思考が停止した脳がようやくその事実を理解し、驚愕の絶叫が深く繋がった唇の間から洩れる。

 

「ふみゅっ…んんぅ、んん~~~ッッ……」

 

 堪らず唇を離そうとするも、少年は荒々しく唇を押し付け離さない。

 どころか舌まで入れられて口内を蹂躙される始末。

 

「んちゅっ……ん、ふっ、ちゅくうぅ!?」

 

 待て待て何だ何だこれは!?

 キス。俺が。俺がこの男とっていやいや待て何だ何がどうなっている!?

 っていやおいやめろ舐めるな吸い付くな初めてなんだぞおおおお!!

 

 混乱した思考が、恐慌する意識が頭を満たすもどうにもできない。ただされるがままに唇を貪られ、喰らい付くような口づけをされ続ける事数分後……。

 

「……ぷはっ」

 

 ようやく少年は唇を離し、雪兎は息も絶え絶えで解放された。

 二人の間には濡れて光る唾液の橋がかかり、それを酸欠で呆然とした頭で見ていた雪兎に少年が声をかけた。

 

「思った通り、唇の味は悪くねえな。ああ。こいつに決めるぜ。……おい。名前は何だ?」

「……なん、だと?」

「名前だよ。あるんだろ?」

 

 問われ、そのぎらつく瞳に意識が呑まれるような感覚の中で答える。

 

「……雪兎。雨宮雪兎だ……」

 

 碌に思考も回らぬ頭で答えると、少年は獲物を見つけた獣の様な歯を剥きだした笑みを浮かべ、

 

「――雪兎、俺はお前で童貞捨ててやる」

 

 そう、宣言した。

 

「な、に……?」

 

 思わず聞き返すと、少年は

 

「俺がそう決めたんだよ。そして一度決めたからには絶対に叶えて見せるぜ。俺はお前を逃がさねえし誰にも渡さねえ。――お前の乳は俺のもんだ。雪兎」

 

 そう、信念にも似た強き欲望を伝えた。

 

「な、にを……馬鹿な……ッ」

「馬鹿だろうがなんだろうが願ったもんは掴んでやるよ。最高の乳も夢も――こんなふうに、なッ」

 

 言うやいなや、少年はその手を雪兎の胸へと伸ばし、揉みしだこうとして

 

「……あれ?」

 

 できなかった。

 

「貧乳……微乳……いや違うこれはあああああああッ!?」

 

 だって、男にはおっぱい無いもの。

 

 

 

「って、男じゃねえかああああああああああ!?」

 

 

 

 かくて、新たな出逢いの空に、おっぱい星人の慟哭が木霊したのだった。

 

 




地の文様が大活躍して文字数が大変な事になった件について。

もうひとつの作品に比べれば大した事無いから問題無し!……ハイごめんなさい反省しております。次は一人称に戻すからもう少し楽に読める分量になりますよたぶん。

ではそんな次回をゆるりとお待ちください。
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